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衝突


「ね、ねぇ響?もう一度言ってもらえる?」

俺が光さんのところで仕事をすると言った時、渚はまず困惑していた。


「だから、光さんのところにアシスタントとして仕事をしに行くって言ったんだ」


「いや、えっとね、ひ、響?どうしてそんな急に仕事するなんて…あ!何か欲しい物があったとか?…もーそれならそうと言ってくれればよかったのに。明日二人でそれ見に行きましょうか?」


「ちがうよ渚。そうじゃないんだ。俺からお願いして光さんのアシスタントになるんだ。」


「そ、そうなんだ……ねぇ?理由を教えて?」


次第に渚の声に怒りが込められ始める。


「俺さ、渚に支えられてるだけじゃダメだと思うんだ。…主夫だからって働かなくていい訳じゃない。」


「響は家のことしてくれてるじゃない!それは働いているのと同じじゃないの?!」


「ううん。それだけじゃダメだって思ったんだ。せめて、自分で使うお金くらいは自分で稼ごうって」


「はぁ、やっぱりお金のことじゃない。心配しないでいいわよ響。私、夏には昇進が決まってるし。それに今だって特別お金に困ったことなんてないじゃない。お小遣いが欲しいのならすぐに渡すわよ?いくら必要なの?10万?20万?それとも――」


「渚!……違うんだよ渚。そうじゃないんだ。渚に一方的な負担をかけてるっていうのが嫌なんだ……!わかってくれよ!」


「っ!わからないわよ!そんなの!!!」


渚はついに我慢しきれなくなったんだろう。声を張り上げて怒鳴ってきた。


「一方的?!負担?!全然わからないわよ!!いい?まず響は家事をこなしてくれているじゃない!料理も洗濯も掃除も!これのどこが一方的なのよ?!私にできないことを響がやって、その代わり私が稼いでくる。全然一方的じゃないし、ちゃんと支え合ってるじゃない!!」


「だ、たからそれは――」


「それに!負担なんてこれっぽちも感じてない!!私はね?響の為に何かをしてあげるのは全然苦じゃないの!私と響の生活のためと思ったら仕事なんてこれっぽちも負担じゃない!同僚も先輩もいい人たちで楽しいくらいなの!」


「それはそうかもしれないけど!」


「けど何?!他にあるなら言ってみなさいよ!」

渚はどんどんヒートアップしてくる。

でも今回は引くわけには行かない。俺だけの問題じゃないから。

ごめん渚。俺は渚にこれからひどい言葉を言う。悲しませてしまう。

そう思いながら言葉を口にした。


「…俺は、渚のペットじゃない。餌付けされてのほほんと生活していくなんてできない。」


「ッッ!」

バチン。とぶつかる音。

俺は何が起きたのかわからなかった。

徐々に感じる頬の痛みで、俺は渚に叩かれたのだとわかった。


痛い。初めて感じる頬の痛みに俺は戸惑っていた。

親に怒鳴られることは今まででもあったが叩かれた事はなかった。

怪我ももちろんした事あるが、人にぶたれたというのは初めてだった。

戸惑いながらもやってくる鈍い痛みに俺は涙を浮かべていた。


「………あっ……ひ、響?ご、ごめんなさい!わ、わたし、何して…」


渚も戸惑っていた。当然だろう。

男に手を上げるというのは女の世界ではタブーとされている。力の強い女に暴力を振るわれたら男にはなす術がないから。

尚且つ叩いた相手は旦那である俺。衝動的に手を出してしまい自分でも後悔し始めているんだ。


俺は涙を浮かべながらも渚を見る。

ここだ。ここでちゃんと言わないといけない。背負うことなんてできやしない


「……気持ちは澄んだ?渚。もう一度言うよ、俺はペットじゃない。……俺だって渚を支えたいんだ。その為にはまず自分で立てるようにならないといけない。だからアシスタントになるんだ。……お願いします。俺に、仕事をさせてください」


そう言うと俺は頭を下げた。


渚は何と言ってくるだろうか?身構えていると身体が強く包まれた。

渚が抱きついて…いや、抱きしめてきた。


「ごめん。ごめん響。ごめんなさい。嫌いにならないでください。私を捨てないでください。叩いたことが許せないなら私の手を切り落としても構わない。だから響、嫌いにならないで。私から離れていかないで」


渚はうわ言のように俺抱きしめながら謝っている。

そう、それは不妊症だと伝えられた時のように


俺は渚を抱きしめ返す。


「安心して渚。嫌いになんてってないし、ならないよ。頬は痛かったけど、もう痛くない。だから切り落とすなんて怖いこと言わないで。俺はずっと一緒にいるから。」


「……ほんと?」


「うん。ほんとだよ。俺が渚を嫌いになるわけ無いだろ。だからさ、渚。俺を信じて?大丈夫、アシスタントって言っても光さんのところだよ?何かあったらすぐ駆けつけられるだろ?」


「……うん。でも…」


「それに、何かあったら渚が守ってくれるだろ?違う?」


「…ううん。違わない。響は私が絶対守る。」


「ありがとう渚。……仕事、許してくれる?」


「………もうちょっと、このままでいてくれたら、考える。」


「……ははっ。そっか。ならしばらくはこうしてないとね。」


「うん。ずっとこのままでもいい…」


こうしてしばらく抱き合った後、俺は渚に仕事を認めてもらった。


響くん叩かれたの初めてってそりゃ男としてどうなの?!とか思うかもしれませんがこの世界では貴重な男子であべこべってるので許してあげて!

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