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第26話 避難の現場より

難産回です

精神的不安定さとかが上手く表現出来ていると良いのですが




「ここが今日からお前等の家だ」

 そう言って案内されたのは、良く言って小屋だ。覚悟していた状況の中でも最悪を極める。

 ここは、どうもカムチャツカ半島らしい。

 奴らは結局、ここがどこかさえ言わなかった。鉄道だったので、何となくの位置は分かった。とは言え、ペトロパブロフスクカムチャツキーの手前で降ろされると、多分、カムチャツカ半島のどこかくらいしか分からない。

 そして小屋だ。

 4×6メートルくらいだろうか。キッチンもトイレもない。

 ロシアの軍人は、ニタニタと笑いながら去って行った。この村の住人との橋渡しもない。

 ウクライナ第2の都市ハルキウから脱出できず、ロシア軍によって後送された先がここだ。

 着の身着のままの我等4人、ここに住めと言うのだ。乳児だっているのに。

 とりあえず、この村の住民に挨拶をしなくてはならない。仕事はあると言っていたが本当だろうか。


 結局、連絡も何もなかった。

 あの小屋は、ソ連軍の弾薬庫だった物で40年以上放置されていると言う。そんな物件に案内できた事の方が驚きだ。

 ロシアでも最底辺にある貧しい村だが、ダンジョンができたと言う。当面の食料は、芋と魚でよければ困らないそうだ。

 小さな鍋とナイフをくれた。ダンジョンは小さいが、僻地ダンジョンだそうで、日用品は安いそうだ。

 ダンジョンと言うスーパーができたみたいだと言う。

 それでそんなに明るいのか。アジア系が入っているみたいだが、ロシア人らしくなくニコニコしている。

 ダンジョンでネズミを蹴っていれば、燃料や食器くらいはすぐに買えるそうだ。

 一安心と言う所だ。

 ダンジョンの場所を教えてもらい、一旦、あの小屋に行く事にした。

 ダンジョンができていた。

 訳が分からない。

 何って言ってる場合じゃない!

 待て! ミーシャ!

 4歳児に自制を求めるのが無理だ。

 1メートルもないそれにはって入る。

 家があった。

 どう言う事だ?

 肩を叩かれた。妻だった。

 ヒステリーは止めてくれ。俺だって何が何だか分からない。

 ミーシャが膝に抱き付いた。抱き上げる。すると妻が落ち着いた。

 とりあえず家に行ってみる事にした。行ってみなければ始まらない。

 小さなログハウス。

 玄関ドアに紙?が張ってある。

『紛争被災者遠隔地ダンジョン

詳しくはダンジョンスマホで』

 消えた!

 俺達はダンジョンができる前にロシア軍に捕まった。スマホも取り上げられた。ダンジョンに付いては噂くらいしか知らない。鉄道沿いに大きなダンジョンができたのは知っているが。

「ダンジョンへ行ってくる。村の人は良さそうだったが、ロシア人だ。少なくとも、状況が分かるまでは、このダンジョンは知られない方が良い」

 妻を置いてダンジョンに向かう。

 俺はやらないが、妻にダンジョンスマホ欲しいと思ってもらった。

 妻の手に大判のスマホが現れる。

 ビックリだが、俺がここで追従するのは良くない。

 妻を宥めて、『ダンジョンスマホの使い方を研究』と仕事を振って、村のダンジョンに向かう。

 ダンジョンの前で男と出会った。ロシア人らしくない笑顔が気になるが、ここはロシア系の村ではないのかもしれない。

「とっああ聞いてるぜ。ウクライナから来たんだってな。大変だったな。とりあえず、ダンジョンに入っている限り、当面は生きて行けるよ。なあ、農業できるか?」

「へ?」

 マヌケ面を曝したと思うが、男の表情が変わらない。相当にご機嫌のようだ。

「今生えてるのは再生しないらしいから、芋(ジャガ芋)やらビーツやら育てんといかんらしい。もやし(スプラウト)は作って来たけど、芋や蕪はやった事がない。小麦や大麦もあるが、どうやって粉にするか分からないんだ」

