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卒業試験 クロマ

 エルトリードの兄、クロマは中級治癒魔法である限定範囲治癒が何とか使えるというレベルである。限定範囲治癒の力が及ぶ広さや効果も、それ程大きいものではなかった。しかし、それでも一般的な治癒士としては十分以上の腕だ。

 初級の回復や治癒を使える治癒士でさえ、小さな街や村にいることが珍しいくらいだからである。

 まして、治癒士が迷宮探索者になるなど、滅多にいないと言って良い。

 クロマは魔法学校の迷宮探索者コースに在籍していたから、自身も最低限の攻撃や防御の魔法が使え、迷宮探索者としての基礎的な能力や知識もある。

 現在は、魔術学校の同級生とパーティを組んでいるが、マリーバ迷宮での卒業試験でクロマの存在が知られれば、迷宮探索者のパーティの勧誘が、彼に殺到することが予想された。


 クロマは武器屋で新しい短剣を買った。護身用だが、解体用ナイフの予備として使われることもあるだろう。

 「俺はお前と違って、剣はイマイチだからな」

 休日に、一緒に買い物をするように誘った弟のエルが、クロマに付き合って短剣を熱心に見つつも、剣にも目がいっているのは、やはり主武器がロングソードであるからだ。

 近接戦闘もこなす魔導騎士志願のエルと違い、基本的に後衛役であるクロマは、できる限り戦闘には参加しない。風使いとして、探査や後衛として攻撃や防御の役目を負うこともあるが、治癒のための魔力を極力温存しておく必要があるからだ。

 その代わり、クロマはパーティの雑用を率先して行っていた。

 もともと、世話好きな性格であるため、そういった役割が向いているのだった。


 三歳上である兄のクロマと並ぶエルは、もう少しで背の高さが追いつきそうだ。

 武器屋を出て、昼食を取る店を選びながら、クロマは隣を歩く弟を見やった。

 以前から、順調以上に背を伸ばしているエルを、ルディなどは羨ましそうにしていたが、このままいけば確実に自分の背を追い抜くであろう弟に、クロマも少しばかり危機感を感じていた。

 背の高さくらいでといっても、やはり兄としても、男としても気にするものだ。

 とはいえ、まだ追い抜かれたわけではないし、クロマからあえて話題にはしないことにする。

 「食いモンは帰りに買うことにして、エル、なんか欲しいものあるか?」

 「杖兼用のロングソード」

 即答したエルに、クロマはわざとらしい渋面を作った。

 「お前な」

 さすがにそんな金はない。

 エルもわかっていて言ったのだ。

 「冗談だって。一番欲しいのがそれってこと。兄貴にたかるようなモンは、今んトコねーかな」

 現地集合の卒業試験を目の前に控えたクロマの方が、いろいろ準備で物入りなことくらい知っている。

 定食のメニューが揚げ物である店を選んで、二人は昼食時に差し掛かっているため、混みかけた店内の隅の席に座った。

 入口に置かれた黒板に書かれていたメニューの中で、二人は本日のおすすめとなっている唐揚げと、春野菜のスープにパンのセットと紅茶を頼んだ。

 「兄貴さ、卒業したらトゥルダスに帰るんだろ?」

 「ああ。地元だしな。トゥルダス専門の探索者するつもりだ」

 迷宮探索者としては、地味な将来設計であることは自覚している。

 トゥルダス迷宮は管理された中規模の迷宮であり、比較的安全な迷宮だと言われている。安定しているが、魔物や魔石の質もマリーバ迷宮などに及ばず、飛び抜けた獲物を得ることは滅多にない。

