Track-31.私の瞳の中の花火!(Post Chorus)
無人化された夜の駅舎には誰もいなかった。
改札を通過してホームに出る。
停車する電車が走り去った後だったからか、あたりに人影は見えない。
天井を見上げると、『通過 特急列車』の赤いディスプレイが光を放っている。
駅舎を離れると、足元を照らす光も徐々に少なくなり、二人の影が次第に薄くなっていく。
ホームを進行方向に歩いて行くと、木製の四人掛けベンチがあり、その上空には電柱に取り付けられた電灯が設置されている。
電灯から漏れる暖色の光が、まるで誰かに用意された舞台のように暗闇の中にそのベンチを浮かび上がらせていた。
駅舎を出てからは杏子が先を歩いて、そのベンチの前に立つ。ベンチの右側に紙袋を載せた杏子はその横に腰掛け、早紀も杏子のすぐ横に座った。
紙袋がベンチの半分程の幅があるため、寄せ合って座った杏子の七分丈のパンツと早紀のワンピースの裾から伸びる白い柔らかい太ももが触れ合う。
二人はしばらく無言で、電灯の光を鈍く反射する線路を眺めていた。
先に話し始めたのは杏子だった。
「ねえ、早紀、今日のあの花火なんだけど」
杏子の言葉に早紀は体を震わせた。
「どうして、他の人には見えなかっただろうね」
まず、今日感じた疑問を一つずつ解決していかなくてはいけない。
「私が、楽しんで欲しいと思ったのが、杏子達だけだったから」
早紀は淀む事なく答えた。杏子は早紀の答えに息を飲む。
あの現象は尋常なものでは無かった。決して幻覚ではなかった。音の圧力を体で感じていたし、周囲には微かに火薬の匂いすら漂っていた。
人が触れていいものの範囲を超えていた。どうすれば五人にだけ見えるようにあのような映像を現実に映し出すことができるだろうか。それはもはや魔法と言ってもいいのかもしれない。
「そうとしか思えない」
早紀は冷静な表情を保ったまま、夜の駅の景色を眺めている。
暗闇に目が慣れてきたのか、さっきまで見えなかった電線が、心地よい風に揺れながら電灯の明かりをまるで雫が輝くように鋭利な光を反射していた。
「じゃあ、あれば早紀がやったの?」
杏子の問いかけに頷いた早紀は、視線を膝の上のカバンに向ける。中には必死に調べて作った雑誌が入っている。
「その本を作るのは大変だったんじゃない?」
早紀は愛おしむようにカバンを撫でる。
「大変だったけど、みんなに喜んで欲しかったから」
カバンを撫でる手を止めた早紀は言葉を続ける。
「みんなが楽しんでくれるなら、私の苦労なんてどうでもいい」
どうしてそこまで献身的に行動できるのだろか。
杏子はそこに何らかの問題解決の糸口があるのではないかと考える。
「今日は本当に楽しかったよ。ありがとう」
早紀は杏子の言葉を嬉しそうに聞いて笑顔を作る。
とにかく、早紀の気持ちを、心を、言葉で引き出していく。
「早紀は、早紀は、今日どうだったの? 楽しかったの?」
杏子は体を早紀の方に向けて問いかける。
「私は楽しんではいけない人間だから」
さっきまでの笑顔から打って変わって、早紀は唇をかたく閉じる。
両手はカバンの上で強く握り絞められている。
早紀は杏子の質問をはぐらかすことなく真剣に答えている。
きっと、今日、早紀も何かを決意してここに来ている。
「それはどうして......」
その時、遠くから電車の汽笛が聞こえた。すぐに特急列車がホームを通過していく。窓から漏れる光が俯く早紀の顔を照らすが、そこに表情はなかった。突風と轟音が過ぎ去り、またホームに静寂が戻る。
「どうしてそんな事を思っているの。私は早紀にも楽しんで欲しいと思っているよ」
杏子は握りしめられた早紀の左手に手を乗せた。早紀は一瞬体を硬直させるが、寄せられた手の上に右手をそっと載せた。
その手はとても冷たく、杏子は一瞬たじろぐ。
「早紀が仕事関係だけじゃなく、私生活でもみんなのために頑張っていること知ってるから、今日は本当は早紀に一番楽しんでほしかったのに」
杏子の手の上に置かれた早紀の手に力がこもる。
「ごめん、でもどうしても私は楽しんではいけない人間。そんな権利はないの」
「どうして、どうして楽しんではいけないのか教えてほしい」
「ごめん。それは絶対に言えない」
早紀の手が震える。
「言ってしまうともう元には戻れなくなるから」
早紀は言いながら、杏子の手の上に乗せた手を離した。表情は見えないが口元に力が入っているのがわかる。
どうして話してくれないのか。どんな結果であっても受け入れる覚悟はできているのに。なぜそんなに頑なに心に壁を作ってしまうのか。
でも、今それをこじ開けるしかない。絶対に見捨ててはいけない。でないと、きっと早紀は......
