よくわからない
主人公目線に戻りますよ
口から自然に彼女の名前がでた。
あれ?なんで僕はそんなこと言ったんだろう。
目の前にいる少女の名前なんて、なんで知っていたんだろう。
色々気になることが多すぎる。僕はどれくらい寝ていたんだろうか。
体の感覚が全然違う。たしか最後に覚えてるのは赤ちゃんだったはずだ。
もしかしたら彼女…舞桜ちゃんと言う少女は知っているかもしれない。
そう思い聞いてみようとしたが…できなかった。
話せない。うまく口が動かせない。
赤ちゃんの時とはまた違った感覚で話せなくなっている。例えるなら錆び付いて動かなくなった機械のようだった。動かそうとするとギシギシと体の中で音がする。一体どれほど眠っていたらこんな風になるんだろう。
僕が話せないで困っていると舞桜ちゃんが話しかけてくる。
「まだ、喋れないよね。待ってて、先生呼んでくるね?…あと、私もう帰らないといけないから」
そういうと舞桜ちゃんは僕の体を抱きしめる。
優しく包み込むように。
揺れる長い髪。その頬はほのかにピンク色に染まっていて、彼女も恥ずかしそうだった。
ふわっと、桜の香りがする。そうか、この匂いはこの子の匂いだったんだな。
「今は、抱きしめるだけね?」
そう言って彼女は部屋から出ていく。
取り残された僕は先程抱き締められたことにドキドキしていて落ち着かない。色々考えなきゃいけないことがある筈なのに頭に入ってこない。残っているのは抱き締められた感触と、桜の香り。
夢で僕を呼んでいたのは彼女だったのかな、と僕は思う。
少し待っていると勢い良く扉が開く音がする。
駆け足で入ってきた女性は白衣を着ていておそらく病院の先生かなと思う。
そんな先生にむけて僕は寝た状態のまま視線だけを先生に向ける。
起き上がってあいさつしたかったが口だけじゃなく体も錆び付いているようにギシギシいって動かない。
「い、意識が…意識が戻ってっ!」
先生はかなり驚いた表情をしている。そんなに僕が起きたのが驚きなんだろうか?
まぁ体を見る限り数日寝ていた、とは冗談でも言えないと言った感じだし…
「そ、蒼空くん?!先生の声はわかる?!」
先生がそう僕に向かって聞いてくる。
えっと……どうやって意思表示しよう…
僕は迷った結果、視線をずらしては先生に戻してというのをやった。
体が動かない以上出来る事といったらこれくらいだよね。
「!!!!」
先生はまた一層驚いている。何だか面白いなと思うけど、これは不謹慎かな?
「お、親御さんに連絡をっ!」
そう言って先生は部屋を出ていった。落ち着かない人だなぁ…
また取り残された僕は自分の体をまじまじと観察する。
(成長……してるよな、やっぱり)
最後に覚えてるのは赤ちゃんの体だった。それが今では幼稚園児か、小学校低学年くらいの大きさになっていた。
(でも、ガリガリだ……多分筋肉とかついてないよこれ…)
そう、ガリガリ。大きさこそ成長しているように見えたが肉付きは悪い印象。眠っていたのだから当然だろう。
(なんでいうか、病弱というか…拒食症っぽい体だなぁ)
そんな事を僕は思っていた。
しばらく体を眺めていると先生が戻ってくる。
「今、親御さん達が来るからね!」
そう僕に話しかける。いや、先生わかりましたから落ちついてください…。
先生はそう言うと今度は色々検査をし始めた。血圧とか心拍。あと血中酸素とか。
目に光を当てるやつもやられた。あれ、前世の時から苦手だったんだよね…。
色々検査したあとに、先生は何やらブツブツと考え始めた。
「意識は正常…バイタルにも異常なし……でも、おかしい。意識に混濁が見られない……乳幼児の時点で眠りについていたのなら、本来思考レベルは乳幼児のまま。自分の意とは違う体に対し何かしらの混濁がある筈なのにそれが全くない……いや、それどころか落ち着いている…?」
先生が良くわからないことを言っている。
(え、僕慌ててた方がよかった?)
何だか良く分からないけど、悪いことしたかなと申し訳なくなる。
しかし、申し訳ないと思ったのもつかの間。僕は扉が勢い良く開いた音でビクッと意識がその音に向けられる。
その扉の前には、少し老けたが見覚えのある二人と、知らない少女が立っていた。
お待たせしましたー!
ようやく主人公に戻ってきました。
しばらくは主人公目線と、親目線行き来しますが宜しくです。