 だから、初心者から中堅の迷宮探索者がほとんどで、一攫千金を狙うような連中や、トップクラスの探索者はトゥルダスには潜らない。

 それでも、比較的堅実に稼ぎたい探索者が長期間滞在して潜るため、街としては十分潤っている。

 また、王都に近い、王宮の直轄地であり、迷宮都市としては、トゥルダスは治安も非常に良かった。

 加えて、迷宮管理組合の運営がしっかりしていることでも有名だ。

 「兄貴治癒士だし、親父達も喜ぶんじゃないか」

 「まあな。将来的には、親父達のように組合に就職してもいいし」

 注文した料理が机に置かれたのに、クロマは代金を支払って、揚げたて熱々の唐揚げに手を伸ばした。

 「お前、騎士学校行くんだろ」

 「俺、魔導騎士になりたいんだ」

 クロマと一緒に迷宮探索者になると言っていたエルの変心を、クロマは良いんじゃないかと、少しばかり残念そうに、けれど責めることはしなかった。

 切っ掛けは、傷ついた幼馴染みを見て、身近な誰かを護れるようになりたいと願ったことだったかもしれないが、何よりも強くなりたいと、魔導騎士を目指すことを決意したのは、エル自身の意思であったからだ。

 だから、やれるだけやってみろと兄として背を押した。

 「フローネちゃんの竜騎士といい、無理じゃねえだろうってとこがなぁ」

 出来の良い弟たちだと、しみじみクロマは思う。

 万一挫折しても、きっとエルは後悔しないだろう。その時は、兄として故郷で迎えてやれるようになっていたい。

 家族を護り、家を護って、故郷で足を付けて生きていく。

 クロマが選んだのは、そんな生き方だった。

 彼が故郷で迎えてやりたいと思ったもう一人(リュシュワール)は、待つこともできなかったが、その想いも抱えていくつもりだ。

 「俺は地元で地道にやっていくさ。その方が性に合ってる」

 「迷宮探索者って地道っていうか?」

 「そこはやり方次第だって。無理はしねぇ」

 「兄貴らしいけどさ」

 クロマはもともと慎重な性格だったが、長男として弟たちの面倒を見てきたおかげで、用心深さには磨きがかかった。それもあり、堅実な生き方を選択することになったのだろうし、自分でも納得している。

