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運命の混紡者  作者: Ridge
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中部編1-2

 3日前,道路局1階.車道課の部下たちは仕事を終えて帰宅し,若い課長が1日の記録をまとめている.

「今日もか….(第7地区での車道の損傷が多いような….ポイ捨てが多いのか,集まりやすいのか…掠ってズタズタになる.何にせよ調査が要るな….チームは明日組むとして多いというのが思い込みじゃないか確認しておくか.それで今日は終わりだ)」

 課長は立ち上がって,後ろの棚から直近の記録のファイルに手を伸ばす.固い紙を毛織物で包んで装丁されたファイルに手を伸ばす.突如,腕を捕まれる.掴む手の先を見ると小柄な青年が立っている.手を動かそうとするが,石に腕が嵌ったかのようにピクリとも動かず,反発するように胴体の方が動く.

「僕の名はハイチ.無駄だよ.僕ら魔族はは人間よりもずっと強い.…その気になれば君の腕を引きちぎることも握りつぶすこともできる.分かるよね?」

「何が目的だ?」

「やって欲しいことがある.あらかじめ言っておくけど,余計なことをしたら君も君の部下の命は無い.さて,やってほしいことは簡単だ.この道路,車道には仕組みがあって,車を浮遊させ前後左右に動かすことを可能にしているだろう?指定する車道のその装置を少しいじってもらいたい」

「……」

「まず場所は11番街ミュルセリケルム通りの歩道橋付近.浮遊能力を向上させろ」

「…0か1しかない.それ以外はできない.ぐあっ」

 ハイチは手の締め付けを強くする.

「嘘はいけないな,これは警告だ.次は無いぞ」

「わ,分かった…」

「明日また来る.次の命令はその時にやる.上手くいけば3回目で君たちは解放しよう.僕たちはそれで十分だ」

 魔族は手を離して扉を開けて出ていった.窓から外を普通に歩いているのが見える.


 2日前.

「ご苦労だった.しかし,本当に調節したのか?浮きが少なかったが?」

「あれが限度なんだ.製造段階でセーフティがかけられていて,操作側ではこれ以上は無理だ」

「フン,どうだろうな….まあいい,次は逆だ,3番街のヘベネミアルド通りの歩行者地下道付近の浮力を切れ」

「付近…分かった」

「…小賢しいことを考えるなよ.お前との共犯者としての付き合いが伸びるだけだ」

「ああ…」


 1日前.

「課長.昨日の道路上で車が止まってしまった件ですが…」

「局の公正委員会が調査チームを出した.結果はそのうち出るだろう.想像で語って混乱させるのは良くない」

「しかし…」

「後にしてくれ.長いこと質問されて疲れた」

「は,はい…」

 その夜.

「やあ,お疲れのようだね」

「……」

「調査を受けて会えるのが遅くなってしまった.しかし約束通り黙っていたのは良かったぞ」

「…(なぜ知っているんだ?どこかに潜んでいたのか?)」

「次は2番街,クィオミランドーズ通り,歩道橋付近.今度は浮力を上げることだ」

「監視が厳しくなっている」

「関係ない,やれ.死ぬよりはマシだ.なあにあと少しの辛抱さ」


 レオンたちは道路局についた.

「立ち入りの許可証を拝見します」

「……」


 操作室の物陰にハイチと課長がいる.

「ご苦労だったな.大体分かったぞ.これで最後だ.次はこの6か所を…」

「もう嫌だ」

「あと少しで終わりじゃないか.やれ」

「どうかしていた.俺の良心が許さない」

「良心で生きていけるのか?ぬるいことを言うなよ,生きるということは限られた席を奪いあうということ.良心など役には立たん」

「たとえ席が限られていようと,それは1人で得られ維持できるものじゃない.これ以上,人を騙すようなことはできない!」

「…残念だ.お前がやれば手間がかからなかったというのに…」

 ハイチは気配に気づいて後ろに跳ねる.2人の間に光線が通過して地面に焦げ跡をつける.2階を見上げる.

「誰だ!?」

「勇気の炎,狩人レオンだ!」

 レオンは光線を放つ.ハイチは距離をとって機械の裏に隠れる.操作室の人々は逃げ出す.

 ハイチは機材を破壊してレオンに投げつける.光る剣で切断し,割れた2つが地面に落ちる.破片や細かい部品が舞う.ハイチはレオンが飛ぶ部品から頭を守っている隙をついて殴ろうと踏み込む.レオンは足元の部品を蹴って一回転して光る剣でハイチの上から叩き込む.ハイチは割れたもう片方の上へ押し付けられ,レオンの横を滑っていく.壁にぶつかり止まったところで跳ね起きて振り返った瞬間,光線を胸に受けて霧となって消滅した.

「た,助かった….しかし,私はもっと早く抵抗すべきだった」

「……」

 レオンは柄をしまって地面に座り込んでいる課長に近づく.

「私がもっと早く…」

「君はできる限りのことをした」

「見ていたのか?」

「いや,しかしそれは感じ取れる.俺が保証する」

 レオンは手を引いて起こす.

「勝ちか負けかで言えばこれは負けじゃないんだ.だから…そう,それでいい」

 レオンは相手の顔を見て納得して部屋を後にした.廊下に出ると姿は部屋からもう見えない. 

「ありがとう.2度も助けてくれて」

 静かな部屋は人々が戻りはじめ,ざわつき始めた.レオンの足音は雑踏に消えていった.

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