「父が農業をやっていたから、素人レベルでよければ、大抵の事は分かると思うが」

「そうか、助かった。お前はもうダンジョンに入ったのか」

「いや、まだだ」

「ならダンジョンに入ろう。案内する。後、何と言ってもダンジョンスマホだ! これがないと始まらない。俺はマルコビッチだ。マルコと呼んでくれ」

「フルィツィコーだ。ユーリイと呼んでくれ」

 一通り自己紹介をすませダンジョンに向かう。

 何じゃこりゃ。ダンジョンゲートが二つ繋がっている。

「日本人は三本鳥居の出来損ないと呼んでるぜ」

「日本人がいるのか」

「ハハハ、そう思うのか。まあ、ダンジョンに入ってみろ」

 そう言われてダンジョンに入ってみる。海に面したゲートと桟橋に面したゲートが一つの柱で繋がっている。

「この桟橋は、いくら海が荒れても、ここだけは穏やかなんだ。まあ、本来の桟橋のほとんどはダンジョンが喰っちまったがね」

 海が荒れてもダンジョンは使えると言う事か。

「さあ行こうや」

 マルコの言葉につられてダンジョンに入る。

「海だ」

「ああ海だ。桟橋もある。しかも、この海は荒れないらしい。実際、一昨日外の海は荒れたんだが、こっちは穏やかなものだった」

「すごい!」

「ああすごい。もうちょっとゲートが広ければ母船も入れられたんだが」

 沖合いに漁をしている漁船が見える。確かに沿岸漁業の小型船だ。

「母船の冷凍設備を使うには、運ぶしかない」

「船の出入りができるのか」

「できるぞ。まあそれよりダンジョンスマホだ。欲しいと思えば出る。後な、あんまり長くダンジョンスマホを出さないでいると、頭の上に落ちてくる。けっこう痛い」

「ええっと、それは……」

 マルコの方をうかがうと目が泳ぐ。…ここはこのままスマホを出した方が良いか。

「出ろ」

 すっとスマホが手元に現れる。

 やっぱりビックリする。

「アプリのSNSを開いてみろ」

 タップすると、ずらりとハッシュタグが並び、活発な交流が予想される。それより、読めないはずの日本語らしきタグが読める。どう言う事だ。

「ダンジョンスマホは規制されない。どんな事を書き込んでも消されない。どんな言語でも理解できる」

「それは」

「俺達もウクライナで何が起こっているかは知っている。この村自体、お前さん等みたいに無理矢理連れてこられてできた村だ。ロシアのやり口は良く知っている」

 俺は泣いていた。

 彼らは、俺達を慮って、笑顔で迎えてくれたのだ。

「あの小屋にダンジョンができただろう。紛争被災者遠隔地ダンジョン。そいつは入れる人間を選べるようだ」

「そんな事が…」

 船が1隻近づいて来た。

 見事な腕で桟橋に接舷する。

「良く来た…じゃないな、良く無事だったな。アキラだ」

「日本人? フルィツィコーだ。ユーリイと呼んでくれ」

「俺の婆さんがな。サハリンでソビエト軍に捕まってここに来た」

「ユーリイ、ここは本当にそんな奴らばかりだ。警戒するのは仕方ないが、俺等を大ロシア主義のバカ共とは一緒にしないでくれ」

「マルコ、ゆっくりだ。俺達は敵国人には違いない」

「……ああそうだったな」

「ユーリイ、今日の所は、これ持って帰ると良い」

 そう言って突き出されたのは鮭だ。種類は分からないがでかい。1.5メートルくらいありそうだ。

「デカすぎるのは勘弁してくれ。網を入れるとそんなのしか取れん。後これだ」

 そう言って突き出されたのは大きく浅いフライパンだ。もらった鍋もそうだが、何と言うか…、そう、現役ながらきっちりと使い古されている。

「ダンジョンで買えたからな、余った」

