試験結果
休日明け、授業の合間の教室では、クラスメイト達は次の授業の準備やそれぞれの話に興じている。エルもフローネの席の横に立ち、話しをしていた。
ちなみに、ルディは今日の授業は欠席だ。
「そっか、クロマお兄さんは明日ルナリアへ行くんだ」
「一緒に行くパーティと合併することになったってさ」
三人でもやっていけないことはないだろうが、リュシュワールが抜けた防御と攻撃の弱体化を考えれば、意地を張るものではないと結論づけたのだ。
合併先のパーティ・リーダーであるサリアリーナとクアーラは仲も良いし、気心が知れている。他のメンバーについても、斥候から遊撃まで器用にこなすツェリズナルドは、パーティでも重宝する戦力になるし、治癒士のクロマは言わずもがなだ。双方に利があるため、揉めることはなかったという。
もともと一緒に行くことになっていた彼等は、予定より一週間遅れで、ルナリア樹海都市迷宮への実習に出発することになった。
「それで、兄貴がさ、ルディのこと気にしてた」
「わたし達、クロマお兄さんにはお世話になってるよね」
フローネが言うとおり、世話好きのクロマには、三人とも随分助けられた。
ルディはリュシュワール達のことを全然口に出さない。しかし、気にしてないはずがないとエルは思うし、事情を知っているクロマも心配しているのだろう。
チラリと、フローネは視線をローレイに流した。それにエルも気づき、声になるかならないくらいの呟きを漏らす。
「あんなこと言われちゃな」
密かに詳しい事情を聞き出そうとしていたエル達の先を制し、ローレイは「彼等はルディ君とは他人だと、何度言えばいいのかな。君達もいい加減僕に言わせないでくれ」と、問いかけること自体が迷惑だと言わんばかりの態度をとった。
「彼等も、『ルディ君が直接関わっていなかった』から、あの程度の処分で済んだんだ。わかるだろう?」
人の耳のない場所を選んで話をしようとしたのはフローネ達だが、なおかつ声を潜め、言い聞かせるようにローレイはそう言った。そのローレイの言葉の裏に気づいたのは、やはりフローネだった。
「そりゃあ兄貴にはな。ただ、あっちのクソ兄貴はなぁ。正直もう関わりたくない」
「うん。ルディだってその方がいいよね」
『そうしなければならない』理由を、フローネも絶対口にしない。
ローレイが言ったのだ。ルディが関わっていればと、あえて否定する言葉で言われたその意味にフローネは気づき、エルにも伝えた。
ルディがどれほど苦しんだか。そして、今もきっと表に出さないだけで、深い傷となって幼馴染みの少年を苛んでいるのだろう。
その残滓は、真実を隠したまま人の記憶となって漂い、この先もルディを傷つけるに違いない。
だから自分達が矢面に立とうと思う。ルディと彼等の間に立つ盾になる。
「よう、エルトリード。今のルディシアールの兄貴達のことか?」
だから、丁度そこで教室に戻ってきたサルーディが、最後の方でわざと声を大きくしたエル達の会話を耳に入れて口を出してきたのにも、そういった反応を返す。今のサルーディの席は、フローネの斜め右前だ。
「『元』を付けろ。ってか、きっぱり他人扱いしろ」
顔を顰めて、エルが注意をする。
「あー、そりゃあ前からお前ら、嫌ってたもんな」
ルディシアールに冷たかった肉親のことを、本人に代わって、怒りを隠そうともしなかった二人だ。
サルーディも、実の兄弟を悪く言っていた彼等と、エルトリード達の仲が険悪だったのは知っている。
「俺の妹がさ、治癒科で妹の方と同級生で、気にしてたから、ちょっとな」
「アリアルーナとか?仲良かったのかよ」
「いや、そうでもねぇ」
兄の悪口を言われたと、リンテーラが怒っていたから、むしろ嫌っていたと、サルーディは思っている。
