31話 2つの家計簿
「何書いてるんだ?課題か?」
俺は珍しくリビングのテーブルで何かを書いている彩華ちゃんに声をかける。
「こないだバイト代が入ったから家計簿を書いてるんです!今月からは翔真くんへの返済もありますし!できるだけ秋羅さんにも少しずつ学費返して行きたいですし!」
そう言って彩華ちゃんは隠すことなくもろ金銭面的なことが書いてある書きかけの家計簿を俺に見せてくる。
その家計簿はどこか見覚えがある気がしたが思い出せないので保留にする。
「家計簿は昔からつけてるのか?」
俺はノートのページがかなり中盤だったこととノートがかなり使い込まれていたので彩華ちゃんが日課として家計簿を書いてるのか気になって聞いてみる。
「ママに家計簿の作り方教えて貰って自分のお金は自分で管理してるんです!」
彩華ちゃんのお母さんか……そういえば小さい頃に亡くしてるんだよな……
「彩華ちゃんが小さな頃から家計簿を書くように教えてお金の管理を自分でさせるなんて彩華ちゃんの亡くなったお母さんはしっかりしてたんだな!」
俺がそういった瞬間彩華ちゃんの肩がピョンと跳ねる。
「そっ!そうなんですよ!ママは小さな頃から私に色々教えてくれてぇ〜そそそれより!秋羅さんも家計簿書いた方がいいですよ?前々から思ってましたけど秋羅さんはお金にルーズすぎると思います!」
彩華ちゃんはどこか早口に序盤話したと思ったら今度は俺にジト目を向けながら言ってくるので俺は視線を不意に逸らしてしまう。
「いやーお金の管理はずっと美穂にして貰ってたからなぁ……まぁー美穂からもかなり言われて毎回お金を下ろす時に通帳に記入はするようになったけど……そういえば!美穂も家計簿を書いてた気がするな……どこに置いたんだろ?」
「みみみ美穂さんも家計簿つけてたんですねーでででも美穂さんどこに置いたんですかねー家計簿〜まぁー無いものは仕方ないですよー私が書き方教えますから秋羅さんも家計簿つけ始めて見ましょ!」
俺の疑問に何故か彩華ちゃんは焦りだし、カバンから新品のノートを取り出すと俺の方に渡して来た。
「まぁーそうだな!俺も頑張って見るか!ちょっと待ってて通帳持ってくる。」
俺がそう言ってカバンの中にある通帳を取りに行くと背後から深いため息が聞こえた気がした。
それから彩華ちゃんに教わりながら彩華ちゃんが書いている通帳を見る。
「あっ!そうだ!その通帳の書き方!美穂の書き方にそっくりだ!」
俺はずっと喉元で突っかかっていた既視感の正体に気づいてつい声に出してしまう。
でも声が出てしまうくらい彩華ちゃんの家計簿は昔チラッと見た美穂の家計簿に書き方が似ていた。
「あっ……えっと……そうなんですか!?そういえば!ママも私と一緒で小さい頃から自分のお小遣いとかを家計簿で管理してたって言ってたんで……もしかしたら美穂さんにもママが家計簿の書き方教えたのかもしれませんね!!」
俺はやっと既視感から解放されて脳内をアハ体験で満たしていると、彩華ちゃんが早口で彩華ちゃんの家計簿と美穂の家計簿が似てる理由を考察する。
「あー確かに彩華ちゃんのお母さんと美穂は昔仲良かったんだもんなーその可能性はあるな」
「そうです!そうですよ!それに家計簿なんて書き方そんなにないですから!ただただ似て見えただけかもしれないですし!」
俺が彩華ちゃんの考察を肯定すると彩華ちゃんは嬉しそうにニッコリ笑って更なる考察を付け足す。
「それもそうだな!」
俺は彩華ちゃんに肯定の意思を送ると、ついに自分の通帳と彩華ちゃんに貰った空白のノートに目を落として家計簿を書き始める。
(……ほっ……)
彩華ちゃんは小さくため息をして自分の家計簿を書き始める。
「なぁ!これってどう書くんだ?」
「ん?どれですか?」
俺が家計簿の書き方が分からなくて彩華ちゃんに聞くと彩華ちゃんは俺が書いている家計簿をのぞき込み、彩華の顔が俺の顔に急接近する。
「…………」
彩華ちゃんの髪からはなんの花か分からないいい匂いが漂ってきてついつい気を取られてしまう。
「…………ブツブツブツブツ」
何俺は彩華ちゃんに興奮してるんだ!全く!年の差を考えろってんだ!
「……ブツブツブツブツ」
「ん?」
俺が自制心を呼び出していると彩華ちゃんがずっとブツブツなんかを言ってるのに気づく。
「どうしたんだ?」
そう言って俺が彩華ちゃんの言葉に耳を傾ける。
「一、十、百、千、万、……」
俺は彩花ちゃんが数字を数えていふ理由に気がついて苦笑いを浮かべる。
「十万、百万、千万……億……」
彩華ちゃんはそこまで数えるとガバリとこちらを向いてくる。
「あははwビックリするよね……俺も手続きしてて金額みた時驚いたよ!これ美穂の死亡保険と相続した預貯金だよ。」
俺の声のトーンは自分から出た声は段々と静かになっていく。
「そうなんですね……」
俺の声に合わせて彩華ちゃんの表情も曇っていってしまう。
「まぁ!こんなにお金があっても使い切れないし!残しておいても税金がかかるだけだからさ!彩華ちゃん遠慮しなくていいんだよ?まだ……少し俺に遠慮してるでしょ?」
俺は場の雰囲気をかえるため元気な声でこれ見よがしに気にしていたことを彩華ちゃんにぶつける。
「いやいや!これはきっと美穂さんが秋羅さんと翔真くんのために残したお金ですよ!私は使えません!」
彩華ちゃんは両手振りながら否定をしていたが、その表情にどこか寂しさが見えた気がした。
「俺だって仕事辞める気ないしどうせ使い切れないお金なんだから頼むから一緒に使ってくれ!翔真を将来親の残したお金で生活するダメな大人にしない為にもー!」
俺は彩華ちゃんを元気つけたくて、大袈裟なジェスチャーをつけながらお願いした。
「あはは!なんですかそれ!翔真くんなら大丈夫だと思いますけど……わかりました!お金にほんとに困った時は秋羅さんに頼りますね!」
「良かった……」
彩華ちゃんの笑顔と初めて遠慮せず、借りるでもなく頼るって言ってくれたことに心から良かったと言う言葉が出た気がした。
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明日、朝6時に32話を投稿します!32話も読んでいただけるとありがたいです。
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