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徹夜続きのゲーム開発者、気づいたら自分が作ったはずの文明調律RPGに転移していました 第五部  作者: マスター


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12/15

第60話 食料の道を、荷車の列で塞いではいけない

第60話です。


第59話では、温かい食事を届けるための《湯気道》を扱いました。


病人や子どもに必要な柔食は、ただ作ればよいわけではありません。


冷めれば固くなり、水で戻したものは時間が経つと崩れやすくなります。


そこで澪たちは、温かい食事を届けるために、近温食、中継温食、分け戻し食を作りました。


さらに、青温、黄温、赤冷に分け、温度が合わないものは無理に元の行き先へ戻さず、適した場所へ回す流れを作ります。


しかし、食事を温かいうちに届けるには、道が必要です。


その道に、粉袋の荷車、青水樽、商用荷箱、避難してきた人々の荷物が詰まり始めました。


今回の条件は、


《食料の道を、荷車の列で塞いではいけない》


第五部・下流交易都市編の一区切りとなる回です。


食料は、倉から出し、粉にし、焼き、札で守り、列を越え、水と器を整え、残り物まで見て、ようやく人へ届き始めました。


最後に必要なのは、そのすべてを通す「町の道」です。

南側大通りは、道ではなく、詰まった川になっていた。


粉袋を積んだ荷車。


青水樽を乗せた台車。


商会の木箱。


空樽。


燃料薪の束。


避難してきた人々の荷物。


そのすべてが同じ通りへ流れ込み、動けなくなっている。


荷車の車輪は石畳の隙間にはまり、台車は横を抜けられず、肩に荷を担いだ人々は隙間を探して右往左往していた。


湯壺道として設定したはずの道も、半分塞がりかけている。


ノアが息を切らして叫んだ。


「ここです! このままだと橋下行きの湯壺が通れません!」


神代澪は、大通りの様子を見て、思わず立ち止まった。


「……これは、ひどい」


ライカが耳を伏せる。


「匂いも音もぐちゃぐちゃ。粉、湯、汗、焦り、怒り、あと壊れた車輪」


「壊れた車輪の匂いまで分かるの?」


「木が削れてる匂い」


「なるほど」


調律核が赤く点滅している。


《南側大通り:荷車滞留》


《湯壺道:閉塞予測》


《青水樽配送:遅延》


《粉袋搬送:遅延》


《商用荷箱:通路占有》


《避難荷物:路上滞留》


《温食配送:遅延再発リスク》


《条件候補:食料の道を、荷車の列で塞いではいけない》


大通りの中央では、商人たちが怒鳴っていた。


「うちの荷を先に通せ!」


「契約の荷だぞ!」


「粉が届かなければ焼き場が止まる!」


「水がなければ病人が困る!」


「こっちは家財を全部積んでるんだ!」


荷車の横では、避難してきた家族が荷物を守るように座り込んでいた。


壊れた家具。


布袋。


小さな箱。


鍋。


子どもの寝具。


彼らにとっては、それが生活のすべてなのだろう。


邪魔だからどけ、と言えば済む話ではない。


サヴィが苦い顔をする。


「港でもある。荷を急がせるほど、道を詰まらせる」


ミルカは石畳を見ていた。


「荷車が向かい合ってる。これ、片方が下がらないと動かない。でも後ろも詰まってる」


アオイが周囲を見る。


「押せば危険です」


「押したら崩れますね」


澪は頷いた。


この状況で力ずくに動かせば、荷車が倒れ、粉袋が破れ、青水樽が割れ、湯壺がこぼれる。


道を開けるつもりで、食料そのものを失うことになる。


オルグが眉を寄せた。


「通行停止を命じるか」


「全部止めると、さらに詰まります」


澪は答えた。


「全部通しても詰まる。全部止めても詰まる」


ライカが小声で言う。


「いつものやつ」


「はい。いつものです」


澪は深く息を吸った。


道もまた、分けるしかない。


