↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
徹夜続きのゲーム開発者、気づいたら自分が作ったはずの文明調律RPGに転移していました 第五部  作者: マスター


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/19

第64話 寝床に入る前にも、外の汚れを落とさなければならない

第64話です。


第63話では、外縁避難居住帯で《手清め路》を作りました。


汚れ場を寝床から離しても、戻ってきた人の手が汚れていれば、食料や寝床へ汚れは戻ります。


そこで澪たちは、手を青手、黄手、赤手に分けました。


青手は食べ物を受け取ってよい手。


黄手は、泥や雨水、荷物運びの後の手。


赤手は、汚れ場、赤水、食べ残し、病人の汚れ布を扱った後の手。


汚れ場戻り口、食料列前、寝床入口に小さな清め場を置き、桶に直接手を入れず、柄杓で水を流す形に変えました。


しかし、食料列前では手を清める人が増えた一方で、寝床入口ではまだ清めが定着していません。


食べる前には洗う。


でも、寝る前には忘れる。


その結果、青床や共有毛布に、外の泥や汚れが戻り始めていました。


今回の条件は、


《寝床に入る前にも、外の汚れを落とさなければならない》


今回は、寝床入口の境界を少しずつ整えていきます。

青床へ続く泥の足跡は、思ったよりはっきり残っていた。


雨上がりの土。


濡れた裾。


荷置き場から運ばれた袋。


夜道を歩いた足。


それらが、細い線になって寝床帯へ入っている。


神代澪は、その足跡を見下ろした。


「食べる前は止められても、寝る前は抜けますね」


ライカが隣で頷く。


「寝床って、安心する場所だからかな。入る時に気が緩む」


「それは分かります」


澪も、正直なところ、今すぐどこかに倒れ込みたい。


体力ゲージはずっと赤い。


でも、その寝床が汚れていたら、休む場所が病の入口になる。


調律核が黄色く点滅していた。


《寝床入口清め:利用率低》


《寝床布/共有毛布への汚れ戻り:継続》


《幼児寝床周辺:黄手接触増加》


《濡れた裾/泥足跡:青床へ流入》


《条件候補:寝床に入る前にも、外の汚れを落とさなければならない》


リーネが困った顔で言った。


「食料列では声をかけやすいんです。食べ物を受け取る前ですから。でも寝床では……みんな疲れていて、早く横になりたがります」


「分かります」


「そこで止めると、嫌がられます」


「はい」


澪は寝床入口を見た。


入口は一つではない。


布の隙間。


荷物の横。


柱の間。


子どもがくぐれる小さなすき間。


人は、近いところから入る。


だから、入口を一つにしようとすれば、反発が出る。


でも、何も決めなければ、泥はどこからでも入る。


「まず、大きく変えすぎないようにしましょう」


澪は言った。


「入口を全部閉じるのではなく、よく使う入口にだけ、足落とし場を作ります」


セラフィナが記録板を開く。


「作業名を設定しますか」


澪は泥の足跡を見た。


外から寝床へ入る、その境目。


「《寝床くぐり》」


セラフィナが頷く。


「記録します。《寝床くぐり》」


ライカが首を傾げる。


「くぐり?」


「はい。寝床へ入る前に、外の汚れを少し落としてからくぐる場所です」


いきなり全員に完璧な手洗いと足洗いを求めるのではない。


まずは、泥を落とす。


濡れた裾を見る。


赤手のまま毛布へ触れない。


その程度から始める。


少しずつでいい。


続かない仕組みは、すぐ消えるからだ。


***


《寝床くぐり》は、最初は三つだけ作ることになった。


北側帆布小屋。


東側仮小屋。


病人と子どもが多い青床の入口。


ミルカが地面に短い線を引く。


「ここから先が寝床。ここがくぐり場」


用意したものは多くない。


乾いた砂を入れた浅い箱。


泥を落とすための粗い布。


濡れた裾を掛ける紐。


手清め用の小さな柄杓。


そして、青床へ入る前の絵板。


絵板には、足、手、裾、毛布の絵が描かれている。


ノアがそれを見て、すぐ声を張った。


「寝る前に、足ぱんぱん! 手さらさら! 裾は外!」


リーネが少し笑った。


「分かりやすいけれど、言い方が軽いですね」


「軽い方が覚えやすいかもしれません」


澪は言った。


実際、難しい言葉では動かない。


疲れている人には、短い言葉の方が届く。


