第40話「首都凱旋」
わーわーわーっ!
大歓声を受ける中、私たちは見事凱旋~!
城門からは兵士たちから大歓迎をうけつつ、フリーパス!!
いやー、こうして注目を浴びるのは悪くないね。
とりあえず、ピースしておこう。
「ん? 初めてくる街で凱旋って、あってるんだっけ?」
……まぁいいや。
「しかし、思いのほか人が少ないですねー」
歓声を受けるのも城門付近まで、
それも主にドミトリさん達だ。
とくになぜかミルヒ君が大人気──まぁ、チッコイし、可愛いからね。
私?
私はまぁ、それなりで……あ、うん。しっかり城門では身分証を確認されたよ?
今度は、Cランクのそれなので、小銭しか要求されなかったぜ(結局とるのかよ!)──畜生ッ!
「そりゃーあれだけの被害だ。首都の中は無事でも城門に城壁が限界寸前、負傷者も多かったろうしね」
慣れた様子で歓声に手を振りながら、そぞろ歩くドミトリさん達。
私はと言えばおっかなびっくりその後についていくだけだ。
もち、クソガキを引きずりながらね。
「その街の被害も、主にコイツのせいだしな」
「屋根瓦屋が儲かりそうだぜ」
あー。
そういや、このクソガキが低空飛行したせいで、首都の屋根がどえらいことになったんだっけ。
ブレスで燃やされなかったとはいえ、屋根瓦が吹き飛んで台風の後みたいになってるし……。
よくよく見れば、マダムたちがため息をつきながら瓦の破片を拾っているわー。
「あーん!! なんじゃあ! ワシに文句あんのか、この双子ー!」
ぺーぺぺぺぺ!
「きったいないなー」
まーた炎吐こうとしてるし。
とりあえず、殴っとく。
「あいだー! き、貴様ぁぁ。今度はつるはしで……」
「アンタ、普通に殴っても利かないでしょ!」
まったく……。
「しかし、街の掃除もそうだけど、男の人の姿が少ないのは、城壁での戦いに駆り出されたからかなー?」
「うーん、それだけじゃありませんね。……そもそも兵士が少なすぎる気がします」
へ?
そうかな?
ミルヒ君が難しい顔で城門と町を巡回している兵士を見ていた。
言われてみれば、ベヒモスが攻めてきて、ドラゴン(?)まで襲来したというのに、兵士の数が思いのほか少ない気がする。
この様子ではまだまだ動員を解除しているとも思えないし──。
「たしかに。……数もそうだし、なんか子供とか老人が多いかもー?」
どう見てもサイズ違いの鎧兜に、
それ持ってて大丈夫なのって感じのおじいちゃんまでボウガンとか槍を担いでいるね。
「……冒険者も全然いないねぇ」
あー。
それな。
たしかに、首都攻防戦してるわりに、街の防衛に出てくる冒険者が全然いないのは気になっていた。
そも、Aランクのドミトリさんが城壁外で戦ってるのに援護すらないときた。
「ま、その辺をもろもろをギルドで確認するさ──ミルヒ、魔石に素材は?」
「最低限は! あとは、ギルドの回収班に頼みます」
お、いいね。
さすがミルヒ君、ちゃんと見えないところで仕事をしていて超優秀。
ちなみに回収班とは、時間がないときは有料にはなるが、ギルドにそういう専門部隊があるらしい。
ただし、その回収班に依頼するには、特定部位が必要なのだとか。
いわゆる討伐証明だね。
……ま、それがないと誰がどの魔物を討伐したかわからないからトラブルの元になるわなー。
「とはいえ、ほとんどナガセの取り分だよな」
「そーそー。俺ら役に立ったかも怪しいぜ」
「あはは。そんなことないですよ。実際危ない場面はありましたし」
チハたん無双は事実だが、
単身なら、無事でいられたかも怪しい。
なので、共同戦果といってもいいだろう。
双子が役に立ったかどうかは詳しく語るまい……。
「ま、その辺はきちんとなしをつけてやるよ──ここのギルドの偉いさんとは馴染みなんだ、っと、たのもー」
ばーん!
「……いや、『たのもー』って道場破りじゃないんですから」
ドミトリさんらしいなーと思いつつ、ギルドの戸をくぐるドミトリさんについていく。
しかして、ギルドに到着したはいいけど──……わーお、すっごい閑散としてるー。
え?
首都のギルドだよね??
「ああーん?……なんだ、誰かと思ったらドミトリかい」
「おーう、婆さん、まだ生きてたかあー」
がっはっは!
