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 藤咲さんになんで天久兄弟と一緒に来たのかと聞いたら、『契約』のせいで探知機にされたと返事が。……便利!

 天久お父さんまで現れてびっくりしたらしいが、……三年の保護者としてではなく、勝手にいなくなった『お狐様』を探していたらしい。それに説明を藤咲さんに求めたら『お狐様』に関してはだんまりを決め込んだようだ。

 ……無理に情報をくれる人じゃないのはわかっているので、話を変えようと思案する。……そうだ。体育祭に戻ってきたら話があるって…、


「ルカ」

「お父さん」


 私の姿が見えたから、わざわざ保護者席から来てくれたお父さん。やだ、大好き!


「マルから聞いたけど、ルカはずいぶん満身創痍だね…」


 私の足の怪我を見て言うが、あれ、なんかあんまり痛くなくなってる。理由はわからないけど、それなら安心させなきゃ。


「名誉も負傷!」

「………一文字違いで大問題な発言はやめなさい」


 ん?

 藤咲さんに視線を向けたら、顔を覆っている。……な、何故だ。別に名誉の負傷って言葉を知らないわけじゃないぞ。どんな意味に取ったんだ。

 後から、考えよう。

 お母さんも、居るからと保護者席で陣取った場所に連れていかれる。……お父さんが藤咲さんを無視している。……どうして?

 疑問を口にしようとしたら、お母さんの座っているビニールシートの上に鎮座する『るぅ』と『ふじさき』の姿に絶句する。


「おかあさん!?」

「マルがね。どうしても、『るぅ』に来て欲しいっていうから」


 ほほって、否、待って。じゃあ、『ふじさき』いらないじゃん。そう指摘したら、「一人でお留守番は可哀想よ。兄妹でしょ?」って、お母さんがメルヘン思考!

 藤咲さんの前で『ふじさき』はやばい!いや、ーーやばくないのか。『ふじさき』の名前を誰にも教えていない。うん、私はようやく平常心を取り戻した。

 あ、神取と片倉さんには言ったような。

 ふむーっ、どうして、お父さんは、藤咲さんを無視するの?


「病院に行っていたって聞いたけど、ルカは別に病院に行かなくても良かったんじゃないか」


 そうだ。包帯とかあれやこれが大袈裟なだけで、別に私は普通に歩き回れるくらいに元気だよね。……痛くない訳じゃないんだけど、疑われても仕方ないくらいに歩き回ってる。

 元気ーっ。て思ったけど、藤咲さんは沈痛な面持ちだ。


「膝の怪我は化膿していたそうです」


 両親から私が思わず視線を逸らした。そうだった。デコは目立つから定期的にお母さんが手入れしてくれたが、膝は指摘されるたびに逃げていた。……痛くないもん。今痛いのは右足首だけだよ?

 これくらいの怪我なら大丈夫だよ。みんな大げさだよ。


「ルカ、……反省しなさい」

「う、……はい」

 開き直りが見抜かれてる。さすが、お父さん。しかし、藤咲さんが『ふじさき』より『るぅ』に興味を持ったのか怪訝な顔をして、持ち上げる。


「これ……」

「可愛いでしょ。『るぅ』って言うの」


 お母さん、思春期の少年になんて同意を求めるのさ。藤咲さんも愛想笑いを返さない。しかも、ガン見していて、はーってため息を吐いた後、私を睨んでいる。どうして怒ってるの!?


「ところで、ルカちゃんの彼氏?」


 誰かにつけて私の彼氏か聞かないで、うちの両親ったら!


「藤咲葵です」


 ニッコリ。うんーー自己紹介の前に否定しろや。ごらぁ!!


「まあ、じゃあ彼氏なの!?ついにリンくん離れを……お、お母さん、今日はホールケーキを買ってあげるわ」

「え、じゃあチョコ」


 いや、待て。どうして、みんなして、リン離れを促すの?

