8話 少女への質問
「とりあえず中に入ろう」
俺が玄関を開けると、目の前の少女はなぜかウキウキが隠せていないキラキラした目で俺の後ろをついてくる。
「とりあえず君のこと詳しく聞かせてくれ……」
そう言って俺がキッチンのテーブルの席に座ると少女は俺の対面に座った。
「まず、自己紹介をしてくれ」
「なんか面接みたいですね!」
少女は何が楽しいのかわからないが、ニコニコしている。
「そういうのはいいから答えてくれ……」
目の前の少女には申し訳ないが、今の俺は美穂が亡くなったことからまだ立ち直れておらず、少女の態度がふざけているようにすら見えてきつい言葉を放ってしまう。
「ごめんなさい……私……私の名前は佐藤 彩華です。19歳です。桜城総合大学1年生です。」
彩華ちゃんは先程までのウキウキした様子を消して申し訳なさそうに自己紹介をした。
「ごめん……威圧した……なぜか彩華ちゃんは知ってるみたいだけど俺も一応自己紹介しておくが、俺は吉田 秋羅30歳、サラリーマンで今日……葬式した……吉田 美穂の旦那だ。」
俺が自己紹介を聞いていた彩華ちゃんの顔がひずんだ。
そんな彩華ちゃんのひずんだ表情に違和感を感じたが、同情してくれているのだろうと納得した。
「それで……俺からいろいろ質問したいことがあるんだけどいいかな?」
優しい口調で俺が尋ねると彩華ちゃんはなぜか緊張したかのように顔がこわばる。
「はい……大丈夫です。」
「まず、彩華ちゃんは美穂の葬式に来ていたけど美穂とはどんな関係なんだ?」
彩華ちゃんは視線を少し逸らす。
「……私の母と美穂さんが学生時代の友人で……母が亡くなった後叔父に引き取られたんですけど……叔父とはうまくいってなくて……そんな時母が昔言ってた美穂さんのこと思い出して……美穂さんは社会人になるのと同時に上京しちゃったって聞いていて……自分も叔父が東京住みだったのでたまたま出会うことがあって私から声をかけたんです……それから連絡先を交換してちょくちょく相談してたんです!」
彩華ちゃんはちょくちょく間を置きながら答えてくれた……その間に彩華ちゃんの苦労が感じられて彩華ちゃんの言葉に信憑性を感じたのと共に俺の中に同情心がうかびあがる。
そんな俺の同情心を裏付けるように彩華ちゃんは苦々しい表情を浮かべている。
「……そうだったのか……つらかっただろう……でも……美穂も俺に言ってくれればよかったのに……」
「そ……それは!私のせいだと思います!!」
「彩華ちゃんのせい?」
「はい……その……理由は……言えないんですけど……美穂さんに相談していたころ叔父のせいで男性恐怖症気味で……だから美穂さんは気を使って男性である秋羅さんには話さなかったんだと思います。」
彩華ちゃんの言葉に俺は1つの答えを出し、彩華ちゃんをみる。
そこには彩華ちゃんの整った顔とたわわに実った二つ果実があった。
「秋羅さんのエッチぃ……」
彩華ちゃんの刺すような言葉に俺が勢いよく視線を彩華ちゃんに向けると、彩華ちゃんは小悪魔のようなかわい怖い笑みを浮かべていた。
「ち!違うんだ!」
なぜだろう…俺は今焦っているはずなのにどこか懐かしくてどこかうれしいのは。
「なにがちがうんですかぁ?」
俺を煽って来ている彩華ちゃんを俺はなぜだかうざかわいいと思ってしまう。
「いや!おれは……心配して……」
「あはは……からかっちゃてすみません……でも安心してください……秋羅さんが想像してるみたいに手を出されたりはしてません!……こうなったら言っちゃいますけどただ部屋とかお風呂とかにカメラが隠されてて……叔父が夜そのカメラの映像で一人シてるのを見ちゃっただけです。」
「それ!十分大問題じゃないか!」
「あはは~心配ありがとうございます。大丈夫です!美穂さんに相談して叔父のパソコンのデータとスマホのデータ消して家を出たので!」
「そうだったのか……それからはどうやって生活してたんだ?」
