No.39:夏の始まりは終わりも意味する
─────7月8日土曜日
開会式──────
開会式が行われる中村公園球場の外で待機する各校の球児達。多くの高校が集まるのは1年でも夏の公式戦しかないので、中学時代の同級生や、チームメートと再開をして挨拶を交わす事も多い。
そんなこともあり、開会式という面倒そうな響きのわりに、好きな球児は多い。
村田『暑すぎ~。』
酒井『さっすが愛知。人多いね。』
林『あんたらはここ地元やねんから知り合いとか居らへんのか?』
酒井『いるよ。結構楽しいね。開会式。』
西口『おっす。堂金。久しぶりだな。』
酒井『堂金!?』
堂金『なんだ西口か。かなり久しぶりに見たな。お前らが秋以降公式戦に出てないってのもあるけどよ。』
西口『春の全試合魂の完投は凄かったな。遅くなったが、春の全国制覇おめでとう。』
堂金『うぃ。ま、もう春のことは忘れた。今は夏だ。1から出直すつもりで調整してきた。テッペン取るためにな』
西口『夏はウチだって全国制覇狙ってんだぜ。お前らとは当たるとしたら準決勝。もしやるとなったら絶対に負けねえからな。』
堂金『お前らには去年の借りがある。次は絶対にぶっ倒す。それまで負けんじゃねーぞ。』
西口『任せとけ。』
堂金『約束だ。』
西口と堂金がガッチリと握手する。
西口(夏は譲らねえからな。)
堂金(甲子園に行くのは俺達だ。)
村田『ひょえー。西口のやつ、堂金とあんなに仲良いのか。』
小宮『去年の決勝のこともあるし、僕と拓磨は中学最後の全国大会決勝でも堂金と対戦してるし。戦ってるうちに勝手に仲良くなったって感じかな。』
酒井『なるほど…。』
西口『にしても、堂金のやつ1年のときより結構体もでかくなったな。』
小宮『成長してるのは僕らだけじゃないってことだよ。』
西口『確かにな。』
***
『これより、第xx回高校野球選手権、愛知県大会の、開会式を始めます!』
大場(俺の…最後の夏。)
慶野(悔いの無いよう、最高の夏にしよう。)
“やってやる。”
***
『以上で、開会式を終わります。』
村田『暑い。あのオッサンほんと話長い。誰もあんたの話なんか聞いてないから早くしてほしい。』
酒井『一理あるな。ましてやバックネット方向向いて喋ってるから何話してるかすらわかんないし。』
慶野『よし、全員いるな!今から学校に戻って大会前最後の調整に入る!事故等に気をつけて帰るぞ!』
『はいっ!』
***
開会式後2時間。学校にて。
野球部は昼食タイム。
藤武『なぁ、これ見てくれ。』
氷室『ん?どうしたの?』
『えっ!?!?』
西口『どうした?佑介。』
氷室『いやいやいや…拓磨もこれ見て!』
西口『なんだよ。……って、は!?』
藤武『愛翔学院が無名の東荘に負けてる……。』
西口『2-0で、残すイニングはあと9回表の攻撃だけ……。』
小宮『ホントに言ってる?』
西口『あぁ。愛翔学院は秋ベスト4だし、春も享神に敗れて惜しくもシード圏外のベスト16。その辺の高校にポッと負けるような所には見えないのに……。』
小宮『初戦の難しさってやつかな…。あと開会式直後の特別な一戦だし…。』
西口『やっぱ明日の初戦、例え実績が無い相手とはいえ、油断禁物だな…。愛翔学院の二の舞にはなれねえ…。』
***
その頃、結衣は中村公園球場での開幕戦、愛翔学院vs東荘の一戦をたまたまアナウンスしていた。(高校野球の県大会のウグイス嬢は基本同じ高校生の女子マネージャーが担当する。)
『3番、センター、大崎くん。』
《さぁ9回ツーアウトランナー無し!!追い込まれた強豪、愛翔学院!!打席には3番キャプテンの大崎 淳之介!東荘のマウンドには変幻自在のサウスポー、中里 光介!!》
カキィィーーンッ!!
《これは変化球を引っ掛けた!!サード木沢、落ち着いて一塁スロー!!》
『アウト!!!!!』
《ゲームセット!!開幕戦からまさかの大波乱!!秋ベスト4、春ベスト16の強豪・愛翔学院まさかの敗退!!東荘の変則左腕中里の前に散発2安打完封負け!!1回戦で姿を消します!!》
結衣(え…。愛翔学院ってミーティングでも話してたし、結構強い所なんじゃ…。)
『お疲れ様!坂本さん!帰って良いよ!』
『初めてなのにいいアナウンスだったよ!1年生とは思えないね!おつかれ!』
結衣『はい。失礼しましたー。』
(野球部はもうそろそろ練習開始してる。早く向かわないと…。出口はどこかな…。…………!)
───────────── 。
結衣の視界に、ベンチ裏で泣き崩れる愛翔学院ナインの姿が映った。
『なんでだよ……!なんで……なんで……!』
『まだ俺達、なんもやってねぇ……。』
『………………ちくしょう……。…………。』
(部外者の私がここにいちゃいけない。早く去らないと…。)
──────努力が実る人も居れば、
実らない人も居る。
───────夏は残酷。そう感じた。




