39話 ギルマスとギルマス
トライデント王国のギルマス、ジャスパーさんと話をさせて欲しいというゼミラさん。
断れる雰囲気ではなさげなので、王国印に魔力を流すとジャスパーさんの声が聞こえてきた。
『おう、聞こえるか?』
「はい、聞こえますよギルマスさん」
『コウガ、お前から連絡来るって事は例のフード野郎の件で何かあったか?』
「はい、ちょっと色々あったので……聞いて貰えますか?」
『あぁ、話せ』
サンビークに着いて依頼をこなす内に巨大トレントと出くわし、魔法で魔石に干渉された形跡があって異常行動を起こしていた事を話した。
『なるほど……魔物を操るような野郎だ、魔石干渉で実験か何かをしていた可能性も有り得そうだな』
「はい、なのでサンビークのギルマスに報告して今に至ってるんですよ」
『サンビークのギルマス……ってことは、まさかアイツ……ゼミラが今居るのか!?』
ジャスパーさんが慌てだした。ゼミラさんの事知ってる雰囲気だが……過去に何かあったのだろうか?
「ふふ、久しいなジャスパー」
『げっ!? その声は、やっぱりゼミラか!?』
「げっ!? とは何だ、久しぶりに言葉を交わしたと言うのに。同じ釜の飯を食ってたあの頃みたいに仲良くしようじゃないか」
『仲良くだと!? お前と仲良くした記憶なんてねぇよ!』
「ほぅ、歳食って言うようになったなジャスパー。絞めてやろうか?」
『やめろ冷徹女! 洒落になんねぇよ!』
凄い会話してるなぁ……会話を聞く限り、多分冒険者時代に色々あったんだろうな。
「ねぇ、この2人知り合いみたいだね」
「多分、冒険者時代に色々あったんだろうな、ゼミラさんがジャスパーさんを苛めて楽しんでるみたいだ」
『おい! 聞こえてるぞコウガ! 用がないなら切るぞ!』
「まぁまてジャスパー。お前、コウガに色々と協力しているみたいじゃないか」
『……あぁ、そうだよ。それを知っているってことは話を聞いたみたいだな』
「あぁ、大変なことになってるみたいだな。そんな大変な事にお前が協力しているとはな」
『悪いか?』
「いんや? これが最適だと私も思うよ。それで、私も協力してやろうと思ってお前に許可貰おうってな」
『ほう? お前が協力するとは、どんな風の吹き回しだ?』
「絞めようか?」
『だからやめろって。そりゃコウガの協力してくれるなら有難いが、具体的に何するんだ?』
「この王国印に私の魔力を加えて通信出来るようにするだけだ。協力は惜しまないし、あわよくばコウガをいただ……」
『やらねぇぞ! 俺の国の専属だからな!』
「チッ、まぁ今のは冗談だ」
『今舌打ちしたぞコイツ! 絶対にやらねぇからな!』
「まぁ、ただコウガに協力したいのは事実だ。王国印に私の魔力を込める許可をくれ」
『……はぁ、仕方ねぇな……コウガの味方してくれるなら許可してやる』
「感謝するぞ、お礼にまた苛めにトライデントに行ってやる」
『やめろ冷徹女! 来んじゃねぇぞ!』
ブツッ。
通話が切られたようだ。
「ふっ、面白い奴だな」
「あはは……」
あんな会話聞いたら笑うしかないだろ。
「さて、ギルドカード貸して貰えるか? 私とも連絡を取れるようにしよう」
「はい、お願いします」
ゼミラさんがギルドカードを手に取り一時退室する。
「あの2人、あんなに仲が良かったとはな」
「そうね、ゼミラさんがあんなにSだとは思わなかったわ」
「だな、ジャスパーが苛められる所を生で見たかったな」
「王国のギルマスには悪いけど、面白そうだよね」
「また3人で通話する機会作ろうか、面白い話が聞けそうだ」
そうして話をしているとゼミラさんが戻ってきて、報酬も一緒に持ってきてくれたようだ。
「待たせたな。これでさっきのように魔力を流したら私と話が出来る。魔力で繋ぐ先を決めてくれたらそっちに繋がるからな」
「分かりました、ありがとうございます!」
「いつでも頼ってくれ。あと、これが報酬だ。野ウサギ討伐報酬に加えて巨大トレント討伐の色をつけといたぞ」
中を見ると、本来の報酬銀貨50枚に加え、金貨10枚入っていた。
「金貨10枚!?」
「あぁ、聞いた感じだと巨大トレントの危険度はB以上と予想される。10枚でも少ないとは思うのだが、許して欲しい」
「い、いえ! まさかこんなに貰えるとは思わなかったので……」
「ふふ、あまり欲を出さないんだな。ますます気に入った」
ゼミラさんがこちらに近寄り、俺の顎を撫でてきた。
「「「!?」」」
「お前、私のモノにならないか?」
「なっ!?」
「「!!!!」」
驚いて身体が固まってしまっていたが、カエデとメイランが即座に動き俺を渡さないと意思表示するように抱き寄せた。
「「だめ!」よ!」
「ほう」
カエデの毛は逆立ち、メイランも翼をバサッと広げて威嚇する。
「フーー! ご主人様は私達のなの!」
「いくらギルマスだろうと、コウガ様は渡さないわよ」
「ふふ、冗談だ。良い男なのは事実だがな」
ゼミラさんはふふっと笑いながら席に戻った。
あぁ、心臓が弾けるかと思った……。
「ご主人様、私達がしっかり守るからね!」
「お、おう。ありがとう? で良いのか?」
「良いの、守られなさい」
「あ、はい」
2人の圧が凄いのよ、俺を渡さないオーラがやばいのよ。
嬉しいけどね?
