妹と彼女
次の時間、僕達は二人で教室へと戻った。
杉田くんと石川くんが大丈夫だったかと心配してくれていた。
お昼休み。本来であれば3人で過ごすのだが、今日は舞桜ちゃんと2人で過ごす事にした。
これからのことを話しておきたかったからだ。
2人で静かに話せるところを探し、屋上へ向かう階段の踊り場にきた。ここは階段の影になっていて滅多に生徒立ちは来ないのだ。
「蒼空くん、話って?」
「うん、これからのこと話そうと思って。えっと……僕たちその、付き合っていくわけだから…」
付き合うという単語が恥ずかしい。
前世では女の子と付き合った経験はなかった……。
それがこんな歳で経験することになるとは思っていなかった。
「僕達のこと、みんなには話す?」
「うーん。やめた方がいいんじゃないかな?たぶん、みんなに質問攻めにされたりおもしろ半分にからかわれたりしちゃうよ?」
「そうだね……それじゃあ、黙ってるってことでいいかな?」
「うん!」
2人で話している時の舞桜ちゃんは楽しそうだった。
目をキラキラさせて…年相応の笑顔だった。
「あ、そうだ!蒼空くん?」
「うん?なに?」
「蒼海ちゃんには…蒼海ちゃんにだけはちゃんと説明しておいてね?」
「え?どうして?」
「どうしても、かな。蒼海ちゃん、人一倍蒼空くんのこと慕ってるから。もし隠されてたっていうのがバレたらすごいショックだと思うんだ。」
「そうか…うん、今日帰ったら話してみるよ。」
「うん。それと、話す時はちゃんと私達がどういう付き合い方をするのかも話してね?そうじゃないと意味ないから。」
「うん、わかった。」
「うん!それじゃ戻ろっか?」
そういって舞桜ちゃんは手を差し出してくる。
「……だめ?人がいるところまでだけだから、おねがい」
「う、うん…」
お願いという舞桜ちゃんの目線にドキドキとしながら手を握る。
握った手には汗が滲んでいたが不快感は感じなかった。むしろ、暖かいとさえ思う。
放課後、いつものように蒼海ちゃんが迎に来た。
「お兄ちゃん!帰ろ!」
「うん。今行くよ。」
そう言って席を立つ。
蒼海ちゃんには聞こえない程度の声で舞桜ちゃんに挨拶する
「それじゃあね、舞桜ちゃん。また明日」
「うん、また明日。」
「お兄ちゃーん?」
「うん!今行くよー!」
蒼海ちゃんに急かされながら教室を出る。
兄妹で帰る事も当たり前になった。
帰りながら話すことといえば、今日のご飯は何かなとか、今日学校でこんな事があったよとか。
そんなたわいもない話をしながらいつも帰っていた。
「ねぇ?蒼海ちゃん。ちょっと、聴いて欲しいことがあるんだけど」
「え?なになに?」
蒼海ちゃんは僕と話しているとき本当に楽しそうにしてくれる。
天真爛漫で、蒼海ちゃんはよく僕のこと天使のようだというけど僕からしたら蒼海ちゃんのその明るさこそ天使のようだと感じる。
「あの…は、恥ずかしいんだけどさ……えっと」
「うん?」
「僕と舞桜ちゃん、付き合うことになったんだ。」
「……………………え?」
時間が止まったのかと思った。
ニコニコと笑いながら聞いていた蒼海ちゃんはその動きを止め、ただ一言そう声に出した。
微かに唇が震えているのがわかる。
「えっとね、この前から舞桜ちゃんに好きって言われてて……それで、今日僕が返事をしたんだ。それから――――」
「お兄ちゃん」
「っ。うん?」
「お兄ちゃん、いきなりどうしたの?そんなこと言って。あ!もしかしてドッキリってやつかな?もぅーお兄ちゃんドッキリかけるのうますぎ!さすがおにいち――――」
