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少女と妹


「おにいちゃんにさわらないでっ!」


バシッと手を払い除ける。

とっさのことだった。兄に触れさせてはいけないと、本能で感じ取ったかのように野上蒼海の体は動いていた。


「……」

手を払い除けられたその女の子は無言で彼女を見つめていた。その視線には温度がなく、見ているものを凍りつかせるような冷たさがあった。

しばらく見つめたあと、その女の子は口を開ける。


「……貴女、だれ?」


ビクッと野上蒼海の体は反応した。

自らにかけられたその声には柔らかさなどなく、研ぎ澄まされたナイフのように鋭く耳に突き刺さってきたのだ。

まだ幼い彼女の体は恐怖を感じビクつく。先ほど手を払い除けた時のような本能からくる恐怖。

口が動かない。答えようとしても体が恐怖を感じ動いてくれない。

それほどまでにその女の子は冷たく、鋭く、悪魔のような目をしていた。


「…ねぇ?誰ってきいてるんだけどな。」


女の子はさらに問いかけてきた。


「ひっ…!…………の、のがみうみですっ」


女の子からの威圧的で沈黙を許さない声と目線に恐怖で動かなかった彼女の体はとっさに反応する。なんとか名前は言うことができたがそれ以上は口にすることができなかった。


「……貴女、蒼空くんの妹?」


質問はつづく。しかし、先ほどの名前を言った時に彼女の幼い心は既に極限にまで緊張しており、言葉を発することができずただ、こくんっ。と頷くしかできない。

緊張で口内の水分は枯れ喉はカラカラ。身体からは冷たい汗がだらだらと垂れていた。


「妹…そっか、妹さんじゃあしょうがないか……」

そう言うとその女の子の周りから冷たさが和らいでいく。


「ごめんね、怖がらせて。私は岡部舞桜っていうの。よろしくね?蒼海ちゃん」

先ほどまでの冷たさを含んだ言葉ではなく、しっかりとした柔らかさのある言葉だった。


その声を聞き彼女の緊張は少し和らぐ。が、あくまで少し。

未だに言葉を発せないでいた。


「…蒼海ちゃんはお見舞いに来たの?一人で?」

優しく岡部舞桜は質問する。


「…っ!は、はいっ…」

その質問に彼女はようやく反応することができた。


「そうなんだ。一人で来るなんてすごいね。そんなにお見舞いに来たかったの?」


「は、はいっ…お、おにいちゃんに会いたくて…」

なんとか質問に答えていく。徐々に落ち着いてきてはいるが先ほどまでの悪魔のような目や声が頭からはなれない。離れてくれない


「そっか。蒼空くんのこと好きなの?」


そう聞かれて彼女は悩む。いや、悩むというよりは質問の意味がわからなかったのだ。

好き。それはどういった感情なのか幼い彼女にとってはまだ経験した事のない感情だった。

もちろん、父や母を好きかと聞かれていれば即座に好きだと答えられただろう。

しかし、今回は兄を好きかと聞かれている。

彼女は悩んでいた。自分の兄に対する気持ちは一体なんなのか。


父や母にむけている気持ちとは違う。しかし、恋をしたことのない彼女には異性として兄を好きなのかもわからない。もちろん、嫌いというわけでもない。

恐らく彼女があと10年、もしくはその半分も生きていれば好きだと答えられただろうが今の彼女にはそう答えることはできず、ただわかりませんと言うしかなかった。


「そっかぁわからないか。……まぁ、合格点かな。」

岡部舞桜はそうつぶやく。


「え、えっと…」

蒼海は困惑していた。合格点と言う言葉はまだ知らなかった。それ故になにかまずいことを言ってしまったのかと。


「あ、ううん。なんでもないよ。………ねぇ?蒼海ちゃん。私はね、蒼空くんが好きなんだ。」

そう岡部舞桜は言葉にした。


「だからね、蒼空くんの妹の蒼海ちゃんとは仲良くしたいんだ。…ねぇ?蒼海ちゃん?私と友達になってくれるかな?」


続けて言葉を繋ぐ。友達にならないかと。

ならないか。一見お願いをしているように聞こえるが蒼海にはそう聞こえていなかった。なぜか?

その言葉には先ほど同じ冷たさが含まれていたのだ。拒絶など許さない。逆らえばどうなるか想像もつかない恐怖が蒼海にのしかかる。

幼い彼女は、はい。と答えるしかできない。


「うん。よかった友達になってくれて。なってくれなかったらどうしようか困ってたと思うもん。」

また言葉に柔らかさが戻る。


「私、時々蒼空くんに会いに来るから、その時はよろしくね?蒼海ちゃん。」


「は、はい…」


「うん。ありがと。…………それじゃ私は帰るね。…また、今度ね?」

そいうと岡部舞桜は病室を出ていく。


病室を出ていったと確認したあと、蒼海はその場に座り込んだ。


岡部舞桜と話していた数分の出来事は幼い彼女にとっては相当のダメージだった。

かけっこをしたあとのように息は荒れ、汗が吹き出ている。

体も小刻みに震えており彼女は自らの肩をつかみ震えを抑えていた。


彼女がいま感じている感情は恐怖ではなく安堵。

あの悪魔のような少女が居なくなったという安心と、今こうして呼吸をし、鼓動をし続けていることへの安堵であった。


蒼海は震える体を動かし睡っている兄の手を握る。

「おにいちゃん……こわかったよぉおにいちゃん…」

そう言って彼女は睡っている兄の手を握ったまま兄の横に寝転がる。


そうすると、先ほどまでの恐怖や緊張がなくなり、心が安らいでいくのを蒼海は感じた。

あぁ、やっぱりこの人は天使さんだなと思う。

その一方で岡部舞桜。あの悪魔のような少女にはかなう事はできないと幼い心は確信していた。




そろそろ主人公起こさないとなって(´・ω・`)


この調子で書いていくと主人公起きてから300部超えてく…

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