食料と同じ。


水と同じ。


札と同じ。


器と同じ。


同じ道へ全部を流せば、全部が止まる。


「道を分けます」


セラフィナが記録板を構えた。


「作業名を設定しますか」


澪は、大通りを見た。


食料の道。


水の道。


湯の道。


人の道。


荷の道。


それらが重なり、今、町の血管のように詰まっている。


「《通り分け》」


セラフィナが頷く。


「記録します。《通り分け》」


ノアが目を輝かせた。


「道を、分けるんですね!」


「はい」


澪は言った。


「速い道、重い道、熱い道、待てる道。全部同じにしません」


***


通り分けは、まず荷の種類を分けるところから始まった。


第一は、青急ぎ道。


病人用の青温食。


湯壺。


青水樽。


火消し水。


薬と病人相談に関わるもの。


これは最優先で通す。


ただし、荷車ではなく、小籠、二人持ち、軽い台車に限定する。


大きな荷車を青急ぎ道へ入れると、道が詰まるからだ。


第二は、黄食料道。


粉袋、割麦、粗粉、青器、黄器、燃料の青薪。


すぐ必要だが、青急ぎ道ほど一刻を争わないもの。


荷車は一方向のみ。


向かい合わせ禁止。


第三は、戻り道。


空樽、空籠、使い終わった器、赤水戻し用の空桶、残り止まり台へ向かう回収籠。


これを忘れると、次の配布が止まる。


第四は、商用待ち場。


商会の荷箱、契約品、急がない商品。


完全に止めるわけではない。


ただし、時間帯を決めて通す。


第五は、避難荷置き場。


避難してきた人々の家財を、道の上ではなく、一時的に置く場所。


ただし、ただ奪うように移すのではない。


預かり札を出す。


誰の荷か分かるようにする。


ライカが板を見て言った。


「また札が出た」


「荷物は生活そのものです。勝手に動かしたら、今度は荷物の暴動になります」


「荷物の暴動……ありそう」


本当にありそうだった。


大通りの横には、古い馬車待機場があった。


今は壊れた木箱や空樽が積まれ、半分物置になっている。


ミルカがそこを見て言った。


「ここ、避難荷置き場にできる。床は石。屋根も少し残ってる」


サヴィが頷く。


「船荷の一時置きにも使ってた場所だ。荷札をつければ、盗難も減る」


セラフィナが即座に板へ書く。


《避難荷置き場》


《預かり札:発行》


《荷主札:本人》


《控え札:台帳》


《荷置き番:二名》


避難してきた男性が顔をしかめた。


「荷物を置けって言うのか。盗まれたらどうする」


澪は彼を見る。


「預かり札を出します。荷物を置く場所には見張りを置きます。道の上に置き続けると、食料も水も通れません」


「食料が通れば、俺たちにも来るのか」


「はい」


フィリアが静かに言った。


「道が通れば、あなたたちの列にも届きます」


男性はまだ不安そうだった。


だが、隣で子どもが眠そうに座り込んでいるのを見て、ゆっくり荷物を持ち上げた。


「……分かった。預かり札をくれ」


一人が動くと、少しずつ他の人も続く。


荷物を置く。


札を受け取る。


荷置き番が番号を読み上げる。


セラフィナが記録する。


ノアが絵板を掲げる。


荷物の絵。


札の絵。


戻る矢印。


「荷物はここ! 札をなくさないでください!」


ライカが小声で言う。


「ノア、声が通るね」


「走り手より案内向きかもしれません」


「本人に言ったら喜びそう」


大通りの中央では、次に荷車の向きが問題になった。


粉袋の荷車が南へ向かいたい。


青水樽の台車が北へ向かいたい。


商用荷箱の車が横から出たい。


全部が同じ場所で向かい合っている。


ミルカは石畳に線を引いた。


「ここから向こうは一方通行。戻りは裏通り。荷車をここで向かい合わせにしない」


商人の一人が怒る。


「裏通りは遠い!」


サヴィが即座に言う。


「近い正面道で詰まるより、遠い裏道で動く方が早い」