「ほ、本当だよ?蒼海ちゃん?」
「………ねぇ、どうしてそう言う事いうの?わたし悪い事しちゃったのかな?ごめんなさいお兄ちゃん。わたしがなにかしちゃったんだよね。」
「蒼海ちゃん!だから、何もしてないって!ただ僕が舞桜ちゃんの事好きになったってだけだよ!」
「なんで……なんでお兄ちゃんがあの人と?!わかんないよ!だってあの人!あの人はっ!」
「私がどうかしたの?」
叫ぶ蒼海ちゃんの後ろから声がかけられる。
舞桜ちゃんだ。
「心配でついてきたんだ。そしたら、こんな事になってて。ねぇ?私がどうかしたの?」
「っ!なんでお兄ちゃんなんですか!男の子だったら他にもいるじゃないですか!」
「?私男の子に興味なんてないよ?蒼空くんが好きなだけ。たとえ蒼空くんが女の子だったとしても私は好きになってたよ?」
「そ、そう言う事じゃなくて!なんでっ!どうして!」
「お、落ち着いてよ蒼海ちゃん……」
僕は叫ぶ蒼海ちゃんの肩を抑える。
「お兄ちゃん!お兄ちゃんはこの人に騙されてるんだよっ!この人はお兄ちゃんとは正反対なんだからっ!」
「違うよ蒼海ちゃん、僕は騙されてなんか――――」
「いや!嫌なのっ!」
そう言って蒼海ちゃんは肩を振り解こうと腕を振るう。
肩を抑えていた僕の手はいとも簡単に離れてしまう。力いっぱい振り翳された女の子の力に僕はかなわなかった。
そして、振りほどこうとした腕はその勢いのまま僕の方へと向かってくる。
蒼海ちゃんは無我夢中だったのだろう。目をつぶって腕を振るった為僕に当たるのが見えていない。
腕は僕の顔めがけ――――バチンっ。
ぶつかる音が耳に入ってくる。
僕は打たれたと思い反射的に目をつぶっていた。しかし、いくら待っても痛みがやって来ない。
恐る恐る目を開けてみると、そこにはさっきまで反対側にいた舞桜ちゃんがそこにいた。
舞桜ちゃんは蒼海ちゃんの腕を手で防いでいた。ぶつかった音はそこから出ていたのだ。
何かに手が当たったと蒼海ちゃんも目を開けていた。そして、それが舞桜ちゃんだということに気づき顔が青ざめていた。
「蒼空くん、大丈夫?当たらなかった?」
「う、うん……舞桜ちゃんは…」
「私は大丈夫だよ。それより……」
「……あっ………あぁ…」
蒼海ちゃんは口元を抑えながら怯えた表情で舞桜ちゃんを見ていた。
まるで幽霊でも見るように。
「………ねぇ?あなた今なにしようとしたの?」
蒼海ちゃんに舞桜ちゃんが問いかける。その声は今まで聞いた中でも一番冷たかった。
「わ…わた…」
「ねぇ?なにしようとしたのか聞いてるの。………蒼空くんを打とうとしたの?ねぇ?」
「ち、ちがっ!わたしっ」
否定する蒼海ちゃんに舞桜ちゃんはすっと近づいた。
「同じ事、あなたにもしてあげる。」
そうつぶやき舞桜ちゃんは手を振りかざした。
咄嗟だった。止めなきゃいけないと思った。
僕は振り翳された手を両手で掴む。
振り下ろされ始めていた腕を僕は両手でなんとか止めることができた。
舞桜ちゃんの片腕を止めるのに、男の僕が両手でなんとか止められた。
「……蒼空くん、なんで止めたの?」
「だ、ダメだよ舞桜ちゃんっ!暴力は、ダメだ…」
「………うん、わかった。蒼空くんがやめて欲しいならやめる。」
そう言って舞桜ちゃんは腕に込められた力を抜いた。
そして、蒼海ちゃんは……
「あっ…あぁァァ………」
舞桜ちゃんに怯え、涙を流しながら………蒼海ちゃんは失禁していた。
まだ!病みが足りない!
でも一番病んでる人まだ出してない!やばい!