 唐揚げを一つ食べ、春野菜を煮込んだスープに口を付けたエルは、次の一口まで少し間を置いた。

 少し味は濃いが、それは許容範囲だ。まずいわけではなく、なにか違う感じがする。

 「気に入らないか?」

 弟の様子に、自らもスープを口にしたクロマだったが、特に不満はない。

 「あー‥‥‥ルディのヤツ、また料理の腕あがってんなって」

 最近、ルディの料理を食べる機会が多くなり、舌がそれに慣らされつつあるのだと、エルは気づいた。

 魔窟で食べるルディの料理は、エルから見ても良い材料を使っている。それもあるが、味付けもなんというか、懐かしいような感じがあった。

 「ルディ君か。翠の草原亭の大女将さんの料理は美味かったからなぁ」

 ルディに料理を教えていた大女将のことは、無論クロマもよく知っていた。翠の草原亭での美味しい食事は、クロマやエルの幼い頃からの楽しみの一つだった。

 「お前、ルディ君と仲直りできたんだな」

 クロマがルナリア樹海都市迷宮へ向かう前に、ルディと仲直りもできないと泣き言を言っていた弟のことは、クロマもずっと気に掛かっていたのだ。

 「‥‥‥事情はわかってんだ。あいつの気持ちも。でもさ、俺らの気持ちだってわかれよなって、意地、通させた」

 「フローネちゃんが、ルディ君とずっと絶交なんて、できるはずないもんな」

フローネがルディを好きなことは、クロマだって知っている。

 「ごめん。兄貴達に迷惑かかんねぇようにするから」

 「仕方ねぇな。お前が泣きべそかいてるよりいい」

 エル達の気持ちくらいわかっている。だから、仕方ないとしか言えなかった。

 お互いが思いやるがために傷つけあった、あんなに辛そうな顔を見ているのは、クロマも心が痛かったのだ。

 「泣きべそなんか」

 恥ずかしい気がして、エルが照れ隠しでムッとした顔をするのに、クロマは笑みを浮かべた。

 「わかったわかった。言わねぇよ」

 クロマがこれ見よがしに、ニヤニヤ笑うのに、エルはむくれた顔をする。

 ただ、クロマも思うのだ。

 弟達はこれで良い。けれど、最後までわかりえなかった兄弟を思うと、やはり胸が痛む。

 「アイツもなぁ‥‥‥なんで、あんなになっちまったんだろうな」

 「兄貴?」

 「リューのこと、お前が怒ってたのは知ってるけどな。リューは俺には幼馴染みだったんだよ。お前らと同じように」

 家族ぐるみの付き合いで、エルにとってのルディのように、リュシュワールはクロマの同い年の幼馴染みだった。

 「面白くなかったんだろうな。ルディ君がいきなりあんな風になって」

 「だけど」

 エルも、ルディの手前、彼の聞こえるところではリュシュワール達の悪口を言わない。しかし、エルがルディの兄と妹を嫌っていることを、クロマはよく知っていた。

 「兄貴としちゃ、プライドがなぁ」

 一方でリュシュワールの気持ちも、クロマとしては、わからなくはないのだ。

 クロマにも弟のエルに対する、兄のプライドなんてものがある。嫉妬する気持ちは、理解できるものだ。

 クロマの場合、幸い愛情が行き違うような感情を抱かずに済んだが、才能の方向性が違うとはいえ、できの良い弟に、複雑な気持ちを持ったことは皆無というわけではなかった。

 「俺も、もっとどうにかできなかったのかって」

 まだ、どこかでリュシュワールの死を認めたくない気が、クロマにはある。自分自身の後悔とともに。

 「‥‥‥悪い。蒸し返しちまった」

 沈痛なクロマの表情に、エルは色々と飲み込んだ。もとより、エルは他人の悪口を好んで口にする性格ではない。

 「俺も、死んじまった人のこと、悪く言うのも気分よくねーし、その話、もうやめようぜ。それより、ルディの、家のことは、もう関係ねえってするしかないっつーか、兄貴も、口にしねえ方がいいと思う」

 それは心底からの忠告だ。

 トゥルダスに帰れば、家同士の付き合いも続いている。だからこそ、シエロ家とルディの関係は、一切口に出さないようにするべきだった。

 「そうする。親父達にも言っておいた方がいいかもな」

 フローネの父であるオルティエドは、魔法ギルドのトゥルダス支局の役職者である。その関係から、そこらへんの事情については把握しているだろうが、クロマ達の家はそうはいかない。今一度、話しておく必要があるだろう。

 「兄貴は、卒業試験の後はすぐ卒業式だろ」

 明日から、雪解けを待っていた戦闘科迷宮探索者課程の最高学年生達が、順次マリーバ迷宮へ移動する。クロマは明後日の予定だ。

 実のところ、迷宮探索者課程の卒業試験は、関係者への卒業生の披露目のようなものである。試験を受けられれば、ほぼ卒業が決まったも同然と言われていた。

 現地で卒業を内定、その後、学校へ戻り、他の課程の者達も一緒に、卒業式となるのだ。

 「お前の方が終わるの早いからな。どうせなら一緒に帰ろう」

 「待ってろってか。いいけど。どーせ、フローネもギリギリまで居残ってるだろうし」

 ルディと一緒にいたがる幼馴染みの少女も、行動を共にするだろうと見込んでの返事だった。

 しかし、その後に肝心のルディが、期末試験終了後すぐに、養母である金の魔術師に連れられ、王都を離れることを知った。

 おかげで、不機嫌になったフローネを宥めるのに、エルは苦労することになる。




 マリーバ迷宮は、王都から一日、正確には冬季は道が閉ざされるヘルミナ山のウルス峠を通ればであるが、一昼夜の距離にある。

 王国の管理下にあり、西方諸国でも有数の迷宮だ。

 冬季はマリーバへの街道の多くが氷雪により通行が困難になるため、春を待って人々は迷宮都市を訪れることになる。

 クロマ達、魔法学校迷宮探索者課程の最高学年生徒達もまた、ウルス峠の雪解けとともに卒業試験のためマリーバへと移動していた。


 サリアリーナのパーティとともに王都を出たクロマ達は、マリーバの街で他の同級生達とも合流した。もっとも、多くはクロマ達同様、春を前に一旦学校へ戻り、卒業試験の準備をしていたのだ。

