体操着
委員会決めが終わり休み時間になると、すぐに蒼海ちゃんがやってきた。
授業の間の10分しかないのになんだか申し訳ない。
「蒼海ちゃん?せっかくの休み時間だし、必ず来なくてもいいんだよ?」
「大丈夫!全然へっちゃらだから!それに、お兄ちゃんとも会いたいし!」
眩しい笑顔だ…なんていい子なんだろうか?
余計に悪くなってしまう。
「うーん…その気持ちは嬉しいけど…僕としては、蒼海ちゃんにもしっかり休んでもらいたいなって…」
「そんな…お兄ちゃん……っ」
「あっいや別に来てくれるのがイヤってわけじゃないよ?ただ――」
「わたしのことまで気遣ってくれてるの?!さすがお兄ちゃん!」
ちょっと言い過ぎてしまったかなと思った自分が間違ってた。
そうだよね蒼海ちゃんだもんねそうなるよね…
「と、とにかく今日帰ったら父さん達も混ぜて話しをするから、今日はもう大丈夫だからね?わかった?」
「いや!私が守るの!」
「ねぇ?何してるの?」
「ふぇ?………っ!」
舞桜ちゃんが話しかけてきた。
何してるのと聞いてきた声には若干重さが加わっていた。
「蒼空くんが何だかお願いしてたみたいだけど…大丈夫?」
「あっうん大丈夫だよ気にしないで。ちょっと妹と話してただけだから。ね?蒼海ちゃん?」
「……う、うん………」
「そうなんだ。ならいいんだけど……」
去っていこうとする舞桜ちゃん。
しかし、振り返ったと思ったら蒼海ちゃんに近づき耳打ちをする。
「そ………こ…………きら………?」
「っっ!」
なにやらボソッとしか聞こえかなったが耳打ちされた蒼海ちゃんは目を見開き手を震えさせていた。
「それじゃあ私ちょっとお手洗いに行ってくるね」
そう言って舞桜ちゃんは教室を出ていった。
それに続いて蒼海ちゃんも、「ごめんなさい」と言い残して去っていった。
一体何を言ったんだろう…後で聞いておかないとな。
次の時間、七海先生はジャージ姿で教室に戻ってきた。
「はい、それじゃあ次の時間は五年生初めての体育です!みんな着替えて体育館まで来るように。」
そう言って先生は出ていく。
そうか、次の時間は体育だった。
着替えるように言われたので僕は持ってきた体操着を出して着替えようと上着を脱いだ。
すると周りで着替えていたクラスメイトの動きが一瞬止まった。
すぐにまた着替え始めたのだがなんだか視線を感じる。
(あれ?小学生って一緒に着替えたりしてたよね?女子とか男子とか関係なく教室だったよね?)
僕は前世での知識から普通に着替え始めてしまったけど、もしかしたら間違いだったのかもしれない。
不安になり隣で着替えていた舞桜ちゃんに聞いてみる。
「ね、ねぇ舞桜ちゃん?着替えって僕も教室でやっていいんだよね?」
「うん?大丈夫だよ?蒼空くんが平気なら。」
「よかったぁ……僕が平気?」
「うん。だって、蒼空くん恥ずかしくないの?今の格好」
そう言われて僕は自分の格好を確認する。
体操着の上着を着ようとしていたため、着てきた私服の上着は脱いでおり上半身は下着のみとなっていた。
下着、そうブラジャー。
父さんに「もう11歳なんだからブラジャーは着けるのが常識だ!」と言われて着けていた。
つけ始めは違和感もあり恥ずかしさもあったけど退院してから一年間着けてきたので違和感はなくなっていた。
しかし、自分の違和感がなくなっていただけであってもしかすると周りから見たらおかしい格好なのかもしれない…
「あ…えっと…下着つけてるの、へん…かな?」
恐る恐る聞いてみた。こんなこと舞桜ちゃんぐらいにしか身内以外で聞けない。
「いや、変じゃないよ?セクシーでとっても可愛い。そうじゃなくて…」
「うん?」
「蒼空くん、女の子に着替え見られても平気なの?」
「……?」
僕はキョトンとしてしまった。
前世では別に気にしたことないし、むしろ男子としておおっぴらに着替えていた僕。
特別異性に着替えを見られたからといって恥ずかしいとは思わなかった。
「ううん。蒼空くんが平気ならいいの。私も嬉しいし。」
「えっと…どういたしまして?」
なんだおかしい事じゃなかったのか…僕は安心して着替えを続行した。
上着を着て、次はハーフパンツ。
履いてきたズボンを下ろすと、また周りの動きが止まった。
そして先程までより強く視線を感じる。
僕はそそくさと着替えを終え、教室を出た。
僕が教室を出たあと、教室内から黄色い声や鼻血がどうのという会話が聞こえてきた。
(誰か可愛い子でも居たのかな?)
僕はちょっと見てみたかったなと思いつつ体育館へ足を運んだ。
体育館へ行く途中、クラスメイトの男子…杉田正人くんと、石川一輝くんに会った。
僕以外のクラスの男子はこの二人しかいなかったので、すぐに名前は覚えていた。
「あれ?野上くんどこで着替えたの?」
石川くんが聞いてくる
「え?教室だけど…」
「はぁ?!」「ええ?!」
二人は僕の言葉を聞いて驚いた。
「野上くん本気?!恥ずかしくなかったの?!」
「え?うん特には…石川くん達はどこで着替えたの?」
そういえば二人とも教室にいなかったなと思い聞いてみた。
「更衣室に決まってるじゃん!野上、お前大丈夫か?」
杉田くんが強めに僕に聞いてきた。
「ぼ、僕は大丈夫だけど…更衣室なんてあったんだ。知らなかった。」
「ごめんねー一緒に行ってあげればよかったね。」
そういって謝ってくる石川くん
「いいんだよ謝らなくて!野上が自分でそうしたんだから。なぁ?野上?」
「え?う、うん」
「ほら、野上もこう言ってるし。さっさと体育館行こうぜ。」
「う、うん…ほ、ほんとにごめんね?野上くん!」
そう言って二人は先に体育館へ向かっていった。
僕も行かなきゃと思い歩こうとした時、肩をポンと叩かれる。
「大丈夫?蒼空くん?」
「あ、舞桜ちゃん…着替えてきたんだ。うん、大丈夫だよ?」
「そう…それならいいけど。ほら、一緒に行こ?」
そう言って舞桜ちゃんは僕の手を取り歩き出す。
僕に大丈夫かと聞いた舞桜ちゃんの声にはほんの少し冷たさを感じたけど、気のせいだったかなと僕は思っていた。
小学校って着替え別れてなかったよね?!
むしろ中学も着替え一緒だったよね?!
作者の地域だけじゃないと祈りつつ投稿…




