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徹夜続きのゲーム開発者、気づいたら自分が作ったはずの文明調律RPGに転移していました 第五部  作者: マスター


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2/19

第50話 麦は、粉にならなければ町へ広がらない

第50話です。


第49話から、第五部・下流交易都市編が始まりました。


中流農耕帯で食料を作る流れは、ひとまず局所臨界を回避しました。


しかし、食料は作れば終わりではありません。


倉に入り、船で運ばれ、市場へ届き、加工され、人の口へ入って初めて、人を救います。


下流交易都市リヴァールでは、倉庫に穀物があり、船にも麦が積まれていました。


けれど、倉庫の封印、所有権、税倉、救援倉、商会の在庫が複雑に絡み、市場へ食料が届いていませんでした。


澪たちは、《見える在庫台》を作り、倉庫の麦を青袋、黄袋、赤袋に分けて公開します。


さらに、水位変動で傾いた荷船には《仮荷下ろし段》を作り、麦袋を濡らさず岸へ降ろしました。


そして青袋の一部を緊急粥として配り、市場暴動の予測は少しだけ遠のきます。


しかし、町全体を支えるには、まだ足りません。


粒の麦は、そのままではパン屋や市場へ広がりにくい。


粉にならなければ、多くの人へ届きません。


ところが、製粉所の水車は水位変動で不安定になり、粉の供給が止まりかけていました。


今回の条件は、


《麦は、粉にならなければ町へ広がらない》


今回は、製粉所と水車へ向かいます。

製粉所の水車は、変な音を立てていた。


ごとん。


ごと、ごとん。


ぎい、と軋んで、急に速くなり、また止まりかける。


川沿いに建つ石造りの大きな製粉所。


本来なら、水車の回転に合わせて、石臼が規則正しく回るはずだった。


けれど今は、回転が乱れている。


速くなれば石臼が熱を持ち、遅くなれば麦が挽けない。


粉の出口には、半端に砕けた麦が詰まり、作業場の空気には白い粉がうっすら漂っていた。


神代澪は入口で足を止めた。


「……これは、入る前から危ない気がする」


ライカが鼻をひくつかせる。


「粉の匂い。あと、焦げる前の石みたいな匂い」


「焦げる前の石?」


「うん。熱い」


ミルカが水車の軸を見て顔をしかめる。


「石臼が熱を持ってる。水車の回転が安定してないせいだね」


ルシェリアは粉っぽい空気を見上げていた。


「粉塵が溜まりかけています。強い風を入れると舞います」


フィリアも眉を寄せる。


「水は動きたいのに、車にぶつかって乱れています」


調律核が赤く光る。


《リヴァール第一製粉所:到達》


《製粉所稼働率:二十二%》


《水車回転:不安定》


《石臼温度:上昇》


《粉塵濃度:上昇傾向》


《粉在庫:不足》


《パン屋組合供給:停止寸前》


《条件候補:麦は、粉にならなければ町へ広がらない》


「二十二%」


ライカが画面を覗き込む。


「ほぼ動いてないね」


「でも、完全停止じゃない」


澪は答えた。


「だから余計に危ない。中途半端に動いて、熱と粉が溜まってる」


製粉所の中では、すでに言い争いが始まっていた。


「もっと水門を開けろ!」


「開けたら石臼が焼ける!」


「粉が来なきゃパン屋は開けられないんだよ!」


「水車を壊したら粉どころじゃない!」


粉まみれの老人が、石臼の横で怒鳴っている。


大きな眉。


白い髭。


腕は細いが、目は鋭い。


製粉長らしい。


対して、入口側にはパン屋組合の者たちが集まっていた。


前に立つ女性は、腕を組み、粉袋を睨んでいる。


年は三十代半ばほど。


髪を布でまとめ、袖をまくった姿から、現場の人間だと分かる。


サヴィが小声で言った。


「粉まみれの爺さんが製粉長ハルム。あっちの姐さんがパン屋組合のネーラだ」


ネーラは澪たちを見るなり言った。


「王都の検査官だろうが、調律者だろうが、粉を出せるなら歓迎するよ。出せないなら邪魔だ」


「分かりやすい歓迎」


ライカが呟く。


ハルムが鼻を鳴らす。


「粉を出せと言うなら、水車を壊さない水を持ってこい」


ネーラが言い返す。


