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第64話「首都包囲戦」

  『『『──ゴルァァァアアアアアアア!!』』』



 凄まじい咆哮。

 そして、凄まじい振動に、首都前がドドドドドッ! と地震のごとく震える。


 しかして、これは地震にあらず。

 ご覧の通り、オーガの群れの一斉攻撃だー!


「来おったぞ!」

「見えてるよ!」


 目測で、こっちに500匹。他の正面に、その半分ずつってとこかな!

 だけど、数が多い分、こっちの方は動きが遅い。

 つまり、私の正面はまだまだ距離があーる!


「ルルー! こっちは前にでて機動打撃をブチかますから、その位置で阻止射撃!」

「あーい」


 ビッ! と親指を立てたルルに同じ動作を返す。

 いいね、一心同体。


 二挺に構えた九七式自動砲を手に、いい笑顔を浮かべる我が相棒よー。


「ぬ? ルルを置いて前に出るのか? ここで撃てばよかろう」

「位置が悪いんだよ。私らだけならいいんだけど、隣に戦区がカバーできないっしょ」

「あぁ、たしかにの」


 隣。


 つまり、アークス議長たちが守備する民兵主体の防御陣地だ。

 数が多いけど、素人ばっかりで正直、防衛戦闘自体が怪しいと思っている。


「一騎当千のお主が前に出て暴れれば、味方の士気も上がろうというものよ」

「そこまで考えてるわけじゃないけど、いざという時、横合いから援護射撃できるかなーって」


 つーか、誰が一騎当千だよ。

 私はただのガソスタ店員だっつーの。


 ちなみに、もう一つの戦区のほうはそこまで気にしてはいない。

 陣地の完成度は3~4割程度だけど、冒険者の連中はそれなりに当てになる。

 なによりドミトリさん達がいればうまくやるだろう。

 他の高ランク冒険者もいるみたいだしね。


「……その点、民兵はちょっとなー」


 キュロキュロキュロ!!


 停止位置から一式砲戦車を進ませながら、双眼鏡で隣の戦区を流し見る。


 すると、やはり浮足立っているのが見える。


 かなり分厚く陣地を作ってはいるが、2~300もの巨大なオーガが向かって来るのだ、そりゃああ、民兵からしたら恐怖だろう。

 だが、安心してほしい。


「あそこは大丈夫じゃ。普通に守っておればそう簡単には抜かれんじゃろうて」

「鉄条網に馬防柵、それに……」



   ドーン!!



 懸念を払しょくするように、隣の戦区になだれ込んだオーガが一匹、片足を失って吹っ飛んだ!



「……地雷があるしね!」

「うむ! 奴等にとっては未知の兵器よ──じきに恐怖が伝播し、足を止めるじゃろうて!」


 そのルーフデスの言葉通り、次々に炸裂する地雷。

 そいつが小型個体を吹っ飛ばしていくが、あれはまだ序の口だ。


「くふふふ。うまく(はま)ってくれたようじゃの!」

「っぽいねー!」


 悪い笑顔を浮かべるルーフデス。


 その笑みの先では、連鎖する地雷の爆発に、2~3m級のオーガはさすがに足を止めていた。


 突然、足元が爆発するのだ。何事かと思ったことだろう。

 だが連中ときたら頓珍漢なことに、どこから攻撃されてるのかわからず、キョロキョロする程度。

 まさか、足元にそれがあるとは思いもよらないらしい。


 ただ、連中もさすがにこれ以上進むと何かあると本能的に気づいて動きを止めた。



 ……そして、それ(・・)が狙いだ!



 次の瞬間、城壁上に据えられていた大型ボウガン──バリスタが一斉に火を噴く!

 その斉射の威力よ!


  『『ゴギャァッァアアア?!』』


 響き渡る悲鳴!


 直撃した個体は胴体を引き千切られ、掠っただけでも手足をもぎ取る威力にさしものオーガも恐慌状態に陥る。


 ……だが、前に進めば、今度こそ地雷の洗礼だ!


 一斉にさく裂するそれに、何体ものオーガの脚が吹っ飛ばされていく。

 そして、前にも後ろにも進めず、進退極まったところで、また城壁側からの斉射!

 今度は弓矢に手持ちのボウガンの雨が降り注ぐ。


「ひゅー……えっぐいわー。進んでも地雷。とまったらカモかー」

「ふふーん。徹夜で仕上げただけはあるじゃろうが」


 作ったのは町の人達だけどね。


「ほんと、一夜城も捨てたもんじゃないねー」

「そうさな。……しかし、そのことじゃが──」


 ん?


「その実、我の案では冒険者側の方も完成しとるはずじゃったんじゃよ」


 そういって、「工程表」なるものを取り出したルーフデス。


 それによれば、町中の人員を総動員して作り上げるのだから、ほぼ無限の隊力とあると仮定して一晩のうちに陣地を完成させる予定だったそう。


「ところが、一部の作業地域で、動きが悪くてのー。最初は順調だったんじゃが、急遽、計画を変更した次第じゃ」


 一部?