「うちの荷箱は重いんだ!」


「だから重い荷は黄食料道じゃなく、商用待ち場だ。時間まで待て」


「そんな勝手な!」


マルセが少し離れた場所から、その商人を止めた。


「待て」


「マルセさん!」


マルセは大通りを見回し、澪の板へ視線を移した。


「商用荷を今通しても、詰まって動かない。通れる時間を決めた方が、結果的に早い」


澪は少し驚いた。


以前なら、真っ先に商用枠を押し込もうとしていた人物だ。


マルセは澪の視線に気づき、肩をすくめた。


「信用は道にも宿る。商人が道を詰まらせれば、町で商売できなくなる」


オルグが低く言う。


「よい理解だ」


「褒められている気がしませんな」


「褒めている」


「それはどうも」


商用待ち場が作られ、商用荷箱は一時的に脇へ寄せられた。


完全停止ではない。


青急ぎ道と黄食料道が通った後、時間を区切って通す。


商人たちは不満そうだったが、道が少しずつ動き始めると、不満の声は弱まった。


動かない列より、動く順番の方がましなのだ。


***


最初に通したのは、青急ぎ道だった。


橋下中央へ向かう青温の湯壺。


病人用の柔食。


青水の小樽。


火消し用の小桶。


大きな荷車ではなく、二人持ちの湯壺と小籠で通す。


アオイが前に立ち、人を押しのけるのではなく、道の線を保つ。


「青急ぎ道です。立ち止まらないでください」


ライカが横から声をかける。


「熱い湯が通る! ぶつかると危ない!」


ノアも叫ぶ。


「橋下の病人分です! 道を空けてください!」


今回は、湯壺道が塞がれていない。


橋下の湯継ぎ台へ、青温が届く。


ガドが受け取り、橋下中央へ下ろす。


調律核が青く光る。


《青急ぎ道:通行成功》


《橋下中央:青温維持》


《湯壺遅延:回避》


次は黄食料道。


粉袋の荷車。


割麦。


青器の木箱。


燃料の青薪。


一方向に進ませる。


戻る荷車は裏通りへ。


荷車同士が向かい合わないだけで、道は驚くほど動いた。


ミルカが石畳を見ながら言う。


「向かい合いをなくしただけで、かなり違う」


サヴィが頷く。


「川の船と同じだ。狭い水路で向かい合えば、どっちも止まる」


ハルムが粉袋の荷車を見送る。


「これで製粉所も止まらん」


ネーラは共同焼き場の方を見て頷いた。


「粉が来れば焼ける。焼ければ配れる」


トマが燃料の青薪を確認する。


「赤材を混ぜるなよ!」


「混ぜてません!」


若い職人が叫び返す。


「よし!」


次は戻り道。


空樽。


空籠。


使い終わった青器。


赤水桶。


食べ残し籠。


これらは目立たない。


だが、戻らなければ次の便が出ない。


「戻り道って、地味だけど大事だね」


ライカが言う。


「はい」


澪は頷く。


「配る道だけ作って、戻る道を作らないと、容器が消えます」


「容器が消える」


「実際、どこかで止まります」


セラフィナが記録する。


《戻り道:開始》


《空器回収:改善》


《赤水桶回収:改善》


《届け籠不足:低下》


調律核が青へ変わる。


《南側大通り:滞留低下》


《湯壺道:確保》


《青水樽配送:再開》


《粉袋搬送:再開》


《戻り容器回収:再開》


《商用荷箱:待機場へ移動》


《避難荷物:路上滞留低下》


「動いてる」


ノアが感動したように言った。


「本当に、道が動いてる」


澪も、ほんの少しだけ笑った。


「道は、線を引いただけでは動きません。人が納得して、守って、戻す道まで作って、ようやく動きます」


ノアは真剣に頷いた。


「覚えます」


その時、遠くで大きな音がした。


木が割れる音。


人々の悲鳴。


南側大通りの端、商用待ち場の近くで、荷車の一つが傾いていた。


積まれていた木箱が崩れ、青急ぎ道へ倒れ込もうとしている。


中身は商用の陶器らしい。


割れれば破片が道に散る。


湯壺が通れなくなる。