「粉がなければ、明朝からパン屋は閉める。粥だけで町を支えられると思うな」


「焼けた粉で腹を壊したいのか!」


「粉がなければ腹に入れるものがないんだ!」


怒鳴り合いは正しい。


どちらも間違っていない。


だからこそ厄介だった。


澪は調律核を確認する。


《青袋穀物:搬入可能》


《製粉工程:不安定》


《粗挽き/細挽き/粥用割麦:未分離》


《粉配布系統:停止》


《推奨対応:水車全開稼働》


「また全開」


澪はため息をついた。


「全開にしません」


ハルムが目を細める。


「分かってるじゃないか」


ネーラは眉をひそめた。


「じゃあ、粉はどうする」


「粉も分けます」


「また分けるのかい」


ライカが小声で言う。


「第五部でも完全に分ける部だね」


「第四部からずっとそう」


澪は頷き、製粉所の中央を指した。


「まず、麦を全部同じ粉にしようとしない。粗粉、細粉、粥用割麦、再挽き待ちに分けます。パン用の細粉だけを急ぐと、水車が持ちません」


ネーラが不満そうに言う。


「粗粉じゃ、うちの白パンは焼けない」


「でも、平焼きや粥、団子には使えます」


澪は言った。


「今は、町全体の空腹を下げることが優先です。細粉は病人や子ども向けの柔らかいパン、保存食、必要な分へ回す。全部を白パンにする余裕はありません」


ネーラはすぐには反論しなかった。


職人としては納得しにくい。


けれど、状況としては分かっているのだろう。


ハルムが石臼を叩いた。


「粉を分ける前に、水車だ。こいつがこの有様じゃ、粗粉すら詰まる」


ミルカは水車の水路へ向かった。


「見ます」


***


製粉所の裏に回ると、原因はすぐに見えた。


川から引いた製粉水路は、古い石組みの溝だった。


そこに水が流れ込み、水車の羽根を押している。


だが、水量が一定ではない。


上流から戻った水、荷船のために動かされた水門、岸辺の仮荷下ろし段で変わった流れ。


それらが重なり、水車へ入る水が強くなったり弱くなったりしていた。


さらに、水路の手前には藁くずや砂が引っかかっている。


ミルカが膝をつき、水路脇の石板を払った。


「ここにもある」


古い文字が出てきた。


ティナが読み上げる。


《麦を急がせるな》


《水車に拍子を与えよ》


《粗きは先に、細きは後に》


《熱き粉を袋に入れるな》


《粉の息を閉じるな》


ハルムが眉を寄せた。


「爺さんの爺さんが言ってたな。粉にも息がある、と」


ネーラが腕を組む。


「うちの親方も、焼きたての粉は荒いと言っていた」


「知っていたのに、今は急ぎすぎている」


澪は言った。


「急がない余裕なんかないよ」


ネーラの声が低くなる。


「店の前には、粉を待つ人が並んでる」


「はい。だから、全部を細粉にしない。先に粗粉と割麦を出します」


ミルカが水路を見ながら言う。


「水車には拍子が必要。全開でも停止でもなく、一定にする」


「どうやって」


ティナが聞く。


「三つ作る。流入口の藁止め、横逃がし水路、拍子板」


「拍子板?」


「水が強すぎる時は一部を逃がし、弱い時は羽根に集める板。完全自動は無理だけど、目盛りをつけて人が調整できる」


ライカが頷く。


「人力リズムゲームだ」


澪は思わず苦笑した。


「ゲームなら譜面が見えるけどね」


「調律核が譜面っぽいの出しそう」


その瞬間、調律核が表示を変えた。


《水車回転拍子:算出》


《推奨:三拍運用》


《一拍目:粗挽き》


《二拍目:割麦》


《三拍目:冷まし》


《細挽き:水位安定時のみ》


澪とライカは同時に黙った。


ライカが小声で言う。


「出たね」


「出たね」


「調律核、空気読むね」


「読みすぎて怖い」


セラフィナが記録板を開く。


「作業名を設定します。《粉挽き拍子》」


ハルムが鼻を鳴らした。


「悪くない名だ」


ネーラも小さく頷く。


「職人にも伝わる」


「では、その名で記録します」


セラフィナは満足そうに書き始めた。


作業はすぐ始まった。


まず、藁止め。


水路へ入る前に、細い枝と網布で藁くずや浮いた草を受ける。


詰まらせるためではない。


見える場所で止め、すぐ外せるようにするためだ。


次に、横逃がし水路。