 あー、副議長が担当だったとこかな。


「まー……慣れない作業だし、しゃーないんじゃない?」


 アイツ頭硬そうだし、

 口だけ出して現場をかき乱してそうだったしねー。


「そもそも、地雷なんて触るのが初めての人しかいないし、そんなもんじゃない?」


 鉄条網も馬防柵も、

 女子供の手では思い通りにいかないだろう。


「──その辺も含めて計算したに決まっておろうが」

「ふーん? まぁ、一部だけでも完成したし、いいじゃん」


 細かいことを考えても、なるようにしかならない。

 工程表だか何だか知らないけど、何でもかんでも計画通りにはいかないものさー。


「人の苦労も知らんで──……じゃが、まぁその通りよの」


 今更いってもどうにもならないこともある。

 それに、現状ではうまくいっている。


 小型のオーガが、地雷原に足止めされて身動きができなくなったところで、それをふがいないと思ったのか、オーガジェネラルやらジャイアントオーガなどの大型種が前方に踊り出る。


 連中ときたらガッチガチに装備で固めているものだから、ちょっとやそっとの弓矢なんてものともしない。


 バリスタの狙撃でさえ、手にした得物ではじき返すし、なにより、デカすぎて対人地雷程度なら平気な顔して踏み抜いていきやがる。



 ──ゴルァァァアアアア!!



「おぉー。す、すっごいね、あいつら! あれは大丈夫なの?」

「うむ、想定の範囲内よ。……見ておれ」


 み、見ろって言われてもなー。


 すっかり、ビビりちらした民兵が顔を真っ青にしている。

 彼らからすれば、自分のほうに巨大なオーガが突進してきているように見えていることだろう。


「だが、馬鹿め──……歩兵と別れた時が運の尽きよ!」


 死ぬがいいわ!


 チハたん上で、上機嫌にルーフデスがふんぞり返ったかと思うと、刹那!!



  ドーーーーーーーン!!



「ひゃ! な、なになに?!」


 び、びっくりしたー。


 さらに大きな炸裂音が響き、私は反射的に耳を覆ってしまった。


「ふふーん! 大型種用の対戦車地雷じゃ!」


 た、対戦車地雷?


「おーよ。お主の出した工兵器材の、あー何と言ったか?」

「九三式対戦車地雷?」


 通称:アンパン。

 日本軍が多用した対戦車地雷だ。


「おー、それじゃそれ。それをふんだんに仕掛けて置いた──対人地雷より奥にな」


 そう言ってニヤリと笑うルーフデス。

 その意味するところはつまり……。


「おおよそ、大型の個体は指揮官クラスか、突撃タイプじゃ。そいつらが一番で厄介でのー。真っ先に仕留めたいんじゃが、それをさせんために小型種が直掩でついとる」


 ふむ?


「しかし、その小型種が見ての通り、対人地雷で足止めされた故、大型種が突出したというわけよ」

「あぁ、なるほど! そのために、わざわざ地雷原を分けたのかー」

「うむ! これを複合型地雷原という──お主の持ってた工兵操典からの受け売りじゃがのー」


 へー。


 読んでないから知らね。……そういや、昨日の夜にパワポで作ったなー程度のでしか覚えていないわ。


「ぬっはっは! さすがはチハたんを擁する軍の教範よのー。よくもまぁ、こんなえぐい方法を考えよるわー」

「それはそう」


 実際、小型種から分離してしまった大型種等いい的だ。


 対戦車地雷を運よく踏まなかった個体も、立ち往生してしまい、陣地で待ち構える民兵たちがこれ幸いと弓矢にボウガンを射かける。


 この世界では兵役についたことのない男児のほうが少ないくらいなので、老人なんかは特にボウガンの扱いには長けていた。


 彼らは素早く動くことはできなくとも、鉄条網と馬防柵に守られた内側から連射するだけなら十分に可能!


「お、おぉー……! マヂで戦えてるー」

「うむ。そのための策。そのための野戦築城よ」


 はえー。


「じゃあ、援護いらないかな?」

「ぬー。今のところは、な。……それよりもこっちも何とかしたほうがいいぞ」


 あ、そうだったね。


 調子よく前進していたけど、相対速度も相まってすでにこっちにむかって突っ込んでくるオーガどもとは指呼の距離だ。


 だけど、問題なーし!


「連中の頭は潰したし、指揮官不在の敵なんて怖くないよ。アンタは近づいてくる連中だけ追い払って!」

「おう、任せい!」


 そう言うと、二手に剣を構えるルーフデス。

 これで近接防御は問題なし。


 なにせこっちは75mm砲!

 近づかれんければ、余裕の火力だ!


 ただし、念のため、他にもポイントを使用して鉄条網やら、ピストルポートを追加して、連中の乗り込み近接攻撃に備えている。


「よーし、十分接近したし、ちょうどいいね!」

「ぬー?! しかし、近すぎんか?! チハたんの方は強力じゃが、遠距離でこそ威力を発揮するものであろうが!」


 うん。

 それはそう。だけど、そうとばかりも限らないんだな──これが!


「後ろは……。ん! ルルとは十分に距離が開いてるね!」


 上出来上出来!


 チラリと振り返った視界の先では、ルルが地面に伏せて射撃姿勢と取っている。


「よーし、危害半径からは離れたん。さーて、そんじゃああ……害虫駆除と行きますか!」

「あーん? 危害半径ってのはなんじゃ?……つーか、その砲弾って──」


 主砲装填!

 弾種、三八式榴散弾!!


「──信管は超短期ゼロ秒!」


 ガコーン!


「ぶほっ! は、はぁぁあ?! お、お主、榴散弾をゼロ秒信管(・・・・・・・・・)って、ちょ待──……!」


 うん!

 

「今、アンタが想像した通りだよ!!」


 つまり、


「撃ったら即さく裂!! だから、頭を引っ込めときな──……目標正面!」


『『『ゴルァァァアアアアアア!』』』





  ってぇぇぇえええ(撃てぇぇぇええ)!!

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