「司法院の処分が決まったって、噂があるだろ。お前らならホントのとこ知らねぇかと思ってさ」
「強制労働と神殿預かりだって、兄貴が言ってたぜ」
「強制労働って防壁か?」
「多分な」
「やっぱ噂通りか」
好奇心を満足させたらしいサルーディに、エルは不機嫌な顔を作って言う。
「なあ、この話、ルディの前でするなよ。オレ等も気分悪いし」
「あーそれならオレより火魔法馬鹿に言っとけよ」
自分より要注意だと、空気の読めないクラスメイトをあげるが、エルの横で本当に不機嫌そうな顔をしているフローネをつい直視してしまい、サルーディは目を泳がせた。
「って、オレが言っておく」
フローネの機嫌を損ねたと思い、サルーディは泡を食って請け負う。そして、丁度担任のスレインが入ってきたのに助かったという顔で、サルーディは自分の席に戻った。
昨日は魔法鞄が十個だが届いていたのと、魔法ギルドに納品することになっている収納庫を三つ作ったこともあり、ルディは座学の授業に出られなかった。
仲直りはしたものの、朝食は大体同室のローレイと一緒にとるようになったルディが、エル達と一緒になるのは、食堂を出る時か、教室へ入ってからだ。
「おー今日は良いのか」
一時限目が始まる前に教室に来たルディに、エルは片手を上げて挨拶をする。
「うん、おはようエル。ねえ、あれどうしたのかな?」
「ああ、あいつらか」
朝から暗い顔をして机に懐いている火魔法馬鹿と雷魔法命の二人。普段呆れるほど元気の良い二人が、どんよりと暗雲を背負っている様は、ルディでなくても何事かと思うだろう。
「あれ?ただの自業自得だよ」
にこにこと、笑ってフローネは言う。朝からルディの顔を見れてご機嫌な彼女は、二人と正反対だ。
「なんか筆記試験の結果が酷すぎってんで、追試まで授業後クラウディウス先生の強制補講受けることになって、昨日缶詰だったんだと」
エルの説明に至極納得したルディである。
その昔、担任としてクラスを受け持っていた頃は、クラウディウス先生の赤点補講の缶詰は有名だったという。クラウディウスが恩師というデューレイアの証言だから確かである。
学年主任になってからは、担任に指導を任せていたが、今回二人の悲惨な点数に、教師魂に火が付いたらしい。
何しろ試験前から筆記を捨ててかかっていた二人だ。予想を遙かに下回る結果に、クラウディウスがキレたのだった。
フローネの言うとおり、自業自得だ。
「ルディは試験結果聞いたの?」
「うん。昨日の夕方、スレイン先生のとこ行って聞いてきた」
「その顔じゃ、余裕だったんだろ」
「まあね。赤点はなかったからほっとした」
総合ではやはりローレイの学年首席が揺らぐことはなかった。
ルディの筆記試験の成績は、一部で平均ギリギリのものもあったが、薬学と魔法理論は学年で三位と五位だった。ルディとしては満足のいく結果である。
薬学、魔法理論については、少し知識が偏っているとスレインに言われた。基礎は概ねできているから問題ないが、一部専門的に偏りがありすぎるということだ。
空魔法の魔導具だけでなく、物によっては専門家顔負けの魔導具を作れ、薬学も相当なレベルでこなすルディである。それでいて、教科の一位を取れなかったのは、ケアレスミスもあったが、ひとえにその極端に偏った知識の取得具合のせいだ。そのせいで問題の読み違い、要は深読みしすぎて、間違いとは言えないが、試験の解答としては正答と判断しかねる勘違いもあった。
ただ、この知識の偏りという点の矯正は無理だろうと、スレインでも匙を投げていた。何しろぶっ飛んだ方向に爆走している魔窟の住人が師匠であるのが原因だ。
特に魔導具関係は特殊な方向に突っ走っていっているが、学校としては敢えて見ないことにすると決められたようだった。つまるところ、止められないからだ。
