第4話3 ホルムズ海峡危機と日本の医薬品不足
日本国内における医薬品や医療資材の供給不足は、長引く構造的な課題と近年の国際的なサプライチェーンの混乱が重なり、現在も深刻な状況が続いています。
医療現場や薬局で特に不足が顕在化している具体的な品目と、それがもたらしている影響は以下の通りです。
1. 現在、日本で特に不足している具体的な医薬品・医療資材
日常的な診療から専門的な治療に至るまで、幅広い領域で品薄や出荷制限(限定出荷)が続いています。
* せき止め薬・去痰薬(呼吸器系)
* 風邪や感染症の流行時に需要が急増するものの、生産が追いつかず、最も慢性的な品薄が続いている分野の一つです。
* 解熱鎮痛剤
* 市販薬・処方薬ともに、発熱時や痛み止めとして使われる一般的な解熱鎮痛剤で在庫切れや出荷調整が頻発しています。
* 抗生物質(抗菌薬)
* 細菌感染症の治療に不可欠な各種抗生物質も、原料の輸入停滞や国内メーカーの製造制約から十分な流通が確保しにくい状況にあります。
* 抗インフルエンザウイルス薬
* シーズン中の流行や需要の波に対応しきれず、特定の経口薬などで一時的な入手困難や処方制限が生じることがあります。
* 慢性疾患治療薬(高血圧・消化器系など)
* 一部の血圧降下剤や胃腸薬、糖尿病治療薬などでも、ジェネリック(後発薬)を中心に統廃合や生産遅延による欠品が発生しています。
* 石油由来の医療資材・包装材
* 錠剤を1錠ずつ包む「PTP包装シート」、点滴バッグ、注射器、各種チューブ類など、医療現場に不可欠なプラスチック・化学樹脂系の資材も、原油価格の高騰や中東情勢を含むサプライチェーンの調達難の影響を受けています。
2. 医療現場と患者に及ぼしている深刻な影響
薬や資材の不足は、医療の質や現場の負担に大きな影を落としています。
* 薬剤師および医療従事者の過重な負担
* 薬局や病院では、日々変わる「出荷停止・限定出荷」の情報を確認し、卸業者や近隣の薬局へ在庫を問い合わせる業務(在庫のやり繰り)が急増しています。
* 処方された薬がない場合に医師へ「疑義照会(処方変更の提案)」を行う頻度が増え、薬剤師や医師の本業以外の事務負担・精神的ストレスが膨らんでいます。
* 患者の治療への不安と「薬局のハシゴ」
* 「いつも飲んでいる血圧の薬や風邪薬が手に入らない」「別の薬(代替薬)に変更せざるを得ない」といった事態により、患者側への説明や副作用への懸念が生じています。
* 必要な薬を求めて患者が複数の薬局を回る(いわゆる「二度手間・薬局難民」)ケースも起きています。
* 医療経済・供給網の脆弱性の露呈
* 国内の製薬企業が抱える「薬価の引き下げによる収益悪化」や、原薬・中間体の大部分を海外(中国・インドなど)に依存している構造的リスクが、地政学リスクや為替変動によって一気に表面化する形となっています。




