痛々しい現実(No.2)
いまだ履きなれていないシューズを履いた。自分には少し大きかったかもしれない。適当に準備運動していてくれ。と、キャプテンに言われた。バレーに対する適当な運動など僕はとうに知らず、ストレッチをするばかりだった。アキレス腱をググっと伸ばして、肘を十字にして肩を伸ばした。バレーなんか中学生ぶりだろうか、いや確かその時でさえほとんど試合には出ていなかった気がする。お前はピンチヒッターなって言われてスタメンどころか、ローテーションにすら入れなかったような気がする。そこまでサーブもスパイクもできなかったし決定打も別に打てたわけではない。ある種いい選択だったのかもしれないとどこか考えていると、笛が鳴った。顧問だ。
「集合」
キャプテンの声でさらに緊迫したかのように人が集まった。バレー部員ってこんなにいたんだと思ったが、別にそこまでバレーが強いわけでも、マンモス高でもないごくごく一般の高校のバレー部員の人数なんてたかが知れているだろう。ただ、一見したよりは多かったというだけの話だ。
「今日から栄えある我らがバレー部員になった知慧くんだ」
パチパチパチと乾いた拍手が僕を包んだ。先生は少しばかり笑っていた。少し鼻につく。早く自己紹介をしろというアイコンタクトを受け取った。僕は正直自己紹介をする気はなかった。少しゆがんだ顔をして、自己紹介を始めた。
「塵芥の芥に渭川漁父の川、奸佞邪知の知、慧眼の慧で芥川智慧です。バレーは経験ないです。よろしくお願いします」
いせ……なにそれ。かん?という声が聞こえてくる。ちゃんと勉強していたらこれくらいはわかるだろう。
「まぁ……よしみんな練習に戻れ」
先生がこの場を締めると、急にでかい声がした。
「姿勢!礼!あざぁーーーーっしゃ! 」
もはや原型をとどめていなかった。礼儀のつもりが少し行き過ぎているのだろう。そうこう考えていると、キャプテンに呼ばれた。
「君、は……智慧くんだったっけ?ポジションはどこにつきたい?」
……ポジションってなんだ?バレーボールなんて、所詮やりたい奴がやりたいようにやる自分勝手なスポーツじゃないのか?
「ポジションって何があるんですか?」
僕は1つキャプテンに聞いてみた。答えは思いのほかシンプルではなかった。
「大きく分けて4つあるんだけど……まずはチームを支える司令塔のセッター、相手のボールを空中でコントロールするミドルブロッカー、チーム屈指のアタッカーのウィングスパイカー。あとは、チームの陰の立役者のリベロ……まぁ君のそのタッパならミドルをやってみなよ。」
そんなに簡単に言わないでほしいものだ。あくまで僕はバレーの初心者も初心者だ。専門用語が多すぎる。