「さてさて、冗談はここまでにして、これからどうするんだ?」
ゼミラさんがこの先の予定を聞いてきた。
まだ考えていなかったが……お金は手に入ったので、鍛える時間に数日割こうと思った。
「巨大トレントと戦って分かりました、まだまだ実力が足りないなと。フードを追いかけたいですがやられちゃ意味がないので、数日~1週間くらいここで依頼を受けながら鍛えようかなと」
「ふむ、なるほど。ならば、2週間後にある武闘会で自分の実力を測ってきたらどうだ?」
「武闘会?」
「あぁ。このサンビークから北に行き、山脈を超えた先にある国ノイシュで開催している催し物だ。たくさんの冒険者や国の兵士達がごそって参加するんだ」
武闘会かぁ。
確かにこの世界の冒険者達の強さを知っておきたい気はする。
ただ、変身を見られる訳にもいかないので少し悩む。
「うーん……参加したい気持ちはあるんですけど、あまり見られたくないスキルもありまして。それが戦闘で主軸なんです」
「ふむ、そのスキルを見られたくないと……それはどういった物なんだ?」
「ギルマスだから話しますけど、内密に」
「勿論だ、誰にも話さないと誓おう。ジャスパーにもか?」
「いえ、ジャスパーさんには話した上で協力して貰ってます。このスキルが発端で王国印を貰ったようなものですから」
「わかった、教えてくれ」
変身スキルと加護の話をして、変身先のスキルを発動可能なのと種族すら変わる事を伝えた。
「……にわかに信じられんな、そんなスキルがあるとは」
「なら見せましょう」
俺はまずカエデの狼人族へ変身する、狼耳と尻尾が生えてくる。
「……凄いな、これは本物なんだな?」
「はい、カエデと同じ狼人族の耳と尻尾です」
「その様だな、カエデと瓜二つだ」
「次にメイランのドラゴン族へ」
ドラゴン族へ変身をし、背中より翼が、尾てい骨付近より尻尾が、腕にはドラゴン特性の鱗のような模様が浮かび上がる。
そして、本物証明の為に翼で少しだけ浮かび上がる。天井に頭に打ち付けないように少しだけ。
「これは……もう疑いようがないな」
「お分かりいただけましたか?」
「あぁ、そして見られる訳にはいかないのも分かった。確かに、これは見られたらやばいか……なるほど、それで王国印か。考えたなジャスパー、私に取られると言うよりは武力国家辺りからの引き抜きを嫌ったか」
ゼミラさんが今までの話を聞いて納得したようだ。
「それならば、最初から狼人族かドラゴン族に変身しておいて、どちらかで通しておけばいいのでは?」
「なるほど。どちらかに変身しておけば、他人からすれば俺はその種族として見られるって訳ですね?」
「そうだ、変身時間はどれくらいだ?」
どれくらい変身したままでいられるかは試した事ないな……武闘会に向かう前に調べた方が良さそうだ。
「数時間は余裕でしょうけど、限界は分からないですね」
「それなら明日1日ずっとどちらかの種族に変身したまま過ごして報告をくれるか? もし変身が長く持つと分かれば、武闘会に参加するって事で出場の推薦枠に入れてやろう」
「えっ!? いいんですか?」
「あぁ。これがあれば、エントリー過多になろうとサンビークからの推薦枠で問題なく出場出来る」
「ありがとうございます! 明日試して報告しますね、通信のお試しも兼ねて」
「頼む。そろそろ会議があるな……もう話は大丈夫か?」
「はい。お忙しい中、ありがとうございました!」
「あぁ。ではまた明日、失礼する」
ゼミラさんが退室していったので自分達もギルドから出てこれからどうするか相談する。
「これからどうするの、ご主人様?」
「取り敢えず、お昼回って腹減ったから飯にして……今日はゆっくりしようか」
「そうね。昨日の今日だし、休養も必要ね」
「わかった、ご飯食べてみんなでゆっくりしよう! 私またブラックモウが食べたい!」
「あらあら、カエデったらまた食べるの?」
「だって美味しいもん!」
「あはは! 分かった分かった、今日は俺がブラックモウのステーキを焼いてやろう!」
「やった! ご主人様大好き!」
「うお!? 後ろから抱き着いたら危ないぞって、うおっ!?」
「前ががら空きよ、コウガ様。美女2人に抱き着かれて幸せでしょう?」
「幸せだから取り敢えず離してくれ、動けないから」
2人に抱き着かれて周りから痛い視線を浴びつつも宿に戻り、ステーキを堪能したのだった。
もちろん、抱き着かれてる間2人のお山2つも堪能しましたよ。柔こうごさいました。
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