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仕事


あれから数週間が経っていた。

渚は仕事に復帰している。


渚の会社…銀行の人達には俺から話をしていた。

幸い上司の人も同僚もいい人たちで、二つ返事で受けてくれた。

そして、心配もされた。

心配してくれるのは嬉しいが反面、不安にもなる。


俺はそんなに心配されるような顔をしていたのだろうか?もちろん、銀行の人達は一連のことを思って言ってくれているのだろうがそれでも不安だ。


渚にバレていないかと。他人からですら丸分かりなくらい疲れた顔をしていれば当然一緒に暮らしてきた渚にはバレないはずはないのだから。




あれからの俺の生活も大分変わってしまった。

まずは仕事を始めた。渚の姉である光さんは作家さんなのだがそのアシスタントをさせてもらい始めたのだ。

蒼空ちゃんの入院費用などを考えるとお金はいくつあっても足りない。

かと言って就職をしてしまうと蒼空ちゃんのところへ行けなくなってしまう。


そんな手詰まりな俺に光さんがアシスタントをやらないか?と言ってくれたのだ。

もちろん事情を知っているし、アシスタントと言っても出来上がった原稿をチェックし誤字脱字等がないか確認するという簡単な仕事。


PCさえあれば自宅でも病院でもできる融通のきく仕事だった。

正直これだけの事でお金を貰うなんて申し訳ないと光さんに言ったのだが、「響君と私はもう家族なんだから。素直に甘えなさい」と言ってくれた。


俺は蒼空ちゃんが倒れた日ぶりに泣いた。恥ずかしいくらいに。


疲れが溜まってたんだろう。渚に嘘をつかなきゃいけない。

目覚める見込みのない蒼空ちゃんへのお見舞い。

先の見えないお金への不安。

色々辛かったのを我慢していたのが崩壊したんだと思う。光さんには頭が上がらない。


蒼空ちゃんのお見舞いに行く時は光さんの家に行ってくると渚に言って出ていく。

毎日病院に行っているとバレる訳にはいかないから。お金のこと以外でも光さんにはお世話になっているのだ。



渚に光さんのところで仕事をすると伝えた時、物凄く止められた。

それはそうだ。渚からすれば蒼空ちゃんが生まれる前の俺、専業主夫であった俺がいきなりそんなことを言い始めたから。


元々渚は俺に仕事をさせるつもりがなかったんだ。もちろん学生の時から。

大学に通っていた4年間は毎日会ってはいたがもちろん学校外の時間でのこと。

講義を受けているときは別々なのは当たり前。それを渚はいたく嫌っていた。


保育園からずっと一緒だった。

小中高も同じだったし、俺は数少ない男でどのクラスに入るかは自分で決めることがゆるされていたので当然のごとく渚と同じクラスにしていた。


渚はそれが当たり前になっていたんだろう。大学時代は束縛や嫉妬が物凄く増えたのだ。

今まで同じクラスにいて俺が何をしているのか渚はわかっていた分嫉妬も束縛もせずに耐えられていたんだろう。

だが大学になり学校すら違う。当然俺が今何をしているのかなんて渚にはわからない。

その当たり前が当たり前じゃなくなったのは渚にとって耐えられなかったのだ。

俺が今どこにいて何をしているのかを確認する連絡が10分おきには来ていた。

返信しないと電話がやってくる。

それさえ無視するとキャンパスまでやってきて俺を探し始めるのだ。



このままではお互いまずいと俺は思い渚と話し合った。

渚は言う、俺が信じられないんじゃなくて周りが信じられないのだと。


「響が自分から浮気しないってのはわかってるし信じてる。でも、周りの女は違う。隙さえあれば響に話しかけてきて色目を使う。なんとか連絡先を聞き出して遊びに行こうとする。わかる?女はね、獣なんだよ?」

そう、捲し上げてきた。

「響がどんなに拒否したってね、女に襲われたら男の響は叶わないんだよ?」

渚は続けてそう言っていた。


結局、俺が女と連絡先を交換しない。遊びにも飲みにも行かない。サークルは渚の大学の所へ所属して講義が終わり次第すぐに移動、渚と一緒にサークルへ参加することで確認の連絡などはしないというところで落ち着いた。


そんな渚が大学以上に拘束時間の長い俺の就職に賛成するだろうか?

当然のごとく却下されたのだ。

お金は私が沢山稼いでくるから響は家を守っていてと。

子供が出来たら子育ては男の俺が殆どを担う。なら家庭に入るのは遅いか早いかの問題何だからと。


俺は涙を浮かべお願いしてくる渚の願いを聞き入れた。

卒業と同時に結婚し、俺は同時に専業主夫となっていたのだ。





話を書いているうちに、渚と響の学生時代編とかやりたくなってきた。

多分それをやってしまった方がわかりやすい

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