せめてものフォローとして、クラウディウスは必要な基礎知識を落とさないように補完することを、スレインを始めとする教師に指示していた。
エール=シオン王国の西の要地、ヘカーテルでも指折りの商家であるクレリック商会の令嬢、ミュリアは泣きそうな顔で力一杯吠えた。
敬愛する祖父ではあるが、時には文句を言いたいこともある。
「祖父ちゃんの馬鹿野郎っ」
学都リンデスからヘカーテルに戻って、ミュリアは祖父が彼女と入れ違いに樹海都市迷宮ルナリアへ向かったことを知った。
「なんで置いてくんだよ」
もうちょっと待ってくれれば、行き違いになどならなかった。置いて行かれたショックで、ミュリアは涙目で馬鹿野郎を連発する。
彼女の赤みかかった薄茶の髪を、日の傾いた空を渡る風が乱す。冷たい風に、ミュリアはぶるりと身を震わせた。
祖父と一緒にルナリアに行けていれば、父親との気の進まない約束もうまく誤魔化して反故にできたかも知れないと思えば、余計に腹立たしい。
遠くユエ共和国の学都リンデスまで行ったのに、門前払いを喰って目的は果たせず、失意で帰って来れば、王都で空魔法の使い手が現れたという。
肝心の祖父は、ミュリアを置いてルナリアへ旅立った。ルナリアがリンデスとは離れているが、それでもユエとの国境付近にあることを思えば、本当に行き違いも良いところだ。
「いっくらルナリアが南にあるって言ったって、まだ寒いじゃねぇかよ」
もうちょっと暖かくなるまで待ってくれれば良かったと、延々とミュリアは恨みがましく文句を言う。
「置いて行かれたのは俺もなんですけどね」
祖父の助手でもあるユーリックが、荒れ狂うミュリアを宥めるように言った。
苦手なユーリックが来たのに、ミュリアはぎくりと警戒心を呼び起こす。毎度毎度手のひらの上で転がされるような扱いをされていれば、いい加減学習もする。
どうせ父親に言われてきたのだろうと考えたミュリアの推測は正しい。
煩いから黙らせろと、言われたのだ。
「まあ、長旅から帰ったばかりで、即ルナリアへというのは、ちょっとごめんではあったから、丁度良いとも言えましたが」
祖父の助手であるが、ユーリックはヘカーテルでも大きな商会であるレクリック商会の店員でもあるのだ。
「商会の仕事もありますし、知ってますか、俺はまだまだ新婚なんですよ」
「あーそーかよ。なにが新婚だ。結婚前から散々いちゃいちゃしやがって。お義兄ちゃんのお嫁さんになるって、どんだけ聞かされたか」
「うちのはお嬢と違って、素直で可愛いですからね」
母親が引き取った親友の忘れ形見という少女に一目惚れして、溺愛したあげくに嫁にしたというユーリックだ。彼女はミュリアとは同じ歳で、幼馴染みであり、大事な友人だ。確かに可愛くて、ミュリアをして邪険にできないような優しい性格の女性である。
こんな捻くれまくったユーリックを義兄と慕い、成人と同時に結婚したという。相思相愛の二人の醸し出す甘い空気に、何度胸焼けすると思ったことか。
「言ってろ。祖父ちゃんも、ユーリを置いて行ってさ。金勘定困ってねーのかよ」
助手とは言っても、金銭面の管理や人の手配などがユーリックの主な仕事だ。考古学についても知識があり、かつ商会の仕事もできるユーリックを、祖父が重宝していることをミュリアは知っていた。
「それは、旦那さんがちゃんと手配したそうですよ。大体大旦那様はもともと商会を切り盛りしていたんです。ちょっと遺跡発掘とかに熱中すると、周りが見えなくなりますが、それさえなければ心配ありませんって」
「そこが一番ヤバイんだろうが」
遺跡を前にした祖父が、金勘定から雑事をすべてユーリックに丸投げしていたことを知っているから、全然安心できない。
「だから旦那様がウィレルダ女史をつけたんでしょうね」
「げっ祖父ちゃん良く承知したな」
