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今回もパパ目線


「手を尽くしましたが申し訳ありません……恐らくですが、意識はもう…」


俺は先生の言葉を理解したくなかった。

蒼空ちゃんがもう目を覚まさない。

そう、目の前の先生は言っていた。あの笑顔はもう見れないのだと。


「……どうして…どうしてよ!なんで!あなた先生なんでしょ?!そんな事いいから早く蒼空ちゃんを治してよ!!目が覚めないなんて冗談はいいから早く!!!!」


渚が先生に詰め寄っている。

あぁ…ダメだよ渚…ほら、先生困ってるじゃないか…

そう、思いつつも俺は何も出来ずにいた。体に力が入らない。


「返して!蒼空ちゃんを今すぐ返して!!他の病院に連れて行くから!!!絶対に蒼空ちゃんは治るんだから!!」


「やめてくださいお母さん!!お子さんはとても移動させられるような状況じゃあないんです!…恐らくあと数時間で自発呼吸もなくなります…。」


「嘘…嘘嘘嘘!蒼空ちゃんが!あんなに笑ってた蒼空ちゃんがそんな事なるわけない!なるわけ無いのよ……お願いだから、蒼空ちゃんを助けてよ…」


「…………申し訳ありません。ですが、事が急を要しますので話を聞いていただけませんか。」


「嘘よ…そうだ。これは夢なのよ。なーんだ、夢だったんだ。そうよね、わたし達の蒼空ちゃんがそんなことになるわけないわよね。私ったらなに焦ってたんだろ…。うん、早く目覚めないかな…起きたら響と蒼空ちゃんをお風呂に入れてあげなきゃ…そうだ!お義母さんのところにも蒼空ちゃんを連れて…」


「奥さん?…奥さん?!くっ、!」


渚は耐えられなくなり現実逃避を始めていた。

こんなこと認めないと。蒼空ちゃんは大丈夫なはずなんだと。


「奥さんを早く別の治療室に!精神安定剤を!」


渚は看護師さんにされるがまま、治療室に運ばれていった。

連れて行かれるときの渚の表情は涙でぐちゃぐちゃで、目の焦点もあっておらず。

あぁ、ダメだよ渚。美人さんが台無しじゃないか…


「……旦那さん、話を聞いていただけませんか?急を要します。このままではお子さんの命が…」


「…………はい。わかりました。お願いします 」


渚のあんな表情を見たからなのか。俺はなんとか受け答えができる状態になっていた。


「お子さんは恐らく脳死のような状況です…恐らく、というのは原因がわたし達をもってもわからないからです。脳に強い力が加わっていたという事はわかるのですがそれが外からなのか、それとも内側からなのかさえわかりませんでした。」


「…はい」


「正直なところこんな症例見た事がありません。県で一番のうちで見た事がないとなりますと、他の病院でも恐らくは」


「…はい」


「現在お子さんは意識も戻らず衰弱をたどっています。本来であればすぐにでも呼吸器を取り付けなければならないのですが、お子さんはまだ生後一ヶ月経っていません。その幼児に呼吸器を付けるとなると身体への負担も大きくなります」


「……。」


「もちろん呼吸器をつけなければあと数時間で呼吸も止まります。ですが、呼吸器を付けるとなるともし万が一回復の可能性があっても限りなく低くなります。」


「……それは、どういう意味ですか?」


「はっきりと申しますと、殆んどの確率で脳死となります。ですが最悪のことは避けられるでしょう。ここからは蘇生治療ではなく延命のみを考えていくということです。」


「そんな……」


「我々の力およばず、申し訳ありません。……そして、何故今すぐ呼吸器を付けないのかと申しますと、呼吸器を付ける際喉を切開しないとなりません。…お子さんのような幼児ですと恐らくかなりの切開痕となります。………もし最悪のこととなっても、綺麗なままのお子さんを看取るというのが出来なくなるんです」


「…」


「ここから先は我々の判断だけではできません。なのでご両親に判断してもらわないとなんです。」


「……それは、蒼空ちゃんを綺麗なままの殺すか、目は覚めなくなるが生き続けさせるか……って事ですか?」


「正直に申しますとそのとおりです。申し訳ありません。」


蒼空ちゃんが死ぬ。

先生はそう言っているのだ。


………だめだ。死んじゃだめだ……。

神様、俺達はなにか悪い事したのでしょうか?何故蒼空ちゃんがそんな目に合わなきゃいけないのか…どうか、蒼空ちゃんじゃなく俺に…

俺が蒼空ちゃんと変わるから、どうか蒼空ちゃんだけは助けてあげてください。お願いだから…


そう思っているうちにも刻々と時は過ぎていく。


「旦那さん、辛いとは思いますが判断を。まだお子さんは決断が効く状況ではありますが、いつ呼吸が止まってもおかしくないんです。」


「……呼吸器をつければ、死にはしないんですよね?」


「………はい。生命維持だけは少なくとも。」


「目が覚める可能性がゼロになる訳じゃないんですよね?」


「……限りなく低いですが、可能性がなくなるわけではありません。」


「…………呼吸器を、お願いします………。どんな形でもいいから、蒼空ちゃんをこのまま眠らせないでください……」


「…わかりました。すぐに人工呼吸器の取り付けを行います。……旦那さん、どうか、お気を強く。」


「………。」


「すいません、急を要しますので。判断ありがとうございます。」


そういうと先生は治療室に戻っていった。

俺には蒼空ちゃんを殺すなんて判断出来るわけなかった。

どんな形であれ、生きていてくれれば。

微かな可能性だとしても俺はそれにすがるしかなかった。


そうしないと自分を保っていられなくなるとわかっていたから……。













4月22日……蒼空ちゃんが誕生してから3週間が経ったばかりのことだった。





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