異世界の神様は神々しいのか?
「なんか、異世界慣れしている方が多いですね。なかなかこんなにすんなり受け入れていただけることはないですよ」
ユウトさんは、さっきからテンションが上がりっぱなしのアソビを見ながら苦笑している。正直、僕もアソビのテンションには若干あきれている。
「ユウトさん、僕たちみたいに異世界転移してくる人は多いんですか?」
「それほど頻繁ではないです。連続で来るときもありますし、何十年何百年も来ない時もあります。普通は元の世界で亡くなった方が転移してきますし、来る前に神界から通知が来るので、前もって準備とかするのですが…」
「なるほど、だからさっき微妙な空気になったんですね」
「そうなんですよ。ああ、ヒロ、さっきチアキさんからお聞きしたんですが、皆さんは日本で事故にあわれたとかではなく、召喚のような形で転移してきたみたいですよ」
「…は?」
ヒロさんの口元は微笑んだままだが、オッドアイから放たれる眼光が少し鋭くなった。ほんの一瞬、空気がピリついた気がする。でもすぐに元の空気に戻ったようだ。
「おっと失礼。しかし、この転移はおかしなことばかりだな。介入もあったようだし、やはり神界に行かないといけないな」
「そうですね。皆さん、お疲れのところ申し訳ないのですが、我々と一緒に神界に行っていただけないでしょうか」
「「「「神界?」」」」
4人が一斉にユウトさんを見る。なお、約1名は目をキラキラ輝かせている。
「ええ、しばらく異世界で過ごすのであれば、職業を得た方がいいでしょうからね」
「職業?僕たち、やっぱり何か仕事とかしないといけないのでしょうか」
「ああ、いえ、職業というよりはゲームのジョブと言った方が分かりやすいですかね。神界で創造神から職業を得ることで様々なスキルを習得できるようになって、異世界での暮らしが便利になると思います」
「すごいすごい!神様に会って職業をもらうんだ!あは~、チート能力が得られるといいなぁ」
まぁ、当然の反応だが、アソビのテンションが全く下がる気配がない。そんな様子を見てヒロさんが口を開く。
「ユウトも言っていたが、ほんと異世界慣れしてるんですね、特にお嬢さんとか」
「あ、あたしはアソビ。ユウトさんがヒロさんって呼んでましたよね。敬語とか丁寧語とかじゃなくていいですよ。ヒロさんたち、きっと年上ですよね」
「お、押しが強い…みんなは大学生くらいかな?まぁ、確かに年上かな。じゃあ、改めまして、俺はヒロだ。みんなよろしく」
アソビのコミュ力に若干引いていた気がするが、まぁ気にしないでおこう。
そういうわけで、僕たちはユウトさんとヒロさんに連れられ、神界に行くことになった。僕はまぁ何とか落ち着いているし、トーリやアソビは異世界や神界にワクワクしているようだ。一方で、モアさんは、依然として不安そうな様子でうつむいており、アカリさんが隣に座って背中をさすっていた。
「大丈夫?不安よね。できることがあれば協力するから、いつでも相談してね」
「はい、ありがとうございます、アカリさん」
アカリさんはモアさんを気にかけてくれているようだ。そのおかげかモアさんも少し元気が戻ってきたみたいだった。
「それでそれで!どうやって神界に行くんですか?お祈りですか?ゲートですか?」
アソビは一緒に行くユウトさんとヒロさんに詰め寄っている。いや、なんでそんなにテンション高いんだよ…。
「そうだな、どうしようかユウト。いろいろ方法はあるが、まぁ今日のところは穏便に祈りルートを使うか?」
穏便にって何…。
若干の不安を感じつつも、ユウトさんも賛同したので、みんなで祈りの間らしきところへ向かうことになった。アカリさんは留守番のようだ。祈りルートの場合は精神だけ神界に行くから、残った肉体に万が一のことがないよう見張っててくれるらしい。
