↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
徹夜続きのゲーム開発者、気づいたら自分が作ったはずの文明調律RPGに転移していました 第五部  作者: マスター


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/19

第65話 共有する布は、汚れも共有してしまう

第65話です。


第64話では、寝床入口の汚れを扱いました。


食料列の前では手を清める人が増えましたが、寝床に入る前の清めはまだ弱く、青床へ泥の足跡や濡れた裾、荷物の汚れが戻っていました。


澪たちは、《寝床くぐり》を作ります。


砂箱。


泥落とし布。


裾掛け紐。


小さな手清め用の柄杓。


絵板。


いきなりすべてを清潔にするのではなく、まずは青床へ泥の塊を入れないことから始めました。


しかし、寝床入口を整えても、寝床の中を動くものがあります。


共有毛布です。


病人にかける。


子どもにかける。


荷物の上に置く。


床へ落ちる。


また別の人へ渡る。


毛布が足りないからこそ、共有される。


けれど、共有する布は、温かさだけでなく、湿りや汚れも運んでしまいます。


今回の条件は、


《共有する布は、汚れも共有してしまう》


今回は、毛布と布の流れを少しずつ整えていきます。

共有毛布の端は、思ったより重かった。


神代澪がそっと持ち上げると、布の端から冷たい湿りが指に伝わってきた。


表面は乾いて見える。


でも、内側は湿っている。


ところどころに泥がつき、端には焦げた匂いも混ざっていた。


「これ、昨日は子どもにかけていました」


リーネが言った。


「その前は、熱のある人に。さらに前は、荷物の上に置いていたと思います」


ライカが鼻を近づけ、すぐ顔を引いた。


「いろんな匂いが混ざってる。寝床、煙、泥、汗、あと少し病人の匂い」


フィリアも表情を曇らせる。


「弱っている人に、このまま別の寝床から回すのはよくありません」


ミルカが毛布の重さを確かめた。


「濡れてる。これを青床に戻すと、床も湿る」


調律核が黄色く点滅する。


《共有毛布:湿り・汚れ蓄積》


《病人寝床/子ども寝床/荷物上を移動》


《青床への再汚染リスク》


《夜間冷却リスク:継続》


《条件候補:共有する布は、汚れも共有してしまう》


澪は毛布を見た。


食料と同じだ。


水と同じだ。


器と同じだ。


人の間を移動するものは、何かを運ぶ。


毛布は温かさを運ぶ。


けれど同時に、湿りも、汚れも、匂いも運ぶ。


「毛布を全部分けられますか」


リーネは首を振った。


「無理です。数が足りません」


「洗えますか」


「洗えば、乾くまで使えません」


「乾かせますか」


「場所が足りません。雨もあります」


澪は頷いた。


全部、分かっていた答えだ。


だからこそ、いきなり「共有禁止」にはできない。


共有しなければ凍える人が出る。


でも、何も決めなければ病気が広がる。


「まず、共有の仕方を分けます」


セラフィナが記録板を開いた。


「作業名を設定しますか」


澪は毛布の端を見た。


濡れた布。


乾いた布。


病人に使った布。


子どもに使う布。


荷物にかける布。


全部が同じ束に戻っている。


「《布まわし》」


セラフィナが頷く。


「記録します。《布まわし》」


澪は言った。


「布を止めるのではなく、回し方を決めます」


***


最初に、布を三つに分けた。


青布。


乾いている。


泥や強い匂いがない。


病人や子ども、青床に使える布。


黄布。


少し湿っている。


荷物に触れた。


床に落ちた。


でも、乾かせば使える布。


赤布。


病人の汗を多く吸った。


汚れ場や赤手に触れた。


強い臭いがある。


これは青床へ戻さない。


「赤布は捨てるのか?」


男が聞いた。


「捨てません」


澪は答えた。


「でも、今夜そのまま共有毛布には戻しません」


フィリアが続ける。


「赤布を子どもや病人へ回すと、体を冷やしたり、具合を悪くしたりするかもしれません」


トマが火受け帯から言った。


「火のそばにかけすぎるなよ。乾かすつもりで焦がす奴が出る」


「そこも分けます」


ミルカが地面に線を引いた。


乾かし場。


温め場。


隔離場。


荷布置き場。


「乾かす布と、温める布は同じじゃない」


ミルカは言った。