最初に来たのは、小さな子どもを抱いた母親だった。


足元は泥で濡れている。


母親は寝床へ急ごうとしたが、リーネが声をかけた。


「ここで足の泥を落としてから入ってください」


「この子が眠ってしまいそうで……」


「少しだけでいいです」


フィリアが近づき、子どもの足元を見る。


「青床を守るためです。寝る場所が濡れると、また体が冷えます」


母親は少し迷った。


だが、子どもが咳をしたのを聞いて、足を止めた。


砂箱で泥を落とす。


粗布で足元を軽く拭く。


濡れた裾を少し外側へ払う。


それだけだ。


完全ではない。


でも、泥の塊は寝床へ入らなかった。


調律核が小さく青く光る。


《寝床くぐり:試行》


《泥足跡流入:軽減》


《青床湿り:低下傾向》


ライカが小さく頷いた。


「できた」


「一人目です」


「一人目、大事」


「はい」


続いて、荷物を持った男性が来た。


肩に担いだ袋の底が濡れている。


そのまま青床へ置こうとしていた。


ミルカが止める。


「その袋は、荷置き帯へ」


「寝床の横に置かないと不安なんだ」


「底が濡れてる。青床が黄床になる」


男は眉をひそめた。


「少しくらい……」


リーネが荷主札を差し出す。


「荷置き帯に置けば、札で戻せます。寝床を濡らすより安全です」


男は不満そうだったが、袋の底から水が落ちているのを見ると、ため息をついた。


「分かった。札をくれ」


荷物もまた、寝床へ汚れを運ぶ。


人の足だけではない。


それが、少しずつ見え始めた。


***


問題は、夜が近づくにつれて出てきた。


人が一斉に寝床へ戻り始めると、《寝床くぐり》が詰まったのだ。


「早く入れてくれ!」


「子どもが寝そうなんだ!」


「足を拭く布が足りない!」


「寒い!」


北側帆布小屋の入口で、人が止まりかける。


澪はすぐに判断した。


「全部を同じ入口で止めないでください。寝床くぐりを増やします」


ミルカが言う。


「小さいのでいい。完全な清め場じゃなくて、泥落としだけ」


「はい」


寝床くぐりを二段に分けた。


第一段、泥落とし。


足元の泥を砂で落とす。


第二段、手と裾確認。


赤手の人だけ、手清め場へ。


濡れた裾は、寝床の外側へ掛ける。


青手で、足元が大きく汚れていない人は、そのまま通す。


ここで全員を完全に洗わせようとしない。


いきなりやりすぎると、列が止まり、誰も守らなくなる。


「今日は、泥の塊を入れないことを目標にします」


澪は言った。


リーネが頷く。


「分かりました。まず泥の塊を止める」


セラフィナが記録する。


《寝床くぐり:第一段階》


《目標:泥塊流入の抑制》


《赤手は手清め場へ》


《濡れ荷物は荷置き帯へ》


《全員の完全洗浄は要求しない》


ライカが小声で言う。


「徐々にだね」


「はい」


澪は頷いた。


「徐々にです」


その時、年配の女性が文句を言った。


「昔から寝床なんて、少し汚れるものだよ。そんな細かくしていたら暮らせない」


澪はすぐに反論しなかった。


その言葉にも、現実がある。


外で暮らしている。


水は少ない。


布も少ない。


完全な清潔なんて無理だ。


「全部をきれいにするのは無理です」


澪は言った。


女性は少し驚いた顔をした。


「だから、まず寝る場所だけ守ります。食べる場所と、病人の寝床と、子どもの毛布。そこへ泥の塊と赤手を入れない。それだけから始めます」


女性はしばらく黙った。


それから、小さく言った。


「それだけなら、まあ……」


「はい。それだけです」


本当は、それだけでは足りない。


でも、最初から全部はできない。


まず一つ。


守れる線を引く。


そこから広げる。


外縁避難居住帯の人々には、もう疲れがたまっている。


正しすぎる決まりは、時に人を折る。


澪はそれを忘れないようにした。


***


夜が深まる頃、《寝床くぐり》は少しずつ形になった。


入口の砂箱。


泥落とし布。


裾掛け紐。


濡れ荷物の荷置き帯。


赤手の人を手清め場へ送る声かけ。


子どもたちは、また覚えが早かった。


「足ぱんぱん!」


「手さらさら!」


「毛布に泥、だめ!」


ノアが満足そうに頷く。


「いいですね!」


サヴィが横から言う。


「お前が一番楽しんでるだろ」


「はい!」


「否定しろ」


ライカが笑った。