 ともあれ、卒業試験を受ける生徒達はマリーバへ集まった。

 「あれ、それ治癒の魔石か?」

 自身のための治癒系の魔石は、直ぐに使えるよう肌に触れる装具に装着するとか、取り出しやすい専用の容器に入れて持つ等しているものだ。クロマも複数の治癒魔石を専用の腕輪やベルトの容器等に用意している。

 同じパーティのツェリズナルドは、クロマの治癒石の数を大体把握していた。何しろクロマの治癒魔法は万一の時の命綱であり、クロマ自身を治癒するための魔石は、彼等にとっても重要なものだ。

 宿でクロマと同室のツェリズナルドは、着替えの時にクロマが、今までも身につけているそれらとは別の魔石を、専用の鎖につけて首から下げていたのを目に留めた。

 「弟に貰ったんだ。岩猪の干し肉と」

 「あの干し肉か。旨かったよなぁ」

 エルから貰った干し肉の一部は、マリーバ迷宮に一泊したときに消費している。その際に、食べることができたツェリズナルドは、思いがけず旨い干し肉に素直に喜んだものだ。

 強い魔物の肉は、滋養強壮とわずかではあるが魔力の回復にも効果がある。加えて、旨ければ言うことはない。

 「干し肉はともかく、弟君が手に入れられる魔石っていうと、実習のヤツか」

 「ああ、実習品販売の値段だって言ってたな」


 買い物から帰った後、クロマの部屋を訪ねてきたエルが、差し出した小箱には、柔らかな布の上に、数個の魔石が並べられていた。

 「兄貴、これ、治癒と解毒の魔石に、こっちが水の魔石」

 それと、これは岩猪の干し肉だと、油紙の包みを渡す。

 「こいつは俺達が狩ったヤツだぜ。あっ、ルディの空間収納庫にしまってあったから、出来たてのままだから」

 ちょっと自慢げな顔をする弟に、クロマは小さく笑った。

 「卒業祝いの前渡し。魔石は、実習品の値段だけど、質は確かだからさ。作ったのはルディだし」

 ルディのヤツが、実習品価格で良いって言ってくれたからだという。

 「ありがとな」

 クロマは箱の蓋を閉じて、エルの気の利いた贈り物を受け取った。ついでに、ポンと軽くエルの肩に手を置いて、しみじみと弟の成長を実感したのだった。


 「おい、クロマ」

 「わかってる、御守りのようなもんだ」

 「ならいいけどよ。まあさ、弟君の気持ちは無駄にできねーもんな」

 実際のところ、生徒が実習で作った魔石は、一応教師が視て校内での販売にまわされるものの、それは最低限度の品質保証である。

 それらは普段の生活の中や、生徒が授業で使うならともかく、生命がかかっているような実戦で使う者は、プロにはいない。

 クロマ達も、度重なる迷宮行でそれを学んでいた。だから、ツェリズナルドもクロマがそれを承知で持つなら良いと、確認し、納得したのだった。

 しかし、エルが兄に渡したのは、ルディの作った魔石である。

 生徒であるから、実習品価格で分けているが、その品質は魔石店で売られている物にひけを取らない。

 それは師であるブランや、指導した教師陣も保証している。

 ルディ自身は、まだまだ祖父に及ばないと言っているが、さすがに比較する相手が相手だ。

 年季の入った、高名な職人であるアルハーを基準に考えているあたりが、ルディらしいともいう。

 とにかくエルは、敬愛する兄への卒業試験の贈り物として、それを選んだのだ。エルとしては、自分の手に入れられる最高の物を選んだつもりだった。

 「なあ、クロマ。お前、マジでトゥルダス迷宮専門でいくつもりか?」

 「何度も言ってるだろ」

 「もったいねー。黒砂の腕輪なんて一流どころ蹴ったのは、傭兵だから仕方ねーけど、ここでも結構有名どころに声かけられてんだろ」

 よりどりみどりなのに、皆断っちまってと、ツェリズナルドは軽く言いつつ、どこか嫉妬めいたものを感じさせる言い方をした。

