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※彼女の言い分の続きです。
私の家の前まで迎えに来てくれたひばりんに対し、申し訳なさで胃が痛くなってきた。
「ひ、ひばりん。ごめんね」
遊びに行く場所と時間のやりとりを葛西さんの連絡先を知らなかった私は、ひばりんを頼ってしまった。ひばりんは光原さんと連絡しあって、遊ぶ場所は遊園地になったらしい。ーーゆ、遊園地って、団体行動に向かない気が…。無料券があるらしく文句が言いづらい。
「ん、平気だから……って、後ろのお姉さん。すご……あれ?どっかで会った気が?」
あ、そういえば妙齢の美女ヴァージョンでは会ったことがあるんだった。仕方ない。
「セラ様のお姉さんじゃない?」
すっとぼけてみる。
「セラ様?……あれ、やっぱ」
私とひばりんのやりとりに埒が開かないと感じたのか美少女セラ様は、ふう…とため息を吐き、ひばりんに手をかざす。ーーまさか、記憶を消して、
「私と貴様は『初対面』だ。『初めまして』だな。ひばりん」
にやっと蠱惑的に微笑むセラ様に顔を真っ赤にして離れるひばりん。
「なっ!ひばりんじゃねえよ!!『初対面』なんだから雲雀くんだろ」
やだ、最低天使ーっ!!
「セラ様、」
「必要な処置だ」
咎める私にしれっと返すセラ様。ーー確かに甘かったのは認めるけど。
「力、使って消えたりしませんよね」
「貴様の為に身など削らん。安心しろ」
まったく持って信用できないから聞いてるんですがっ。
あ、そういえば、アディーに関して、連れてくる訳にも行かず藤咲さんに預けるという暴挙を行った。だって一人(?)にすると心配だったので、抑えておいてくれそうな人物がかの方くらいだったので、三年の教室に行き、お願いしたところ……物凄い笑顔で了承してくれた。
引き渡しの時に嫌がるアディーににこにことーー強く生きろよ。アディー。
「……ひばりん、頭、大丈夫?」
「え?……あ、うんーーって、なんだよ。その心配は!」
いや、記憶消去の後遺症が心配で。とは言わない。ーーそういえば、ひばりんは知らないけど、セラ様ってひばりんの鬼門じゃ…。
「セラ様」
「様を付けるな。どこの世界に友人を様付けする関係がある」
結構ある気がするけど。ひばりんがセラ様をじーっと見つめている。こらこら、不躾な視線を送っちゃダメだよ。ひばりん。
「セラさんってどこの国の人?」
「て」
「日本人だ。両父母が他の国の人間で、親がハーフ。こんな見た目だが日本語しか喋れん。期待するな」
大真面目なお顔で堂々と私の言葉を遮り、嘘を言い放つセラ様の男前ぶりに私はちょっと感動した。ーーそして、ひばりんが視線を外した瞬間に飛んできたチョップは痛かった。
「学習という言葉を知らんのかっ!」
「たぶん、母のお腹の中に」
「親のせいにするなっ!」
確かに!
「せ、セラ様の一言一言がぐさぐさ突き刺さります!」
「煩い。早く待ち合わせ場所に行くぞ」
仕切るセラ様。
「え、…えーと、なんか男前な感じのするタイプだけど、あの人をテル兄に紹介するのか?」
「う、うん。綺麗でしょ?」
ノースリーブのシャツとフレアスカートにレギンスというシンプルな格好のセラ様。思いっきり着飾る事がしていないというのにこれが素材の差か。
ジェットコースターに乗りたいが為にパンツスタイルな私とは二味以上違う。
「テル兄、のんびりしてるとこあるから。良いのかな?」
確かに少し、自分をぐいぐい引っ張るタイプが似合う感じがする。自発的な行動もヒロイン様が関わらなければ、あまりしないように感じる。……あ、そうだ。
「ひばりん、今日は私、頑張って葛西さんの周りをうろちょろするから覚悟してくれ」
「は?」
いや、何故目を丸くするんだ。私が今日の為に築いた作戦は『セラ様の魅力で主人公様陥落。ひばりんに絡みつくヒロイン様を最大限邪魔しよう大作戦だ』くくっ。絶対、あの手のタイプは遊園地だろうとヒール履いてくるはずだ。何かしら足が痛いとか言い始めたら、私がご奉仕しますよお嬢様ハート。………ちょっと、吐き気がした。