マルセが叫んだ。


「止めろ! 箱を押さえろ!」


アオイがすぐに走る。


「支えます!」


だが、荷車の反対側には、避難荷置き場へ向かう家族がいた。


押し返せば、そちらに倒れる。


ミルカが叫んだ。


「そのまま押すな! 車輪の下に石!」


ライカが子どもを抱えた女性を誘導する。


「こっち! 荷置き場の線の内側へ!」


ルシェリアが風を押さえる。


強い風が入れば、木箱の上にかけた布があおられ、さらに崩れる。


サヴィが縄を投げ、荷車の上部を引く。


「倒れる方じゃなく、上へ持たせろ!」


マルセの手下たちも動いた。


彼らは最初、荷を守るためだけに動いた。


だが、澪が叫ぶ。


「青急ぎ道側を開けてください! 箱を道へ落とさないで!」


「分かっている!」


マルセが歯を食いしばって答えた。


商用荷箱を守ることと、食料道を守ること。


今は同じ方向を向いている。


ミルカが車輪の下へ石を噛ませる。


アオイが盾で荷箱を受ける。


サヴィの縄で荷車の傾きが止まる。


マルセの手下が箱を一つずつ下ろす。


ノアが周囲へ叫ぶ。


「青急ぎ道、止まらないで! 湯壺は左へ迂回!」


澪は調律核を見る。


《商用荷車傾斜:発生》


《青急ぎ道閉塞リスク:高》


《避難荷置き場巻き込みリスク:中》


《応急支持:進行》


《代替青急ぎ道:左側小路》


「左側小路、湯壺は通れますか」


ミルカがちらっと見る。


「小籠なら通れる。湯壺は二人持ちならぎりぎり。ただし荷車は無理」


「湯壺だけ迂回!」


ノアが走る。


今度は、勝手な近道ではない。


湯壺道として確認した道だ。


ノアは青急ぎ札を掲げる。


「湯壺だけ通します! 荷車は入らないでください!」


小路の人々が道を空ける。


湯壺はこぼれず通った。


傾いた商用荷車は、道へ倒れずに済んだ。


調律核が黄色から青へ変わる。


《商用荷車傾斜:安定》


《青急ぎ道閉塞:回避》


《避難荷置き場巻き込み:回避》


《代替青急ぎ道:機能》


「危なかった」


ライカが息を吐く。


マルセも額の汗を拭った。


「商用待ち場にも、積み方の規則が必要だな」


トマが火かき棒で地面を叩く。


「今さらかい」


マルセは苦笑した。


「今さらでも、ないよりはましだ」


澪は頷いた。


「待ち場も、ただ置くだけでは駄目です。高く積みすぎない。青急ぎ道側へ崩れない向きに置く。壊れやすいものは内側へ」


セラフィナが記録する。


《商用待ち場規則追加》


《高積み禁止》


《青急ぎ道側への崩落防止》


《壊れ物内側》


《待機時間札》


「待つ場所にもルールがいる」


ライカが言う。


「はい」


澪は答えた。


「待っているものも、流れの一部です」


***


昼過ぎには、南側大通りは完全ではないが、道として動いていた。


青急ぎ道。


黄食料道。


戻り道。


商用待ち場。


避難荷置き場。


小籠道。


湯壺道。


荷車道。


代替青急ぎ道。


線と札と絵板だらけだ。


けれど、通りは詰まっていない。


湯壺が橋下へ届く。


粉袋が製粉所へ届く。


青水樽が水器渡し場へ届く。


空器が戻る。


赤水桶が戻る。


商用荷箱も、決められた時間に通る。


避難してきた家族は、荷物を道からどけても、預かり札で戻れるようになった。


道の上で座り込んでいた人々が、少しずつ荷置き場や待機所へ移っていく。


調律核が青く光る。


《通り分け:仮成立》


《南側大通り滞留:大幅低下》


《湯壺道:確保》


《青水樽配送:安定》


《粉袋搬送:安定》


《戻り容器回収:安定》


《商用荷箱:時間帯通行へ移行》


《避難荷物:預かり札運用開始》


《温食配送遅延:低下》


《条件候補:一部達成》


《食料の道を、荷車の列で塞いではいけない》


澪は、通りの端で大きく息を吐いた。


長かった。


本当に長かった。