商会でもベテランだが、名うての締まり屋で、主人だろうが遠慮なく毒舌を吐くキツイ性格のウィレルダは、ユーリックと並ぶミュリアのもう一人の天敵だ。
なるほど、彼女ならば祖父の手綱を握れるだろう。
「女史の穴埋めをしなくてはならないから、俺は忙しいんです。そこのとこ、わかりますね」
余計な手間かけないでくださいと、上から目線のユーリックに、ミュリアは文句も言えない。商会の仕事に関しては役立たずとの自覚があるからだ。
「なんか、やることなすこと裏目ばっかだ。くそっ!こんな時にルナリアで新しい遺跡がでやがって」
祖父がルナリアにすっ飛んでいったのも、そのせいだった。
「先回の大繁殖が二十七年前。まだ前兆はありませんが、何時起こってもおかしくないですから、大旦那様も焦ったのでしょう」
ルナリアの樹海は魔力で変質した魔樹と呼ばれる植物で構成されている。中には人や魔物を捕食する危険な食人植物も生息しているが、大半は直接人に害を及ばすものではない。
ただ、約三十年の周期で、樹海は爆発的な異常繁殖が起こる。
魔力をため込んだ魔樹が、一斉に繁殖を始め、樹海迷宮はその姿を変え、更に周囲を浸食するのだ。その際、樹海に生息する魔物も溢れ出て周囲を襲うようになるため、集中討伐が行われる。
これがあるため、ルナリア樹海迷宮の基礎となっている古代都市遺跡の深層部が、未発掘とも言える状態なのだ。
大繁殖の浸食速度はとてつもない。樹海から溢れ出す魔樹の浸食を止めるためには、灼き尽くすしかないのだが、これが並大抵のことではないのだ。
王国の魔導士や魔法ギルドの魔術師が集中して派遣されるが、それでも少なくない被害は出る。
先回は、大繁殖の前兆をいち早く察知できたため、比較的初期の段階で黒の魔術師が赴き、火炎系広域殲滅魔法で焼き払ったことにより、被害は比較的軽微で済んだという。
言うだけ言って、少しは気が済んだのだろう。ミュリアはむくれながらも、父親との約束を果たした。
見合いである。
相手側がわざわざヘカーテルまで赴いてきたとあって、ミュリアの父は最上級の饗応をしていた。すっぽかすなど問題外であった。
見合い相手はレクリック商会と取引のある老舗商会の次男だ。ユーリックより二つ下の二十歳であり、十六のミュリアとは歳の釣り合いも良い。
ただ、その人物が普通ではなかった。
見た目は軽いクセのある灰金髪に薄茶の瞳をした優男だ。名はロウアルド・ディルス。
「まあ、難ありと評判のお嬢と見合いするような方ですからね」
それで納得するなと、ミュリアはユーリックに噛みついた。場所はレクリック邸、豪邸とまではいかないがヘカーテルでもそこそこの大きさの館、そのミュリアの自室である。
見合いが済んで、部屋に閉じこもったミュリアの様子を見てきて欲しいと、館の主、つまりミュリアの父親に頼まれて、ユーリックが部屋を訪れてみれば、予想通り、嵐が吹き荒れていた。
面倒臭いと、できれば愛妻の待つ家に帰りたいと思ったのが本音だ。
ともあれ、憤るミュリアを、部屋の真ん中にある丸机の椅子に座らせ、自分も転がった椅子を引き起こし、対面に腰を下ろす。
お茶を運んでもらおうかと考え、我慢することにした。熱いティーポットを倒されるか、カップの中身をぶちまけられてはたまらない。
「大体なんだよ、難ありって」
「何言ってんですか。家事も料理もやる気は無いしそもそもできない。跳ねっ返りを通り越して行儀作法どころか、まともな口の利き方をしないがさつなお嬢が、優良物件だと言えるはずないでしょう」
立派な難ありですと、ユーリックは曰う。つい言葉が常にも増してキツくなったが、すべて本当のことである。
「そ‥そこまでいうかっ」
「事実です」
この男もつくづく容赦がなかった。
しかし見合い相手はその上を行く。
