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隠蔽


「先生、妻には息子のことを黙っていてもらえませんか? 」

俺は頭を下げていた。

医者に患者へ嘘をつけと言っているのだ。 聞き入れてもらえないかもしれない。

それでも俺はお願いするしかない

妻を守るために。それが間違った判断だとしても


「…旦那さんのお気持ちはわかりますが、それは流石に…」


「お願いします…!妻が息子のことを思い出したらきっと耐えられない…!今の息子をみたら今度は死んでしまうかもしれない!俺はもう失いたくないです!どうか!どうかお願いします!!」


そういいながら俺は土下座をしていた。なんとかして黙っていてもらえるように。


「旦那さんっ!やめてくださいそんなことは!頭をあげてください!」


「お願いします!必要ならお金だってお支払いします!俺にできることならなんだってします!だからっ」


「………旦那さん。わかりました。奥さんには記憶については何もいいません。」


「あ、ありがとうございます!ありがとうございます!」


「ですが旦那さん?理解していますか?あなたはこれから愛する人にずっとうそをつきつづけていくということなんですよ?」


「……はい。理解しています。………妻が笑っていてくれるなら、俺は耐えられます。」


「それに、息子さん。延命治療を選択されたんですよね?それには多額の費用がかかります。もちろん介護だって御家族の誰かが来てやらなければなりません。それをあなた一人で何とかできるんですか?」


「出来るじゃなくて、やらなくちゃいけないんです。だって俺は渚の夫で、蒼空ちゃんのパパだから……」


そう、やらなくちゃいけない。渚のために。そして目覚めるかもしれない蒼空ちゃんの為に。


「……はぁ、わかりました。私達もできる限りのことはします。微々たるものですが、ないよりはマシでしょう。 」


「本当に、ありがとうございます。」









俺は渚の病室にまで戻ってきた。


「渚ー?お待たせ。」

出来るだけ明るく、いつもどおりに。


「お!おかえりなさい響。結構長かったじゃない?先生となにしてたの?」


「今後の治療に関してちょっとね!」

いつもどおりにできてるだろうか?


「………へぇー?本当に?この病院の先生って美人が多くて有名なのよねー…響さぁ?私に何か隠してない?」


「そ、そんなわけ無いだろ!何言ってるんだよまったく…」


「あははっ!焦ってる焦ってる!!…だぁーいじょうぶよ、カマかけただけだから!」


よかった…いつもの渚だ…

「もー…ほら、ふざけてないでしっかりする!」


「はーい……ねぇー響ー?私いつの間にこんな太った?お腹かなり出てるんだけど……」


ドキッとした。そうだ。周りをいくら隠しても体が変わってるんじゃバレてしまう。まずい…


「そ、そうか?そんなに気にしするほど出てないぞ?」


「えーーー?ほら、こんなに出てるんだよ?……うーん、お昼食べ過ぎたのかなぁ…ダイエットしなきゃ…ムムム」


「ホントに気にすることないぞ?その…び、美人だし…」


「おー!響がデレデレだ!…まぁ響がそう言うならまだいっかな。……しばらく出っ放しならほんとにダイエットするけど」


「まぁ、うん。そうだ渚、検査結果なんだけど。」


「うん?それがどうかしたの?」


「ちょっと血液検査に異常があってな。なんかあるってわけじゃないんだが念の為今日はこのまま病室に泊まって明日の朝からまた検査してくれって先生が」


「えー!なにそれ、すごい不安なんだけど。」


「大丈夫だって、異常があったのは血液中のコレステロールだから…」


「待って響。それ以上言わないで。私は大人しく検査を受けます。だから響は検査に立合わないこと。いい?」


「わかってるよーそれくらい。会社には俺が連絡しておくから安心して検査受けてくれ。」

よかった…なんとか誤魔化せた。

これで家に帰って掃除ができる。

………待てよ、家。そうだ家だよ。家のものを隠すどころの話じゃない。

今住んでいる家そのものが蒼空ちゃんがいた証になってしまうじゃないか。

どうしよう…一応聞いてみるか?


「…なぁ、渚?俺達の住んでいる家ってどんなのかわかるか?」


「はぁ?何言ってんの響?でっかいお城みたいな家じゃない。何変なこと聞いてるのよ?」


「そ、そうだよな、あ、あはは…」


「?まぁいいけど…あれ?でもなんであんな家に住んでるだろ私達。えーっとたしか…」


「な、なにわすれてるんだよ渚!あれは俺と渚の貯金を使って建てた俺達二人の城だろ?忘れたのか?」


「んー…あー…確かにそうだったかも。ごめん、なんかボーっとしてるかも私。」


危なかった。バレてしまうかと思った。

どうやら渚の記憶は蒼空ちゃんに関してのことだけ忘れているらしい。

それ以外は何となく覚えているのだろう。


「検査で疲れたんだろ。俺はもう帰るから、渚はゆっくり休んでな。」


「うん。ありがと、そうする」


「あぁ、そうしてくれ。それじゃまた明日くるからな。おやすみなさい、渚。」


「うん。また明日ね。おやすみなさい響。愛してるわ」


「俺もだよ」


………………ボソ…………ボソッ


そう言って俺は部屋から出た。最後に何か渚が言っていたような気がするが今は気にしている余裕はない。

家に帰って蒼空ちゃんが使っていた物や蒼空ちゃんにと買って置いたものを片付けなければ。

渚の会社にも連絡しないといけない。

お義母さんや俺の両親にも。



俺は帰る前にもう一度NICUに行く。


「……蒼空ちゃん。パパ絶対諦めないからな。あと、ママに蒼空ちゃんのこと隠してごめんな。蒼空ちゃんが目覚めたら必ずママも連れてくるから。それまでは毎日パパになるけど、我慢してくれるよな?」

ガラス越しに話しかける。

……だめだ。泣きそうになる。

今は泣いている時じゃないんだ。急がないと。


「それじゃあね蒼空ちゃん。また明日パパ来るからね。おやすみなさい」


そう言って俺は病院を後にした。

全て上手くいかせるようにがむしゃらに駆けずり回った。


全部を片付けて、いろんな人に連絡をし終わった頃には朝を迎えていた。

すこし、眠ろう…。疲れ果てた俺は眠りにつく。

目が覚めたら全て夢だった。そんなことを願って。

















「響、いつまで経っても理解しないんだから。嘘ついてる時に耳が動く癖、小さい時から全然変わってない………。ほんと、変わってないんだから……」



病院の一室で、一つの黒い靄が生まれているとは露知らずに。


シリアス続くよ書いててモヤモヤしてくるよ

でもヤンデレを美味しくするにはこのスパイスが必要なんですはい。

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