No.88:あの場所の忘れ物
篠田(同点の9回ツーアウト三塁。打席にはあの小宮。)
佐藤(ガンガン攻めるぞ。篠田。)
篠田(最初からそのつもりだ。)
(格下の俺達が引いたって、)
(逃げ場は何処にもねぇんだからなぁ!!)
ビュッッ!!!
カーンッ!!
小宮(振り遅れた!?)
『ファールボール!!』
《まず初球、内角にズバッと攻めていきました篠田!!ファールでカウントを取ってワンストライク!!》
小宮(普通の変化球ピッチャーかと思ったけど、ストレートにも思った以上に力がある。)
(相手は強い…………!)
《2球目!!》
ビュッッ!!!
カクッッッ!!!
小宮(フォーク!?)
カーンッ!!
『ファール!!』
《今度は外角から落としてきた!!フォークに体勢崩されてファールボール!!小宮、ツーナッシングで一気に追い込まれてしまった!!》
佐藤『ナイスボール!!』
篠田『おしゃぁ!!』
小宮(ダメだ。もっと冷静にならなきゃ。打ち気に逸っちゃ相手の思う壺。)
《カウントはツーナッシング!!名関バッテリーにとっては理想的なカウント!!》
佐藤(ここ、投げ急がないように。)
篠田(んなこと分かってるよ。こう見えてエースだかんな?)
小宮(カウント的にもクサい球には手を出さざるを得ない。)
(だけど僕がまたこの夏、足を引っ張るわけにはいかない。)
___________
(行くぞ哲都。これが優勝への流れを引き寄せる大きな1球だ。)
《小宮哲都、セットポジション、カウントフルカウントからの第6球、》
《投げる───────────────》
カキィィーーーンッッ!!!!!
(え…………、)
《……………………!!!……………………!!……………………………!!!》
《…!!…………………………!!!………!……………………!!!》
(ウソだ!!行くな!!)
(頼む!!行かないで………………。)
《入ったァァァァァァァァァ!!!!!》
《紫電一閃!!!光芒一閃!!!キャプテン棟方、その一振りは、その一振りは、啓稜学院の優勝を大きく手繰り寄せる、ダメ押しのスリーランホームラン!!!》
啓稜学院|201 000 04
邦南高校|000 101 0
“ここだけは…打たれちゃいけなかった…。”
《打たれた小宮は、手を両膝について、顔を上げることができません!!!!!》
……………………
“啓稜学院が夏連覇達成!主将・棟方が会心の決勝アーチ!”
『 啓稜学院|201 000 040|7
邦南高校|000 101 003|5 』
“邦南、9回追い上げるも8回の被弾響く”
“選手たちはよく頑張りました。最高の夏でした。”
“哲都気にすんな。お前のお陰で甲子園勝ち進めたんだ。”
“来年、再来年、またリベンジしろよな。お前は今年十分よく戦ってくれた。”
(違う…。今までとかは一切関係ない。)
(今年は僕のせいで負けたんだ!!)
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ズバーーンッッ!!!
『ボール!!!カウント1ボール2ストライク!!』
《外角高めのストレートを見送った!!》
小宮(この夏は僕がチームを引っ張る。僕がチームを全国制覇に導く。)
《追い込んでからの4球目!!依然としてカウント優位は名関バッテリー!!》
カクッッッ!!!
小宮(食い込んでくるスライダー!これは外れる!)
ズバーーンッッ!!!
『ボール!!2ボール2ストライク!!』
《左バッターのインコースに食い込んでくるスライダーを見送ってツーツーの平行カウント!!》
川越(ここまでは完全にフォークで仕留めに来るリード。分かってるな小宮。)
(その一振りで打ち崩せ。)
小宮(ストレートを散らつかせつつ、変化球を内角に交えてバッターの壁を崩してきた。)
(見えるよ。最後はフォークで決めに来る。)
佐藤(決めよう。篠田。次が勝負球だよ。)
篠田(おう。)
《マウンド上、篠田、キャッチャー佐藤のサインに頷きます。ここは決めに来るか。》
(名関高校、確かに手強い。だけど、)
《第5球、》
“だけど、僕は!!!”
《投げるっっ!!!!》
“勝って甲子園に忘れ物を取りにいかなきゃ行けないんだ!!!!”
佐藤(注文通り外角低めのフォーク……!)
篠田(嘘だろ……!?)
(読まれてる!?)
カキィィーーーンッッ!!!!!!!!
篠田『なっ!?!?』
佐藤『まずいぞ!!!』
《打ったぁぁぁっっ!!!!打球は大きい!!!大きいぞ!!!》
ボンッッ!!
《打球は左中間を深々と破った!!!三塁ランナー藤武は当然ホームイン!!!打ったバッター小宮は二塁ストップ!!!》
小宮(…………、)
『やった!!やったぞ!!!』
《小宮哲都!!!ツーアウトから価千金の勝ち越しタイムリーツーベース!!!外角低めの難しいフォークボールを振り抜いた!!!3対2!!3対2!!!邦南高校、この試合、三度勝ち越しに成功!!》
小宮『よっしゃ!!!』
《打った小宮は塁上、右手を高々と突き上げた!!!!》




