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現を抜かす(No.3)

不定期ですみません。ちゃんと元気にやってます。あと、この前書きを見ている人は全世界にどれだけいるのでしょうか。これを見ている全ての人に幸おおからんを。

背中を押され気持ち重い足取りでネット前に向かった。ネットは僕よりも大層高かった。これを超えるジャンプを……。周りを見渡す。僕はまるで空気のような扱いだった。他の人を見てみる。誰も足がネットよりも高く出るようなジャンプする人はいなかった。手だけを出してる。そんな感じだった。なぁんだと安堵したのも束の間、ブロックでうまく返せなかったボールが顔に当たった。まもなく僕は倒れた。ボールを当ててきたやつが顔を青白くしながら近寄ってきた。謝られた。ブロックをしていた側か、ボールを打っていた人かは分からない。少し怖くなった。ブロックで威力が弱くなっているはずのボールでさえ体幹含め諸々無いとはいえ一高校生を倒せるくらいの威力はあるというのだ。あのキャプテンとかいう輩は僕にこれを止めろって言ってんのか?頭だか、血液だかが沸いてんじゃないのか?

「軽くブロックは見たと思うから早速ブロックしてみようか」

 待て待て待て待て早い。あまりに早い。無理だろこれ。1年だか2年またはそれ以上にやってる人があんな失敗してて僕に出来るわけない。

「ん?あー大丈夫。僕が教えてあげるから」

 だとしてもすぎる。無理なものは無理だ。そんな単純なもんならあいつは止めれてるだろ。

 みんなの嘲笑が痛かった。やらなければならないのか……。

「まず、腕を曲げて膝を曲げて跳ぶ。言葉では表しづらいけど別に何も難しいことはない。慣れだよ慣れ。まぁ、習うより慣れろって感じかな。さぁ、みて、こう。こう。」

 指示代名詞のオンパレードだった。感覚派はこれだから嫌いだ。なんのために国語を勉強してきたのだ。やってみた。上手くできてるって言われたけどお世辞だ。そういう社交辞令だ。分かった上で聞くのは大層頭に来るみたいだ。正直レシーブも何も出来ない。体育はどれだけ勉強したって成績は伸びなかった。持久走でも順位をひとつあげることさえ出来なかった。慣れてないからではない。そう。あくまでできないのだ。僕には体力がない。体幹も弱い。そんな僕がバレーという競技において褒められうることはまず無いのだ。司令塔として、頭として働いたらまだいいかもしれない。だけれどルールを知らなければ基本的な動作も危うい。こんな僕が言っていいことではまずない。そうこうしてるとキャプテンが急かしてきた。センスを見る。そう言った。僕はまさかと息を飲んだ。さっきのスパイクをうっていたひとだ。まるで力こそパワーと言わんばかりのデカブツ。あいつとは仲良くなれん。初対面で人の背中を叩いてくるような輩だ。その前から思っていたが、まともな精神をしていない。深く関わっていなかろうと、そういうことだけは分かった。あいつからの因縁を晴らすべくできることなら止めたかった。まぁできることならであるが。まて、あいつがあの強さでボールを叩いたら? それをボール伝いに僕の手に当たるわけだよな? 僕、死ぬくね? あれ。僕、終わったくね? 結局止めてもどうせ僕は後ろに倒れて脳震盪待ったなしじゃね? 詰んだくね? あぁ、最悪だ。こんなことならテニス部にでも行けばよかった。テニスだったらラケットがあってコートも狭くて、二人いるからペアのせいにできる。あぁ、今までありがとう。楽しかった人生だったと言うには別にそこまでだったけど。まぁまぁだったな。みんなに比較されて、みんなに笑われて。そんな人生だったな。あぁ、部員が見てる。飛べよ飛べよと見てる。僕は思いっきり飛んだ。飛んでやった。もちろん飛び方なんて知らない。いや、頭が真っ白で忘れていたと言った方が適切かもしれない。キャプテンの言ってたことを思い出した。手をネットの前に出す感じ。あぁ、最後くらい言うことを聞いておくか。まぁこれで死んでも親とかに保険金とか入るだろ。ならいいや。


 バン


 バシュッ


 トットット


 うぉおおおおおお

 どうやら歓声が上がったらしい。手のひらはジンジンする。手のひらの感覚が無くなる感じがする。目を開けた。目の前。相手コートの方を見るとボールが転がっていた。どうやらブロックに成功したらしい。思いのほか痛くなかった。死を覚悟してたからかもしれない。たしかに怖くなかった。というのは嘘になる。僕は考えることが出来なくなった。キャプテンが来た。僕の両肩を掴み、揺すった。ハッとした。僕は成功したのだ。正直今まで感じていたしがらみが溶けるようだった。たしかに気持ちよかった。お前にはセンスがある。とドヤ顔をするキャプテン。俺が教えたからこいつはできた。と再度ドヤ顔するキャプテン。副キャプテンにそれはこいつの才能があっただけだろと叩かれるキャプテン。何も言えずにただ気まずそうに佇むキャプテン。僕は先生に呼ばれた。

「本当に凄いじゃないか。あいつはうちのエースだ。あいつが一番このチームで強い。どうだった。ブロックしてみて。楽しくないなんて言わせないぞ」

 よく初めてで人より何も出来ない人にエースをぶつけてきやがったなと少々腹が立ちつつも、自分ができた事実が未だに信じられずにいた。ぼくは眉間にしわを寄せた。

「いいんだ。君の性格なら言うに言えないだろう。だが、それを言わせて見せようじゃないか。それが顧問の役割であり、約束だからね」

 そんな約束したかなと思いつつ、もっかいを挑まれた。今さっきのはたまたまだ。あくまでたまたま。ビギナーズラックというものだ。次は多分僕の腕が弾け飛ぶ。全面がほとんど茶色の体育館が赤色に染まってしまう。そしてそこらに桃色の塊が数個ごろごろと散乱する絵が見えることになるだろう。新しいことはこれだから嫌いだ。大体最初はビギナーズラックとやらでうまくいくかもしれない。うまくいかなくても初心者だから……と、ほぼやっていることは詐欺紛いなことだと思う。だからこそ次やる時には悲惨な結果が目に見えてしまう。調子に乗るつもりは固よりさらさらないのだが。

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