↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ  作者: トモサン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
35/100

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 35

「…オレを好き?…」


 水野が、目をまん丸くしたまま、驚いた表情で、私に訊いた。


 「…ええ…」


 私はもう一度、同じ言葉を繰り返した。


 そして、ただ好きというのでは、説得力がないと思い、


 「…だって、私に比べて、二十㎝以上、背が高いですから…」


 と、付け加えた。


 「…背が高いから…」


 水野の顔から驚きの表情が消え、落胆に変わった。


 「…だって、女はみんな背の高い男の人が、好きな女が大半ですよ…まして、私のように背が低い女は…」


 私はさらに付け加える。


 「…どうして、背が高い男が?…」


 水野が、戸惑った表情で、尋ねた。


 「…それは、誰だって、自分にないものを、相手に求めるでしょ? 私は背が低いから、背が高い男のひとが好き…」


 私の言葉に、水野が黙った。


 いや、考え込んだ。


 …さあ、どうする?…


 …さあ、どうでる?…」


 主導権は、再び、私が握った。


 ボールは、水野に投げた。


 そのボールを水野は、どう返す?


 私は半ば、ワクワクして、待った。


 …さあ…


 内心、呟いたときだった…


 「…ベストカップル!…」


 私を見て、水野が突然、声を上げた。


 「…生涯の伴侶をココに発見!…」


 と、言って、私を指差した。


 …ど、どういうこと?…


 私は、驚いた。


 パニクった…


 「…どうして、私が、水野さんの生涯の伴侶なんですか?…」


 私は、慌てて、訊いた。


 「…それは、高見さん…アナタが今、その答えを言った…」


 「…答えって?…」


 「…自分にないものを、相手に求めるって…オレは、この通り、人間的に軽くて、落ち着きがない…高見さんは、真逆…いつも、落ち着いて、しっかりしている…だから、オレと高見さんが結婚すれば、互いの短所を補える…」


 「…短所って?…」


 「…高見さんは、一般人…オレは、水野財閥後継者の金持ち…高見さんの短所は、オレの金で補える…」


 水野が言った。


 私は唖然とした。


 同時に、女のコたちから、


 「…ちょっと、水野、いつまでも調子に乗ってんじゃないよ…」


 という声が聞こえてきた。


 「…高見さんが迷惑だよ…」


 女のコたちが口々に言う。


 当然だ…


 誰も、水野が本当のことを言ってるとは、思わない…


 冗談を言ってるに、過ぎないと見ている。


 私は、周囲の反応を見て、考えた。


 「…いい案ですね…」


 「…いい案?…」


 私の言葉に、水野が、またも目を白黒させた…


 「…水野さんのおっしゃるように、私は、この通り、背が低く、一般人…片や水野さんは、背が高くて、お金持ち…互いに結婚すれば、互いの欠点を補うことができる…まさにベストカップルです…」


 私は言った。


 「…ベストカップル?…」


 私の言葉に、水野の目が点になった。


 明らかに、動揺していた。


 …さあ、どうする?…


 …さあ、どうでる?…


 ボールは再び、私から、水野の元へ返した。


 このボールを水野は、どう返す?