早紀の手を見つめていた視線を早紀の瞳に向ける。早紀の瞳の中の自分の姿と、ここに来るとき、電車の中で誓った自分の姿が重なる。
電車の中からスタジオの帰り道までは、今までの五人の関係性のまま、誰も傷つく事なく、なんとか分かり合えないのか思っていた。
けれど、もう、それでは早紀の本音を聞き出すことはできない。そのためには私も傷つく覚悟をしなくてはいけない。最後の裕子からのメッセージが背中を押してくた。
その事で、これまでの上辺だけの、だけどどこか心地よい関係が潰れてしまうとしても。
だから、あの時のように暴力ではなく、全く違う方法で、今の私ならできる方法で、鍵となる言葉をきちんと選んで。ちゃんと伝える。
ヒントはいくつも見てきた。そして今日も見つけている。裕子が教えてくれた。早紀があの歌の、あのパートで涙を流していた理由がきっとその鍵になる。
「じゃあ、当てようか」
杏子の言葉に、早紀は一瞬体を震わせる。膝の上で握りしめた手に力が入り、彼女が激しく動揺していることは明らかであった。
あの日、スタジオで皆が衝突した日。杏子は早紀の言動に違和感を感じていた。あの時の話し合いの日からずっと疑問に思い続けている。
秋山さんの死を乗り越えて、心の動揺など見せず、冷静に、あくまでもいつも通りの姿を見せて、これからの五人のためにレッスンを始めようとしていた早紀。彼女のことだから、その決意はきっと鋼のように強かったはず。
なのに、たった一つの言葉でなぜ早紀があそこまで激昂して、取り乱したのか。その理由は……
「早紀、あなたの父親は、本当はあなたに」
「もう、やめて」
早紀は叫びながら立ち上がる。膝に乗せていたカバンがホームに落ちて、入っていた雑誌がコンクリートの上に転がり出る。
早紀は杏子の前に立つと、その両手で杏子の肩を掴んだ。とても強く。まるで、自分が倒れてしまわないように。杏子がいなくなってしまわないように。
急行電車が駅を通過していく。
列車の窓から漏れる光で早紀の表情は見えない。
列車の車輪の音で早紀の息遣いは聞こえない。
急行列車が通り過ぎると、駅のホームの電灯が再び早紀の顔を照らし出した。列車が来る前より増した静寂は彼女の息遣いを伝えた。
早紀は嗚咽を漏らしながら、大粒の涙をとめどなく流していた。肩を揺らした息遣いは激しく、震えるそのか細い膝では、もはや立っている事すらできなかった。
その場に崩れ落ちた早紀はまるですがるように杏子の膝に手を置いた。嗚咽する喉を抑えた早紀は途切れ途切れに声を発する。
「私、私、地球を、家を出発する時に......」
回送電車がホームを通過していく。
杏子の両足の太ももに早紀の指が食い込む。杏子は痛みに声を出しそうになるが、早紀の方が痛いはずと思い直して口をつむぐ。
ホームにはいつの間にか、また静寂が戻っていた。
「もう二度と地球に戻れないと教えてもらっていた」
ホームの地面に膝を付いた早紀はすがるように涙で溢れ返った瞳で杏子を見上げていた。
杏子も目を逸らさず、まっすぐ早紀の目を見つめる。
「私は、だからあのバスの中でみんなが何も知らされていないと知ったとき」
嗚咽を漏らしながらも、早紀は一言、一言、ゆっくりと言葉を絞り出していく。
「私が感じたのは小さな醜い優越感だったの」
早紀の瞳に溜まった涙が溢れて頬を流れて行く。
「あのとき、それを指摘された私は、もう」
早紀のピンクの色の唇は、強く噛み締められて白くなっていた。
「咄嗟についた嘘は私の呪いになった。皆が幸せになるまで、私は決して幸せになってはいけない、と」
地球を出発してからの早紀のさまざまな言動を思い出す。理解できない異常な状況の中、杏子達は希望を忘れず、お互いを励ましあっていた。