「濡れた布を火に近づけすぎると焦げる。煙も吸う。少し離して、風を通す」


ルシェリアが風を読む。


「この辺りなら、煙が寝床へ戻りにくいです。布を高く吊りすぎると、屋根の水を受けます。低すぎると泥が跳ねます」


ライカが言う。


「布にも高さがいるんだ」


「はい」


澪は頷いた。


「床につけない。でも屋根の水も受けない高さです」


リーネが絵板を見る。


「これなら説明できます」


絵板には、布の絵が三つ並んだ。


青い布は人へ。


黄色い布は乾かし場へ。


赤い布は隔離場へ。


荷物用の布には、袋の絵。


寝床用の布には、人の絵。


「荷物にかけた布を、すぐ人へかけない」


澪は言った。


「人にかけた布を、濡れた床へ置かない」


リーネは強く頷いた。


「それだけでも変わります」


「まずは、それだけです」


ここでも、いきなり完璧にはしない。


洗濯場も足りない。


乾燥棚も足りない。


布の数も足りない。


だから、最初の目標は一つ。


青床へ、湿った赤布を戻さない。


それだけだ。


***


布まわしは、すぐに反発を受けた。


「この毛布はうちのだ!」


「昨日、貸しただけだ!」


「病人に使ったから赤布なんて、失礼じゃないか!」


「赤って言われたら、汚いみたいじゃないか!」


澪は、そこで少し止まった。


たしかに、言い方がよくなかった。


赤布は、汚い人の布ではない。


危険な状態になった布だ。


人を責める言葉にしてはいけない。


「赤布は、人のことではありません」


澪は声を上げた。


「布の状態です。湿っている、強い匂いがある、病人に使った直後。そのまま次へ回さないという意味です」


リーネも続ける。


「誰が使ったかを責めるためではありません。次に使う人を守るためです」


フィリアが、熱のある子どもへかけられていた布を持ち上げた。


「この布は、この子を温めてくれました。だから役目を果たした布です。でも、今は休ませる必要があります」


「布を休ませる……」


母親が小さく呟いた。


「はい」


フィリアは優しく言った。


「乾かして、風を通してから、また使えるか見ます」


その言い方で、場の空気が少し和らいだ。


赤布は罰ではない。


休ませる布。


その表現は、居住帯の人々に届いた。


ライカが小声で言う。


「フィリア、言い方が上手い」


「本当に」


澪は頷いた。


言葉一つで、仕組みは受け入れられたり、拒まれたりする。


これも調律だった。


布置き場には、布札をつけることにした。


個人名ではなく、用途札。


寝床用。


病人用。


子ども用。


荷物用。


乾かし待ち。


休ませ布。


「所有札は?」


リーネが聞いた。


「必要です」


澪は答えた。


「ただし、大きく名前を晒さない。荷物札と同じように、持ち主控えと置き場控えにします」


マルセが横から言った。


「布は盗まれる。特に乾いた布はな」


リーネが顔をしかめる。


「だからみんな手元に置きたがるんです」


「分かります」


澪は言った。


「だから布置き番を置きます。乾かし場は見える場所にします。隠すと不信が出ます」


セラフィナが記録する。


《布まわし:用途札》


《所有控え札》


《布置き番》


《乾かし場:見える場所》


《赤布表現:休ませ布へ変更》


ライカが頷く。


「休ませ布の方がいいね」


「はい」


澪もそう思った。


***


乾かし場は、火受け帯の近くではなく、その少し横に作られた。


火に近すぎると焦げる。


煙を吸う。


遠すぎると乾かない。


だから、風の通る場所に低い干し縄を張る。


布が地面につかない高さ。


でも、屋根から落ちる水を受けない位置。


ミルカが支柱を立てる。


ルシェリアが風を整える。


トマが火の強さを見張る。


「焦がすなよ」


「分かってる!」


「昨日もそう言って焦がした奴がいる!」


若い男が目をそらした。


本当にいたらしい。


黄色い布は、干し縄へ。


青布は、寝床帯へ。


休ませ布は、隔離場へ。


ただし、隔離場と言っても閉じ込めるわけではない。


乾いた砂を置き、布を重ねず、風を通す。


病人用の布は、他と混ぜない。


子ども用の布は、小さく分ける。


荷物用の布は、寝床用へ戻す前に必ず黄布扱いにする。


「布が足りない」


リーネが言った。


「特に子ども用と病人用が」


澪は頷いた。


「食料の時と同じです。必要な場所と形を見ます」