「顔はまあまあ、身体は今後を期待するとして、口の悪さは弱い犬が吠えるようなもの。躾が必要だが、総じて我慢できないほどではない。‥‥‥失礼にも程があるだろ」
バンッと勢いよく目の前の机を叩き、顔を歪めた。内緒だが、叩きつけた手のひらが痛かったのだ。
面と向かって見合い相手に言われたことを、そのまま訴えたミュリアに、ユーリックは盛大に唸った。
「いや、的確な評価で反論の余地もありませんね」
それとも、違うと言えるんですかと、言われてミュリアは悔しそうに口をつぐんだ。人間、事実を言われることが一番堪えるものである。
「だけど、弱い犬が吠えるってなんだよ」
「うーん、俺もね、そこまで言いませんでしたけど」
言っても無駄な気がしたのも事実だ。
「男のような口をきかなくても、相手を従わせるのが本当の強さと、言うのは簡単ですけどね。‥‥‥ああ、金の魔術師様を見たでしょう。あの方は声を荒げたりしなくても、皆、言うことを聞いていましたよ」
発掘現場で、腕っ節に自信のある人夫達も文句を言わずに従っていただろうといえば、さすがにそれにはミュリアも反論がある。
「当たり前だ。異名持ちだぞ。オマケに貴族だ」
格が違いすぎるといえば、その通りである。
「それじゃ、おつきの女騎士様はどうでした。すごかったですよね」
どこが「すごかった」のか言ってみろと、内心でミュリアは思った。
男の目を引きつけて離さない迫力のある肉体派の美女。相手が騎士とわかっていても、ちょっかいを出さずにはいられないのが男の馬鹿なところだ。
舐めるような視線を向け、卑猥な誘いをかけてきた男達に向かい、彼女、デューレイアは真正面から言い放ったのだ。
「あんたたちはわたしの趣味じゃないわ。そもそも女の誘い方がなってない。失格」
いっそ気持ちいいくらいに上から目線で言い切った。それで引き下がらない馬鹿には、威圧を込めて追い打ちをかける。
「言っておくわ。わたしに剣を抜かせないでちょうだい。面倒はごめんよ」
若い女といっても、彼女は王国第一師団の魔導騎士だ。何度も実戦をこなした腕利きである。少しばかり腕の立つ程度の人夫達とは格が違う。傭兵も、本当に実力のある者なら、あえて彼女とやり合おうとは思わなかった。
言ったとおりだ。剣を抜く事態になったら、彼女は容赦なく相手を切り伏せるだろう。その気迫が男達を黙らせた。
口元に危険な笑みを浮かべながら、警告した女騎士はきっぱり怖かった。
「弱い犬はどよく吠えるって言いますよね。強ければ怒鳴らずとも、黙らせられるってことですね」
「ユーリ、喧嘩売ってるのか」
お前だって、チラチラあの馬鹿でかい胸に目を向けてたのを知っているぞと、ミュリアは顔をしかめる。この辺りの反応が、なんだかんだと年頃の女の子だ。
「ちょっと極端すぎましたか。でも、そもそもお嬢は雇い主側です。毅然と対応すれば、最初は侮られても、そのうちわかったはずです」
乱暴な男言葉はある意味逆効果だと、まだミュリアにはわからないだろう。
「ユーリはアイツの味方する気かよ」
「そういうつもりじゃないですけどね。ただ、商会の伝手と財産目当てだと言い切るあたり、いっそ潔い気がしただけです」
性格は悪いが、むしろ正直だといえる。実際はどうかわからないが、ユーリックの印象としては、歯に衣を着せぬ批評といい、遠慮なく見合い相手を扱き下ろす様は、いっそ天晴れだ。
ここまで第一印象が悪ければ、後は何処まで落ちても一緒である。
そこまで計算してやってるのだろうなと、ユーリックは見合い相手の姑息なやり方に感心した。常にミュリアを手のひらで転がすユーリックだから、良くわかる。
「クソ親父、何であんなの選んだんだ」
不良在庫になる前に、片付けたかったのかもしれませんねとは、さすがにユーリックも口にしなかった。




