70話 個人戦トーナメント開始
昼食の食べ終わって、休憩時間の残り40分をメイランと共にエリスタを探す時間にしていた。
グリーンドラゴンであるエリスタが、もしブルードラゴンの身に起きた事態を知っているなら、あのフードの男を追う手掛かりが見付かるかもしれない。
しかし、休憩終わり10分前になっても見つける事が出来なかった。
「……もしかして会場には居ないのか?」
「これだけ探しても居ないっぽいし、そうかもしれないわね……どうする? コウガ様」
「んー、仕方ない……個人戦が終わった後、姿を見かけ次第声を掛けようか」
「了解」
俺達はみんなの待つ応援席へと戻った。
◇◇◇
コウガ達が居た所から見えにくい物陰に人が1人、それはコウガ達をじっと見つめていた……エリスタだ。
「……ごめん、メイラン。もう少しだけ待ってて……この事実を伝えるのは、武闘会が終わった後に……」
訳あって武闘会に参加していたエリスタは、メイランが会場に居る事には気付いていた。
会場の入場前にメイラン見掛けた時、咄嗟に姿を隠してメイランを見た。
何故こんな所に? 奴隷落ちしたんじゃ……? と思った所にある物が目に入る……首輪だ。
奴隷に落ちて、あの男に買われたのだとエリスタは心を痛めた。
しかし、隠れて昼までの彼女の様子を見ていると、彼女の身なりはしっかりしているし、主と思われる男や周りに居る女の子達と仲が良さそうに見えた。
エリスタは、彼女自身が最悪な状況になっていない事に安堵した。どうやら悪い主ではないようだ。
実は、彼女には伝えなきゃいけない事がある……ブルードラゴンの事件のその後についてだ。
しかし、これを伝えたら彼女がどんな反応をするかなんて……想像も容易い。これを伝えたらきっと武闘会どころではなくなってしまう。
だから、武闘会が終わるまで会う可能性のある時間は、なるべく姿を隠していたのだ。
「メイラン……私は貴方の味方だから」
エリスタは手を握り締め、自分の胸に当てた。
◇◇◇
応援席へと戻ってくると、カエデがこちらへ走ってきた。
「ご主人様! トーナメントの表が出たよ! あそこ!」
カエデが指差す方を見ると、スクリーンに大きくトーナメント表が貼り出されていた。
16名のトーナメント、俺は第3試合だった。
そしてカエデが第4試合……という事は、俺とカエデとは2回戦で当たる事になる。
「良かった! 1回勝てばご主人様と戦える!」
「だな、決勝まで当たらないとかだったらどうしようかと思ったぞ……」
「まぁその時はその時で、また次のチャンスを待つけどね!」
その次のチャンスはどのタイミングになるかは分からないが、こうして本気で戦えるタイミングはそうそう無い。
だからこそ、今日の2回戦で戦いたい。
「ご主人様、1回戦絶対に勝ってね!」
「あぁ、勝ってみせるよ!」
俺は再度トーナメント表に目を落とし、対戦相手を良く見ると……セシルだった。
「セシルか……これは厄介だな」
「セシルって?」
「狐人族の刀を持ってた女性だよ、バトルロイヤルで俺が最後に戦ってた人だ」
「ああ、あの人! 控え室のモニターから見てたけど、ご主人様の氷を真っ二つに斬ったんだよね?」
「そう、なかなか厄介だぞ」
セシルに崩月を使われるとアイスウォールは役に立たない。
それ以外の攻撃ならアイスウォールで防げるのだが……どうしたものか。
「大丈夫! ご主人様なら勝てるよ!」
カエデがファイトポーズで励ましてくれる。
「ありがとう、頑張るよ」
そしてカエデの相手を見てみると、バトルロイヤルの第3試合に居た巨人族のようだ。
「カエデの相手はあのアックス使ってた巨人族だな」
「みたいだね。パワーが凄そうだから素早さ活かして戦うよ、防御は多分無駄だろうから」
「だな、一撃には気を付けて」
「うん!」
対戦相手の話をしていると、休憩時間もあと僅かになり司会のミーサーがマイクを握った。
「皆様! 休憩時間が間もなく終わりますので、会場へお戻りください! 時間になったら個人戦トーナメント第1試合を始めます! 第1試合と第2試合の方は控え室へおなしゃす!」
次第に応援席へ人が戻ってくる、よく見渡してみるがエリスタの姿はないように見える。
「コウガさん、どうしました?」
近くに居たミツキがキョロキョロしている俺を心配して声を掛けてくれた。
「いや、エリスタ居るかなって思ってさ」
「先程話していたグリーンドラゴン族の、ですね?」
「あぁ、話せるなら話したかったんだがな……見付からなかった」
もう休憩も終わりなのに、姿を表さないとは……一体どうしたのだろうか?