 私は水野を真正面に睨みながら、固唾を飲んで、待った。


 が、水野よりも、早く、私と水野のやりとりを見ていた、女たちから、


 「…さすが、高見さん…水野を軽くあしらってる…」


 という声が聞こえてきた。


 予想外の声…


 なにより、私自身、その声に当惑した。


 そして、真正面の水野も、また私同様、予想外の彼女たちの声に当惑したに違いないが、すぐに、その声を利用した。


 「…さすが、美人の当たり屋さん…お見それしました…」


 私の前でペコリと頭を下げた。


 「…オレの本気を冗談で返すなんて…」


 水野が笑いながら、言う。


 しかし、その目は笑ってなかった。


 ちょうど、そのときだった。


 「…なんだ? みんな、どうした?…」


 外出していた、課長の亀沢が、戻って来た。


 亀沢は、一歩、課に入るなり、水野と私を中心に、課の皆が、私たちを遠めに見ながら、雑然としている様子に、気づいたようだ…


 課長の亀沢が戻って来たことで、課の皆に、緊張が走った…


 さすがに、課長が戻ってきて、これ以上、悪ふざけはできない…


 それは、水野も同様だった。


 「…今日はこれで、失礼します…」


 水野がペコリと私に頭を下げた。


 「…ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした…」


 水野が、再び、私に頭を下げた。


 「…本当に…申し訳ありませんでした…」


 言いながら、私に近寄って来て、小声で、


 「…食えない女…」


 と、囁いた。


 耳元で、囁いたので、私以外の誰も、水野がなんと言ったのか、わからない…


 私は唖然として、水野を見返す。


 水野もまたニヤリと笑って、私を見返していた。


 「…ちょっと、今、高見さんになんと言ったの?…」


 それを見た、周囲の若い女のコたちが騒ぎ出した。


 私はそれを見て、


 「…水野さんが、結納の日取りはいつにしますか? って、私に訊いたんです…」


 と、答えた。


 「…結納の日取り?…」


 周囲の女のコの目が点になった。


 それは、水野もまた同様だった。


 「…水野、いくらなんでも、ふざけすぎ…高見さんに失礼よ…」


 周囲の女のコたちから、罵声が飛んだ…


 水野の顔が強張った…


 「…ちょっと、きみたち、いい加減にしないか!…」


 課長の亀沢が怒鳴った。


 我慢の限界だったのだろう…


 亀沢の一声で、若い女のコたちは、シュンとして、おとなしくなった。


 また、水野も、無言で、部屋から出て行った…


 これが、今日の昼間、会社であったこと…


 私は振り返る…


 あの溝口に米倉を紹介されて以来、こんなことが増えた。


 いや、騒動とはいえないかもしれないが、日常の刺激が増えたというべきか?


 だが、これは、決して、嫌ではない…


 私の生活において、マイナスではない…


 これまで、私は今の会社に新卒で、入社して以来、刺激がなかった…


 あったのは、日常生活の小さなゴタゴタ…


 これは、会社でも学校でも、人間が集まれば、発生すること…


 人間が集まれば、必ずゴタゴタが起きる…


 これは、生活する上での必然…


 ただそれが、小さなゴタゴタか、大きな騒動かの違いだけ…


 私が今の会社に入社して、一番の大きな騒動は、やはりリストラだろう…


 これは、どこの会社でも同じだが、当然、私の周りでも見聞きした…


 知っている人間の何人かは、会社を去った…


 その中には、当然という者もいれば、なぜあの人がという者もいた…


 会社で、出世頭と見られた男で、かなり上まで、出世したが、その後、出世の壁にぶつかり=具体的には、空いた席がなく、関連会社にも、転籍できず、早期退職を選ばざるを得なかった者を見たことがある。


