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215匹目 クエストリザルト

 

「―――なんじゃ。もう”わんわん”したのかや?最近の若いのは進んでおるのう」


 瞳どころかそこら中にハートを浮かべたり飛ばしたりしているアリスに左手を取られ、どことなくいつもよりも”むすっと”していて、さりげなく俺の足を踏んづけてきたり、尻尾でペシペシと俺のお尻を叩いてきたりするクレアに引っ張られて連れ込まれたウツロおばあちゃんの部屋で聞いた第一声がこれである。

 えっと……わんわんってなんだろう?黒くて丸いイヌには到底見えない鉄球生命体かな?


「しょ、しょんな訳ないじゃない!あ、あたしはそんな簡単にしっぽを許すような軽い女じゃないわよ!」

「わたくしは王子様が望むならこの身を喜んで差し出しますわ!」


 俺の両脇の女の子がそれぞれウツロおばあちゃんに宣言してる。

 え~っと。身を差し出す前にわんわんが何なのか教えて欲しいかな~?クレアが顔真っ赤になってるからなんとなく予想出来て口にはしないけどね。セクハラで訴えられたくはないし。


「ちょっ、アリス!そんな事言ったらダメよ!コイツはキツネの皮を被ったオオカミなのよ!無害そうに見えて中身はケダモノなんだから!」

「ケダモノの様にわたくしを求める王子様……す、すごくいいと思いますわ!」(キュン!)

「……いや、オオカミなのはクレアだろ……」


 と言うかケダモノなんて無粋な言葉で呼んだらダメ。お隣さんとか良い友達とかって呼んでいいのよ?


「お隣さんって、あんたあたしの隣に住んでないじゃない!」

「そういう意味じゃないんだが……まぁいっか。良い友達は否定されなかったし」

「むぅ……なんか王子様とクレアがいい雰囲気ですわ……王子様!わたくしも王子様の隣人に……いいえ!一緒のお城に住みたいですわ!!住みましょう!2人だけのお城に!!」


 それからもわいのわいのと騒ぎだす俺の両サイド……なんだろうなこのカオス……

 とりあえずアリス?俺別にお城に住まないからね?既に一国一城の主だし、あの湖畔のログハウスは結構気に入ってるんだ。……ちょっとうるさいけど。いや、結構うるさいけど。


「ほれほれ。じゃれあうのはそれぐらいにしんす。話が一向に進まぬじゃろ?」

「もとはと言えばおばあちゃんが変な事を言うからじゃない!」


 にやにやと意地悪く俺達のやり取りを眺めていたウツロおばあちゃんが、やれやれとでも言いそうな雰囲気で仲裁に入ってきて、クレアに噛み付かれてる。あ~あ。適当な事ばっかり言うから。


「よく無事に帰ってきてくれたの2人とも。わっちの想像を遥かに越える戦果じゃ。ようやった。褒めてやりんす」


 明らかにクレアの方が正論だったからかサクッと黙殺したウツロおばあちゃんが全身からシリアスな雰囲気を醸し出して俺達を褒めてくれた……え?褒めてるんだよねこれ?じゃあ喜んでおこう。わーい!


「王子様かわいすぎですわぁ!」(トゥンク!)

「ふ、ふんっ!褒めたって誤魔化されないんだからね!ま、まぁ。ちょっとは嬉しい……けど……」


「くふ。実際ぬしらがやった事は凄いことじゃからの。存分に喜びんす」


 たしかになぁ。流石に第五層のクエストだけあって今回のクエストの難易度は結構高かったよ。フィアちゃんとの森デートよりも大変だった。うん。


「本来のわっちからの依頼である”風の巫女”の救出に加え、邪教徒の殲滅に、クレアの覚醒。闇堕ちしたグリフォンの浄化までやってのけるとは……ほんにぬしはわっちの予想を軽々と越えてくれるのぅ」