「ひばりん、出来るだけ二人掛けのシートとかも避けようね。もし、お化け屋敷とか入るなら任せてくれ。葛西さんの腕に絡みついて離れないから。今日は、ひばりんに楽しい思い出も提供したいんだ。頑張る」
「……秋月、なんか頑張る方向が喜べないんだけど」
肩の力を落とすひばりん。
な、何故だ。ここ最近頑張って遊園地を最大限に楽しんでもらおうと考えた作戦なのに。怪訝な顔をしたのはセラ様もだ。
「むしろ、お前はひばりんにくっついて、歩けばいいんじゃないか。私が、お前の言うヒロイン様と光原とかいう奴と一緒に歩いたほうが有効なのでは?私の容姿は隣を歩く女にとって屈辱だぜ。くふーっと騒いでいたじゃないか。最大限利用してみろ」
目から鱗です。天使様。そして、ひばりんがヒロイン様って?って疑問符は無視しよう。
「今日は顔合わせ程度だ。べたべたされるのも相手にとって気分は良くなかろう。適度な距離のまま互いを知るのがベストだ」
「やだ。セラ様、リア充ですか」
「キラキラするな。ーー少し耳を貸せ」
真剣な顔のセラ様に首を傾げながら、耳を貸すとセラ様がひばりんに目を向け、
「精神的に不安定な『色』を宿している。お前の考えなしなところを分けてこい」
「え、そんなのもわかるんですか?」
てっきり、前向きな気持ちだけかと思っていた。いや、『攻略キャラ』次第でわかったのかもしれないけど。しかし、セラ様、なんでそんなびっくりした顔してるしてるんですか。
「いや、悪い。お前でも知らぬことがあるのだな」
くくっと楽しげに喉を鳴らすセラ様。おお、悪役っぽい。
そうこうしているうちにバス停につき、バスに乗り込み遊園地近くのバス停で降りると、すぐ待ち合わせの場所だが、……お嬢様然とした格好のヒロイン様が何故か唖然として私の後からバスから降りたセラ様を見つめた。……あ、良かった覚えてないっぽい。光原さんは首を傾げているけどセーフかな?
「ちょっと、貴女!!!」
予想通りのヒール姿のヒロイン様が私に詰め寄り腕を引いて皆から距離を取らせる。ん?なんだろ。
「どうして、本当にあんな美人連れてきたの!?」
え、そこ?私、ちゃんと美形だと宣言していたはずだ。
「私の本気をわかっていただこうと」
「ーーばっかじゃないの!!あんなの、あたしも貴女も太刀打ちできるわけないじゃないのよ!!」
憎々しげに光原さんに挨拶をしているセラ様を睨みつける葛西さん。
うん、物凄い気合いを入れてお洒落してきた子にセラ様はひどい。
ほとんど何にもしてないのにお綺麗すぎる。さすが、天使。私、こんな涙目の葛西さんを見て、ちょっと反省した。が、圧勝出来る美形で紹介してイイのセラ様くらいだし。……お姉ちゃんは主人公様から引き離す予定なのに紹介してどうすんだ。と脳内ツッコミ。
うーん、でも、人目のある場所でセラ様はひどかったか。いろんな人がセラ様を見ている。
「ーーふん」
あ、私の腕を離した。そして、ずかずかと皆の輪に戻っていく。
光原さんが手を振っているので、私も戻ると仕切っている。葛西さんが仕切りだしている。さりげにひばりんに腕を絡めている。すごい。これが恋するヒロイン様なのか。
「まずは、コーヒーカップとか…」
必死にプランを立てているヒロイン様に対し、ひばりんと主人公様が大きく頷きあった。
「よし、絶叫系に行こうか。月夜」
「今日こそ、全制覇だぜ。テル兄」
スルッとヒロイン様の腕をすり抜けて、さっさと女三人(?)を置いて、走り去っていく二人に私とヒロイン様が半ばボー然としていると、セラ様がふむと。
「ここに来てからひばりんが、どうもキラキラしていると思っていたがこんなことか」
光原さんまで、テンション高く乗り物の方向に走っていた。あ、そういえば、主人公様ってスピード狂って書いてた気が……。
葛西さんがふるふる震えている。
「どっちよ……」
「何がでしょう」
なんだか、わからない罪悪感に襲われる。うん、人の気持ちってわかんないよね。
「どっちが、遊園地なんか指定したのよ!!あの二人、絶叫系しか乗らないんだから!!」
また、おいてかれたーと、わんわん、人目も気にせず泣き崩れる葛西さん。セラ様が背中を撫でてやる。うわーい。ひばりんめ。どうしてくれるんだ。この状況。