サヴィが古い帆布の束を持ってきた。


「破れた帆ならある。毛布にはならないが、床からの湿りを少し防ぐ敷き布にはできる」


ミルカが帆布を広げる。


「厚い。直接肌にかけるには硬いけど、床との間に敷くなら使える」


フィリアが注意する。


「病人には、上に柔らかい布が必要です」


リーネが頷く。


「帆布は下。柔らかい布は上。分けましょう」


「布の上下も決めるんだ」


ライカが言う。


「はい」


澪は答えた。


「敷く布と、かける布は同じではありません」


また一つ、当たり前に見えることが線になった。


敷き布。


掛け布。


荷布。


休ませ布。


子ども布。


病人布。


乾かし待ち。


どんどん増える。


けれど、それぞれが混ざると、青床はすぐ黄床や赤床へ戻る。


少しずつ、布まわしは形になっていった。


調律核が青く光る。


《布まわし:仮運用》


《青布/黄布/休ませ布:区分開始》


《寝床用/荷物用:分離開始》


《乾かし場:形成》


《病人用布:一部隔離》


《子ども用布:一部確保》


《青床への湿布戻り:低下傾向》


***


夜になる前、ひとつ小さな事件が起きた。


東側仮小屋で、若い父親が休ませ布をこっそり持ち出そうとしていた。


見つけたのはライカだった。


「それ、まだ休ませ布」


男は動きを止めた。


腕の中には、眠っている幼い子どもがいる。


「寒がってるんだ」


男の声は低かった。


怒りではない。


焦りだ。


「でも、その布は湿ってる」


ライカが言う。


「分かってる。でも、ないよりましだ」


その言葉に、澪は胸が痛くなった。


ないよりまし。


避難居住帯では、その判断が何度も人を危険へ近づける。


湿った布でも、何もないより温かい気がする。


汚れた水でも、何も飲まないよりましに見える。


煙い火でも、寒いよりましに感じる。


その「まし」を否定するだけでは、誰も動かない。


澪は父親の前にしゃがんだ。


「その布を使う代わりに、下に敷く帆布を一枚回します。上には、青布を小さく分けます」


「青布は足りないんだろ」


「だから、子ども二人で一枚ではなく、肩と腹を覆う小分けにします。全部を包まなくても、冷えやすいところを守ります」


フィリアが頷いた。


「首元、腹、足元。全部を一枚で覆えないなら、冷えやすいところを優先します」


ミルカが破れた青布を持ってきた。


「大きな一枚じゃなく、小さく切れば使える」


男は迷った。


「切るのか」


「破れている部分を整えます。所有札は残します」


リーネが補足した。


「勝手に取り上げません。子ども用の小布として登録します」


男は、ようやく休ませ布を渡した。


「……頼む」


フィリアが子どもへ小布をかける。


下には帆布。


上には小さな青布。


足元には温めた石を布で包んで置く。


完璧な寝具ではない。


でも、湿った休ませ布をそのままかけるよりはよい。


調律核が青く反応する。


《休ませ布の青床再投入:回避》


《子ども用小布:形成》


《敷き帆布:使用開始》


《温め石:併用》


《夜間冷却リスク:低下傾向》


男は小さく頭を下げた。


澪も静かに頷いた。


ここでも、禁止だけでは足りない。


代わりの道が必要だった。


***


夜の外縁避難居住帯に、干し縄が並んだ。


青布。


黄布。


休ませ布。


荷布。


子ども用小布。


病人用布。


それぞれに小さな札がついている。


風が布を揺らし、火受け帯の熱が遠くから少しだけ届く。


寝床の入口では、砂箱で泥を落とす人がいる。


青床では、子どもが小さな布を抱えて眠っている。


湿った毛布が、何も考えずに次の寝床へ渡る流れは、少しだけ弱まっていた。


調律核が青く光る。


《布まわし:仮成立》


《共有毛布の無秩序移動:低下》


《湿布の青床再投入:低下》


《荷布/寝床布:分離開始》


《病人用布:一部専用化》


《子ども用小布:形成》


《乾かし場:稼働》


《夜間冷却リスク:低下傾向》


《条件候補:一部達成》


《共有する布は、汚れも共有してしまう》


澪は、干し縄の下で息を吐いた。


「一部達成」


ライカが隣で布札を見上げる。


「毛布も流れだったね」


「はい」


「食べ物、水、札、道、寝床、手、布……全部流れてる」


「そうですね」


澪は頷いた。


「流れるものは、運びます。良いものも、悪いものも」


