2年ぶりに
「ほら!蒼空くんこっち向いてー!ハイ、チーズっ!」
パシャリとシャッター音。
今日は僕の初登校日だった。
退院してから丸1年が経ち、僕は11歳になり5年生となった。
他の生徒よりも遅くに登校するようになっていた僕は母さん達に記念撮影と言われ、制服に身を包みランドセルを背負って写真を取られていた。
入学式が行われるわけでもないのに制服を着ているのは、母さんにお願いされたからだった。
「お願い蒼空くん!これ着て写真撮らせて!」
「えぇ…いや、やだよそんなの恥ずかしいじゃん…」
「そこをなんとかっ!ママ達蒼空くんの晴れ舞台見たかったのよすごく!ママ達にちょっとした親孝行だと思って一枚だけっ!!!」
「うっ…そ、それじゃあ一枚だけなら……」
「ありがと蒼空くんっ!蒼海ちゃんー!蒼空くん撮らせてくれるってー!」
「ママ本当にっ?!やった!!お兄ちゃんありがと!!」
「ど、どういたしまして?」
母さんと蒼海ちゃんははしゃぎ、父さんはというと目を閉じてうんうんと頷いているだけだった。
こうして登校前、家の前で写真撮影が行われた。
撮影が終わったあと、僕は本来の私服に着替えて登校の準備をする。
父さんが買ってくれる服はやはりかっこいいより可愛いイメージだった。
キュートとまでは言わないけど、かなりポップな感じ
蒼海ちゃんは先に学校に行っていて、僕は父さんと母さんの3人で学校に向かった。
学校につくと、他の生徒は体育館で始業式を行っていた。
僕たちは体育館には向かわず、職員室へと向かった。
職員室には何人かの先生がいた。全員女性
皆スーツだったが、スカートタイプの人はおらずパンツスーツのみ。
「あっ!野上さん!よくお越しくださいました!」
そう言って一人の教師が近づいてきた。
「初めまして。蒼空くんの担任になります、大野七海です。どうかよろしくお願いします。」
教師…大野七海先生が自己紹介をした。
僕の担任の人か…うん。かっこいいキャリアウーマンって感じがする。
ビシッとスーツを決め、髪は艶やかな黒髪のセミロング。
化粧も濃すぎることはなく、ナチュラルにされており美人の先生だった。
「初めまして。今日からお世話になります野上蒼空の母で野上渚と申します。」
「父の響です。こちらつまらない物ですがどうか先生方で召し上がってください。」
「そんな、お気遣いありがとうございます…」
母さん達は堅苦しい挨拶をしたあと、僕のことをどうかよろしくと言って帰っていった。
母さんは今日だけは付いて回ると言っていたけど、父さんが半ば強引に連れて帰っていった。
「それじゃあ、蒼空くん。先生と教室に行こっか?」
「はい、大野先生。」
「ええ。それと、みんな私の事七海先生って呼んでるから蒼空くんも七海先生でいいわよ?」
「……はい、七海先生…」
大人の女性の人を名前で呼ぶことに慣れておらず、僕は照れくさく名前を呼んだ。
「蒼空くんは恥ずかしがり屋なのね。………ヵヮィィ…」
先生がぼそっと呟いていたが、僕は恥ずかしくて聞こえていなかった。
今日まで案内されると、先に七海先生だけ入っていった。
教室内には既に生徒が戻ってきており、七海先生は生徒に僕のことを説明しているようだった。
「それじゃあ今日はみんなに新しい友達を紹介したいと思います。蒼空くん?入ってきてー」
そう呼ばれ僕は教室の扉を開けて中に入る。
静まり返る教室内。
中に入って生徒達を見ると、ほとんど女の子だった。
ぱっと見男の子は二人しかいない。40人程のクラスで男の子が二人だけ……なんて割合だ。
「さ、蒼空くん?自己紹介できる?」
「は、はい…」
黒板に名前を書いて自己紹介をする。
「………えっと…野上蒼空です。これからよろしくお願いします…」
名前を書き終えたあと生徒のほうを見ると全員が僕のことを見ており、緊張してどもりながらの自己紹介となってしまった。
シーンと静まり返ったままの教室内。
すると、一人の生徒が声を出した。
「も、もしかして……男の子……?」
「…え?うん…」
僕がそう返した途端、突如教室内に声が溢れた。
「本当に男の子だったー!」
「すごい!めっちゃ美人じゃん!!」
「どっから来たのー?!」
「恋人はー?!」
教室内にこだまする様々な質問や声。
僕が男の子というだけでどれほど騒いでいるのか…
「はーい!みんな静かにー!蒼空くんビックリしちゃってるでしょー!!」
七海先生がそういってみんなを落ち着かせる。
「蒼空くんは事情があって今まで入院してたの。だから勉強のことで色々わからないことがあるかもしれないから、その時はみんなで教えてあげるのよー?」
「「「はーいっ!!」」」
生徒達は大きく返事をする。
「それじゃあ、蒼空くんの席は……あっ!岡部さんの隣が空いてるわね。岡部さん?蒼空くんを案内してあげて?」
「はい、先生。」
先生に呼ばれた生徒が席を立ち、僕の方へ近づいてくる。
僕は初め、その生徒が誰だかわからなかった。
2年前に比べて背も髪も伸びて、大人っぽくなっていた。
変わっていないのは、耳に入ってくる優しい声と桜の匂い。
「久しぶりだね、蒼空くん」
そう言ってその少女は僕にそっと近づき、唇を重ねた。
2年ぶりにその少女…岡部舞桜と僕は2度目のキスをした。
学校始まるよー!