 その男は、仕事ができたが、好感度が低かった(笑)…


 本人は、気付いていないが、ひとに好かれてなかった…


 リストラの根幹では、人間の好感度が左右する…


 どうしても、人の好き嫌いで、判断する…


 仮に、同じ年齢、同じ能力で、どちらかを選べと言えば、誰もが、リストラの場合は、嫌いな方を選ぶ…


 つまり、好き嫌いで、判断するということだ…


 人間が人間を選ぶ以上、ある意味当たり前だ…


 私の周りの女子でも、歳を取って、あからさまに、自宅から遠い職場に移動を命じられ、辞めた者も少なからずいた…


 ある意味、私が対象になっても、おかしくない…


 私が対象に選ばれなかった理由はただひとつ…


 私が美人だったからに、他ならない(笑)…


 しかし、美人という魔法?も、すでに、その効力は失せ始めている…


 私、高見ちづるも、すでに33歳…


 当然、若くはない…


 いかに、美人ともてはやされても、二十歳の若いコには、勝てない…


 認めたくはないが、オバサンだ…


 ゆえに、内心焦りがあったのは、事実…


 どこの会社でもそうだが、次に大規模なリストラがあったときは、自分が選ばれる可能性が高いのでは? と考える…


 美人という、これまで、私を守ってきた唯一の魔法=武器が、だいぶ弱くなった…


 魔法の効力が、年齢という壁に、徐々に浸食されて、その効力を失いかけてる。


 私が溝口の誘いに乗り、米倉と見合いをした根底には、リストラの恐怖が、あった…


 それは、認めざるを得ない…


 自分では、さほど意識せずとも、常に、意識の根底にあったと、認めざるを得ない…


 そして、それと同じく私の心の根底には、昔ながらの、金持ちの王子様と結婚を夢見る、少女の自分がいたと、認めざるを得ない…


 玉の輿を夢見る、少女の自分がいたと認めざるを得ない…



 米倉の見合いを受けたのが、その顕著な例…


 自分では認めたくないが、それが顕著な実例だ…


 私は考える。


 以上は、これまで、米倉と出会う前に、会社で、起こったこと…


 溝口の紹介で、米倉と出会ったことで、私の世界が変わった…


 これは、大げさではなく、それまで、接したことのない豪邸に招かれ、週刊誌のゴシップ記事に載るような別世界のひとと交わったことで、世界が広がった。


 これは、悪いことではない…


 自分の知らなった世界を知ることで、少しでも、視野が広くなるのは、誰もが、歓迎すべき出来事だ…


 やはり、人間として生まれた以上、少しでも、視野が広い方がいい…


 世間が広い方がいい…


 誰もが、本を読んだり、人の話を聞くなりして、それまで、自分の知らなかった世界を知ることができるが、それも、やはり自分が体験したことには、かなわない…


 自分の体験がなにより、実になるし、自分の役に立つ…


 私が、米倉一族と知り合って、身に染みたことは、それだった…


 そして、これが、自分にとって、米倉と知り合って以来の出来事がマイナスではないといったことの意味…


 それまでの会社で起こった小さなゴタゴタが、日常生活のすべてに過ぎなかった私にとって、視野を広げるきっかけになったからだ…


 少なくとも、それまでの私の日常生活の大半は、会社と自宅を往復するだけの日々だった…


 それから脱却できたのが、米倉と知り合った一番の功績かもしれない…


 誰もがそうだが、いつまでも、夢見る少女ではいられない…


 歳を取るごとに、少しずつ、現実が重くなる…


 現実を直視せざるを得なくなる…


 誰もが、遅かれ早かれ、そうなる…


 若い頃に、いかに自分がモテるか、周囲に吹聴していた、平凡な女が、十年後、偶然、街で出会ったとき、いっしょにいる自分の旦那なり彼氏なりが、見るからに、大した男ではないので、とっさに顔を伏せて、顔を隠すのは、誰もが経験することだ(笑)…


 自分を実力以上に大きく周囲に見せようとしてるが、誰もが、その人間の実力はわかっている…


 自分自身が、気付いていないか、それとも、わかっていて、虚勢を張っているのかはわからない…


 しかし、大半は、その実力相応の人生を送る…


 例外は世の中にたくさんあるが、それは例外に過ぎない…


 十人に一人どころか、何十人、何百人に一人の例外に過ぎない…


 仮に、会社でいえば、出世して、偉くなっても、その地位にふさわしい能力がなければ、


 「…どうして、あんなひとが?…」


 と、周囲から陰口を叩かれることになる可能性が高い…


 それを見れば、成功も楽ではない(笑)…


 その地位だけ見れば、誰もが偉いと思うが、能力に疑問符が付いている(笑)…


 そして、そんな例は、どこの世界でも枚挙にいとまがない(笑)…


 出世しても、周囲の人間が、納得しない人間が少なくない場合は、やはり、その人間に接するときに、態度に出る。


 そうなれば、出世=成功した人間も、いばらの道とまでは、いわないが、会社での居心地はよくはあるまい…


 成功=居心地が良いというわけでは決してない…


 これは、会社での成功=居心地が悪いという真逆の例…


 しかし、どこにでもある事例だ(笑)…


 私は考える。


 あの米倉にしても、米倉正造を筆頭として、姉の澄子、腹違いの妹、好子と、腹違いの弟の新造、それに、澄子の夫、直一、父親の平造と、接したが、誰もが、幸せには見えなかった…


 あれほどの豪邸に住むお金持ちで、誰もが羨む生活をしているにも、かかわらず、だ…


 お金持ち=幸せという構図では、決してない…


 そんな単純なものでは、決してない、わかりやすい事例だ…


 お金は、ひとを幸せにはしない…


 なければ、困るが、ありすぎれば、幸せになれるわけでは、決してない…


 それが、わかるケース(笑)…


 そうは、言いながら、一方で、そのお金持ちに惹かれる自分がいる(笑)…


 お金があっても、幸せにはなれるわけではないが、なければ、間違いなく、不幸になるのが、わかっているからだ…


 これは、矛盾する?


 いや、矛盾しない!


 私は考える。


 米倉正造を内心、警戒しながら、今も米倉と、付き合ってる…


 これは、一体どうしたことか?


やはり、自分自身、認めたくはないが、自分が、米倉一族の金に目がくらんでいるからとも言える。


 あれほどのお金持ちと接点を持った以上、自分から、容易にその縁を切ることはできない(笑)…


 どうしても、そのおこぼれと言っては、言葉が悪いが、米倉一族の誰かと結婚したいという欲望が、私の中にまったくないと言えば、ウソになる…


 かといって、米倉正造や新造と、どうしても結婚したいかと言えば、それも違う…


 なんとも悩ましいが、それが、事実…


 現実だ…


 要するに、米倉と縁を切ってもいいが、それをするのは、やはり惜しい感覚とでもいえば、いいのか?


 そんな感じだ…


 そして、水野…


 一体、あの男はなにを考えてるのか?


 その目的はなんなのか?


 さっぱり、わからない…


 しかし、ある意味、一番、心を惹かれる人物でもある…


 今日の昼間も、私にふざけて、求婚したが、あの言動になにか意味があるのだろうか?


 わからない…


 いくら、考えても、わからない…


 そういえば、米倉は、あの水野が妻子持ちだと言っていた。


 水野は既婚者!


 今さらながら、その事実を思い出した。


 米倉の言葉にウソがあるとは思えない…


 米倉は信用できない男だが、そんなウソをつくとは思えない…


 なぜなら、そんなウソは、調べれば、すぐにわかるウソだからだ…


 すぐバレるウソをつくほど、米倉は、愚かとは思えない…


 私は、そんなことを考えながら、その夜を過ごした。


 嵐の前の静けさだった…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。