第2章 その8
「あらーレイちゃん、パパの好きなサンマだよー」
迷っていると赤子を胸に抱いた主婦らしき女性が幼女を貫通した。
「被る」のが嫌なのか幼女は左へ2歩退いて、女性に視線を移した。ちょうど俺は幼女の背後にいる感じとなった。
「あぅあーだー」
「うんうん、レイちゃん。どれにしよっかーこれかな?」
赤子をあやしながら女性はサンマに手を伸ばす――と。
「それはダメなのじゃ。目が澄んで綺麗な銀色で背中が盛り上がっているこっちにするのじゃ」
幼女がそう言って女性に触れた。
「うーん。何かこっちのほうが美味しそうだねー。この目がキレイなの二つにしよっか」
何だ? 何かしたのか!?
女性は器用に片手でサンマを二つ袋に入れると会計の方向へ向かった。
「うんうん。よかったのじゃ――おや?」
目が合う。えっどうしよう。
「なんじゃ同族か」
速攻見抜かれる。頭のいい子だな……ってそうじゃなくて!
「……えっ?」
「見えるぞぃ」
「……えっ?」
「ニブちんじゃのぅ。お主も幽体離脱しとるんじゃろ?」
展開が早すぎる。混乱する。つまり幼女は≪幽体≫で他者の≪実体≫に干渉して俺にも気付いてて話しかけてきている?
「……は、はい」
「初心者じゃな? そうじゃのう――」
そこで幼女は一旦言葉を区切ると、居住まいを正した。……意味あるの? ≪幽体≫で?
思考が脱線する。
「まずは名乗ろう。わしはトキじゃ」
「えっと……九十九、です?」
「何故疑問形なのじゃ」
「あ、いえ、九十九と言います!」
幼女の持つ謎の威厳にやられて、俺は少し宙に浮いたまま気を付けをして名乗り直す。
「よしなにじゃ」
「は、はい!」
まるで鬼軍曹を前にした新人だ。身長差があるから見下ろしてはいるんだが。
というか、この「なのじゃパターン」って!
「えっと、トキさん何さ――いえ、僕の年上とお見受けしますが……」
「ほぅニブちんにしてはわかるやつ」
幼女――もといトキさんは誰かの秘密を覗き見した子供の顔でニンマリとした。
「そうじゃ見ての通り“えきすぱーと・ふあっきん・ますたー”じゃよ“ぬーぶ”」
トキさんは胸を張る。えっとつまり、俺が初心者なら上級者どころかマスタークラスってことか?
「えっと俺……僕、≪幽体離脱≫してる人と会うのは初めて――えっと正確には二人目なんですけど、まだよくわかってなくて」
「見ればわかるのじゃ」
「で、ですよねー」
結局ヘコヘコとしてしまう。≪幽体≫なのに顔が熱い。わたわたしながらも、俺の頭にはある考えがよぎった。
――色々ご享受願えばいいのでは!?




