帰宅
病院で受け付けをしたあと僕たちは車で家に向かっていた。
運転しているのは母。父が僕を抱いて後部座席に座っている
「渚ー?運転気をつけてな?あんまりスピード出したりして蒼空ちゃん怖がらせるようなことするなよ?」
「もー大丈夫だってば!流石に我が子を乗せてはしゃいだりなんかしないわよ」
「でも俺と二人の時はいっつも危ない運転するじゃないか」
「うっ……そ、それは響だからよ…」
なんて夫婦漫才をしながら車を走らせている。
一方僕は外の景色に夢中だ。
産まれてから初めて見る病院以外の景色。
病院内は前世とあまり設備とかは変わってなかったけど街はどうなってるのか。あと未だにこの時代が西暦何年なのかもわかっていない。
とにかく周りをよく見て観察しないと!そう意気込みながら赤ちゃんの目で僕は景色を眺めていく
……ふむ、建物や街中を見る限り前世の時代とあまり変わっていないのかもしれない。
住んでいる地域がわからないのでなんとも言えないが、都内ほどではないにしろ交通量もあり色々な建物もある。…………埼玉くらいかな?とか思ってみたり
今度は街中を歩いている人を見てみる。
…あれ?なんか女の人が多い?
いや、なんかじゃない。8割ぐらいは女の人だ
服装は…………あまり前世と変わっていないかも。
あっ!変わっている所を見つけた。
歩いている女性のほとんどが胸をアピールしていない。
見るポイントが変態チックだがほんとに前世と違う。
前世の記憶では、多少なりとも女性の服装は胸が強調されていたりした。
もちろんしっかりとした服装の女性もいたが半分くらいは胸元が空いていたり、大きさをアピールする様な服装の人がいた筈だ。
だがこの世界は違う。
胸の大きな女性がなかなか見当たらない。
全くないわけではないのだが皆慎ましやかな胸をしている。
服装も胸元が空いている人はほとんどいない…なんでだ?
正直僕も男の子だからそういった面には期待する。…ので、結構ショックだ。
でも確かに母もそんなに胸の大きな女性ではない。今着ている服装だって胸元は空いておらずピチっとしている。
それ以外ではあまり女性の外見では変わったところは………ん?
ふと気づく。街を歩く女性の全てが中々のスタイルをしている。
ガリガリとかブヨブヨとした体型の人はおらず皆スラッとしていて、魅力的な身体つき。
身長も平均的に高そうだな……大体170くらいかな?と思う。
普通街を通っていたら太った人やガリガリの人、背の小さな人に出くわすと思うのだが見ている限り存在しない。
しかし服装は胸元以外は前世と変わらず。スカートやワンピースの女性が多い
心なしか可愛い服装より綺麗めな服装が主流ではありそうだが。
一方少ないながらも男性だっている。
男性もそこまで露骨に変わっているところは無さそうだ…ん?ちょっと胸元が膨らんでいる男性がいるか?
女性の胸のようにしっかりとしたものではないが……あ、胸筋か?
そうだ胸筋が張っている男性がいる。
前世でも鍛えている人はそんな感じだったし街中でも見かけたがそれに比べると比率は多い。
だがまぁ違和感を感じるほどでも無いかもしれない。
服装は…あ、胸元が少し空いている。
Vネックシャツくらいかな?そのくらい開けている男性が垣間見える
うーん。セックスアピールのポイントがどうも前世と違っているかもしれない。
そして男性の髪が前世と比べて長いな。
長髪とはいかないが短髪の人はおらずセミロングがほとんど。たまにロングの人がいる
そして顔つき。前世での男性とくらべて童顔……いや、中性的な顔の人が多い。
髪型と顔がマッチしていて化粧をすれば女装してもそれなりになりそうな人が多い。
僕はどんな顔に育つんだろう…両親を見る限りでは中々期待は出来そうだ。
そんなことを考えていると信号で車が停止する。
後部座席の窓が少し空いているので信号待ちをしていた男性二人の会話が聞こえてくる。
「今日どこ買い物行く?時間あるし都内の方まで行かないか? 」
「うーん。都内に行くってのはいいんだが…電車だろ?」
「え、そりゃそうで……あー。そうか。この時間専用ないんだ」
「そうなんだよ。男性専用車両ないから女と一緒に乗らなきゃだろ?」
「確かにそれは微妙かもなー。俺この前痴女されてさー地味に怖いんだよね共用車両」痴女………痴漢のことだろうか?
「そりゃ災難だな。まぁ共用車両じゃ痴女はある程度我慢するしかないよなー。どうする?」
「まぁ2人くっついて乗ってりゃ痴女もそこまで来ないだろ!なんとか耐えるわ」
「だな。んじゃ駅行くか」
……なるほど。やっぱり男女の価値観が前世と変わっているな。
女性専用車両が男性専用になってたり、痴漢が痴女になってたり……まだまだ理解しきれてないな。
外の会話を両親も聞いていたのか、その話題になる。
「やだなぁ痴女。俺も学生の時はされた経験あるよ」
「そういえば響よく痴女されたって言ってたわね。痴女された日は朝から沈んでたから分かりやすかったわ」
「気づいてたのかよ。はぁ、無くなんないかなぁ痴女とかさ。これから蒼空ちゃん連れて買い物行く時とか絶対されたくないし」
「はぁ?!響、共用車両に乗るつもりだったの?!駄目よ絶対ダメ。わかってる?響は私と結婚した婿なんだからね?私以外が響の体触るなんて虫酸が走るわ」
「いやぁ、俺も専用乗りたいんだけどさ……専用って時間によってはないし路線によって設けていないのもあるだろ?蒼空ちゃん連れて行くってなると融通がなぁ……」
「ダメダメ!ぜーったいダメ!!それなら私が仕事帰りに買い物してくればいい話でしょ?!」
「いやそんなこと言ったって渚に負担がか『絶対だめだから!!』………はい。」
「………まぁどうしても買い物行かなくちゃってなったら姉さんに言ってくれれば車出してくれるわよ」
「あーそっか。お姉さん作家さんで自宅勤務だもんね。でもお願いしていいのかな?迷惑になりそーで」
「大丈夫よ響。姉さんなら響の頼み断ったりしないだろうし。蒼空ちゃんがいるならなおさらよ。遠慮しないで使ってやりなさい。」
「うん了解。そうさせてもらうな」
「……まぁ私としては姉さんにも気をつけてもらいたいんだけどね。いーい響?姉さん相手でも油断しちゃダメよ?隙あらばすぐ手繋いだり引き寄せてきたりするんだから」
「わかってるよ。ありがとな渚」
「わ、わかってればいいんだけど…」
どうやら僕の母は多少やきもち焼きな感じだな。
結婚するまで苦労したんだろうなぁ……
そんな会話を聞いているうちに車はかなり進んでいたらしく、家に到着した。
「はーい、蒼空ちゃん!ここが蒼空ちゃんのおうちですよー!!」
僕は家を見る。
そして思う。
(で、でっけぇ)




