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第2話 居候の晩餐



 なかなか息が整わないゆう子と、やけにおしゃれなモンペ姿のセリーヌ。

 ゆう子は老いにより、地位を奪われる危機を感じていた。一方のセリーヌは涼しげに扇子を口に当てている。

「今日ももう遅いから、スーパーには行かんことにした。ここからやと一時間かかるんよ。帰ったら真っ暗になるんや。早いけど、もうご飯作り始めるで?」

 今からどんな凄絶なバトルが始まるのかと身構えていたセリーヌは、拍子抜けした。

「何を作るんですの?」

「せやな、まあセリナやっけ、そこのあれ取ってき」

「あれ……で、ございますの?」

 セリーヌには、『あれ』の指すものがわからなかった。おまけにふざけた呼び方もされてしまった。そんなわけで、彼女は直ちに報復することにした。

「はい。これですわよね」

 おばばの首に、短槍の切先を突きつける。おばばの目が見開かれた——と、思われたが。

「あんたさんもまだまだやねぇ。どないな稽古受けたん?」

 おばばは刃を掴み、一回転させる。あっという間にセリーヌの首に切先があてがわれた。セリーヌは流石に扇子を閉じた。

「…………お手上げですわ」

 おばばは満足げな笑みを浮かべた。短槍を戻し、そして言う。

「じゃあ、今度こそそこのあれ取り、セリナ」

 セリーヌは顔を引き攣らせた。


——夕食のぼたん鍋を食べながら、セリーヌは早くも眠くなり始めていた。今日は空から落ちたり走ったりと動きまくってしまったので無理もないと、自分に言い訳する。

「これ美味しいですわ。……でも」

「食っちゃ寝、させると思ったんか? 残念やな、そんな優しくするつもりないで」

 おばばとセリーヌの間に火花が散る。ここに、負けられない戦いがあった。

「もちろん自分で使つこうた皿は洗ってもらうで? 働かざる者食うべからず、やな」

 おばばの高笑いが響く。セリーヌはぎりりと切歯扼腕した。

「言われなくても、やらせていただきますわ。でも、洗い方がわかりませんの。今までメイドなどの仕事だったので」

「そやな、今回だけは教えたる」

 ここで、セリーヌはふと何か心当たりがあるという顔をし、優雅に扇子を広げた。

「……もし、エカテリーネ式の洗い方でいいと言ってくださるなら、ひとりでできますわ」

 エカテリーネ式。おばばには衝撃的な一言だった。そんなものがあるのか。

「……じゃあ、やってみ。お手並み拝見したるで」

 おばばは腕組みして、セリーヌを見下ろした。ちなみにおばばはもう食べ終わり、洗い物も済ませている。セリーヌがうとうとしている間に、簡単にできてしまうものだ。

「では、させていただきますわ」

 おもむろに腕まくりし、白く細い手を皿にかざす。

「——アクアクリア!」

 瞬時に皿が白い光の粒に包まれる。おばばは目を見張った。

「なっ……!」

 これを使えば、自分が洗う何倍も速く済ませられるではないか。これで本当に綺麗になってしまうのか。

 徐々に光の粒が消え、皿が再び姿を現す。セリーヌは眉を寄せた。

「……やはり、このオコメとかいうものはこびりついてなかなか取れませんね」

 全然取れていない。まるで意味がない。

「や、やっぱりあかんやないか。教えたる、この世界の食器の洗い方、な」

「お願いいたしますわ」

 信じなくてよかったと、おばばは思った。

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