でもその中で、唯一早紀だけが、絶望的な真実を知り、それでも折れることなく、愚痴ひとつ言わずに、自らを奮い立たせて、なんとかしてメンバー達を力づけようとしていた。用意してきたお茶やお菓子も、ああなる事を想像して用意していたのだろう。
そんな早紀の行動に私たちはどれだけ救われてきたのだろうか。
それなのに、早紀は一人ぼっちだった。
なんて孤独な戦いだったのだろうか。
彼女は、こんな小さな肩で、こんなか細い体で、たった一人で地球全ての責任を背負い続けていた。その事に私は気付いてあげれなかった。
あの喧嘩以降、皆が自分を取り戻していく日々を通して、上部だけを見て心が通った気になって、彼女の心が壊れる寸前までほったらかしにした。
あの日、私たちを騙した早紀の嘘は許されない罪だと思う。でもそれと同様に彼女一人に全てを背負わせた私たちもやはり罪を背負うべきだろう。
そして、その罪はもう、何もせずに、時間が解決するような事で許される罪ではない。いつか、自分達で痛みをもって償わなければいけないもの。
「助けて杏子。私はもう」
早紀は喉の奥底から、きっとずっと一番言いたかった言葉を絞り出した。
杏子は早紀の顔を自分の胸に引き寄せて、抱きしめた。
「ちゃんと話してくれてありがとう」
震える早紀への愛おしさに、抱きしめる手が強くなる。
「気づかなくてごめんなさい。一人で背負わせて。本当にごめんなさい」
涙がとめどなく流れた。
そして、言葉を発すると同時に杏子は一つの決断をしていた。
その考えが方法が正しいのかはわからない。もしかしたらもっといい方法があるのかもしれない。
でもこれは必ず早紀に伝えなくてはいけない言葉。
気持ちの昂りに負けるわけにはいかない。
喉から湧き上がる嗚咽に言葉の邪魔なんてさせない。
「私、一緒に背負う。だから、もう泣かないで」
胸を押しつぶすような気持ちに負けないように声を絞り出した。
私の決意、ちゃんと言えたはず。ちゃんと伝わったはず。
でも、いつか消えてしまう言葉では足りない。もっと確実なもの、目に見える形があれば、この思いを形にする方法があれば。
今の私たちにはそれが必要だ。
杏子は自分太ももに食い込む早紀の右手を眺める。その薬指にはブルーサファイヤのように青く輝くガラスの指輪が光って見えた。
視線を早紀の顔に戻すと、震えながら嗚咽する早紀を抱きしめている自分の右手に、アメジストのように赤々と光を反射するガラスの指輪が見えた。
杏子は早紀の肩を掴むと、ゆっくりと自分の体から離していく。
ベンチに座っていた杏子は一度腰を浮かせると、早紀と向かい合うように地面に膝をついた。
「早紀、二人で誓いを立てようよ」
「誓い?」
早紀は杏子の言葉に泣き腫らした瞳を見開いて、まっすぐ杏子の瞳を見つめる。
杏子は目の前で自分の右手の薬指から指輪を外して見せた。そして早紀の左手を手に取ると、今にも折れてしまいそうな程細い、眩しいほど白い薬指に赤いガラスの指輪をはめた。その手をそっと自分の頬に近づける。
「私はいかなる時も、早紀の事を支えて、この秘密を守る事を誓います」
瞳を閉じて頷いた早紀は、流れ落ち続ける涙をふき、震える指で自分の右手の指輪を外して、杏子の左手を掴みあげる。青いガラスの指輪をその薬指にはめようとして、動きを止める。そして息を飲む。
「私は、私はいかなる時も、杏子の事を支えて、この秘密を、守る事を誓います」
指輪をはめた早紀は両手を杏子の背中に回して抱きしめた。
「ありがとう」
早紀は杏子の耳元でそう呟くと、また嗚咽しながら泣きはじめた。
杏子もその抱擁に応えるように強く早紀の体を抱きしめた。
夕方の雨が残した水たまりが風に揺れ、わずかに受け取った灯の光をキラキラと照り返している。
