10話 母・息子襲来
(ピンポーン!!ピンポンピンポーン!)
「こんな朝早くに誰だ?」
俺は鳴り響くチャイムに起こされ、まだ7時を指している時計を確認して悪態を吐く。
俺は重い体を持ち上げ、インターホンの画面を確認すると、そこには天使がいた。
画面を見たことで足取りが軽くなった俺は気分晴れやかに玄関に向かい、扉を開く。
「パパ~!ただいま~~!!」
扉を開けた瞬間突っ込んできた天使を受け止めてわしゃわしゃと頭をなでる。
「朝早くごめんねぇ~翔真ちゃんが早くパパに会いたいって言うから連れてきちゃった!」
「僕ね!パパが最近元気なかったから一緒にいてあげようかと思って!」
「そうか~翔真がいるとパパ元気出るよ!ありがとな!……母さんも翔真を預かってくれてありがと」
翔真の言葉が嬉しかった俺は翔真を抱き上げ、翔真を連れてきてくれた母に感謝を伝える。
「秋羅さんおはようございます!」
その瞬間玄関で顔を合わせていた俺と母が凍り付く。
「だれぇ?」
無慈悲にも天使から発せられた疑問に母の表情が曇る。
「秋羅……翔真ちゃんの耳をふさいで!」
母の声色こそ変化はないが……俺を見る視線に怒りを感じる。
「はい……」
俺は大人しく翔真の耳をふさいだ。
「えっつ!?ばぁば!どうして??」
突然の出来事に翔真が俺の手から逃げようとしているが、大人の男である俺の拘束から逃げることはできず、大人しくなる。
「あんたね!美穂さんがいなくなってさみしいのはわかるけど女連れ込むために昨日一日一人にしたわけじゃないんだけど!」
母さんは今にも胸倉を掴むくらいの勢いで取り立ててくる。
「いや……!違うんだって!」
「誰かきてるんですか!?すみません!私!部屋にいますね!」
彩華ちゃんは玄関でのやり取りが聞こえたのか気を使って部屋に戻っていく。
「今すぐ!あの声の主をここに連れてきなさい!」
彩華の若々しい声を聞いた母さんは眉間のしわをより一層深くして翔真に聞こえなくすることも忘れて声がしたほうを指さしてはっきりした口調で言った。
俺は母さんの気迫に後ずさりをし、その勢いのまま彩華ちゃんがいる部屋へむかった。
母さんは翔真を連れて俺の後ろをついてきて翔真に「翔真ちゃん、ちょっとお部屋に行ってて」といい、翔真が母さんの気迫に何かを感じたのか、大人しく自分の部屋に向かうとそれを確認した母さんはリビングの椅子にきれいな動作で腰をかけた。
「彩華ちゃん……ちょっとリビングに出てきてくれないか?」
「えっ……!?今私!起きたばっかで寝ぐせとかあるし……ちょっと待ってくれませんか?整えるので!」
俺は彩華のごもっともな意見をきいて母さんのほうを見るが、母さんはかなり怒っているようで口パクで「今すぐここに呼びなさい!」と訴えてくる。
「彩華ちゃん悪い……そのままでいいからすぐに出てきてくれ……」
「……はい……わかりました。」
彩華ちゃんは少しの間を置いたあと部屋から出てきてそうそう母さんと目が合って体を硬直させる。
ちなみに、今の彩華ちゃんは少ししわが寄った美穂のパジャマ姿に急遽櫛だけはしたのか、一見整って見えるがあちこちでアホ毛が立ってる状態であり、そんな場合じゃないというのにそのプライベートな姿に心臓が弾んでしまう自分がいる。
「彩華ちゃんといったかしら?とりあえず……そこに座ってくれる?あと……秋羅……あんたもこっちに座りなさい。」
母さんが自分の前の席を指さしながら言ってきたので俺はトボトボとした足取りで指定された席に座る。
彩華ちゃんは急な展開に動揺したようで一度俺のほうを見たが俺が大人しく席に着くのを見て彩華ちゃんも大人しく席に着く。
「まず、私から自己紹介するわね?私の名前は吉田 香です。そこの秋羅の母です。」
「おっ!お母さま!?」
母さんの自己紹介を聞いた彩華ちゃんは驚いたようで声を荒げる。
「あなたにお母さまと呼ばれる筋合いはないと思うのだけど……」
「すっ!すみません!!」
母さんの気迫の籠ったテンプレ的発言に彩華ちゃんはすごい勢いで頭を下げて謝罪する。
「それで?彩華ちゃんはデリヘル譲?レンタル彼女?それとも愛人なの?」
「ブフォ!?母さん!!彩華ちゃんはそういう……」
「まだ違いますけど愛人……いや!妻を目指してます!!」
「彩華ちゃんも何言ってるのかな???」
「秋羅?どういう事なのか説明してくれますか?」
怖い怖い怖い!母さんの顔が完全に般若だ!てか!敬語になってるし!
