第51話: 〇〇で国を護るんや!っていうのは勘違いでしたってお話と、実は今までずーっとその場しのぎの言い逃れでしたって話
「何が先生やねん……そんなに言うたかて、ワシは許さへんで?まぁでも、今はウマくんの推理が先や。言うてもかまへん。」
ひい爺ちゃんがそういうと、真魚さんは咳払いをして説明した。
「ごほん……まぁ、今までの話を整理したらこういうことや。姫は不完全やけど直霊を持ってる。でも姫が化生で作った天忍穂耳命には直霊が宿らん。さらに、高御産巣日神から化生で生まれた万幡姫にも直霊は宿らへん。ほいたら、その二人が夫婦になったところで、その子供である瓊瓊杵尊に直霊が宿るはずはない。
それでも、石長比売はんを娶ってたら、なんぼかマシやったやろうけど、ニニギノミコトはそれを断った。
そやから、天孫には物事を正しく判断できるだけの魂の力、つまり直霊が最初っからない。
まぁ、なんかおかしいって思うとったわ。
ほら、スサノオはんは可愛い女子を守ってオロチ退治で、ナムジはんは思いやりと智慧で危機を潜り抜けたり、友情を大事にして国を立派に治めたりしたのに、この天孫ちゅうのには、そういう話が何にもないやん?
あるっちゅうたら、「可愛げない女嫌い」とか、「それオレの子供か?」とか、どう考えてもただのDV夫やし。
饒速日はんはそれよりマシやけど、義理の弟殺したとか、そんな話ばっかし。
でもそれも、物事を正しく判断したり、慈悲、誠実さ、そういうものの元になっている直霊、オレらの用語で言うたら仏性が無いんやから、そうなるに決まっとる。太子よ、言いたいんはこういうこっちゃろ?」
真魚さんが言い終わると、太子のおっちゃんは満足そうに「むふー!」って言うた。ドヤっ!て顔をしてる。こういうところなかったらエライ人やって思えんねんけどなぁ~
「ムフフ……いや、真魚くん、いやさ弘法大師よ!解説をありがとう……どうでっかご老体!これが、石長比売はんが、ちょくちょく女人たちに取り憑いて智慧を貸さなアカンかった理由であり、仏の教えで補完せなアカンかった理由!それこそが!この天才政治家、聖徳太子が大いなる御仏の鎮護国家パワーで日ノ本を守らなアカンかった理由で……」
って、おっちゃんが調子に乗って何か言おうとしたところで、「ごめん太子~」って、真魚さんがおっちゃんの肩をもってユサユサしだした。
「な、なんやオマエ?こっからが、救世観世音菩薩たるワシのグレートなところを自画自賛するエエところやっちゅうに邪魔すんな……」
「ちゃう、ちがうねん。御仏の教えに鎮護国家とか無いねん。アレ後世の捏造やから。」
「は?捏造?」一瞬ぽかんとするおっちゃん。せやけど、逆にウチやアレ君は、なんでおっちゃんが仏教で鎮護国家とか言うてるんかさっぱり意味が分からんかった。
「太子様、鎮護国家ってなんだべ? おいは、こないだ高野山のえれぇ坊さんに教えてもらっただども、その坊さん言ったべ?『仏陀釈迦牟尼の教えは、要は苦しみの原因を理解して無くせば、苦しみは無くなる。これだけです。』って。要は、個人的なもんでねが? なしてそれが国を守ったりできるんだべか? 昔の仏教さ、今の仏教と違うんだべ? それとも、おいの家が曹洞宗の檀家ださげそうなんだべか? 夏菜子さ、関西じゃどうなんだべ?」
そう・・・やな。ウチは叡福寺の檀家やから、いうたら真言宗、つまり真魚さんのとこやけど、仏教が国を守るとか、別にそう言うもんと違うんちゃう?