水が強い時、すべてを水車へ当てず、横へ逃がす浅い溝を開ける。


逃がした水は下流へ戻す。


ただし、粉くずや泥を混ぜないよう、途中に小さな沈め石を置く。


最後に、拍子板。


水車の羽根へ入る水の角度を変える板だ。


ミルカが板に三つの印をつける。


粗。


割。


休。


「休?」


ネーラが聞く。


「冷ます時間」


ミルカが答える。


「休む時間なんかあるのかい」


ハルムが石臼を撫でた。


「休ませなきゃ、石も粉も死ぬ」


ネーラは唇を噛んだ。


「……分かってる。分かってるけど、町が待ってる」


澪は静かに言った。


「休みを入れた方が、結果的に多く出せます。石臼が止まれば、全部止まります」


ネーラは深く息を吐いた。


「分かった。粗粉でも、パン屋を動かす方法を考える」


「お願いします」


「ただし、食べられるものにする。職人の意地だ」


「頼もしいです」


その言葉に、ネーラの口元が少しだけ緩んだ。


***


最初の粉挽き拍子は、慎重に始まった。


水門を少し開ける。


水は藁止めを通り、余分な草を残して、拍子板へ向かう。


ミルカが板を「粗」の印へ合わせた。


水が水車を押す。


ごとん。


ごとん。


ごとん。


さっきより音が揃っている。


石臼が回り、青袋の麦が少しずつ砕かれていく。


粉出口から出たのは、細かい白粉ではなかった。


粗い。


ところどころ粒が残っている。


だが、焦げてはいない。


熱も強くない。


ハルムが手に取り、指で潰した。


「粗粉だ。粥と平焼きならいける」


ネーラも手に取り、匂いを嗅ぐ。


「水を少なめにすれば、薄焼きにできる。発酵させるパンは無理だが、腹には入る」


調律核が青く反応する。


《粗粉:生成成功》


《石臼温度:安定域》


《粉塵濃度:低下傾向》


次に、拍子板を「割」へ変える。


麦を完全な粉にせず、粥用に割る。


これなら製粉所の負荷がさらに低い。


緊急粥の大鍋へ回せる。


ベルドが割麦を見て笑った。


「こいつなら煮えるのも早い」


サヴィも頷く。


「船員飯ならこれで十分だ」


ライカが小声で言う。


「船員飯、ちょっと食べてみたい」


「今それ言う?」


「お腹空いた」


「私も」


三拍目。


「休」。


水を横へ逃がし、石臼を少し冷ます。


その間、粉受け台で粗粉を青、黄、赤に分ける。


青粉。


すぐ使える粗粉。


黄粉。


再挽きすれば細粉になる可能性があるもの。


赤粉。


湿りや焦げ、虫反応があるもの。


「粉でも赤黄青」


ライカが言う。


「完全に定着したね」


セラフィナが記録する。


「粉分け台、分類開始」


「今度は粉分け台」


「必要です」


ハルムの弟子たちが、粉を袋へ入れようとする。


だが、ネーラが止めた。


「熱を見ろ。熱い粉を閉じるな」


弟子が驚く。


「ネーラさんが製粉所の口癖を」


「パン屋だって粉で食ってるんだ。覚えるさ」


ハルムが小さく笑った。


「あんたがそれを言う日が来るとはな」


「明日もパン屋を開けたいからね」


空気が少しだけ変わった。


製粉所とパン屋は、これまで互いに要求し合っていた。


粉を出せ。


水車を壊すな。


細粉を寄こせ。


焦げ粉を渡すな。


けれど今は、同じ粉を見ている。


粗粉、割麦、黄粉、青粉。


同じものを、同じ名前で呼び始めている。


それは大きい。


「次、細挽きいけるか」


ネーラが聞く。


ミルカは水位を見た。


「まだ駄目。水が少し強い」


「待つしかないか」


「待った方がいい」


その時だった。


広場側から、数人の商人が製粉所へ入ってきた。


彼らはきれいな上着を着て、香油の匂いを漂わせている。


その中の太った男が言った。


「粗粉など市場価値が低い。青袋は細粉に回すべきだ」


ネーラの顔が険しくなる。


ハルムも眉を吊り上げた。


オルグが一歩前へ出る。


「現在は緊急供給中だ。粗粉と割麦は市民向けに回す」


商人は肩をすくめた。


「検査官殿、商取引を軽んじては困ります。細粉でなければパン屋組合の高級契約は履行できません。契約不履行となれば、町の信用が落ちる」


ライカが小声で言う。