少し水気を含んだ空気が作り出した微かな霞は、電灯の光に明確な境界を作り出し、その真下だけを光の線で他の世界から切り離す。
物音ひとつ無い、宇宙中にたった二人だけしか存在しないような場所。まるで全ての事象から二人を守るように、電灯の優しい明かりだけが二人を照らしていた。
※ ※ ※
「というわけでなので、明日のセトリはさっき転送した通りになります」
夕ご飯を食べて部屋着に着替えた後、ベッドの上に座る杏子の目の前にはいつものように四つのディスプレイが開いていた。
「午前中だけで三曲を二公演かぁ、けっこうカツカツのスケジュールだね」
転送されたデータを見ていた裕子は言いながらティーカップを口に運んでいた。
「午前中の観客の出入り次第で、昼の部にも出番があるかもって田端さんが言ってた」
杏子もベッド脇のテーブルに置いていたホットミルクが入ったマグカップに口をつける。
「田端さんもそのあたり、もっと強気に出たらいいのにね。今日のカラオケで思い付いたアレンジもちょっと試してみたいから、できたら昼からもやりたいな」
顔パックをしたままの優奈もセトリを眺めている。
「あ、カラオケで思い出したけど、実は早紀って」
杏子は満面の笑みで画面に向かう。
「ちょっと、やめてよ、杏子、言わないって約束したじゃない」
宝石でデコられたディスプレイの中、早紀が顔を真っ赤にして手を振っている。
「ここだけの話しだけど、カラオケ行ったの今日が初めてだったらしいよ」
誰にともなく、口元に手を寄せた杏子はディスプレイに向かってささやく。
「さすがは本物のお嬢様、代わりに家に専属の演奏家とかいたりして」
優奈が言いながら笑いかけて、顔パックをしている事を思い出して真顔に戻る。
「そういえば、お祖父様の代まではリビングの横に「演奏者控え室」って書かれた部屋があったらしいけど」
早紀はさも当たり前のように言う。あっけに取られる優奈に構わず早紀は瞳を閉じて胸に手を当てる。
「でもカラオケ楽しかったから、練習してまた行きたい。今のままだと、裕子に私のパート取られそうだから」
早紀の言葉に裕子一瞬息を飲むが、すぐに冷静さを取り戻して肩をすくめて、早紀らしいと笑う。
杏子は思う。
きっと次、早紀があのパートを歌うときは今までとは少し違う歌声が聞けるに違いない。それはとても楽しみな事。
「練習なんていらないからまた行こうね」
裕子の言葉に「うん、必ず」と頷く早紀。
「でもさあ」
俯いて何か文字を書いていた優香が視線を上げて、パックの顔をディスプレイに近づける。
「今日の事は、なんだかいい歌詞になりそうな気がする」
杏子と裕子が頷く中、早紀は真剣な瞳をディスプレイに向けていた。
「優奈、今日の出来事なんだけど、できたらしばらく大切に保管して、特別な日に発表して欲しい」
早紀は顔の前で両手を合わせて頭を下げた。
「うん、いいけど、どうして?」
「大袈裟に聞こえるかもだけど、私ね、今日がいままで生きて来た中で一番嬉しい事があった日なの。だからもう少し自分の中で大切にしたい」
頬を赤く染めて言う早紀の言葉に杏子は頷いて目を閉じる。
あの後、各駅停車の列車の中、二人で身を寄せ合って,手を繋いで、これまでの事、そしてこれからの事を話し合った。それは、二人だけの大切な、宝物のような時間。
視線を上げると、頬を赤らめた早紀と目が合い、思わず目を伏せる。
「あのさ〜」
久しぶりに綾香の声が聞こえた。いつもなら常に会話の中心にいるはずなのに、今日は気持ち悪いくらい静かであった。
「うち、凄い事に気付いてしまったんやけど」
椅子の背もたれにもたれかかって腕を組み、胸を逸らした綾香は少しだけ頬を赤らめていた。
「きょ、杏子と、さ、早紀さあ、ゆ、指輪交換してなくね?」
