嫉妬
今回からはママ目線やで!
――ねぇ、響!私妊娠したの!――
――本当か?!…よかった。ほんとによかった…――
――うん、うん!ねぇ?響?一緒に居てくれてありがとうね。――
――俺の方こそありがとう、渚。これからもずっと一緒にいような。俺と、渚と、お腹の中の赤ちゃんの3人で――
目が覚める。
最近こんな夢ばかり見る。
夢だってわかっていても、妊娠したことは嬉しくてたまらない。その分起きた時気分が下がる。
なんで私の体は妊娠してくれないのだろうと。愛する人の子供を宿せないのかと。
この夢を見始めてから起きている時でもぼーっとすることが多くなった。何か忘れているようで。
でも、その忘れている何かを思い出そうとする事はない。何故かわからないが思い出したくないと思ってしまう。
きっと不妊症治療のせいだ。私はそう思うことにした。
響が仕事を始めると言った。
私はそれを聞いたとき受け入れることができなかった。
大学の時だって話し合って離れないと決めた。結婚すると気だってそう。
響は分かってくれていると思っていた。
でも違っていた。響は負担を負わせていると思っていた。
そんな事私は感じてなんかないのに。家のことをやっていてくれて、私の帰りを待っていてくれている。
私にはそれで十分だった。いや、十分すぎる程だった。
小さな時から一緒ずっと響と私一緒だった。
初めてあった時の響はとても人見知りだった。当然だ。だって響は男の子だったから。
初めて見る男の子に私は緊張していたんだろう。上手く喋りかけられなかった。
幼稚園に入る前、まだ言葉足らずだったのにも関わらず私は緊張していたのだ。
それ程までに初めて見た男の子………響は綺麗だった。
人見知りの響はお義母さんの後ろに隠れながら私を見ていた。その姿が小さいながらも私の保護欲を刺激していたと思う。
緊張しながらも私は響に声をかける。
「ひ、ひびきくんっていうの?」
「…………うん。」
「わ、わたしね…なぎさっていうの。……よろしくね?」
「……うん。よろしく……」
お互い緊張しながらも挨拶を交わす。それをみた母達も安堵の表示を浮かべていた。
「それじゃあお母さん達はここで待ってるから、二人で遊んできていいわよ?」
そう響のお義母さんが言う。
「そうね、渚?響くんに怪我させないようにね?」
私のお母さんもそう言ってわたし達を遊んでくるようにと言った。
「そ、それじゃあひびきくん……むこうであそぼっか?」
「うん」
私は響を公園の花畑へ連れていった。
当時の私はあまりはしゃぎ回るということはしないで、お花であそんだりおままごとをしたりと男の子のような遊び方をしていた。
近所には他の女の子たちもいたが何故か一緒に走り回ったりすることはしなかった。
「ここね、とってもきれいなおはながあるんだよ?ほら、これとか」
そう言って響に花を見せていく。
あまり外で遊んだことのなかった響は目を輝かせながらそれを見る
「すごい……とってもきれいなおはなだね!」
そう、響は言っていた。
私はその時のことを忘れていない。
花が綺麗だと言って目を輝かせながら笑っていた響を。
初めて見た男の子の笑顔を。
それはとても綺麗で、太陽のように眩しくて。
私の恋はその時からはじまった。
それからはよく二人で遊ぶようになった。
次第に私も他の女の子のように駆け回ったり、泥遊びをし始めていたが響は嫌がる事なく一緒に遊んでくれた。
保育園に入ってからも一緒だった。
小学校も。中学校も。高校も。
でも、大学は違ってしまった。
私は銀行員を目指すために上位の国立大へ。
響は花の研究がしたいと私立の園芸学部へ進んだ。
大学入試前の私は響のやりたい事がやれるならと応援した。
もちろん響も私のことを応援してくれていた。
晴れて二人とも大学に合格し、別々の進路へ進むこととなった。
大学への入学前まで私はなんの不安も抱いていなかった。
大学は別だとしても私と響は一緒に居られると。タカをくくっていた。
しかし実際はそううまくは行かなかった。
高校まで毎朝一緒に登校していたのにそれがなくなった。大学の距離、講義の時間が違うのだ。当然だろう。
お昼も響の弁当ではなくなった。高校時代は毎日響特製の弁当を食べて生活していたが、学校が違くなったのだ。毎日なんて作ってもらえるわけもないし、響の負担になってしまう。
学校が終わった後も会えなくなった。
大学から出るレポートやサークルで響が忙しくなり会えない日々が続いた。
そんなある日、私は気になって仕方がなくなり響のキャンパスへ来ていた。
響はどんな大学でどんな大学生活を送っているのだろうと。
私が響を見つけたとき、響は女に囲まれていた。
ただでさえ少ない男で、尚且つ美人な響。人気があって当然だ。
高校まではいつも私が一緒で周りの女は声をかけられずにいただけなのだ。
サークルのメンバーなのだろう。響の周りの女たちの会話が聞こえる
「ねぇ?響くん?このあと一緒に課題やらない?私わかんないとこあるんだー」
「あ!それ私も出た!一緒にやろうよ響くん!」
響は答える
「えっと、あんまり大人数で勉強するのはちょっと…」
そんな言葉をもろともせず女達は続ける
「えー!いいじゃん硬いこと言わずにさー。あ、そうそう。私この前美味しい個室の居酒屋見つけたんだよねー。どうせならそこ行かない?」
「お!いいねそれ!ってかさ?響くんの連絡先うちらまだ知らないんだよね。サークル一緒なんだから教えてよ。ね?」
響に女達が詰め寄る。
「えっと…その……」
「響。ちょっときて。」
「え?!な、渚?!どうしてここに?!」
「いいから。こい。」
我慢できなかった。
他の女達に言い寄られてる響を見ているのが。
「―――ちょっと!誰あれ?!」
「さぁ?!でもなんか雰囲気悪くない?なにあれ」
「つーか響くん連れていくなよーわたし達これからご飯食べいくんだけど。」
そんな女達の言葉を気にすることなく私は響の手を引き人通りの少ない所まで来る。
「――な、渚!聞いてよ渚!痛いって!手が!―――ッ」
ドン。私は響を壁に追いやる。
「……ねぇ響?さっきの人達は誰?」
「……は?いや、それよりなんで渚がここに――」
「響。誰って聞いてるの。こたえて」
私は響に詰め寄る。
「さ、サークルが一緒の人達だよ…」
「ほんと?それだけ?」
「ほ、ほんとだよ。連絡先だって知らない人達で――」
言い終わる前に私は響の口を塞ぐ。
「んっ………ぷはっ。……ねえ?響?」
響は何が起きたのかわからないような顔をしていたが、理解してきたのか顔を赤らめて聞いてくる。
「な、渚!なにするんだよいきなり!――ッ!」
また口を塞ぐ。
「……だめ。我慢できない。ねぇ?響?ごめんね。私、自分が思ってる以上に嫉妬深かったみたい」
「は、はぁ?!ちょっと、なにいって!ーーっ!」
そう言って私は響の手を引き大学を後にする。
目指しているところはホテル街。
嫉妬や怒り、憎悪などいろんな感情が混ざって私は我慢出来なくなっていた。
(私の響だってこと、教えてあげなくちゃね。)