「信用より、お腹じゃない?」


澪は商人を見た。


「粗粉でも食べられます」


「食べられるだけでは商売になりません」


商人は言った。


「それに、細粉を買える者に売れば、税収も上がる。救援はその後でもよい」


その瞬間、広場の方から子どもの泣き声が聞こえた。


粥を待つ列の声。


パン屋の前で待つ人々のざわめき。


澪の胸の奥が冷えた。


これもまた、流れの詰まりだ。


粉にする流れができても、その行き先を高値の契約にだけ流せば、空腹の人には届かない。


「粉の流れも、分けます」


澪は言った。


商人が眉をひそめる。


「また分けるのか」


「はい」


セラフィナが記録板を開いた。


「粉配分案。緊急粥用割麦、平焼き用粗粉、病人・幼児用細粉、商用細粉、再挽き待ち黄粉」


「商用細粉をゼロにはしません」


澪は続けた。


「町の信用も必要です。でも、今は救援分を先に固定します」


商人が反論する。


「誰の権限で」


オルグが冷たく言った。


「王都穀物局の緊急監査権限で」


ナジルも遅れて到着し、震える声で言った。


「都市配給担当官として、緊急粥用と平焼き用の粉を優先確保します」


ネーラが腕を組む。


「パン屋組合も乗る。白パンは減らす。代わりに平焼きと薄粥パンを出す」


商人は顔を赤くした。


「勝手なことを」


ハルムが粉まみれの手を見せた。


「勝手に急がせたら、粉は焦げる。焦げた粉は誰にも売れん」


沈黙。


商人は舌打ちしたが、それ以上は言わなかった。


調律核が表示を更新する。


《粉配分:暫定成立》


《緊急食用粉:確保》


《商用細粉集中:回避》


《市民不信:低下傾向》


《商会不満:上昇》


「不満は上がるんだ」


ライカが言う。


「上がるよね」


澪は答えた。


「でも、暴動よりはまし」


「ほんとそれ」


***


夜が近づく頃、製粉所はぎこちないながらも動き始めていた。


粉挽き拍子。


粗、割、休。


水位が落ち着いた短い時間だけ、細。


そしてまた休。


その繰り返し。


完全な効率ではない。


だが、止まらない。


石臼は焼けず、粉塵も減り、粗粉と割麦は市場へ運ばれていく。


ネーラのパン屋組合は、白パンではなく、薄焼きと粥パンを焼く準備を始めた。


ハルムの弟子たちは、粉分け台で青粉、黄粉、赤粉を分けている。


サヴィの船員たちは、荷船から製粉所への麦運びを手伝う。


ベルドは力仕事の班をまとめている。


ナジルは食料札と粉配布の記録を照合している。


オルグは商人たちの契約と緊急配分の線を引き直している。


セラフィナは、当然のようにすべてを記録している。


調律核が青く光った。


《第一製粉所:粉挽き拍子成立》


《水車回転:安定傾向》


《石臼温度:安定域》


《粗粉生産:開始》


《割麦生産:開始》


《細粉生産:限定》


《粉塵濃度:低下》


《パン屋組合供給:一部再開》


《中流—下流食料供給網:加工段階一部回復》


《条件候補:進行》


《麦は、粉にならなければ町へ広がらない》


澪は粉袋を運ぶ人々を見ながら、肩の力を少し抜いた。


「これで、粉は出せる」


ライカが伸びをする。


「やっとパン?」


「まだ焼けてない」


「知ってた」


「ごめん」


「ミオが謝ることじゃないけど、もう流れで分かる」


アオイが静かに言う。


「粉ができても、焼く場所が必要です」


「はい」


澪は頷いた。


「次は、そこです」


その瞬間、調律核が赤く点滅した。


《下流交易都市:新規異常》


《パン屋組合焼成炉:稼働率低下》


《燃料薪:不足》


《共同焼き場:閉鎖中》


《路地裏簡易炉:増加》


《火災リスク:上昇》


《難民区画:未認可炉使用》


《市場供給:粉から焼成への詰まり》


《次条件候補:粉は、焼ける火がなければ腹を満たせない》


「今度は火」


ライカが空を見上げた。


「農耕帯では火を止めて、今度は火を使わせるの?」


「使わせるというより、安全に使う」


澪は遠くの路地を見た。


夕暮れの町に、細い煙がいくつも上がっている。


製粉所から粉は出始めた。


だが、正規の焼成炉は燃料不足で止まり、共同焼き場は閉鎖され、路地裏では小さな火が勝手に焚かれ始めている。


