楽しい会話
先生が医務室へと戻ったあと
「それでな蒼空くん。ママと蒼海ちゃんには最初に俺から話をするから、それまですこし病室で待っててくれないかな?」
と、響は蒼空に話した。
響は先生が蒼空を検査している最中考えていた。どうやって渚と蒼海に蒼空のことを伝えようかと。
いきなり蒼空から話しかけてしまっては2人は驚いてしまうだろう。
渚なんてもしかしたら失神……
そう考えた響は自分から話すことでワンクッション置くことにしたのだ。
あらかた蒼空に説明し終えたあと、響はパンと手を叩いて蒼空に話す。
「それじゃあ蒼空くん!ママが来るまでパパとお話しようか!」
「うん。僕も父さんともっと話がしたいな。」
「おお!そうかぁならたくさんお話しないとな!二人が来る前にいっぱいお話して自慢してやろう!」
もっと話したいと言う蒼空を可愛いなと思いながら響は話始める。
正直な所、渚の会社に電話して早めに来てもらうことも可能だったのだが響はしなかった。
せっかく2人きりで話せるのに勿体無いという響の欲望がそうさせてしまった。
そして、響は忘れていなかった。蒼空の声を聞いたと自慢してきたあの時の渚を…
声を出せたことに涙を流して喜んでいた響であったが、時間が経つにつれて悔しくなっていったのは響本人しか知らないことだった。
(たまには…いいよな?)
そう心で思いながら蒼空と話をしていく。
「蒼空くんの好きな色ってなに?」
「うーん。青…かな?」
「そっかそっか!蒼空くんにはきっと似合うよ青!うん!すごくいい!それじゃあ次は――」
こんなような会話が繰り広げられていた。
今まで溜まってきた親馬鹿の力が溢れ出してきていた。
蒼空が眠ってしまってからあまり見せてこなかった一面が露になっていく。
一生懸命になって話をしていく蒼空を見ながら可愛いなぁ綺麗だなぁと思いながら響はそれを心に焼き付けていく。
(今度渚に自慢してやろう…今地球上で蒼空くんの好みの色や食べ物を知っているのは俺だけだ!)
そんな優越感のようなものに浸っていると響はふと気づく。
蒼空が自分のことを父さんと呼んでいるのだ。
「………ところで蒼空くん?…なんでパパのことお父さんって呼んでるの?」
響はやんわりと蒼空に聞いた。
「…え?えっと……パパっていうのはなんとなく…恥ずかしい…かな…」
蒼空は申し訳なさそうにそう言った。
なんてことだ…恥ずかしい…だと…。
響はその言葉にショックを受けた。
蒼空にパパと呼んでもらうのは蒼空が生まれる前から願っていたのに…まさかこんな事になるなんて。
「な、な、何を言ってるんだい蒼空くん?恥ずかしい事なんて何もないじゃないか。パパはパパだしママはママだよ?蒼海ちゃんだってそう呼んでいるし、男の子なら大きくなってからでもそう呼んでいる子はたくさんいるよ?何を隠そうパパも高校生になるまではパパママと呼んでいてね。そうだ、蒼空くん試しに呼んでみないかい?パパって。ほら、言ってごらん?」
響は必死だった。
傍からみたらこんな滑稽な事はないだろう。
そんな姿を晒してもなお、響はパパと呼んでもらいたかった…
「え、えっと…ぱ……パパ…?」
「うんそうだよ蒼空くんのパパだよ唯一無二のパパだよ絶対的にパパだうん間違いないどうしたんだい蒼空くんもっと呼んでもいいんだよほらもう一回呼んでみようか」
響はわけのわからない事をいいながら蒼空に何度もパパと呼ばせようとしていた。
「パ、パパ…………やっぱりパパは恥ずかしいよ父さん…」
蒼空は次第に赤くなり父さん呼びに戻ってしまった。
響は残念そうにしながらもパパと呼ばれた事に喜びを噛み締めていた。
「…………うんっ!ありがとう蒼空くんパパ元気になったよ。まぁ、徐々に鳴らしていこうか。ね?」
「う、うん…」
響はこの場では諦めたがまだ完全に諦めたわけではなかった。
いずれ自然にパパと呼んでもらえる日を迎えようと心に決めたのだった。
しばらく話し込んでいたあと、病室にノックの音が鳴る。渚と蒼海だった。
いつの間にかそんなに時間が経っていたのかと響は感じた。
「それじゃあ蒼空くん、さっき話した通りママ達に話してくるからちょっと待っててくれるかな?」
「うん。いってらっしゃい」
そう言って響は病室の扉開けると、中に入ろうとした2人を連れてロビーの方へ向かった。
「ちょ、ちょっとどうしたのよ響話って。病室じゃ話せないことなの?」
「パパーわたし早くお兄ちゃんのところ行きたいよー」
2人は病室に入れなかった事に不満を漏らす。
「いや、ちょっと病室じゃ話せないことがあってね。すぐに済むから聞いてくれ」
「………なにか悪いこと…?」
渚は不安そうに響に聞いた。
「いや、とてもいいことだよ。…………蒼空くんが話せるようになった。」
「「………え?」」
渚と蒼海は口を揃えてそう口にした。
「だから、蒼空くんが話せるようになったんだって!」
響はもう一度言う。
「……またまたァ〜そんなこと言って、本当はこの前のこと気して言ったんじゃないのー?」
「うっ…いや、確にそれはあったけど違うんだよ!……本当に、蒼空くんは話せるようになったんだ。」
響の真剣な物言いに渚も真実なのだと気づく。
「…ねぇ?本当なの?蒼空くんは…だって、障害じゃ…」
「うん。俺も先生もさっきまではそう考えてた。でも、蒼空くんは実際に話せるようになった。……先生の話だと、眠っている間に夢を見ていたことで精神も成長していたんじゃないかって。」
「夢?…夢を見ていたって、蒼空くんが?」
「うん。蒼空くんに聞いたんだ。眠っている間で覚えていることはあるって。そうしたら、夢を見ていたような気がするっていって話してくれたんだ。その見ていた夢の内容が……」
そういって響は渚に蒼空が見ていた夢の内容を話す。
それを聞くうちに渚は口元を押さえて涙を浮かばせる。
自分の声は、息子に届いていたと。
「………まぁこんな感じかな。…渚。大丈夫だよ。蒼空くんは蒼空くんだった。間違いなく、俺達の息子だよ。」
「うん…うんっ!」
渚はそう言うと溜まっていた涙を拭き取りそう返事をする。
「ねーねー?お兄ちゃんとお話できるのー?」
「うん。できるよ蒼海ちゃん。ちゃーんと、蒼海ちゃんのこともお兄ちゃん知ってたから安心して?」
「ほんと?!やったー!!ね!ねぇ!はやくお兄ちゃんのところ行こ!」
蒼海は早く早くと響と渚の手を引っ張って行く。
そんな娘の姿を見て響と渚は笑みを浮かべる。
愛する娘に手を引かれながら愛する息子の元へと向かう。
響は数年ぶりにスキップをしていた。
これで家族視点終了となります
次回からはまた主人公視点で書いていきます
そしてなんと!ついにブクマ200件突破しました!
ありがとうございます!
ご期待に答えられるよう更新続けていきますのでどうかこれからもよろしくお願いします!
何か要望がありましたらコメントしていただければ対応いたしますのでよろしくお願いします!