ノッシノッシと、我が物顔でギルドに入っていくドミトリさんが奥に進めば、その先で煙草をくゆらせる──婆さんが一人……って、
「え?……婆さんって、?」
「んー? なんだい、そのチッこいのは──」
いや。
婆さんっていうか──……。
「エルフじゃん!!」
なんと、そこにいたのは、超絶美女のエルフさん!
婆さんっていうから、てっきりこう──空飛ぶお城を捜す日本のアニメ映画とかに出てくる強そうな婆さんを思ったが、全然違う。
むしろ、若くね?!
「おやおや、ワタシを知らないとは新人かい?」
そう言って優雅に煙を吹いているのは、ぎぃぃ……と、安楽椅子に腰かけた妙齢の女性であった。
いわゆるハイエルフってやつだろうか。
色白で耳が長くて、髪がサラッサラー。
「あー、新人は新人だけど、ウチのメンバーじゃないよ。それより、なんだいこのギルドのあり様は」
やれやれと言った感じで、本来受付嬢がいるはずのカウンターにドカッと腰掛けるドミトリさん。
いや、ほんと。何このありさま?
サンズベルトのほうがもっと活気あったよー?
「ふんっ。……見ての通りさ。職員は現場に出ずっぱりで、冒険者連中は、まぁ……城壁の戦いに言ったのが半分、逃げたのが半分──ってとこかねぇ」
自嘲気味に笑うエルフさん。
「あーん? 逃げただぁぁ?!」
逆にドミトリさんが呆れたような怒ったような声をだす。
だけど、私も同感ー。
なんで逃げてんだよ……。
「しょうがないだろ──オーク災害が各地で頻発してるせいで、あちこちに冒険者を派遣して、その隙にこれだよ」
あ、ああー……なるほど。
オークが各地で大暴れしてるってのは聞いてたけど、首都でも同様だったか。
いや、むしろオークの集落が首都に近いのでその被害が一番大きかったのかも──。
「はーん? あっきれたねぇ、それで高レベルを派遣してるところに首都を襲撃されたってのかい?」
「耳が痛いね。たが、まぁそういうことさ。偶然にしちゃできた話だけど、してやられたよ」
いやいや、そんな他人事みたいに……。
「実際、アンタが来なけりゃ、街は陥落してたかもねー。そんで美人のアタシなんか一番に捕まって、『あ~れ~』されてたよ!」
あはははーと笑うエルフさん。
いや。相手はベヒモスだから、あーれーはないと思うけど、あっけらかんとしてますなー。
「ふんっ、アンタが出れば多少は持ちこたえたんじゃないのかい?」
「ワタシャ、もう現役は引いたよ。いくつだと思ってんだい?」
それな。
ホント何才なんだろ、見た目20代後半って感じだけど──……。
うむむ、見た目的に同じ歳としても、この差ってひどくなーい?
おっぱいも、たっぱも──見た目も、あとおっぱいもぉ! (大事なことなので2回以下略)
「(ちょっとちょっと、ナガセさん。……変なオーラ出てますよ)」
おっと、しまった。
女のジェラシーがぁー。
ミルヒ君に肘をつつかれハッとする。
「それよりも、英雄様が凱旋するなりギルドに直行するってことはなにかい? 何か入用かい?」
「そりゃそうさ。長旅だよ? 疲れてるし、宿も取りたいね。──あとは、見た通り素寒貧なもんで、報酬面の話を先にしとこうと思ってね」
お!
それそれ!!
宿もガソスタがない今、普通のとこに泊まるか、さっさと大金をせしめてガソスタ復活させないと──!
「あ、あぁー……その話かい。まいったね」
本当に困った顔でガシガシと頭を掻くエルフさん。というか、この雰囲気的にギルマスさんだよね。
「悪いが、報酬はちょっと待っとくれ。今のギルドにそこまでの現金はないんだよ。クエスト報酬くらいは出せるが、その、な……」
本当に済まなさそうな顔のギルマス。
っていうか金ないの?
首都のギルドでしょ?!
「おいおい、困るぞ。クエストの報酬は当然として、今回のベヒモスは、絶対に強制依頼が出てただろ?」
「まぁね。その辺は……アンタたちは受けてないとはいえ、ワタシの権限で後付けで上手くしてやるが、そのなー」
うーん。
とにかく金がないと。
(まぁ、金貨の世界だし、そんなポンポンと貨幣があるわけないかー)
「そんなの当たり前だろ! それよりも、最低でもベヒモスを10体分。それにコイツ──……」
どかっ!
