第35話 あるガンマンの嘆き
次篇予定がサンコイチになって大作化、しかも、一番難しい問題を巻き込んだので大苦戦。更に、父が調子を崩して執筆時間も取れず。
生存報告がてらの小篇です。
「チクショー! 何で俺は強くならないんだ!」
ちょっと、うるさいですよ。また摘まみ出されても知りませんよ。
ここはテキサスのバー、よくカウボーイが集うことで知られています。
「やっぱり剣とか使うしかないんじゃないか?」
「俺はガンマンなんだ! ソードマンじゃねえー」
彼らの牧場の牛さん達は全てダンジョンに入りました。まだ、ダンジョンを信用しない者達が多い中では少数派。共和党の強い土地柄、ダンジョンを排斥しようとして、多くの男達がダンジョンに喰われました。近くでは彼らの牧場だけがダンジョンを受け入れました。
時間的に言えば、まだ、前大統領は喰われてません。もう数日ですが。もちろん、彼らはそんな事になるなんて知りません。
都市圏では、ダンジョンを取り合ったり、ダンジョンその物を否定して使わせないようにしたりと、忙しいです。
でもここは車が無いと隣近所にも行けない草原地帯、わざわざ隣の牧場にできたダンジョンにちょっかい出したりしません。信仰と折り合えれば、そんな面倒くさい事しません。
彼らはゆる~い信仰心の持ち主で、親族のオーナー社長達と「冒険だー」と言ってダンジョンに乗り込んで、ヤンチャしました。
もちろん銃で!
でも、デカさ三割増しのアフリカゾウは反則じゃないでしょうか。みんなでライフルで撃ちまくりましたが、倒れるまでは70キロ位で追っかけて来ました。バギーから振り落とされそうになりながら必死で逃げました。なのに残ったのは魔石の他に象牙が二本、あの恐怖と比べると割に合いません。ここに来た二人を除くと冒険熱は低下、今はダンジョンの開発を計画しています。
「あなた方はダンジョンに潜っているんですかな?」
マスターが話し掛けて来ました。頼んでもいないビール二本持ってますから悪い話ではないでしょう。それに、いつもは映画よろしく、カウンターをすべらせてきます。ビールの小瓶でとか、中々テクニックがいりますよね。
「ああ。牧場に出来たんでな」
「どこの牧場にもダンジョンは出来たそうですよ」
「そうなのか? 俺達は目の前のダンジョンに夢中で他所の事は知らないんだ」
「どうもそうみたいですよ。アフリカとか中央アジアとかの遊牧民の村にも出来たとか」
「そっかぁ。そこの連中は強くなってるんだろうなー」
「あなた方は強くならないので?」
「俺達のダンジョンは草原地帯が多くて銃が使い易い。いるのも銃で倒し易いのが多くてな、すると、ちっとも強くなってない」
「憎たらしいジャパニーズ・ビートル(マメコガネ)のでっかいヤツがいてさー、そいつらを踏んづけて回った時は確かに強くなったんだよ。でも銃を使ってるとちっとも強くなんねえー」
マスターが緑のビール瓶を置きます。
二人は残りを呷って礼を言いました。
この店にもビールサーバーはもちろんあります。でも、カウボーイ達はビール瓶を直に飲む人が多いです。豪快に、ワイルドに、でなけりゃ舐められます。
「ダンジョンから鳥が飛び立ったとも聞きますが、どうなんです?」
「あれは旅行バトだよ。俺達のダンジョンからも飛び立ったし、6階には影が出来るほど飛んでるよ」
「美味いのかい?」
おお、食べてる前提の質問ですよ。食べて無いなんてあり得無い、マスターは確信しています。
「「美味い!」」
「そうか、美味いか」
「これは絶滅する訳だと納得したよ」
「そんなにか! 俺も食べてみないとな」
「食べに来るなり撃ちに来るなり、歓迎するよー」
「ああ。だが気を付けてくれ。ダンジョンに入れた牛達が賢くなっていたずらして来る」
「それは前からだろう」
「いや、群れでちょっかい出して来たりはしなかった」
「群れでか!」
「そうだ」
「何かスキップするように巻き込んで来て、追い詰めたらツーンってように散って行ったり、牧羊犬仕込むのに基本の、取ってこーいやってたら、牛達が競って持って来た。ヤベー俺、あいつら出荷出来っきかなー」
カウボーイさんはカウンターに突っ伏しました。
「ああ、それは難しいですね」
「だろう、マスター」
酒場の夜は更けて行きます。
ジャパニーズ・ビートルはマメコガネ。日本由来の侵略的外来種です。アメリカ大陸にはマメコガネに相当する生物が存在しないので爆発的に繁殖しました。
この手の小話はいくらでもあるんですが、いつ、どこでと言うのが難しいですね。