「おっちゃん、ウチもよう分からんねんけど、なんで仏教で国が守れるん?どういう理屈?普通は、西国三十三所に行ったら、観音様の悩みが軽くなるとか、死んでも極楽に行けるとか、そういうんやろ?」
アレ君とウチがそう言うと、おっちゃんはちょっと、いやだいぶプリプリしながら反論した。
「なんやなんや!皆で罰当たりなこと言うてからに!十七条憲法にも書いとるやん!『みんな仲ようせなアカンで』って!そういう仏の教えを守ったら国が平和になり、一致団結出来て外敵から守れるとか、あるやん、そういうの!だいたい観音であるワシが言うんやから間違いなわけがないがな!ほら、法華経にも、仁王経にもそない書いてあるし……」
「いや太子よ、そやからちゃうって……だいたい第一条は儒教やろ?あと、法華経に書いてあるんはそういう意味とちゃう。あれは、それによって自分の周りもハッピーになるよって話や。あと、仁王経は中国で作ったでっち上げや。よう思い出してみ?オマエ、お釈迦さんとか阿弥陀さんから直に仏の道、教わってるやん。そんな話無い筈やで?」
「なんやオマエ!ちょっと自分が大日如来の化身やから言うて!ちょっと待っとけや、ええと……確かこの辺に……お、あったあった!これはな、阿弥陀さんから聞いた仏の教えの真髄を書き留めたノートや!誰にも見したらへんで、フフフ♪」
おっちゃんは、ショルダーバッグの中をガサゴソ探すと、一冊の本を引っ張り出して、ウチらに見せびらかした。
「これによるとやな……仏の教えには鎮護国家の功徳が……あれ?なんやて?『苦しみの原因は執着やからそれを無くしたらいいよ』そんなん分かっとるって……えーとこっちは『苦しみは無知から始まる』当たり前やないか!……ほんで鎮護国家は……ない、全然ない、そんなことは一言も書いてない!このノート書いたん、ウマヤドとして転生する前のワシ自身やのに!」
「そやから言うてるやんけ、オマエの思い違いやって。それで、その捏造されたでっち上げを何でか知らんけど、皆信じることになってん……オレも最澄もそうやったわ。その嘘が溶けるんは、そやなー親鸞とか一休が出てきたころちゃうか?」
真魚さんがそう言うと、おっちゃんは自分のノートと真魚さんを交互に見ながら、ワナワナしてた。
「あれ……確かにそうや……なんでワシはそんなこと思ってたんやろ?いや、ワシだけやない。当時は蘇我馬子はんも、入鹿もそない思ってたはずや……敵の物部守屋でさえ、異国の神の力で国を守るとか言語道断とか言うてたし……何時の間にワシらは、仏教て国を守れるとか勘違いし始めたんやろ?」
「なぁ太子、オレは飛鳥時代に何があったんかは知らん。せやけど、オレが唐から密教を持ち帰った時、ハッキリ言われたで?『その密教とやらによる加持祈祷でこの国を護れ』って。
オレ、えっ?て思たわ。密教とその精髄である曼陀羅は、それまで思索と理解に頼るしかなった仏の真理の会得を何段階も早くした。だいたいそのための般若心経やったり、法華経やったり、浄土経や。あれは、まんま鵜呑みにするもんとちゃう。それを観想して仏と一体になり、人間としての意識を越えるためのツール、方便や。そやのに、それで国を護れって言われたとき、オレ正直、こいつら何言うとんねんって思ったんよ。
せやけど……オレって天才やん?そやから、実際に加持祈祷やったら、凄まじいパワーで国にバリア張れてもうてん。ほんでオレ自身も、『お、イケるやん! これで国も民も護れるんや!』ってやってもうて……
まぁでも、オレがホンマにしたかったんは、一人一人が仏と一体になる「即身成仏」やん?でも、それをしようって思ったら、いっぱい密教の寺つくらなアカンやん?それ以前に学校もつくらなアカンやん?ほいたら、バックというかパトロンが要るやんか。そやからため池とか土木工事してファンを獲得したり、加持祈祷で貴族とか皇族にパイプ造ってたんよね~銭を貯めなアカンからなぁ〜」
ん?なんか今の話、ちょっと気になる。
「真魚さん、『この国を護れ』って、誰に言われたん?」
ウチが聞くと、真魚さんは「えー?」って言うた。
「誰やったかな?確か…藤原冬嗣?やったかな。ソイツ言うとったで『我が一族の祖、鎌足様はこの倭を治めるには、神代の頃に失われたものを接がねばならぬと仰せになられた』とかなんとか。その時は、コイツなに分けわからんこと言うとんねん、って思ったけど、今日の話でハッキリした。鎌足はんは、この倭が空っぽの器やって気が付いとったんやろ。とはいえ、何をどないしてええか分からん。そんな時、太子や入鹿が『仏の力で国が治められる!』とか言い出した。そんでこれは使えるって思うたんとちゃうか?」
「え?真魚さん、そこまでは分るけど、ほんならなんでその冬嗣って人は、真魚さんに密教で国を護れ、とか言うたん?やって、真魚さんの頃って仏教のお寺あったやん?奈良に大仏さんもあったやん?さっき道の駅で言うてたやろ?『京都の仏教はマイナーで、奈良に行ったら恥ずかしかった』って。そやったら、それで充分で、密教とか要らんのちゃうん?」
でも、ウチがそこまでいうと、アレ君が「違うべ」って言った。なんで?