「あいだー!」
ドミトリさんが雑に蹴り飛ばすのはクソガキ。
「途中で乱入してきたドラゴンも撃退したし、ボーナスが欲しいねぇ」
「……おっと、そいつは竜人かい?! アンタこれまたドエライものを──」
涙目で転がるクソガキを興味深そうにみるギルマス。
どうやら、竜人族のことは知ってるみたい。
さすがは長命種ってとこかな。
「あぁ、竜人か何かは知らないけど、町の瓦被害を出したのは間違いなくコイツだ。……ソイツをとっ捕まえたんだから、全部の報酬を耳をそろえて払ってもらおうかい」
ずずい! と身体を乗り出すドミトリさん。
いやいや、待て待て待て。それだとこっちが悪役みたいじゃん……!!
なんか、子供をふん縛って蹴りつけ、
美人エルフに迫るデッカイビキニアーマー……いや、マヂで悪役の構図だよ!!
(それで行くと私って、モブ子じゃん!)
あの、眼鏡をかけてて、ゾンビ映画とかで3番目くらいにトイレとかで死ぬ、あれじゃーん!
視聴者に、「こういうトロイ女むかつくー!」とか言われるあれじゃーん!!
──地団太地団太!
「か、金の話な。まぁ、わかっているんだけど……って、その前にどうしたんだい? そっちのチッコイ子は?」
「あーん?……あぁ、ナガセは時々こうなるんだよ」
「そ、そうかい?」
……いや、可哀想な目をむけんなし。
あと、ドミトリさんは微妙に失礼だな。
なんだよ、時々こうなるって!
それより、とっとと金を出せぃ!
その金でガソスタ修理して、2、3日仮眠室に引き込もるんだーい!!
「ま、まぁ。報酬については、その……ワタシじゃなくて、そっちの偉いさんと話をしてくれないかい? 街の防衛の話なんで、色々ややこしいのさ。かわりに、ランクの昇進とかは請け負うからさ」
「あーん? 偉いさんって──おっと、これはこれは」
ぎぃぃ……。
ギルマスが顎を向けると、なんといつの間にか、入口に人影が。
それに気づいたドミトリさんが思わず片膝をつく。
どうやら件の偉いさんが登場したらしいが──……え?
「子供?」
※ ※ ※
「──だれが子供じゃ。失礼なガキだな」
「いや、ガキにガキって言われたくないなー」
そも、私は20代やっちゅうねん。
護衛を伴った偉いさんらしき人影が、マヂでエラそうな態度でズンズンとギルドに乗り込むと、ドミトリさんに対抗してカウンターにどかっ…………っと、できなかったので、
護衛の人に、よいしょーってしてもらって小さく座る。
いや、威厳よ──。
「ふんっ。図が高いぞ──ガキ」
「いや、だからおめーに言われたくねーよ」
なんだ、このガキ。
なんか最近、むかつくガキしかみてないな──ウチのルルを除く!(力強くっ!)
「(おいおい、ナガセ! 頭下げとけって。……このガキが偉いさんだよ。首都の議長だよ、ぎちょー)」
「(ぎちょー?)」
ぎちょーって、議長?
会議とかの偉い人?
「(そうさね。この国のトップ、人民評議会の議長だよ)」
人民評議会ー??
なにその、「赤い香り」がする組織の名前は……。
っていうか、ドミトリさんデカいし、近いから小声の意味ないっすよ?
ほら、ガキがガキって言われて睨んでますしー?
「ちっ。誰がガキじゃ! どいつもこいつも……。これだから冒険者は──あぁ、まあ、ええわ。町の防衛に尽力したみたいじゃし、多目に見てやるわい」
「あーそー」
うーわ、むっかつくなー。
コイツがいる町の孤児院にルル預けんの?
大丈夫かね。
「……あ、そっか。その辺のことがあるし、一応は礼は尽くすか」
とりあえずお辞儀お辞儀ー。
「いや、口に出してたら礼儀もクソもないんじゃが──」
ええやん。
気持ちが大事やねんってね。
「ふんっ。よそ者じゃし、細かいことは言わんが、覚えておくがいい──我こそが、首都アーバンブルグの市町にして『人民評議会』の議長、アークスであるぞー」
「はぁ、どうも」
イマイチ凄さが伝わらないけど、とりあえず握手かな?