「えっ、あー! ほんとだ!」
「きゃーー!」
「なあ、優奈、うちと服交換し......」
「それだけは絶対にイヤ!」
「えー、なんでやねん! ほら、こっちには虎もあるし」
故郷から遠く離れた地で、夢を叶えるために戦う彼女達の笑い声が、銀河帝国首都惑星の冷たい夜の街に響いていく。
ー おしまい ー
結成10th Anniversary Best Album『こす⭐︎もす尽くし』
ストリートミュージッククラウドユニバース(SMCU)から配信中
「コス⭐︎モス結成10周年を記念して配信されたベストアルバム。TKU5時代からコス⭐︎モス最大のヒット作『時空蝶弦理論』までの楽曲の中からファン投票を軸に36曲を選曲して収録。販売後に新曲が収録されている事が判明し社会現象になった(謎の37曲目事件)。
新たに収録された「私の瞳の中の花火!」(作詞作曲2Y)についてリーダーである剣崎杏子は「コス⭐︎モスが誕生したあの日から今まで大切に温めて来た歌。どうしても特別な日に発表したかった」と述解している。(burn Galaxyコス⭐︎モス特集号収録インタビューより)
作風はポップスなAメロから始まり、Bメロから中盤にかけてはfight!を彷彿とさせる激しいロック調に移行。後半にかけてさらに激しくなり最高潮のサビ部分を超えると階段を駆け降りるようにバラード調の大サビへと転調して行く。情緒を揺さぶる転調の繰り返しはTKU5から初期コス⭐︎モスの楽曲に顕著であり、まさにその頃の楽曲の集大成と言える。(月刊IceCREAM特別号コス⭐︎モス特集より)
『デビュー当時を彷彿とさせる、どこか懐かしい雰囲気を持った新曲の発表だった。編集部に逆らってでもコスモスの良さをみんなに知って欲しくて必死に記事を書いていたあの頃の熱さを思い出して涙した。まだまだ私も負けてられない』(burn Galaxyコス⭐︎モス特集号、コラム「編集局長の独り言」第一話より)
歌詞の内容について、作詞を担当した中野優奈は自身の著作内において、著名な劇作家ベルトルト・デ・ヘンリック氏との対談の形式をとり、以下の通り記載している。
ヘンリック「歌詞からは『レヴィンホールの蒼い魔女』の寓話を参考にしていると推察されるが、あの寓話の主題は、魔力を使い果たして消滅しようとしている魔女がその罪を少年の献身によって贖罪する場面であり、かつて何人もの戯曲家がそこを主題としてきた。今回はその前段階、世界改変に繋がる魔女の魔法部分を主題にしていると思われるが」
中野「確かに物語の主題の中で、最も伝えたい事を楽曲の最も特徴的な箇所として提示したくなる欲求はあります。それとは別に主題へのアンチテーゼの部分に魅力的な箇所、今回であれば、魔女が使った世界改変魔法ですが、私は魔女が命をかけて顕現した世界改変魔法の美しい描写に強く心を打たれました。聞くと、レヴィンホール星系の子供達は、魔女が魔法を発動した時の情景を遊びの中心に置いており、誰が世界改変魔法を使うかで喧嘩になるといいます。
魔女が世界改変魔法(Chorus)を発動した、もしくは発動する事を覚悟した段階で少年による贖罪(Post Chorus)は決定事項であると解釈すれば、主題をそこに置く事も可能だと考えています。
この寓話自体が少女から大人の女性への心理的成長の物語であるとすれは、世界改変魔法は、決して非科学的なマジックではなく、他人から見れば些細だけれども、当事者にとってはまさに世界改変と言っても過言ではない“自己認識の変革への覚悟”と,“変化を恐れない勇気”そのものであり、それこそが私が描きたいこの楽曲の主題となります」旨記述している。(中野優奈著『私の瞳の中のコス⭐︎モス』(S M C U出版)から改変引用)