「なるほど、分かりました。俺もたまに見渡して探しておきますね、ヴィーネもお願い」
「かしこまりました、ご主人様」
「悪いな、頼む」
ミツキ達にもエリスタを見つけるのを手伝ってもらう事になった。
これだけの人数で会場を見ても見付からないなら、意図的に隠れてる可能性が浮上してくる。
理由は色々考えられるが、それも個人戦の後で本人捕まえて吐かせればいいだけだ。
「はい! 休憩時間終わりです! それでは第1試合を始めたいと思います! 第1試合を戦う選手はステージへ!」
会場が湧き上がる、これからが個人戦の本番だから退屈せずに済みそうだ。
そして入場してきたのは、騎士団のゴリスターとバトルロイヤル第4試合で生き残った剣士の男だ。
「それでは! 個人戦トーナメント第1試合を始めます! 構えてください!」
ゴリスターは両手の拳を胸の前でバシバジと打ち合わせる、その姿が物凄く似合う素晴らしい肉体美である。
対する剣士も鞘から剣を抜いてジャキッと構える。
身体に似合わぬ大剣だが、それを軽々と振る剣士もなかなかパワーがありそうだ。
「レディーーーーッ、GO!」
個人トーナメント戦、正真正銘1体1の真剣勝負が始まった。
「ぬうぅぅん!!」
ゴリスターは見た目に反するスピードで、剣士に迫る。
カエデみたいな速さではなく、人間の中では速めくらいだ。それでも超筋肉マッチョが短距離走選手並に速く走ってきたらビビるけどな。
しかし、剣士も臆せずしっかり反応して大剣を横に構えてガード体勢だ。
しかし、ゴリスターの右ストレートが大剣に炸裂すると……剣士の身体が吹き飛んだ。
「なっ!?」
俺は思わず声が出てしまった、ステージ中央に居た剣士がステージ端に行くくらい吹き飛んだのだ。
かろうじて場外は免れたが、衝撃が凄かったのかフラッとしていた。
「ぬぅ、耐えたか。やるではないか青年!」
「ぐっ……ぅぅ」
ゴリスターが再度剣士に向かって加速する。
剣士も避けようとするが、身体がふらついて動けない。
「ぬぅん!」
「ぐおぁぁぁぁ!」
剣士はタックルにより場外へ飛ばされた、リングアウトで試合終了だ。
「もっと力を付けるがよい、俺のタックルを耐えれるように」
ゴリスターはステージを後にした、あっという間の決着だった。
だが、あの剣士じゃなければ恐らく1発場外だっただろう……あの剣士の防御も悪く無かったはずだ。
「なぁティナ、あのパンチやタックルは受け切れる自信ある?」
「受けられないこともないが……あの威力はそう何度も受けられないだろうな。だが、覚醒すれば問題ないレベルだ」
「ティナでも素で受けるのは難しいのか……」
このままだと、カエデに勝った後の準決勝でゴリスターと当たる事になる……対策を練らねば。
俺は色々考えながらも、第2試合が始まる前に控え室に呼ばれたので向かうことにした。