「家に関しては友人の家だったり、ネカフェとかカプセルホテルで過ごしてました。」
「そうか……お金に関しては?」
「学費に関してはお前が撮った動画のデータとお前がそれを見ながらシてるところの動画は私が持ってるって脅して高校卒業まで払ってもらって生活費に関しては基本バイトで……足りなかったときに少し美穂さんから借りて生活していました。」
「本当に……彩華ちゃんは苦労したんだな……」
彩華ちゃんの想像よりも壮絶な過去に俺はそういう事しかできなかった。
「とりあえず彩華ちゃんのことと美穂との関係はわかった……次の質問なんだけど今日はなんで家の前で俺を待ってたんだい?」
俺にはこの沈み切った空間に何かをコメントすることはできなかったのであからさまではあるが話を変える。
「えっと……さっきも少し言ったんですけど美穂さんには私、生活費の借金と……あと……大学の学費をお借りしてまして……正直まだ全額返すことはできないんですけど……その借金の存在だけでも秋羅さんに伝えたいと思ってきました。」
目の前で申し訳なさそうに小さくなっている彩華ちゃんに俺は優しい気持ちになる。
「そのお金は美穂と彩華ちゃんの間であったお金のやり取りだから俺に返す必要はないよ」
(バン!!)
すると、目の前の彩華ちゃんが急に机を叩きながら立ち上がる。
「だめです!……あのお金には秋羅さんが稼いだお金もあったと思うので……お金のことはしっかりしなきゃダメです!」
「彩華ちゃんは真面目なんだな!わかった!お金は返してもらうけど期限はなしで余裕がある時に少しずつでいいから」
俺が彩華ちゃんの勢いにやられつつも提案すると彩華ちゃんは静かに座った。
「申し訳ないですけど……そうしてもらえると……ありがたいです。」
彩華ちゃんは弱々しく言うと頭をさげた
「頭下げなくていいよ……べつに俺的には返れなくたっていいお金だしね!」
「だめです!お金のことはしっかりしなきゃなんです。」
おれが彩華ちゃんの頭を上げさせるために言葉をかけると彩華ちゃんは少し怒った口調で腕を組んで頬を膨らませている。
正直言おう……いまそんな気分になってはいけないはずなのにかわいいと思ってしまった。
「ごめんごめん!わかったよ!でもあんまり無理はしないでな!ちなみにお金っていくらくらいなんだ?」
「…………えっと……60万円くらいです。」
学費と聞いて100万以上はかかっているとは思っていたけど思ったよりなかった。
「大学の学費としては安くないか?」
「奨学金制度を使用してるので……」
「そうか……それならなおさら返金はゆっくりでいいよ」
正直60万円は大金だが、彩華ちゃんの話を聞いてすぐ返せとは言えずに正直俺はかっこつけた。
「まぁ……彩華ちゃんが家の前にいた理由はわかったけどそれがどうして俺へのプロポーズになったんだ?もしかして……借金を返さなくてもいいようになんて……」
(ドン!!)
「違います!私!秋羅さんに一目惚れしたんです!」
俺は彩華ちゃんの勢いと机を叩いた音にまたもや気圧される。
「まぁ……納得はできないが……わかったよ……とりあえず聞きたいことは聞けた……そっちにお客さん用の部屋があるからそこで寝てくれ」
「え~!!秋羅さんの隣じゃないんですか?」
「ブフォ!!あんまり大人をからかうな!」
「あはは~秋羅さんの意気地なしw」
「あんまりからかうなら今夜だって泊めないからな!」
「ごめんなさ~い!」
彩華ちゃんはそういうと輝くような笑顔を浮かべながら逃げるように俺が指した部屋へ入って行った。
「ほんと……なんなんだ?あの子は……」
この時俺は久しぶりに笑顔を浮かべていることに気づかなかった。
お読みいただきありがとうございます!!
明日、朝6時に9話を投稿します!9話も読んでいただけるとありがたいです。
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