「いや、軽々とでは無かったけど……って、あれ?ウツロおばあちゃんにグリフォン関係の事言ったっけ?」


 到着した直後から茶番が始まって報告を一切してない気がするんだが……


「おばあちゃんはなんでも知ってるものね」

「ウツロ様はなんでもご存知ですものね」

「ウツロおばあちゃんはなんでも知ってるな」

「なんでもは知りんせん”風”に聞いただけじゃ。今頃風の巫女の家にも報告が行っておろう」


 風ってなんだろ?消えてったグリフォンの事かな?まぁ、なんにしろアリスのお家に無事の連絡が行ってるなら良かったよ。


「それではお楽しみのご褒美タイムなのじゃが……正直ぬしが立てた功が大きすぎて何を返せばよいのか迷っておる。

 そこでじゃ。ぬしは何か欲しいものは無いかや?わっちに叶えられる事なら叶えてやりんす」

「欲しい物かぁ……」


 なんだろ?何かあるかな?ベビーグリフォンは仲間になったし、アリスとは知り合えたし、クレアとはもっと仲良くなれたしなぁ。

 今すぐ欲しい物って特に無いんだよなぁ……ウツロおばあちゃんの素敵筆しっぽをもふもふする権利とか?いや、でもあのしっぽは鑑賞用でこそ輝く物だと俺のもふもふセンサーが告げているしなぁ……あ、アリスを助け出したらクレアのしっぽをもふっていいって言う約束をすっかり忘れてた。後でもふんないと!

 ん~。無難に行くならお金とか?でもな~もったいない気がしてな~。なんか最近困った事とか無かったっけかなぁ……あ。


「そういえば……」

「ん?なんじゃ?なんでも言うてみるが良い。言うだけならタダじゃ」


 ボソっと漏れた俺の言葉を拾ったウツロおばあちゃんが、わっるい笑顔でそんな事を言ってる。

 ……ウツロおばあちゃんはクレアに噛み殺されない様に、口は災いの元って言葉を覚えたほうがいいと思うよ?沈黙は金なりってね。


「雄弁も銀ぐらいの価値はあろう?わっちゃぁクレアの美しい銀の髪を愛しておるからのう。金に浮気するなど、とてもとてもできんせん」

「さ、さいですか……」


 演技だと丸分かりなレベルで悲壮感たっぷりに崩れ落ちてそう告げるウツロおばあちゃん。

 ダメだ~。口じゃ勝てね~。ウツロおばあちゃん強し……


「くふっ。ぬしは功を立てるのは上手いが口を立てるのは苦手な様じゃのう?」

「まったくだよ。ウツロおばあちゃんの所為で立つ瀬が無くなっちゃったじゃん」


 挑発的な流し目で見られたので肩を竦めてやり過ごす。

 無理無理。ウツロおばあちゃんレベルの返答を求められても俺にはこれが限界です。


「かっかっか。それだけ返せれば上等じゃ。なにせ世の中には”せ”が立たない所か”腹”を立てる者も多いからのぅ?」

「それはそれは。口も瀬も立たなかったけど顔だけは立てれたようでなによりだな」


 どうにもウツロおばあちゃんに遊ばれている気はしつつそう返すと「はっはっは!言いおるのう!」と足を叩いて笑われた。

 正直”立つ”縛りはもう限界だから勘弁して欲しいです。はい。


「王子様……カッコイイですわぁ……!!」(キュンクッ!)

「あいつ……バカだけど頭は悪くないのね……」


 あ、なんか両脇から好感度が上がった音がする。ついでにアリスの心臓が器用な音を立ててるな。というかアリスはいいとしてクレアはいつまで俺の腕を抱いてるつもりなんだろう?まぁ、邪魔でも無いし好きなだけ抱きついてていいんだけどもね。


もふもふ!

誤字脱字ありましたら感想の方へお願いします。

VRMMOでサモナー始めましたの1巻が・・・じきに発売予定!お楽しみに!


もしクレアとアリスがテトメトの隣人だったら・・・きっとテトメトは凄くご近所付き合いの良い人になってるね。なんていい事なんでしょ~。

あ、明日頂くストーリーが発売なのでしばらく更新が止まるかも・・・そしてオデッセイが発売されたら確実に更新が止まりますのであしからず~。

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