はしゃぎ過ぎ
主人公視点に戻ってまいりました
父さんと僕はしばらく話し込んでいたらしい。
母さん達のノックの音が鳴るまで時間を忘れていた。
父さんは母さんと蒼海ちゃんに説明するために病室を出ていった。
一人になり先程までのことを思い出す。
予定とは違っちゃったけど話せてよかったと思う。
早く母さんと蒼海ちゃんとも話がしてみたい。
前世では妹がいなかったから蒼海ちゃんとは仲良くしたいし、兄妹っぽいこともしたいな…
あれ?待てよ?この世界でいうと蒼海ちゃんは弟みたいな存在になるのか?
それで僕はお姉ちゃんみたいな……やばい。急に蒼海ちゃんへの接し方が分からなくなってきた。
お姉ちゃんみたいな対応ってどんなのだ…優しく?それとも意地悪な感じ?
駄目だ、考えるほど分からなくなる。
とりあえずはいつもどおりの僕でいこう。
いや、そうだよ。別に対応を変える必要なんかないじゃないか。
僕は僕だよ。ちょっと男女の関係性が違うからってそう問題は起きないだろ……
僕はそうして自分を貫こうと決めた。この判断が吉と出るか凶と出るか…
そんな事考えているとノックの音が鳴る。父さん達が戻ってきたようだった。
父さんが入ってきて、そのあとに母さんと蒼海ちゃん。
2人は病室に入ってくるなりベッドの隣にまで来て僕のことをキラキラとした目で見始めた。
なんか、もう、凄くキラキラしてる。
誕生日プレゼントを渡される瞬間の子供みたいな…そんな感じの目。
そして母さんが口を開く。
「そ、蒼空くん?わっ、わかるかなーっ。私のことっ。」
母さんの声は上ずっていた。その顔はにやけ始めていて、【ねぇねぇ早く!プレゼント早く!】と催促している子供のようだった。
僕は父さんの顔をちらっと見ると、うんと顔を頷かせる父さん。
これは、話してもいいということかな。
そう思い僕は母さんに話しかける。
「…うん。わかるよ。母さ「蒼空くんが喋ったー!!!」…んだよね…」
僕が母さんと言い終わる前に母さんはそう言いながら声を荒らげた。
待ってましたといった表情で僕の顔に頬ずりする。
「そうよ!ママよ!もぉー!!なんて可愛い声!一体何年間この声を聞くのを待ってたことかっ!ほっぺたもムニムニつるつるでもう蒼空くんっ!蒼空くんっっ!!」
激しい。母さんとても激しい。
ちらっと見た父さんなんか少し引いてる…
「蒼空くんっ!ねぇねぇ蒼空くんっ!!ママって!ママって呼んでくれるかな?!?!」
僕は若干ビクビクしながら母さんのお願いを聞くことにした。
「ま……ママ…?」
「ーーーッ!!!そうよっ!ママよ!やっと聞けた!蒼空くんの口からママって!!ほんとにっ!……本当に……良かった……」
母さんの声は次第に涙声に変わっていた。
頬ずりをやめて母さんは僕の顔を両手で包み込み見つめて話始める。
「蒼空くん……本当に、目覚めてくれてありがとう……生まれてきてくれてありがとう…っ!」
そういうと母さんは力いっぱい僕の顔を胸に押し当てた。
僕は……そんなに母さん達を待たせていたのか…。
母さん達にへんに思われるからと話して来なかった僕。
しかし、いざこうやって違うタイミングで話しても母さん達は受け入れてくれた。
僕の勝手な考えで母さん達を待たしてしまった。
父さんは僕に信じてあげられてなくてごめんと言った。
しかしそれは父さん達だけじゃない。
僕も父さん達を信じて、話せるようになってすぐ話をしていればここまで待たせる必要はなかったのかもしれない。
僕はせめてもの謝罪と恩返しのつもりで母さんを強く抱きしめ返した。
少しして母さんも落ち着き、僕を離した。
「……ありがとうね蒼空くん。…ほらっ!蒼海ちゃん、お兄ちゃんとお話しよう?」
そう言って妹…蒼海ちゃんを母さんが僕の方へと押して近づける。
僕はそうして近くに来た蒼海ちゃんを見つめると、蒼海ちゃんは見る見るうちに真っ赤になっていった。
「あっ………あのっ!わ、わたしっ……蒼海っていって……え、えと…お兄ちゃんが…お兄ちゃんと…その…」
母さんとは違い蒼海ちゃんは緊張しているようだった。
初めて会った訳でもないのに自己紹介から入っているあたり緊張の現れなんだろう。
そんな蒼海ちゃんに僕は優しく話しかける。
「うん。知ってるよ蒼海ちゃん。毎日僕のお見舞いに来てくれてありがとう。こんな可愛い妹がいるなんて僕うれしいよ。」
言い終わったあと、少しキザ過ぎたかもしれないと僕は思った。
優しくを意識し過ぎておかしくなってしまったかも……しかし
「………天使さま……」
「えっ?」
蒼海ちゃんはボソッと何かを言うと僕の手を握り話始めた。
「お兄ちゃんっ!わたし!お兄ちゃんのこと好きです!お兄ちゃんの為にお勉強がんばりまひゅっ!」
少し噛みながらそう言った。
妹からいきなりそんなことを言われ僕は困惑する。
多分好きっていうのは兄としてってことだろうけど、勉強って…自分のためじゃなくなんで僕のためなんだ?
「え、えっと……が、頑張ってね?蒼海ちゃん?」
「はいっ!お兄ちゃんの為にがんばります!!」
蒼海ちゃんのこの感じはいったい…好意を寄せられてるのは間違いないんだろうけど、なぜそこまでしてくれてるのか僕にはわからなかった。
僕、特別な事してないんだけどな…そもそも会話したの初めてだし…
――――せ――い
―――――んぱい
――――せんぱいっ――
ふっと記憶の中でそんな声がする。
先輩とぼくに言う声。
僕は蒼海ちゃんをみてその子の事を何故か思い出していた。
(……少し、似てるかも……)
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