第2章 その4
問。幽体離脱したので現実に干渉しカレンダーなどに印をつけた。その後確認したら全てに印があった。次にすべき実験は?
昼休み。AIに聞いてみる。
実験:密封コード開示(観察能力の検証)
目的:物理干渉不要で「見てくる」能力を検証。
1. 協力者が8桁英数字のコードを紙に記入→不透明の小箱に入れて封印(箱・封筒にサイン)。
2. 箱は高所の棚に置き、上面を紙で覆い、脚立や鏡・カメラは撤去。
3. 幽体離脱で箱の中を“覗いて”コードを覚え、戻ってそのまま記録。
4. 記入後に撮影しながら開封して答え合わせ。
5. 30試行以上。完全一致のみ成功。部分一致は事前規定に従い部分点扱いせず(恣意性排除)。
なるほど、透視実験か。一人で洗濯機を覗き込むのもいいが、確かに他者を交えるのはとても有効に感じる。
それにしても本当に今年2025年はAIって感じがする。気付けばAI動画を観て、AIと会話している。今朝もAIおばあちゃんの動画で笑ったっけ。
ともかく、今一番の問題は再び≪幽体離脱≫をすることだ。可能ならその後も継続的にに出来るようになりたい。
やはりメジコンを試すしかないように思う。基本的にオーバードーズは本当に憂鬱だったり、希死念慮が酷い時にしかやらない。この前にしてもそうだった。亡き父と亡き母の悪夢……耐えられなかった。
正直迷う。メジコン――デキストロメトルファンは依存性が低い。だが、どうしても耐性が付く。
もしメジコン有りでしか≪幽体離脱≫出来ないとなると、これは問題だ。
さてどうしたものか。いっそまたAIに聞くか? それは何だか孤独の超最先端を思わせる。
よし決めた。9月11日の木曜日だ。通院日で作業所は午前だけ、病院から帰っても3時くらいだから丁度良い。
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考えに耽ると右手のペンをクルクルと果てしなく回す、それが官房長官、須田の癖だった。
『石渡の意識を回復させたければ、72時間以内にこのウォレットに一億円分入金せよ』
今風の脅迫文だった。還暦を超える須田の世代からするとスイス銀行などをイメージしがちだが、それは昔の話だ。今なら暗号通貨――指定された口座は秘匿性の高いモネロである。
「しかし問題はですね……」
スパッとペン回しを止めて須田が切り出した。そして続ける。
「まるで幽霊の仕業ですよ」
「―――」
須田が対面の男を睨めつけると、その男――公安調査庁長官の末広の顔には笑いをこらえるような、いやむしろ恐れるような複雑なシワが寄っていた。
末広の目線の先にはモニターがあった。先ほどから嫌と言うほど繰り返し観ている。
首相官邸内の防犯カメラの映像――そこには白い紙片が空中に漂いながら通路を横切る姿が映し出されていた。
そして明らかにカメラを意識した動きで紙切れが『こちら』に寄ってきた。画面には脅迫文が映る。よく出来たポルターガイストのフェイクだと誰も嗤わなかった。
そう警備は完璧だった。密室とすらいえた。死体の代わりに脅迫文と意識不明の総理大臣まであった。
「本当に、本当に問題ですよ――」
須田は頭を抱えながらまたペンを回し始めた。