倉庫から始まった食料の流れは、ここまで来てようやく町の道へつながった。


セラフィナが静かに調律核の表示を読み上げる。


《下流交易都市リヴァール:食料供給網再計算》


《倉庫在庫公開:成立》


《仮荷下ろし段:成立》


《粉挽き拍子:成立》


《焼き火拍子:成立》


《焼き上がり流路:成立》


《信じ札流路:成立》


《届け食路:成立》


《水器渡し:成立》


《赤水戻し路:成立》


《残り止まり台:成立》


《食べ形表:成立》


《湯気道:成立》


《通り分け:成立》


《市場暴動予測:解除》


《緊急食到達率:上昇》


《実食量:上昇》


《食料廃棄・残渣誘引リスク:低下》


《水質悪化リスク:低下》


《下流交易都市ヘックス局所臨界:回避》


ライカが目を丸くした。


「解除って出た」


アオイも静かに微笑む。


「市場暴動予測が、解除されました」


ミルカが座り込みそうになりながら言う。


「やっと?」


トマが火かき棒を肩に担ぐ。


「まだ炉は直ってないよ」


ネーラが薄焼きを抱えて言う。


「パン屋も通常営業じゃない」


ハルムが粉袋を見て鼻を鳴らす。


「製粉所も仮だ」


サヴィが川の方を見る。


「船も全部は動いてない」


オルグが記録板を閉じる。


「それでも、暴動は避けた。食料は届き始めた」


ナジルは、少し涙ぐんでいた。


「町が、動いています」


澪は大通りを見た。


まだ混雑はある。


まだ不満もある。


すべての人が満腹になったわけではない。


商人も、難民も、市民も、役人も、職人も、明日にはまた別の問題で衝突するだろう。


それでも、食料が倉で止まり、人々が市場で爆発する未来は遠ざかった。


少なくとも、今は。


調律核がさらに表示を重ねる。


《エターナル出現予測:再計算》


《下流交易都市ヘックス:直接介入条件未達》


《広域食料供給網:短期安定化》


《長期課題:継続》


澪はその文字を見て、膝から力が抜けそうになった。


ライカがすぐに支える。


「今、倒れかけた」


「体力ゲージが……」


「赤?」


「もう、色が見えません」


「それは休んで」


「はい……」


だが、休む前に、もう一つ表示が出た。


それは、第五部の終わりを告げるものではなく、次の場所を示すものだった。


《広域難民移動:再計算》


《仮小屋群:滞留長期化》


《橋下区画/北岸仮小屋群/旧船溜まり水上小屋:一時居住化》


《住居密度:危険域》


《夜間冷却:高》


《糞尿処理:未整備》


《井戸・青水系統への二次汚染リスク》


《疾病発生予測:上昇》


《次期調律対象候補》


《外縁避難居住帯》


《条件候補:屋根があっても、住める場所とは限らない》


澪は、何も言えなかった。


食料は届き始めた。


だが、食料を受け取った人々が、どこで暮らすのか。


橋下で寝る人。


仮小屋に押し込まれる人。


水上小屋に残る人。


住む場所が壊れていれば、食料を届けても、病気と寒さが次に来る。


ライカが表示を見て、小さく呟いた。


「次は、住む場所?」


フィリアが橋下の方を見る。


「食べられるようになった人たちが、今夜どこで眠るのか」


アオイが盾を持ち直す。


「守る場所が、また変わりますね」


澪は疲れた身体で、それでも頷いた。


「はい」


下流交易都市の食料の流れは、ようやくつながった。


しかし、食べた人が眠る場所は、まだ調律されていない。


夕暮れのリヴァールで、南側大通りに湯気道の白い線が流れていく。


その先の橋下では、仮の布屋根が風に揺れていた。


第五部は終わる。


けれど、町に集まった人々の夜は、まだ終わっていなかった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


第60話では、下流交易都市リヴァールの道と荷車の詰まりを扱いました。


第59話で《湯気道》が作られ、温かい食事を冷める前に届ける流れができました。


