41話 良い母良い妻
俺が気持ち長めのお風呂から上がるとリビングのソファーには目を赤く染めながら手紙を睨む彩華ちゃんが居た。
「どうした?手紙に何か書いてあったのか?」
俺が彩華ちゃんの不思議な光景に状況を確認すると、彩華ちゃんはギロリと睨んだままこちらを見てくる。
「それ聞いたら秋羅さん天国で変態になっちゃいますよ!!」
彩華ちゃんは睨まれておびえる俺を見て楽しそうに笑いながら今度はいたずらな笑みで言ってくる。
ほんとに、こんなにコロコロ表情が変わるなんて、あの手紙に何が書いてあったんだか……気になるが……やめておこう……天国で変態呼ばわりは嫌だ。
彩華ちゃんは俺の視線に気が付いたのか、手紙を俺の前でヒラヒラさせてくる。
(ピンっ!)
「痛ったぁ~!!やっぱり秋羅さんのデコピンはいたいですぅ~」
なぜか俺は個のデコピンに懐かしさと彩華ちゃんが帰ってきたんだという実感を感じた。
そんなバカげたことを考えながら彩華ちゃんのほうをみると、彩華ちゃんも嬉しそうな顔をしていた。
「秋羅さん!秋羅さん!!」
「どうした?」
彩華ちゃんがまるで子供の用に何かを伝えようとしてきたので俺は耳を傾ける。
「私のママ……すっごくいいママだったんです」
彩華ちゃんはどこか懐かしそうに、自慢するかのように胸を張って言ってくる。
「だろうな……」
俺はなんと返せばいいか悩んだが、口から出たのはそんな肯定の言葉だった。
「ママは小さいころいつも忙しそうなのに空いた時間を私やパパに使ってくれたんです。」
彩華ちゃんは当時のことを思いだしているのか少し上を見ながら話を続ける。
「そんなママに楽をしてほしくて、家のこと私が手伝い始めたら……ママは本当に嬉しそうに私を褒めてくれたんです。」
「そうか……」
上を向いている彩華ちゃんの目元に雫がたまり始め、俺はそんな彩華ちゃんにできるだけ優しく合いの手をいれる。
「私が小学生のころ……ママが家を出ていくって言われて……私……捨てられるんだなって思ったんです、でも!ママは数日後には私のところに来て今まで通りに優しいママをしてくれたんです。」
「そうだったんだね……」
ついに、彩華ちゃんの目元から涙がこぼれ落ちたので俺はその涙をティッシュで拭いてあげる。
「沢山反抗しちゃいました……沢山心配かけちゃいました……沢山ひどいこと言っちゃいました……今になったらもしかしたらもっと甘えてほしかったのかななんて思います。」
「…………」
俺は情けないことに、相槌すら浮かばず、ただ黙って彩華ちゃんから零れ落ちる涙を拭きとる。
「こんな私に対しても……ママは最後までいいママでいてくれました。」
そう言って彩華ちゃんは俺のほうに顔を向けてくる。
彩華ちゃんが正面を向いたことで、彩華ちゃんの目元にたまっていた涙が一気に零れるが、彩華ちゃんは気にした様子はなかった。
「秋羅さんは奥さんの事嫌いになっちゃいましたか?」
彩華ちゃんの不安そうな顔をみて、俺は優しく微笑みかける。
「俺がそんな簡単に最愛の妻を嫌いになるわけないだろ!」
「よかったです!!」
俺がわざとおどけた様子で答えると彩華ちゃんは俺に素直な喜びを向けてきた。
「でも意外だったよ……」
「何がですか?」
俺の零した言葉に、彩華ちゃんは涙を強引に拭いて笑顔で聞いてくる。
「いや……だって……彩華ちゃんは俺と結婚したいんだろ?なら……美穂の存在は邪魔なんじゃないかなって!」
俺がそういうと、彩華ちゃんの笑顔が消えてみるみる家に頬が膨れだす。
「ムムムっ!!二人とも私のこと全然わかってないんですね!!確かに私は秋羅さんの奥さんになりたいですけど!!それはママの場所を奪いたいとか代わりになりたいんじゃなくて!2番目の奥さんとして家族になりたいんです!!私が奥さんになっても私たちの中にはちゃんとママが居てほしいんです!それに……ほんとはわかってるんですよ!秋羅さんの妻じゃなくて娘になるべきだってことも!!だけど!!好きになっちゃったからぁ~~!!」
彩華ちゃんは怒ったかと思うとどんどん吐き出しって言ってそして最終的にはまるで駄々をこねる子供の用に泣きじゃくり始める。
俺はそんな彩華ちゃんの頭に手を置いて優しくなでる。
「彩華ちゃんはほんとに隠し事がうまいんだなw」
「嘘ついてごめんなさぁ~い!!」
彩華ちゃんは俺に責められたと思ったのか泣きじゃくりながら俺の胸に飛び込んでくる。
「いや……ちがくてさ……俺結構彩華ちゃんと生活し始めて結構彩華ちゃんのこと知ったつもりだったのになーんにもわかってなかったんだなって。」
俺は胸の中で泣き続ける彩華ちゃんの頭をなで続ける。
「俺もさぁ……彩華ちゃんとの関係悩んでたんだ……娘にするべきか……えっと……妻にするべきか……でも!彩華ちゃんも同じ悩みを抱えていたって聞いて安心したよ……とりあえずさ……答えは保留にして家族ってことで一緒に過ごしてみない?」
俺も思っていたことを吐き出して胸元に顔をうずめている彩華ちゃんに視線を送る。
「すぅ……すぅ……すぅ……」
しかし、聞こえてきたのは答えじゃなくてかわいい寝息だった。
「いつの間に寝たんだよ!!」
俺はツッコみを入れながらやさしく彩華ちゃんをお姫様抱っこして、貸している部屋に運ぶ、彩華ちゃんに貸して以降客室には入っていなかったが、貸した当初と中身はあんまり変わっておらず、あんまり生活感を感じなかった。
「ほんとに……部屋の使い方まで遠慮がちなんだな……」
俺がつぶやきながらいけないとはわかりつつ部屋を見回すと、部屋にあるタンスの上に大事そうにモンチーちゃんのカチューシャが飾られていた。
「もっと沢山思い出つくろうな!」
俺はそういって彩華ちゃんをベットに寝かしつけて「おやすみ」と声かけて部屋を出た。
お読みいただきありがとうございます!!
明日、朝6時に42話を投稿します!42話も読んでいただけるとありがたいです。
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