 将来の夢は、姉夫婦の家で孫の世話までする予定だよ。ちゃんと、役に立つから。お姉ちゃんとリンから離さないでください。


「ルカ、彼氏じゃないって否定しなさい。ケーキはお父さんが買うから!」


 お父さん、そう言えば『神取に似てる』って藤咲さんを嫌ってた。


「何してるんだ。アオ」

「……片倉」


 肘を怪我したらしい片倉さんが、こっちにきた。あ、棒倒し終わったのか。


「怪我、大丈夫ですか?」

「名誉の負傷だよ」


 勝ったよって。にっこり。やだ、爽やか!お母さんが水で洗ってきなさいって片倉さんに促してる。

 じゃあねって、蛇口の方に行ってしまった。

 うん。じゃあ、リンの居た白組は負けたのか。あ、膝に包帯巻いて、私に気づいたらしくこっちに来た。


「ルカ、どうして陣地に居れないんですか。大人しくしてれば歩き回っていいって理屈はありませんよ」


 不機嫌だ!負けたからなのって訊いたら、呆れられた。


「どうしても、自分の行いのせいにしたくないようですね」


 あ、やべ、これは素直に謝罪しないといけないパターンだった。


「藤咲も元気なら競技に出なさい。あと3競技で終わりますけど」

「残りは?」

「仮装とムカデとリレーですね」

「………なんでイロモノばっかり」


 じゃあ、仮装って藤咲さんは陣地に戻っていく。誰かと交換するつもりらしい。


「桜田発案で借り物競争の要素も取り入れたらしいので、気を付けてください」

「……」


 藤咲さんが珍しく動揺している。リン、ひどい。さっさと行けって背中を押してる。


「最初に教えてやれよ…」


 戻ってきた片倉さんがリンに呆れてる。しかし、リンはフンッと鼻を鳴らした。


「ルカの見張りを頼んだのに役に立たなかった奴が悪いんです」


 友人にすら容赦がないリンが怖い。さすが、魔王。

 私は、持ち歩いていたリボン猫の絆創膏を片倉さんの肘に貼ろうとしたら、リンが止めに入る。


「止めなさい」

「可愛いんだよ?」

「リン、いいから。はい、秋月さん」

「甘やかさないでください。ただでさえ、今日は浮わついてるんですから」


 片倉さんの許可を得て、肘の怪我に絆創膏を貼る。わーい。


「リンくん、いい子ね。ルカの面倒を見てくれて」


 お母さんが、リンの頭を撫でてる。リンの方が大きいから背伸びになってしまうかと思えば、リンがさりげなく頭を下げてる。うん、……お母さんの中で、リンって何歳なんだろ?


「リンくんが、うちの子になってくれたら良いのに」


 お母さんが、無邪気にプレッシャーをかけてる。よし、お姉ちゃんの前でも言うんだ!

 リンが苦笑し、隣にいる片倉さんはどんな表情を作るべきか迷ってる。ふっ、同類の私は、お父さんに何事もなく、紙袋を渡し終えた。一仕事、やり切ったぜ。そんな私の満足感にお母さんが水を刺した。

 ぽんっと、手を叩き、


「リンくん、しっかりしてるから、マルよりルカちゃんの方がお似合いかも」


 ブーッと、お父さんが何も飲んでないのにむせた!私は、驚きにツッコミを忘れ、リンが硬直している。片倉さんが、リンにしっかりしろ!って、声をかけてる。


「お、おかあしゃん!?」

「あら、次の競技が始まりそうよ。ほら、貴方達、戻りなさい」


 爆弾を投げつけといて、なにそのあっけらかんとした態度は!?


「えーと、リン……」


 かつてないくらいに動揺しているリンは、ふらふらしている。


「か、片倉さん。リンの膝って」

「えーと、ちょっと派手に転ばされて…擦り切れたみたい」


 痛そうだったと、片倉さん。ん?転ばされて?


「ちょっと、ルー!!」


 あ、ココさんだ。白組の陣地に来てる。どうしたんだろう。ちょいちょいと、私を手招きする。片倉さんは、女の子同士の会話に入るような無粋な真似はしないと、青組の陣地に戻っていく。


「どうしたんですか?」

「貴女。藤堂鈴の知り合いなのよね」


 どうして、興奮気味に訊いてくるんだろう。とりあえず、頷くと、パッと顔を輝く笑顔に変えるココさんは、私に手紙の束を押し付けてくる。………何、これ?ハートマークのシールがついてる便箋…、が五、--六通。


「泉さんって子から聞いたんだけど」

「は?」


 なんでそこで彼女の名前が。


「藤堂鈴って、フリーなんでしょ。ルーの好きな人ってわかってるけど。お兄ちゃん的だって、泉さんが…だから、あの、あたしのその、と…、とも、…し、知り合いが彼の事好きって言うから、それ、ちゃ、チャンスは平等っていうか、図々しくて、わ、ご、ごめ……ん。と、届けてくれない?あと、出来ればサイン…」


 最後の方はほとんど聞こえなくなっていったココさんの言葉だったが、ガーンっと、強力な一発を入れられた気がした。

 な、なんだと!?こんなに精神的にきつい企みをしてたのか。泉さん。


 真っ赤になって、ファンなの!!って、え、ココさんまで?そして、ファンって何?


「頼んだからね!サインとかその、出来ればお返事も」


 言いたいことだけ言って、きゃーって顔真っ赤にしながら逃げ去っていくココさんは可愛かったが、え?

 これを私にどうしろって?


 うん、よし、脳内会議!!

 ーーえ、経験ないからわかんないって。投げるな!!


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