「えっと……まず昨日、彩華ちゃんに会ってから今に至るまでの説明をします、彩華ちゃんは補足をしてください。」
それから俺は説明を始め、それに対して母さんの質問が度々入ったり彩華ちゃんによる補足4割爆弾発言6割の相槌挟まり、どうにかカオス状態にならないように気を付けながら説明終えた。
「ぐすッ……ぐすッ……彩ちゃん大変だったのねぇ~!よく頑張ったわねぇ~」
俺が息切れをするレベルで精神的な疲労を感じている横でいつの間にか俺の横で彩華ちゃんに泣きながら抱き着いている母さんが居た。
「でもね!彩ちゃん!見ず知らずの男のところにノコノコきちゃだめよ!!」
母さんは彩華ちゃんをなでなでしながらやさしい口調で叱責し、彩華ちゃんは気持ちよさそうな顔で撫でられている。
「いやぁ~美穂さんに秋羅さんはいい人だって言われてましたし、私葬式で秋羅さんを見たときにあんまりにも弱り切ってる姿を見て私居てもたっても居られなくて。」
「あらぁ……同じ女としては叱らないと行けないんだろうけど秋羅の母としてはどうしても嬉しくなっちゃう!ありがとうね~」
母さんはそういうと彩華ちゃんを強く抱きしめる。
「まぁ……確かに俺的にも昨日彩華ちゃんが居たことは助けになったよ。」
「えへへ~こりゃ~秋羅さんが私に落とされるのも時間の問題ですね~」
「調子に乗るな!」
「うんうん!いいわねぇ!美穂ちゃんには悪いけど私彩ちゃん応援しちゃう!」
「お母さま!私嬉しいです!!」
母さんと彩華ちゃんは俺の存在を無視して盛り上がり、握手を交わしている。
「そこ~二人で勝手に盛り上がるなぁ~」
「あっそうだ!彩ちゃん!彩ちゃんの日用品無いと不便よね!!今すぐ買いに行きましょ!!いや?その前に翔真ちゃんに彩ちゃんを紹介するのが先かしら??」
「いやいや……彩華ちゃんは昨日泊めただけだから今日は友人の家に戻ってもら……」
「「えっ……!?」」
「えっ……って彩華ちゃんとは昨日そういう約束だっただろ!?」
「そんな……シクシク……」
「彩ちゃん!?」
俺の言葉を聞いた彩華ちゃんはわざとらしく顔を手で隠し、肩を震わせる。
そんな彩華ちゃんをかばうように彩華ちゃんの肩を抱いて俺のほうを睨んでくる。
「私の教育が悪かったのかしら……」
母さんのその冷たい言葉は母さんの言いたいことをすべて表しており、俺の心を深く刺す。
「秋羅さんだめですか……」
彩華ちゃんは母さんの言葉に同調するようにウルウルした視線をこちらに向けてくる。
「秋羅……あんた……か弱い少女に一度手を差し伸べといてすぐ捨てるって言うの?……母さん……ショック……」
母さんは大げさな動きをしながら頭を抱えて俺に感情を伝えてくる。
「捨てるって……大げさな……それに一緒に暮らすってなったらお金の問題だってあるし……」
「男がグチグチ言わない!もう!あんたはほんと昔からグチグチグチグチ!一体誰に似たのかしら!」
母さんは半ばヒステリックになりながら駄々をこねる子供のように言い放つ。
こうなったら……母さんは何を言っても曲がらないか……。
「はぁ……わかったよ……彩華ちゃんが満足するまで家にいていいよ……」
「やったぁ!!」
「やったわね!彩ちゃん!」
俺が折れたことでさっきまで目をウルウルさせていたのがウソのように彩華ちゃんは満面の笑みを浮かべて立ち上がり、それに同調したように母さんが年甲斐もなくきゃぴきゃぴとした感じで跳ねながら彩華ちゃんとハイタッチしている。
「彩ちゃん!まずは既成事実を作るのよ!ウジウジしてる秋羅もさすがに既成事実があれば責任取るでしょうから!」
「わかりました!お母さま!」
「おいーーーー!!!!」
こうして俺と彩華ちゃんの同棲が始まった。
お読みいただきありがとうございます!!
明日、朝6時に11話を投稿します!11話も読んでいただけるとありがたいです。
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