その小さな笑いが、居住帯の空気を少し軽くした。


澪は調律核を見る。


《寝床くぐり:仮運用》


《泥足跡流入:低下》


《濡れ荷物の青床持込:低下》


《赤手の寝床接触:低下傾向》


《青床湿り:低下傾向》


《条件候補:進行》


《寝床に入る前にも、外の汚れを落とさなければならない》


「まだ一部達成まではいかない?」


ライカが聞く。


「もう少しです」


澪は答えた。


「寝床入口は、食料列より習慣になるまで時間がかかります」


「だよね。寝る前って、みんな疲れてる」


「はい」


その時、フィリアが青床の奥で声を上げた。


「澪さん、こちらを見てください」


澪が向かうと、そこには共有毛布があった。


何人かで使い回している大きな毛布。


表面は乾いて見える。


だが、端の方が湿っている。


足元にかけられたり、荷物の上に置かれたり、病人の体にかけられたりして、何度も場所を変えているらしい。


フィリアが言った。


「寝床入口で泥を止めても、共有毛布が汚れを運んでいます」


ミルカも毛布の端を見る。


「湿ってる。これを青床に戻すと、床も湿る」


リーネが顔を曇らせる。


「毛布は足りないんです。誰か一人のものにできなくて……」


調律核が黄色く点滅する。


《共有毛布:湿り・汚れ蓄積》


《病人寝床/子ども寝床/荷物上を移動》


《青床への再汚染リスク》


《夜間冷却リスク:継続》


《次条件候補:共有する布は、汚れも共有してしまう》


ライカが小さく言った。


「今度は毛布か……」


澪は頷いた。


「はい」


寝床入口で泥を落とす。


それだけでは足りない。


寝床の中を移動する布が、汚れと湿りを運ぶ。


でも、毛布は足りない。


分けたくても分けられない。


洗いたくても乾かない。


次は、共有する布の扱いだ。


澪は、湿った毛布の端を見つめた。


「次は、毛布と布の流れを見ます」


夜の外縁避難居住帯で、青床の入口には砂箱が置かれている。


その奥では、共有毛布が静かに湿りを抱えたまま、次の問題を示していた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


第64話では、寝床入口の汚れを扱いました。


第63話で《手清め路》が作られ、食料列前や汚れ場戻り口では、少しずつ手を清める流れができました。


しかし、寝床へ入る前の清めはまだ弱く、青床へ泥の足跡や濡れた裾、荷物の汚れが戻り始めていました。


今回の条件は、


《寝床に入る前にも、外の汚れを落とさなければならない》


でした。


澪たちは、いきなり完璧な入口管理を作ろうとはしませんでした。


まずは三か所だけ。


北側帆布小屋。


東側仮小屋。


病人と子どもが多い青床の入口。


そこに《寝床くぐり》を作りました。


用意したものも簡単です。


砂箱。


泥落とし布。


裾掛け紐。


小さな手清め用の柄杓。


絵板。


まずは、青床へ泥の塊を入れない。


濡れた荷物を直接置かない。


赤手のまま共有毛布へ触れない。


それくらいから始めました。


ここで大事なのは、いきなりすべてを清潔にしようとしないことです。


外縁避難居住帯には、水も布も余裕がありません。


人々は疲れています。


夜になれば、早く横になりたい。


そこで完璧な手洗い、足洗い、衣類の交換を求めても続きません。


だから今回は、「まず泥の塊を止める」ことを目標にしました。


少しずつ、できる線から始める。


これが今回の調律です。


結果として、《寝床くぐり》は仮運用され、泥足跡や濡れ荷物の青床への持ち込みは少し減りました。


しかし、ラストでは新たな問題が見つかります。


共有毛布です。


寝床入口で泥を落としても、共有毛布が病人寝床、子ども寝床、荷物の上を移動すれば、汚れや湿りも一緒に移動します。


毛布は足りません。


分けたくても分けられない。


洗いたくても、すぐには乾かない。


次の条件候補は、


《共有する布は、汚れも共有してしまう》


です。


次回は、共有毛布、濡れ布、乾かし場、病人用の布、子ども用の布の分け方へ進みます。


寝床の入口を整えた後は、寝床の中を動く布の流れを見ていきます。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:G(ChatGPT)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。