第2章 丑(うし) 鶏口となるも牛後となるなかれ
鼠さん。よく頑張ったね。1着おめでとう。
01
ワシはこの旅 (レース)の途中、田舎の畦道で鼠女史と会話をしていた。
鼠女史は言った。
「ねえ牛さん。
私は、『鶏口となるも牛後となる勿れ』よ。
私はどんなに大きなものの後ろになっているよりも、私はどんなに小さくってもいつでも先頭に立ちたいわ。」
ワシは、道草を食みながら鼠女史殿に言った。
「ふ~ん。そんなもんかね。
ワシは一番手なんぞにはなりたくはないね。
ワシはワシなりにマイペースで行くよ。」
ワシはお腹いっぱいに草を食べたらなんだか眠たくなってきた。
「牛さん。『食べてすぐ寝ると牛になる』わよ。
って、モウ~牛か。うふふふ。
牛さん。
どうやら牛さんには何を言っても、『牛の角を蜂が刺す』。『牛に経文』。『牛に対して琴を弾ず』。『牛の小便と親の意見は長くても効かぬ』ね。
私は先に行くわ。
牛さん。じゃあね。バイバイ。」
と言うと、鼠女史は行ってしまった。
「う~ん。
食べてすぐ動くよりも眠った方がお腹には優しいのに・・・・・・。
ハア~~~。ムニャムニャ。」
ワシは欠伸をして、その場で眠ってしまった。
02
・・・・・・しばらくすると、ワシに声をかけてくる者がいた。
「やあ。牛さん。牛さん。
是非、それがしを乗っけて行ってくれないかなあ? 」
ワシに声をかけてきたのは人間であった。
なおも声をかけてくる。
「やあ。やあ。牛殿。牛殿。
ここはどこだか知っていますかな? 」
ワシは半目を開いてその者に言った。
「ムニャムニャ。う~ん。
ここは、織田信長公が『牛耳を執る』、美濃の国の岐阜という地名だと思うがのう。」
「さすが、『牛のしりがいと諺とは外れそうでも外れぬ』だね。
当たりだよ。」
「そう言う人間のあなたは一体、何者かね? 」
「それがしか?
それがしは、『九牛の一毛』に過ぎないが、織田家に仕えている羽柴秀吉殿の家臣、竹中半兵衛と申します。」
ワシは驚いて完全に目が覚めて起き上がった。
「ええ~!?
ではあの、『今孔明』との異名を持つ天才軍師、竹中半兵衛様でございましたか!!
これはこれは失礼いたしました。」
竹中半兵衛は、飄々とした感じで言った。
「まあ。なあに。
そんなに恐縮しないでくださいな。
ねえ。牛殿。
お願いですから是非とも、それがしをあなたの背中に乗せていってください。」
ワシはその願いにも驚いて慌てて言った。
「竹中半兵衛様。滅相もございません。
ワシなんかノロくてノロくてなんのお役にも立ちませんよ。
どうせなら、馬さんに乗っていってはいかがですか。」
竹中半兵衛は自分の顔の前で手を横に振り言った。
「それがしは馬は好かぬ。
なんだか乗っているこっちが急がされている気になってしまうんでね。
それがしは『牛歩』の方が好きだね。
ゴホッゴホッ・・・・・・。」
03
それからというもの。
ワシは竹中半兵衛様を背中に乗っけて旅をした。
竹中半兵衛様はなんでも知っていた。
裏道。隠し道。獣道。ショートカットルート・・・・・・。
『牛の歩みも千里』。
『牛に引かれて善光寺参り』ならぬ、
『竹中半兵衛様に引かれて善光寺参り』。
・・・・・・あっという間に、お釈迦様がいる世界一高いタワーの下に辿り着いた。
竹中半兵衛様は、
「良い旅であった。」
と言った。
そして竹中半兵衛様は、ワシの背中の上で亡くなっていた・・・・・・。
竹中半兵衛様は、病を患っていたのだった・・・・・・。
竹中半兵衛様は、若くして病没した。
04
世界一高いタワーにのぼってみるとそこで、鼠女史と猫とが戦っていた。
すると、鼠女史の方が奇跡的に勝利をし、猫はタワーから落ちた・・・・・・。
ワシは思った。
「やはり一番手にはなりたくはないのう。」
結果。
鼠女史が1着。
ワシは2着。
鼠女史殿がワシを見て言った。
「あれ~? 意外。
牛さん。結構早いじゃないの! 」
ワシは言った。
「いやあ~。
2着とは、ワシは10着くらいでもよかったのになあ。」
ワシは、『鶏口となるも牛後となるなかれ』けり。
の、スタンスでは無い。
第2章 【終】
第3章 寅へとつづく。




