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まる、さんかく、はーと  作者: 星野 ツキナ
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神さまってホントにいますか

1998年2月、私は長男紘一2歳を連れて里帰り出産のために実家に帰っていた。

思春期の頃から何かと口うるさく干渉するくせに、街中で会う人には

「ほったらかしで育てちゃって、何にもできないのよ」

なんて言う母のことが私は正直嫌いだった。

でも出産となれば仕方ない。

これまで帰省しても3日が2人のトラブらない限度だった。里帰り出産となれば3日というわけにもいかない。今回は違う。紘一の子育てもある。おそるおそる母の機嫌をうかがって暮らしていた。

女性の精神障害は母親との関係に原因があることが多いそうな。

ある日、うっかりいつまでも治らない私の指をかむ癖のことで母と言い合いになり、

「じゃあ、あんたそれ、お母さんのせいだって思ってるのっ」

と言い放った母の言葉は気まずく、しばらくは顔も見られなかった。その夜、咄嗟に私は陣発のふりをして産婦人科に向かった。当然生まれるはずもなく翌朝には産院から歩いて帰宅した。

 紘一は初めての子でおっかなびっくり子育ての影響からか、神経質で怖がりでそしてママ大好きな激アマ2歳児だった。私以外の人と一緒にいるなんて、そんなこと絶対無理という感じだった。

まあでも私が留守になったら、どうにかなるんじゃないかなんて軽く考えていたが、ある夜本当に陣痛が来て、夜中に母と私は大いに焦った。とにかくぐずぐずしている時間はない。とりあえず私のパジャマを母に着せ、寝ている紘一を起こさないように母とバトンタッチしてタクシーで病院に行った。父は確か単身赴任でどこかに出張していて留守だった。

 風の強い夜だった。真っ暗な外を見ながら陣痛の間隔を測っていたが、陣痛の波は強くならず、子宮口は開いてきているのにぼんやりと消えてしまった。今思うとのんびりした次男らしい。お腹の中にもうちょっと居たかったとみえる。

朝、分娩台に一度は上ったが、肝心の陣痛が来ない。いきもうにもどこに力を入れて良いんだか困った。

「お腹すいたんじゃない?一回朝ごはん食べてきたら」

とやる気なさそうな医者に言われて病室に戻り、朝ごはんのおにぎりを頬張った。お産中だから食べやすい形にされていたのか、その日の朝ごはんは確かおにぎりだった。

 お膳を片付けている時に、おや?っと思う痛みがあった。急いで分娩台に上がって、医者が準備する前にもう一回いきんだら簡単に次男がコンニチワした。なんなんだ。

もうちょっと頑張る気持ちだったのにちょっと拍子抜けだった。

2700gの小さめの男の子だった。

新生児室の隣に寝ていた女の子の赤ん坊はまるまるとしていて赤ちゃんらしかったが、うちの子はなんだか犬の子みたいに毛がもじゃもじゃしていた。


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