空腹の人々は、粉が手に入れば焼こうとする。


場所がなければ、路地で焼く。


燃料がなければ、壊れた木箱でも何でも燃やす。


それはすぐ、火災になる。


ネーラが顔色を変えた。


「まずい。共同焼き場が閉じたままだと、みんな路地で焼く」


ハルムも低く言う。


「粉が出たせいで、火の問題が見えたか」


澪は調律核を握りしめた。


食料は、倉にあるだけでは救えない。


粒は、粉にならなければ広がらない。


粉は、焼ける火がなければ腹を満たせない。


そして火は、扱いを間違えれば町を焼く。


「共同焼き場へ行きます」


澪は言った。


「粉を、火事にしないために」


夕暮れのリヴァールで、水車の音の向こうから、焦げた木の匂いが流れてきた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


第50話では、製粉所と水車を扱いました。


第49話で、倉庫の在庫は《見える在庫台》へ、荷船の麦は《仮荷下ろし段》によって市場へ出せるようになりました。


しかし、町全体を支えるには、粒の麦だけでは足りません。


粥にはできますが、パン屋や市場へ広く回すには、麦を粉にする必要があります。


ところが、リヴァールの第一製粉所では、水位変動によって水車の回転が不安定になっていました。


速く回れば石臼が熱を持ち、粉が焼ける。


遅ければ挽けない。


水路には藁くずや砂が詰まり、作業場には粉塵が漂っていました。


今回の条件は、


《麦は、粉にならなければ町へ広がらない》


でした。


澪たちは、水車を全開にしませんでした。


水車を全開にすれば、一時的に多く挽けるように見えます。


しかし、石臼が熱を持ち、粉が焦げ、粉塵が舞い、最悪の場合は製粉所そのものが止まってしまいます。


そこで作ったのが、《粉挽き拍子》です。


水路の手前に藁止めを置き、余分な草や藁を見える場所で止める。


水が強すぎる時は、横逃がし水路で一部を逃がす。


拍子板で水車へ入る水の角度を調整し、粗挽き、割麦、休み、細挽きを切り替える。


すべてを細粉にするのではなく、町の状況に合わせて粉の種類を分ける。


これにより、製粉所はぎこちないながらも再稼働しました。


今回の重要な点は、「粉にも種類がある」ということです。


細粉だけが粉ではありません。


粗粉は平焼きや粥パンに使えます。


割麦は緊急粥に使えます。


黄粉は再挽き待ちとして残せます。


赤粉は食用に回さず、状態を確認します。


細粉は、病人や幼児向け、保存食、必要なパンへ限定して回します。


高級な白パンだけを作るのではなく、今すぐ空腹を下げるための粉を優先する。


これが今回の調律でした。


また、今回は商人との衝突もありました。


商人たちは、青袋の麦を市場価値の高い細粉へ回すよう求めました。


細粉でなければ高級契約が履行できず、町の信用が落ちるという理由です。


その言い分にも一理あります。


町の信用や商取引も、物流都市にとっては重要です。


しかし、今は暴動寸前の空腹があり、子どもや難民が粥を待っています。


そこで澪たちは、商用細粉をゼロにはせず、緊急粥用割麦、平焼き用粗粉、病人・幼児用細粉、商用細粉、再挽き待ち黄粉へ分けました。


ここでも、全部を一つの流れにしないことが大切でした。


結果として、第一製粉所では粉挽き拍子が成立し、粗粉、割麦、限定的な細粉の供給が始まりました。


パン屋組合も、白パンだけでなく、薄焼きや粥パンの準備を始めます。


しかし、問題はまた次へ進みます。


粉ができても、それを焼く場所がなければ人の口へ届きません。


リヴァールでは、焼成炉の稼働率が低下し、燃料薪が不足し、共同焼き場は閉鎖中でした。


その一方で、難民区画や路地裏では未認可の簡易炉が増え、火災リスクが上がっています。


次の条件候補は、


《粉は、焼ける火がなければ腹を満たせない》


です。


次回は、共同焼き場と火の問題へ進みます。


粉を、火事にしないための調律です。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:G(ChatGPT)

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