しかし、湯壺や青水樽、粉袋を運ぶためには道が必要です。


その道に、粉袋の荷車、青水樽、商用荷箱、避難してきた人々の荷物が詰まり始めました。


今回の条件は、


《食料の道を、荷車の列で塞いではいけない》


でした。


澪たちは、道も一つにまとめませんでした。


青急ぎ道。


病人用の青温食、湯壺、青水樽、火消し水など、一刻を争うものを通す道です。


ただし、大きな荷車ではなく、小籠、二人持ち、小台車に限定しました。


黄食料道。


粉袋、割麦、粗粉、青器、黄器、青薪など、すぐ必要だが青急ぎ道ほど急がないものを通す道です。


ここでは、一方通行が重要になりました。


戻り道。


空樽、空籠、使い終わった器、赤水桶、食べ残し籠などを戻す道です。


配る道だけでなく、戻す道がなければ、次の便は出せません。


商用待ち場。


商会の荷箱や契約品を完全に止めるのではなく、時間帯を決めて通す場所です。


商取引も都市には必要です。


ただし、緊急食料の道を塞がないよう、待つ場所と時間を分けました。


避難荷置き場。


避難してきた人々の荷物を、道の上ではなく一時的に置く場所です。


ただし、荷物は生活そのものです。


勝手にどかせば不信と混乱が生まれます。


そこで、預かり札を出し、荷主札と控え札で管理する形にしました。


今回の大事な点は、道もまた「流れ」だということです。


道幅があるから通れるわけではありません。


誰が、何を、どの順番で、どちら向きに通るのか。


戻るものはどこを通るのか。


待つものはどこで待つのか。


それを決めなければ、道はすぐに詰まります。


また、今回は商用荷車の傾きによる危機も起きました。


商用荷箱が青急ぎ道へ倒れ込めば、湯壺道が塞がり、病人用の温食が遅れます。


澪たちは、荷車を力任せに押すのではなく、車輪の下に石を噛ませ、縄で支え、荷を一つずつ下ろし、代替青急ぎ道を使って湯壺だけを通しました。


この結果、商用荷箱も食料道も守ることができました。


商用を敵にするのではなく、商用にも待ち方と積み方の規則を作る。


ここも、第五部らしい調律だったと思います。


今回で、第五部・下流交易都市編は一区切りです。


リヴァールでは、次のような流れが作られました。


倉庫在庫公開。


仮荷下ろし段。


粉挽き拍子。


焼き火拍子。


焼き上がり流路。


信じ札流路。


届け食路。


水器渡し。


赤水戻し路。


残り止まり台。


食べ形表。


湯気道。


通り分け。


食料は、倉にあるだけでは人を救えません。


船から降ろし、粉にし、焼き、値段だけで偏らないようにし、札の信用を守り、列に来られない人へ届け、水と器を整え、汚れた水を処理し、食べ残しを管理し、食べられる形にし、温かいうちに届け、最後に道を通す。


ここまで来て、ようやく下流交易都市の市場暴動予測は解除されました。


下流交易都市ヘックスの局所臨界も回避され、エターナルの直接介入条件には達しませんでした。


しかし、物語はここで終わりません。


食料が届き始めたことで、次に見えてきたのは「住む場所」の問題です。


橋下区画。


北岸仮小屋群。


旧船溜まり水上小屋。


そこに集まった人々は、食べ物を受け取れるようになっても、密集した仮住まいで眠っています。


夜間冷却。


糞尿処理の未整備。


井戸や青水系統への二次汚染。


疾病発生予測。


次の条件候補は、


《屋根があっても、住める場所とは限らない》


です。


次回からは、外縁避難居住帯へ進みます。


食料の次は、住まいと衛生。


食べた人が、明日も生きるための場所をどう整えるのか。


第六部へ向けて、物語は次の段階へ進みます。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:G(ChatGPT)

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