その時、ルシェリアが風上を見た。


「風が変わります」


澪は顔を上げた。


干し縄の布が、さっきと逆向きに揺れ始めている。


火受け帯の煙が、わずかに乾かし場の方へ流れた。


さらにその先には、黄布と休ませ布が吊られている。


フィリアが眉をひそめる。


「煙を吸っています」


ミルカも言った。


「乾いても、煙臭くなる。病人用には戻せない」


調律核が黄色く点滅する。


《乾かし場:風向変化》


《火受け帯煙:布乾かし場へ接近》


《黄布/休ませ布:煙吸着リスク》


《病人用布への再利用適性:低下候補》


《次条件候補:乾かす場所にも、風の向きがある》


ライカが小さく言った。


「次は、干す場所?」


澪は頷いた。


「はい。乾かせば終わりではありません」


布は乾かす必要がある。


でも、煙を吸えば、また寝床へ戻せない。


湿りを取るだけでなく、風の向きを見なければならない。


澪は揺れる布を見つめた。


外縁避難居住帯の夜風は、火の煙を連れて、静かに向きを変えていた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


第65話では、共有毛布と布の流れを扱いました。


第64話で《寝床くぐり》が作られ、青床へ泥の塊や濡れた荷物を持ち込まない流れが少しずつ始まりました。


しかし、寝床の中には、別の形で汚れを運ぶものがありました。


共有毛布です。


病人にかける。


子どもにかける。


荷物の上に置く。


床へ落ちる。


また別の人へ渡る。


布は温かさを共有します。


けれど同時に、湿りや汚れも共有してしまいます。


今回の条件は、


《共有する布は、汚れも共有してしまう》


でした。


澪たちは、いきなり共有を禁止しませんでした。


毛布の数は足りません。


共有しなければ、寒さで弱る人もいます。


だから、まずは共有の仕方を分けることから始めました。


青布。


乾いていて、泥や強い匂いが少なく、病人や子ども、青床に使える布。


黄布。


少し湿っている、床に落ちた、荷物に触れたなど、乾かせば戻せる布。


休ませ布。


病人の汗を吸った、強い臭いがある、赤手や汚れ場に触れたなど、そのまま青床へ戻さない布。


ここで大事なのは、布の状態を、人への評価にしないことです。


赤布という言い方だと、使った人が責められているように感じる人もいました。


そこで、フィリアの言葉から「休ませ布」という表現に変えました。


布が役目を果たしたから、一度休ませる。


乾かし、風を通し、状態を見てから戻す。


そう言い換えたことで、人々は少し受け入れやすくなりました。


また、布の用途も分けました。


寝床用。


荷物用。


病人用。


子ども用。


敷き布。


掛け布。


乾かし待ち。


休ませ布。


布は数が少ないからこそ、用途を混ぜるとすぐに汚れが広がります。


荷物にかけた布をすぐ人へかけない。


床に落ちた布をそのまま青床へ戻さない。


湿った布を子どもや病人へかけない。


まずはその程度から始めました。


途中では、寒がる子どものために、父親が休ませ布を持ち出そうとする場面もありました。


ここで澪たちは、禁止だけで終わらせませんでした。


代わりに、敷き帆布、小さく切った青布、温め石を組み合わせました。


湿った布を使わせないためには、代わりの温め方が必要です。


これも今回の大事な点です。


結果として、《布まわし》は仮成立しました。


共有毛布の無秩序な移動は減り、湿った布の青床への再投入も少し下がりました。


病人用布や子ども用小布も、一部確保され始めました。


しかし、ラストでは新たな問題が見えます。


乾かし場です。


布は乾かす必要があります。


でも、火受け帯の煙を吸えば、乾いても病人用や子ども用には戻しにくくなります。


乾かせば終わりではありません。


どこで乾かすか。


どの風に当てるか。


煙を吸わないか。


それも見なければなりません。


次の条件候補は、


《乾かす場所にも、風の向きがある》


です。


次回は、乾かし場、火受け帯、煙、風向き、布の戻し方を扱います。


外縁避難居住帯は、少しずつですが、住める場所へ近づいていきます。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:G(ChatGPT)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。