「着きました、この部屋です」
「おおー!光がふりそそぐ窓!いい感じの祭壇と女神像!まさに祈りの間って感じだよ!」
「アソビさんは本当に元気だな。じゃあみんな、片膝をついて、手を組んで、目を瞑ってくれ。少ししたら神界に到着してるから」
僕たち4人はヒロさんに言われたとおり、片膝をついて祈るポーズをした。
10秒ほど経って、頬に風が当たったのを感じ目を開けると、僕たちは祈りの間にはいなかった。周りは雲の上のようになっており、足元には大理石のような床、背後には大きな扉、目の前には横幅の広い大きな階段があり、見上げると階段の先には玉座のようなものがあった。
ここが神界…幻想的でありつつ神々しさも感じる空間に感動していると、階段の上から1人の、いやこの場合は1柱なのだろうか、女神が階段を下りてくるのが見えた。その優美な姿に見とれていると…
「あ…」
小声でヒロさんが声を出した。ヒロさんの方を見ると女神の足元を見ているようだ。僕も目を向けると、さすが女神。神話に登場する女神と同じように足が隠れそうなくらい丈の長い服を身に着けていて……ん?足が隠れそうなくらい丈が長い?フラグと言わんばかりの発言?まさかね…
そのまさかだった。女神が階段を1段下りた時に裾を踏んでしまったのだ。
「ふえっ?…ぐえっ!…どぅえっ!…ぶえっ!…ぐへぇ…」
女神らしからぬ声を出しながら、階段の一番下まで転げ落ちてきた。あれはとても痛そうだ。
「ざ、残念女神!たは~!押さえるところ押さえてますなぁ~!」
「だ、大丈夫ですか?顔から行ったみたいですけど…」
「め、女神様、もしよろしければこちらのハンカチを」
またしてもテンションが上がっているアソビを横目に、トーリとモアさんが女神に駆け寄る。
「あ、ありがとうございます。これくらい大丈夫ですので」
そう言い、女神は何事もなかったかのように立ち上がる。あれだけ階段を落ちたのに、ケガとかしていなさそうだった。女神ともなるとフィジカルも強いのだろうか。
「改めまして、ようこそ神界へ。私はテオトル。創造神をしています。気軽にテオトルと呼んでください」
神様を名前で呼ぶのはなかなか気が引けるが、そう言われてしまってはそうするしかないだろう。テオトル様は、両手を広げながら話していて、後光がさしているのでとても神々しい。つい先ほど階段を転げ落ちたとは思えない姿だ。やはり、異世界の神様は神々しい存在だ…と言えるのか…。
「皆さんが神界にいらした理由は察しております。職業ですね」
「はい、1年間過ごすことになりましたので、テオトル様から僕たちに職業を与えていただけたらなと思います」
「うんうん、自分だけの職業を手に入れるのはワクワクしますよね」
「自分だけ?おれたちはみんな別々の職業になるのですか?」
「ええ、職業はその人の適性、魔力の質や量に応じて決まりますので、2つと同じ職業はありません」
「すごーい!自分だけのジョブなんてあこがれちゃうね!あたし、俺つえーなジョブがいいなぁ」
「わ、私は、あまり危なくないお仕事がいいです…」
「皆さん、それぞれいい職業を得ることができるといいですね。それでは、一人ずつ職業付与をしていきたいと思います」
これから職業を与える儀式が始まるようだ。思えば、元の世界で就職について話していたら、異世界で職を得ることになってしまった。しかし、テオトル様は、それぞれの適性に応じて職が決まると言っていた。もしかしたら、ここで得た職業に似たものを元の世界で選ぶといいのかもしれない。
それに異世界の職業だ。魔法もあるみたいだし、期待をするなという方が無理な話だ。もしかしたらチート能力を得られるかもしれない。そう考えると、この異世界で過ごすのも悪くないなと思い始めてきた。




