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9話 魔法が使えるようになった

あの後、営業車を職場に戻して、仕事を終わらせて、早退し自宅に帰った。


俺の体がどうにかなったのを、ユウネに聞いてみるためだ。


俺は椅子に座っているが、ユウネは床に正座をしてしょんぼりしている。


「いや、責めているわけじゃない。

俺の体の異変を教えてくれ」


じゃないと、今日みたいな危ないことが連発しかねない。人が死ぬ。


「結論から言うと、異世界の食べ物を食べたことによる、体の適応です。要するに、魔法が使える体になりました」

「そうか」


驚きつつも、何となくワクワクしている。

魔法が使えるということは、魔法使いになったということだ(小泉構文)


「元の体に戻す方法もありますが」

「今のところリスクは、魔法の暴発だけか? 寿命が縮むとかは?」

「いいえ。逆に寿命は伸びます」

「お、おう。まあそこは後で考えよう。

まずは安全な魔法の行使を焦点に、事実の確認と、今後の課題と対策を挙げていこうか」

「会社の事故発生対応みたいですね?」


みたいじゃなくて、そのものだ。


◇ ◇ ◇ ◇


事実:異世界の食材を食して、俺こと紐之(ひもの)屑代郎(くずだろう)は魔法が使える体になった。魔法は使えば使うほど体の魔力総量と熟練度が上がる。魔力は自然回復する、とくに寝れば大きく回復する。



課題:今後俺以外の地球人が魔法を使えるようになったら大変なことになりそうだ。



対策:異世界の食材を俺以外に絶対に渡してはいけない。



「とまあ、こんなところか」


ユウネからの話を俺なりに咀嚼して、まとめてみた。


「ちなみに、今のところ異世界の食材を渡した人は居るのか?」

「いえ、クータ様以外の人には渡してはいません」

「なぁーんむ」


アインがテーブルに上がり、俺のコップの水を飲む。いつもの光景だ。


「あ」

「ん?」

「なぁおー」

「それ、エリクサー入りの水です」

「おい!?」


アインからコップを取り上げる。

アインは二足歩行して前足を合わせて、ちょうだいちょうだいと前足を拝むかんじにふるふるさせる。


「あ、アイン、何ともないのか?」

「なぁんなぁん」

「一応、毒にはならないはずですが。

アインさんも、魔法が使えるようになってますね。

いえ、地球の猫はもともと魔法が使えるみたいですし、まぁそんなに大事にはならないでしょうか。体内の魔力量が増えたくらい?」

「サラッと凄いこと言わなかったか?」


聞かなかったことにしよう。

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