 ツェリズナルドにも、相応に声をかけてくるパーティはいるが、中にはクロマとのつなぎ目的だとあからさまな接触をしてくる者もいて、少々苛立っていたのだろう。

 「ほんと、しつっけーんだよ。マジに。治癒士の迷宮探索者が珍しいんだろーけどよ」

 「悪いな」

 「マジでな。まあ、学校の手前、ここじゃ馬鹿やるのはいねーだろーけど、お前、気を付けとけよ。‥‥‥言いたくねーが、クアーラにも、しつこく釘刺しとけ」

 クロマを使って、自分を売り込むようなことは、ツェリズナルドとしてはするつもりもない。彼にも、プライドがある。

 しかし、クアーラは違うだろう。良くも悪くも、彼女は仲間も含め男を利用することを悪いとは思っていない。

 リュシュワールの件で、大分応えただろうが、そうそう劇的に性根が変わることはないのだ。

 今更クロマに言い寄るような真似はしないにしても、彼のパーティであることをちらつかせ、自分に有利になるよう動くくらいのことはするに違いない。というか、すでにやっている。

 「だよなぁ‥‥‥あー、俺でこれなんだから」

 治癒士の勧誘が激しいのはわかっていたが、しみじみとそれを実感する。同時に、これが空魔法となったらと、弟の友人のことを考えてしまったクロマであった。

 自分と違い、国レベルの話なのだ。

 本当なら、ルディと付き合うなとエルに言うべきだったかもしれない。

 けれど、ルディと喧嘩していた時のエルを見ていれば、とても言えなかったのだ。

 「なんだ?」

 「なんでもねーよ。セズ、とにかく目の前の卒業試験だ」

 「わーってるぜ」

 リュシュワールのことが、ツェリズナルドは見かけ以上に応えたのかもしれない。少なくとも、クロマにクアーラの忠告をするくらいにはと、クロマはふと思った。

 「なあセズ、お前、クアーラとはどうなんだ?」

 さすがにクアーラも、リュシュワールと同じパーティの仲間に露骨に迫ることは自重していた。パーティ内の不和をもたらすと理解していた、というより、実際には軽く色目を使ったが、クロマ達が靡かなかったから、今まではリュシュワールの手前、無駄なことはしなかったのだろう。

 だから、ツェリズナルドも仲は悪くないが、男女間の関係はないと、クロマも思ってはいた。

 「ねえって。俺は嫁にするのは、料理のうまい家庭的な女って決めてんだ。だってさ、好きな女と迷宮とか無理だろ。気になって、危ねぇからさ」

 意外に、しっかりとした答えがツェリズナルドから返ってきた。そして、当然聞かれたからには、それはないとは思っていても、ツェリズナルドも聞き返す。

 「そーゆーお前はどうよ?」

 「うちのお袋って、立派なんだよな、胸が。で、うちの男の好みって、やっぱそうなるわけだ」

 エルもしっかり巨乳好きを引き継いでいるが、クロマも同じのようだ。

 そういう意味では、クアーラもそこそこあるが、クロマ的にはまるっきり不足らしい。

 「ああ、お前、巨乳好きだったよな」

 そういえばそうだったと、ツェリズナルドもうなずいた。

 リュシュワールの件で、クロマの心証が悪くなっていることから、クアーラもこれ以上彼の機嫌を悪くする真似は控えているが、そもそも彼女は対象外だった。

 「黒砂の腕輪のミナエさんくらいあれば、文句なしかな」

 女が好きと自らの嗜好を公言していたミナエの、あの魅力的な胸は、クロマの記憶にしっかりと刻まれていた。

 「そりゃ贅沢だろ」

 そして、男二人、クアーラに聞かれたら気まずいような会話が、しばらく続いたのだった。

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