「いや、そこは膝をつけ」
「えー……床きたないしー」
「掃除はしてるけどね」
そこ、エルフうっさい。
「ったく、まぁええわ。我の心は広い。それに、ドミトリじゃったか? おぬしの仲間みたいだし、態度には目を瞑ってやる──それで、改めてじゃが、街の防衛への協力、大儀であった」
そう言ってクッソ偉そうなガキ──。
うーわ、ただ褒めるならともかく、
その言い草よ!
「は! ありがたき幸せ」
そんでドミトリさんは律儀に頭下げんのねー。
私は絶体下げないぞー。
「うむ!! して──話は聞こえておったが報酬のことじゃったな」
お!
そうそう、それそれ!!
「ふむ。ベヒモス退治の勇姿──我も見ておったが、実に見事であった! 仲間割れが発生しておったが、一体を見事聖剣で仕留めたその姿はしかと目に留まったぞ。ゆえにその功績を称え、金貨100枚を授けようぞー」
ぱちーん♪ と指を弾くと、
護衛がスススと進み出て、鷹揚な仕草で鞄から金貨を取り出していく、あれって魔法の鞄かな?
金貨が、ひーふーみー……うん、100枚だ──。
「──って、おいごら」
「あん? なんじゃ貴様」
いやいや、待て待て待て──。
「災害指定種とやらを一体を討伐して、たったの金貨100枚ってどうなの?」
舐めてんのですかね、このお子様は。
こーゆーことされると、私はパワハラで壊れた精神のまま大暴れするぞ?
具体的にはチハたんで──……。
「ま、待て待て待て! ナガセ一回落ちつけ! なんか物騒なこと考えてるけど、それは一旦しまっておけ!」
「そ、そうそう! ここは姐御が話すから!」「な。どうどう──」
ちょ!
触んなし!
なんか知らんが、ドミトリさんだけでなく双子まで加わって私を抑え込みにかかりやがった。
うがー!
私が何をしたー。
「い、いや、何かをされる前にナガセさんを抑えないと大惨事なもので──……えっと、議長様」
「うむ。勇者ミルヒか。よい、話す許可をやる」
「は! ありがたき幸せ──……え? 勇者?」
うん?
なに? ミルヒ君って勇者なん?
「うむ。見事聖剣を突き立てた姿は皆の目に焼き付いておる。のちの銅像を建てさせようぞー」
あ、あぁー。
あの時の──。
「してなんじゃ?」
「は、はい。実はその──ベヒモスの大半を倒したのは、私ども『赤い旋風』ではございません」
「ああーん?……あぁ、そうであったな。見ておったぞ。森より出でし異形のベヒモスが火を噴き、大半の仲間を食らいつくしたのをな。その点でいうと、かの戦いはお主らがすべての功績ではないのー」
一気に言うなり、かーっかっかかか!
とか笑ってるガキんちょ議長。
……いやいや、待て待て。
その火を噴くベヒモスってまさか──。
「あー、議長。実はその火を噴くベヒモスは、魔物ではありません。このナガセなる冒険者の持つスキルでございますー」
ミルヒ君が片ひざをついたまま訥々と述べる。
「ああーん? スキルじゃぁぁ?」
うん。
チハたんな。
「はっ! そーんなわけがなかろう。一撃でベヒモスを倒しおったぞ? そんなスキル聞いたこともないわ。あるなら、証拠を出せ、しょーこを」
「は、それではこちらを──」
ずいっと『赤い旋風』所有のアイテムボックスを取り出すミルヒ君。
おぉ、証拠ならそう言えばたっぷりあるわ!
いけいけ、ミルヒ君!
GO!
ミルヒ、GO!!
「それでは失礼して────……!!」
ザラザラ、ガラララ~!
ドザザザザザザザー!!
大きな音を立てて飛び出してきたのは、なんとなんと、回収したベヒモスの討伐正面の数々であった。
その数、しめて10体ほど!
なんなら、ドサクサ紛れで回収したであろう、47mm砲を食らった時のクソガキの鱗の破片もあった。
それらが燦然と輝き、誰もが愁眉を開く。
──な、な、な、
「「なんじゃこりゃぁっぁああああああああああ!!」」
その様子に議長も口をあんぐり。
ギルマスと一緒に大声で絶叫するしかなかった。
うけけけー。
これで最低でも金貨1000枚ぶんだぜ。
「さらには、これを……。こちらがそのスキルの産物である、聖剣でございます!」
そういうなり、ミルヒ君が恭しく取り出したもの。
それこそが、ベヒモスを一撃で昇天せしめ、ドラゴンにひれ伏せさせた聖なる剣────エクスカリバー(※自称)であーる!!
「いや、刺突爆雷じゃん」