「相変わらずアキラは身も蓋もないな」

「金属ヘラOKの薄型強化マーブルストーンだぞ! 買わいでか!」

「ああその何だ、…アキラは料理好き何だが、ろくな調理器具が手に入らなくてな。勘弁してやってくれ」

「夢の調理器具や調味料が手に入るんだぞ!」

「うるさい! ちったぁ黙ってろ」

「…あの、ダンジョンが出来てスーパーマーケットが出来たみたい、と、聞いたんですが、…もしかしてホントに…」

「あああ、ちょっと違う。少なくとも俺に取っては、出来たのはスーパーマーケットじゃないデパートメントストアだ! ここは譲れない!」

 えっと、何が譲れないのか良く分からないが、まあそうなのだろう。

「ショップアプリを開いて、僻地ダンジョンのラインナップを見て見ろ」

 やってみると、えっとこう言うのはどう表現すれば良いのか。目に星が飛ぶほど驚いた。で良いのか?

 どうにも思考に混乱を覚える。

「これは安いのか?」

「安いぞ。物にもよるが、普通のダンジョンの1/10ほどだな。パンなら、そこでネズミを10匹も蹴っ飛ばせば3人分くらいが買える。6階まで降りてウサギでも狩れば1匹ですむ」

「ウサギ?」

「魔核に変えないなら食えるぞ」

「いやそう言う事じゃなくて」

「ああそうだな、ダンジョンは6階から下はモンスターが出る。10階までは動物が多いらしい」

「マルコ、詰め込み過ぎだ。今日の所は奥さんの所に帰って、ダンジョンスマホで『アマテラス様降臨す』と言うムービーを探して、二人でゆっくり見ると良い。ダンジョンに入っている者は、おそらく全員が見ている動画だ。勉強になるはずだ」

「ああそうだな、今日の所は奥さんの所に帰ると良い。アキラにもらった鮭で腹はふくれるだろう。夕飯は動画を見てから決めると良い」


 結局、今日は妻の元に帰る事になった。

 二人に挨拶するとダンジョンを出る。

 ここみたいなダンジョンゲートが三本鳥居の出来損ないと言われているのは、SNSで知ったそうだ。地震で吹き飛んだ福島原発を飲み込んだ巨大な同様のダンジョンが日本にあるそうだ。

 小屋に入りダンジョンゲートをくぐる。デカ過ぎる鮭はフライパンの上だ。

「アリーシャ、帰ったよ」

 とりあえず家に入ってみよう。

 いないようだ。鮭とフライパンは置いておく。

 芋畑を横にスロープトンネルの上を目指す。定番のネズミの狩場だそうだ。

「ミーシャそこよ!」

 ミーシャはキャッキャとご機嫌らしい。

「アリーシャ、ミーシャ、帰ったよ!」

「あっユーリイ、ここよ!」

 妻もご機嫌らしい。緊張に次ぐ緊張で疲労困憊、ハリネズミのようになっていたのが嘘のようだ。

「ミーシャ、何しているんだ」

「ネズミ退治ー!」

「そうか、偉いぞー」

「お帰りなさい、早かったわね」

「大きな鮭をもらったから持って帰ってきたよ」

「そう、良かったわね」

「どうもここは、スターリン時代に作られた追放者の村らしい。それにしては余りにも明け透け過ぎる気がするが」

「ユーリイ、まずは生きることよ。難しいことは後で考えましょう」

「そうだな。まずは腹一杯食べよう。でないとろくでもないことばかり考える」

「そうよ、まずはネズミ退治!」

「ネズミ退治ー!」

「おう、ネズミ退治だー!」


 戦災の地でもダンジョンは受け入れられているようです。

実に9ヶ月かかりました

どうにも、これを書かないと先に進めなくて

でも、正直、大した出来じゃないんだよな

完工してもへこんだ回です

って、工事じゃねー

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