第1章 その4
じっと寝室のクローゼットの前に立つ。正確には浮かんでいる。
思いついて、変な臭いがする宇宙人グレイのステッカーを嗅いでみるが、何も感じない。
オカルト好きとして様々な幽体離脱、体外離脱について読破しているが、嗅覚はあまり描かれていなかった事象だ。
大した情報じゃないが胸が躍る。
「よし、やるか――」
意を決して、クローゼットに触れる――だが、壁を押すように手がすり抜けた。
「!!」
さっきのマジックペンは手でつかめたが、今度は手はクローゼットの開き戸を貫通している。
これはやはり意志の力が介在するような気がする。事実前に進もうとすれば進めるし、これはワンランク上の情報だ!
喜びもそこそこに、今度はクローゼットに正面から頭突きするようにすると、視界は暗闇に染まった。真っ暗で何も見えない。
猫目のようなのは期待できないのだろうか。
そしてゆっくり透過していく。
収納されている服なども貫通していく。
オブジェクトを頭から貫いているが、肝心の「中身」は見えない。
これも後で検証したい。
例えば洗濯機がいい。頭を突っ込んで内部機構が視えるのかとか。
おっと、興奮でつい色々考えてしまう。思考は明日だ。
「進め……」
≪幽体≫がリビングへの壁を透過していく。
果てしてその先には見慣れたキッチンやら何やらも視える。
「マジか」
俺はオカルトが大好きだが、大半は勘違いがか創作だと思っている。だがしかし、一部の――今なら動画だ――オカルト現象は説明が難しく、「もしかしたら!」という思考に陥る。これが俺にとっての最大の魅力だ。
そして俺は今語る側になるかもしれないだ。
キッチンシンクの横のカレンダーの前に陣取る。さっきと同じ赤ペンが横たわっている。
さあ入念にこの体験が第三者的にも、リアルか証明してみせる。
程なく取れたペンキャップ、そしてカレンダー。
今度は◯を書き込むことにする。当然2か所だ。
歪だが◯がしっかり書き込めた。
これで起きた時に変化はがあれば、この現象が本物の≪幽体離脱≫可能性が高い。
だがこれには弱点がある。メジコンの幻覚かもしれない。
ならばどうするか――
壁を透過するのならば――
≪幽体≫は外を自由に空中散歩できるか?




