◆003◆ボタンを押して楽になれば良い!
激痛と引き換えに、死を手に入れて、空腹と渇きは満たされて、元の場所へと戻って来たモクジ。
今度はしっかりと覚えている。
「はぁはぁはぁ。死ぬかと思った……俺、死なない系か?」
数字は減って行く
154
153
152
そこで、まずはガゴン!! と、ボタンを押す。
残痛はある。
首を切り落とされて、15秒間は視界も痛みも何もかもがハッキリと残っていた。
それを思い出すと気持ち悪いものが込み上げて来て、便器の中に吐き出す。
「……はぁ、はぁ。だから便器なのか?」
そう呟いて、水を流すレバーに手を掛けて躊躇う。
「これ、流したらヤバいやつか?」
モクジの直感は当たっていた。
もし、ここで流していれば、記憶も何もかもリセットされて、また一から全てが始まる事になっていた。
レバーから手を離したモクジは、視界の右上の【!】と左上の【S】に触れて確信する。
【レベル3】
【マップ】はセーフポイント前まで刻まれている。
「死ぬのはこえーし、痛ーし嫌だけど、確実に進めるなら何とかなるな——」と、そう考えたモクジは数周目で、カウントダウンを見送った。
3
2
1
0
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下 2 に
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♡ ?
—— ケイトは、30周目を越えた所から、何周目の挑戦かを、数えるのを止めていた。
そんな事は無意味だと思えたのは、スキル【痛覚無効Lv1】と【酸耐性Lv1】を手に入れた事が大きい。
その最初のスキルを手に入れたのは、35周目の事だった。
ケイトは初めから、この世界を攻略する事だけを考えていた。故に一度もカウントダウンの数字を見送った事は無く。
モクジとは根本から違っていた。
どれだけ時間が掛かっても、ここがロールプレイ形式の異世界であれば、必ず努力の先に答えがあるからだ。
そう信じたケイトは、空腹で耐えられなくなるまで、何度もポップアップを繰り返すスライムを倒して、空腹の限界で【石の仮面】の怪物に挑戦して殺されるという事を繰り返していた。
手に入れたスキルは——
【痛覚無効Lv10】
【酸耐性Lv10】
【斬撃耐性Lv10】
【空腹耐性Lv10】
【打撃耐性Lv10】
【空撃斬】
【石割り】
現在のレベルは15——
この周回においては【石の仮面】の怪物に殺されようと思っても、斧による致死ダメージを負わなくなってしまった為に仕方なく倒して、セーフポイントへと到達した。
セーフポイントの面積は50,000m2
地面には土があり、木々が生い茂り、川や滝があり、一番注目すべき点は12時間に一度ポップアップする宝箱だった。
視線を漂わせると現れる【セーフポイント】の名前の横に現れる【※】を押すと面積や宝箱の説明が現れる。
ちなみに【石の仮面】の怪物も同様に【※】が現れていた【泉の守護者】と。
ケイトは特に気にする事は無かったが。
絶望と忘却—— その後に冒険を繰り返すモクジは、その名前を何度も叫んでは挑戦して殺されていたのだが。
セーフポイントの壁も白く、その場所が円形状になっている事が分かる。
そこをグルリと回ってみると——
白い扉が一つ。
そして、ボタンが五つ。
一人では、一つずつしか押せない距離にあり、ボタンを一つ押した所で何も起きない為に、ケイトは他の誰かが現れるのを待つ事に。
12時間に一度現れる【宝箱】からは、主に食料と水が手に入った。
食料には、おにぎりや肉まん、パンなどの炭水化物がメインに入っていたが。ケイトはそれらがビニールの袋で梱包されている事に疑問を抱いていた。
一番の違和感は、缶詰という、明らかにこの世界には不釣り合いで異質の物体。
「仕方ないですね……」
—— 本来の攻略法はケイトが行った方法が正しく、モクジもやがてはその方法でケイトの元へと辿り着く。
モクジのその時のレベルは5なのだが。
しかし、逸脱した方法でセーフポイントに辿り着いた者が現れる。
費やした時間は僅か210秒。
—— ジルは、現れたボタンの意味を理解出来ずに、そのまま扉を開けると、真っ直ぐに白い迷路を進んだ。
その間も数字の数は減って行き。
51
50
49
と、数えられる数字に気づく事も無く、スライムにも出会わずに【泉の守護者】と出会したジル。
3
2
1
0
と、なった所で水が流れると、迷路の中の物は全て吸い込まれて行く。
【泉の守護者】が振り上げた斧は、真っ先に吸い込まれて、その勢いで突っ込んできた【泉の守護者】を足蹴にすると、ジルの身体はセーフポイントへとギリギリ到達して。
まるで、高位の存在が諦めた様に、洋式便器の扉は閉まり、水が流れる音だけが迷路に響いた。
「ちょっと! あなた達! これは、どういう事なのか教えてよ! ねぇ! 何なのよもぉーーー」
セーフポイントの入り口で火を焚いて、魚を焼いている、ケイトとモクジを見つけると、ジルは泣き叫んだ。
「—— それでな、それがステータスウインドウで、そっちの【※】に触れるとなー。そうだ、そうだ、それだよーそれー!」
合理主義のケイトは、泣き叫ぶジルを気にもしないので、モクジは優しく色々と教えてあげていた。
異世界転生の何たるかを教えて。
現状についても理解を求めた。
そして、禁断のスキルに気付く。
「スキルに【創造神の祝福】ってあるよー」
その言葉を聞いて、それまで無関心を貫いて魚を焼いていたケイトが凄まじい速度で反応した。
「Lvって書いてないんだな?」
「書いてないよー」
「【※】って……ほら、名前の所に出てたりしないか?」