「夏菜子さ、おいだば、高野山で金烏玉兎集さ調べたべ……そいだば、それって陰陽道だべ? 陰陽道ってのは、神道と、密教と修験道、中国の道教が混ぜこぜになったへんてこなモンだ。おら、なんでそんなへんてこなモンあんだかわがらね、って思ったども、今日の話ですっきりしたべ? その鎌足さんとか、冬嗣さんって人さ、器の中身さ入れるもの、何でもよがったんでねが? なんが、姫が見だヌメヌメしたバケモンさ似でるべ。」
「どしたん?アレ君、なんか怒ってる?」ウチが聞くとアレ君は、「んだ」って答えた。
「その、ニニギって神さん空っぽなのはしょうがねえべ。んだども、自分たちまで中身さ無ぇ、スカスカなごどさするのは違うべ? 太子様が仏教で国さ護るってなら、ちゃんとやれば良いべさ。んだども、陰陽道でやってるの、アッチコッチのもんさ、寄せ集めてその場しのぎさしでるだけだべ? そんで、それを今までずーっとやってるべ! そんだら根っこ無ぇごどで国も人も護れね! そういうごどさしてて、母っちゃの国さ(旧ソ連)ズダズダなったべ!」
こんな激しく怒ってるアレ君初めて見た……
それを見たおっちゃんがボソって言う。
「アレ坊の言う通りや。こら鎌足に今すぐ会いに行かなアカンな。」
そう言って、皆んな立ちあがろうとしたとき、ガム新さんがニュッて出てきた。
「盛り上がってるとこ悪りぃけどよ、敵さんみてぇだぜ?石清水で見たデク人形だ。夏菜子ちゃん、オレらを召喚してくんな。」
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
今回は、太子のおっちゃんと真魚さんの、ちょっとマニアックで生々しい(?)歴史・宗教トーク。そして、いつもは冷静なアレ君の「静かなる怒り」が爆発する回でした。
天才・真魚さんの「上層部の勘違いを利用して、自分の理想のためのパトロンを作っていた」という実務家ムーブには、思わず現代の公務員・夏菜子も共感?笑
しかし、アレ君の推理で暴かれた「鎌足たちが作った『その場しのぎ』のシステム」の正体。そして、その核心に触れた瞬間に襲来する、進化した「デク人形」たち……!
次回、絶体絶命のピンチに、あの最強の「剣聖」がいよいよその姿を現します。
物理の装甲も、AI呪術のバリアも、すべてを無に帰す「究極の理合い」とは!? 怒涛の第52話をお楽しみに!
【作者からのお願い】
「真魚さん、ちゃっかりしてる!」「アレ君の方言と怒りに痺れた!」「十兵衛の無双が早く見たい!」と少しでも思っていただけたら、ぜひページ下部の**☆☆☆☆☆から応援や、ブックマーク**をお願いいたします!
皆さんからの温かい評価と応援が、毎日の執筆の最大のエネルギーです!これからもよろしくお願いします!




